第六十一話 「崖登り」
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夜が明け、狸達とコン吉に見送られながら、しゃらく一行は砦を後にする。食料を山ほど分けて貰い、大荷物になった一行は、分かりやすいように注釈が書き足された古地図を頼りに、この広大な
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それから二晩、一行はすったもんだがありながら
「これを登れば
巨大な崖を
「・・・つったって、こんなのどう登りゃアいいんだよ」
後ろのしゃらくとブンブクが、目を点にして口をあんぐりと開けている。
「そうだな。見た所、低くなっている場所は無さそうだ。やはり自力で登っていくしかねぇか」
ウンケイが崖の岩肌を触りながら、淡々と話す。
「おいおいウンケイ! そんなの登るだけで何日
しゃらくが唾を飛ばす。
「何も全員が一緒に登る必要はねぇ。誰か一人が崖上に登って、狸達から貰ったこの綱を木に巻き付けりゃあいい」
「あァなるほどな! そんじゃア誰が行く?」
しゃらくとウンケイが一斉にブンブクを見る。ブンブクの尻尾がペタリと下がる。
崖下にて、ウンケイが下向きに構える
「準備はいいか? いくぞ」
「おう!」
「クゥ~ン」
泣きっ
「ハァハァ・・・そろそろ限界だ! 行くぜブンブク!」
しゃらくがニッと笑う。ブンブクは顔を真っ青にしている。するとしゃらくが、必死にしがみ付くブンブクを無理矢理引き
「どォりゃァァァァ!!!!」
ビュゥゥン!!! 思い切り投げられたブンブクは、物凄い勢いで崖上目掛けて飛んで行く。ブンブクは風圧で目も開けられないが、目からは涙が
「ハァハァハァハァ」
ブンブクが変化した鷹は、舌をダラリと出して、羽をバタバタと羽ばたかせている。すると、ブンブクを横風が襲うが、ブンブクは必死で羽を動かす。一方のしゃらくは、爪を崖に立てながら、崖を下って行く。
「大丈夫かよあいつ! わっはっは!」
更に下にいるウンケイも、崖上を見上げている。
「・・・」
ブンブクはゆっくりではあるが、少しずつ着実に上昇して行く。そして遂に崖上に前足が届き、ブンブクが崖を登り切る。
「ヘッヘッヘッッヘ!」
「・・・あいつまだかよ?」
崖下に戻ったしゃらくがウンケイと並んで、先の見えない崖上を見上げている。
「ずっと見てたが、落ちるならとっくに落ちて来る
ウンケイが心配そうに崖上を見上げている。
「じゃア何してんだよあいつは」
崖上で苦戦するブンブクだが、何か思いついた様にハッとし、
「お! 来た来た」
人間の何倍もの聴力と視力を有するしゃらくが、投げ込まれた綱を見つける。バシッ! やがて綱の先が、しゃらく達の少し上の岩肌を叩く。
「よォし登るか!」
*
日が暮れて空に月が浮かび上がった頃、ようやく最後尾のウンケイが崖を登り終え、三人全員が崖上に寝転ぶ。
「はぁはぁはぁ。・・・少し痩せねぇとな」
「あァ〜腹ァ減ったァ〜!!」
その隣に寝転ぶしゃらくは、舌をだらりと垂らしている。一方のブンブクは、夜風に吹かれて気持ち良さそうに目を
「はぁはぁ。・・・何はともあれ、これで
「次はどこだっけ?」
しゃらくが、寝たままウンケイを向く。
「おいおいお前が言い出したんだ、忘れんじゃねぇよ。
「あァそうだった」
しゃらくがニコリと笑い、目を瞑る。
*
夜が明け、しゃらく一行は町を目指して歩を進める。
「お、森を抜けるぞ」
先頭を歩くウンケイの視線の先、森の木々が開けて日が射している。
「やっとかよォ~。腹減ったぜェ~」
「おいおい噓だろォ!?」
少し時が経ち、森を抜けて近くの城下町までやって来たしゃらく一行だが、目の前の景色に
「・・・一体何があったんだ? 戦に巻き込まれたにしては
ウンケイが周囲を見回している。一行は周囲を気にしながら、城の方へ歩みを進める。奥に見えている立派な城は、朽ちることなく綺麗な状態である。やがて城の近くまで来ると、道の真ん中に大きな
「・・・
完