53 サーヤのいぬ間に
〖は、は~ 苦しい、ケホケホっは~ もう勘弁して〗
涙を拭いながら主神は復活した。
〖ほら、魔神ちゃんも…あれ?魔神ちゃん?〗
さっきまで隣にいたはずなのに?と、魔神を探すと
〖きゃー 可愛い♪あ~何しても可愛い♪どんどん撮るわよ~!〗
サーヤたちの周りを飛び回る魔神の姿が
〖え?あ、あの魔神ちゃん…?〗
何してるのかな?
〖後でシアと女子会よ~♪上映会開かなくっちゃ~♪私って天才だわ~♪うふふふふ〗
周りの声など聞こえないのか、怪しく笑いながらサーヤたちの周りを飛び回り続ける魔神…
〖だ、ダメだ……〗
聞こえてないし、サーヤ以外目に入ってないよね?
ぴゅぴゅ『イルしゃまイルしゃま!』
きゅーきゅ『ふっかつちたんならこっちおいでよ~』
『イル様、果実水でもいかがですか?』
『木の実もありますよ』
双子とフゥ、クゥが声をかけてくる
〖君たち……〗
なぜ、そこだけリビングでくつろいでる感が出てるのかな?
『まぁまぁ、しばらくダメだと思いますよ?』
『そうそう。ねぇ?』
ぴゅいきゅい『『ね~ぇ』』
楽しそうに『ねぇ』って言い合っている双子とフゥ。
〖君たちいつの間に悟りを開いたんだい?〗
苦笑いを浮かべながら、まあ、いいかと肩を竦め、クゥから果実水を受け取る。
『そりゃまぁ』
『ね~』
ぴゅぴゅ『なれてきたよね』
きゅきゅ『わかりやすいよね』
『『サーヤだからね』』
ぴゅいきゅい『『ね~』』
四人同じ角度に頭をこてんっと傾けニコニコしている。
〖ふふっ すっかり家族だね〗
同じ顔してるよ君たち
『そんな~』
『そうですか?』
きゅぴゅ『『えへへー』』
みんな頬を赤らめてクネクネしている。
〖ハハハ〗
うん。君たち照れ方までそっくりだよ…
『そうだ。おれたちイル様に聞きたいことがあったんです』
背筋を正すクゥ
〖なんだい?〗
クゥが真剣な顔で聞いてきた。まあ、間違いなくサーヤのことだろうね
『サーヤなんですが、どんどん元気になってると言えばそうなのかもしれませんが、元気というよりか、上手く言えませんが、出会った時より子どもっぽくなってませんか?』
クゥが心配そうに言うと
『私も気になってたんです。出会った時、命の危機にあったせいもあるかもしれませんが、もう少し理性的だったというか…表現がもう少し年上っぽかったというか…』
フゥも同じことを思っていたと話し始める。
ぴゅい『じぶんのこと、さいちょ、わたちっていってたけど』
きゅい『いまは、サーヤっていったりしてるよね?』
『たしかに。混ざってるよな』
『今はサーヤって言う方が多いんじゃない?』
うん。四人ともよく見てくれてるね。
『もちろん、今がダメと言うわけではないんです。むしろ今の方が元気で明るくて表情も明るくて、なんというか表現が真っ直ぐでいいと思うんです』
『ただ、出会って一日、いえ、すでに昨日数時間で変化があったんです。数時間で何年分かも戻ったような…』
うん。そうだね。
『サーヤの中で何かが起こってるんでしょうか?』
『このままで大丈夫なんでしょうか?』
ぴゅいきゅい『『だいじょうぶ?』』
四人は不安そうにこちらを見ている。
〖ふふっ ほんとにサーヤのことをよく見てくれているね。安心したよ〗
ふわりと主神は微笑む。
『え?それは…』
『どういう?』
ぴゅきゅ『『イルしゃま?』』
僕の言葉をどうとっていいのか迷ってるね。でも
〖大丈夫。心配ないよ〗
それだけサーヤのことを大切に思ってくれてるんだね。ありがとう。
『『ほんとですか!?』』
二人の顔がこちらに勢いよく近づく
〖本当だよ〗
ぴゅきゅ『『ほんちょ!?』』ぱたぱた きゅっ
〖ふぉ、ふぉんちょだよ〗
モモ、スイ、僕の顔潰れちゃうよ?本当だから、そんな目の前まで飛んでき来て、顔挟まないで。
『そうですか』
『良かった』
ぴゅきゅ『『よかっちゃ』』
少しホッとしたようだね。うん。だから、顔離してね。
『『あっモモ、スイ』』
ぴゅきゅ『『あ~』』しゅぽんっ
『『イル様、すみません』』
〖大丈夫だよ〗にこ
良かった。潰れなくて。それじゃあ
〖サーヤの記憶に関しては話したね〗
みんなの不安を少しでも多く取り除いてあげないとね。
『『はい』』
ぴゅきゅ『『うん』』
〖君たちが空で出会った時、まだサーヤの体と精神が安定してなかったんだよ。何せ最後の二年間は記憶にはないだろうけど体が十歳から二歳に、精神にしたって記憶があった八歳から二歳になったわけだからね。初めの内はまだ自分が小さくなっていることにも気づいてなかったはずだから、その時は八歳くらいの精神だったはずだ。サーヤが体の変化を自覚した時から体の年齢に精神が合いだしたんだよ〗
決定的な瞬間は泉に映る自分の姿を見てからだろう
『では、ほんとに大丈夫なんですね?』
『心配は無いのですね?』
ぴゅいきゅい『『ほんちょ?』』パタパタ きゅっ
〖うぷ〗
だからね、君たちドラゴンの力で顔挟まないでね?
『あっモモ、スイ』
『お顔は離そうな』
ぴゅきゅ『『あ~い』』
ほっ。良かった。
〖うん。明日の朝にはもっと二歳児らしくなってると思うよ。そもそも、そうなるようにしたんだよ〗
そう。これは僕たちがそうなるように操作したこと。
『『え?』』
ぴゅきゅ『『どちて?』』
そりゃ、驚くよね。でも…
〖サーヤは向こうの世界では普通に過ごせなかった。だから、こちらの世界では年相応に、新しく楽しくやり直してもらいたかったんだ〗
今度こそ、普通に元気に、友達と駆け回って遊べるように
『そうでしたか』
『心配することではなかったんですね』
ぴゅきゅ『『よかっちゃ』』
うん。ようやく少しほっとしてくれたかな?
〖とはいえ、時々暗い記憶が浮かび上がって来るかもしれない。その時は昨日のように助けてやって欲しい〗
僕はずっと傍にいてあげられないから
僕の分も…
『はい』
『分かりました』
きゅ『ぼくも!』
ぴゅ『わたちも!』
うん。頼もしいね。
〖ふふっ ほんとに君たちに託せて幸運だった。ありがとう。よろしく頼むよ〗
『『はい!』』
ぴゅきゅ『『まかせてなの!』』
本当に頼もしい家族がサーヤに出来て嬉しいよ。よろしく頼んだよ。