第五十六話 「ど根性狸」
「・・・
しゃらくが、自分の上背の3倍はありそうな程巨大な狸を前に、目を丸くしている。
「あぁそうだ。間に合って良かった」
「・・・そっか」
するとしゃらくは、目の前の総大将を前に安心したのか、体の力が一気に抜ける。ギョウブがしゃらくを受け止め、ゆっくりとその場に寝かせる。
「・・・ギョウブ。久しぶりの挨拶が乱暴過ぎやしないか?」
背後からの声にギョウブが振り返ると、山の様に巨大な
「ようジジイ。相変わらず無茶苦茶な事しやがる」
ギョウブがニッと笑うと、頭に葉を乗せ指を結ぶ。すると、ボォォン!! ギョウブの体が
「
「・・・フン。生意気な」
ガシィィッ!!! 巨大化した両者ががっしりと掴み合う。その勢い
「・・・おいおい何だありゃあ!? 山みてぇのがもう一匹!?」
少し離れた所にいたウンケイが、ギョウブと白尚坊を見上げて、目を丸くしている。
「ありゃ、うちの大将だ。
八百八狸特攻隊長の
「・・・へぇ、そうか。じゃあ加勢して、さっさと終わらせようぜ」
ウンケイが
「待て。俺達が加勢するのはそっちじゃねぇ」
団二郎がウンケイを呼び止める。
「は?」
「そっちは加勢なんて必要ねぇって言ってんだ」
団二郎が再びニッと笑う。
掴み合うギョウブと白尚坊の下、気を失ったしゃらくをおぶった八百八狸
「太一郎様、太一郎様」
芝三郎が駆けながら、太一郎に声を掛ける。
「・・・芝三郎か?」
「はい。ギョウブ様と戻って参りました。しゃらく君も無事です」
芝三郎の話を聞き、太一郎が安心した様にいつもの穏やかな表情に戻る。
「・・・って言うか芝三郎様!
ポン太が
「案ずるなポン太。俺の術は“
芝三郎がニコリと笑う。キョトンとした顔のポン太とブンブクは、不思議そうに辺りを見渡すと、自分達の周囲を透明の幕が囲んでいるのが見える。
「・・・す、すげぇ・・・!!」
ポン太とブンブクが口をあんぐりと開け、目を輝かせている。
「さあ、ここはギョウブ様に任せて、我々は本陣へ戻ろう」
一方で、山の様に巨大なギョウブと白尚坊が、激しく取っ組み合っている。
「・・・くっ、馬鹿力め」
白尚坊が顔を
「はっはっは! 老いたなジジイ!」
対称にギョウブの方は、余裕そうにニッと笑っている。すると白尚坊が不意に、ギョウブに向けて指を立てる。ギョウブが目を見開く。
「“
白尚坊が
「くそぉ! 老いぼれと思って油断した!」
落下するギョウブが唾を飛ばす。すると上空から、白尚坊の巨大な足が降って来る。
「
白尚坊が足を振り下ろす。ズシィィィン!!! 白尚坊の足がギョウブを踏みつける。
「!?」
しかし、ギョウブの足が少しずつ持ち上がっていく。白尚坊が目を見開く。
「潰れるかよ! 俺ぁ、ど
白尚坊の巨大な足をギョウブが持ち上げ、ニッと笑う。
「・・・フフフ。
白尚坊が
「うぉらぁ!」
ギョウブが白尚坊の足を押し返し、白尚坊が姿勢を崩す。
「お
すると後方から大声が響く。見ると八百八狸が二人、何やら巨大な物を二人がかりで抱えて駆けて来る。
「おい遅ぇぞ! はっはっは!」
「はぁはぁはぁ・・・。お頭達が先に行っちまうからだろ! 俺達ゃ、あんたの馬鹿でかい武器運んでんだよ!」
「そうか! すまん! はっはっは!」
総大将であるギョウブが、手下の狸達に
「・・・フフフ。相も変わらず、頭領にあるまじき姿だな」
白尚坊がその姿を
「やっと来たぜ相棒がよ」
ギョウブが、狸達が持って来た巨大な物を手に取る。それは、無数の
「相棒なら自分で運べよ!」
「すまん! はっはっは!」
ギョウブが再び叱られる。
「・・・ギョウブよ。貴様
白尚坊がギョウブをジッと見下ろす。
「あんたこそ、人間を毛嫌いし過ぎだぜ。確かに、昔の事で人間への
ギョウブが棍棒を構え、ニッと笑う。
「・・・フン。やはり
白尚坊がそう呟くと、背後から九つの尾が、目にも見えぬ速さでギョウブに向かう。するとギョウブが白尚坊に向かって跳び上がり、棍棒を振りかぶる。九つの尾とギョウブの距離が近づいて行く。
「“
バゴォォォォン!!!! ギョウブが棍棒振り下ろした背後で、山の様に巨大な白尚坊が血を吹いて倒れていく。すると、白尚坊の体が煙に包まれ、中から元の小さな老狐が落下して行く。白尚坊が地面に落ちる直前に、素早く回り込んだギョウブが受け止める。
「ジジイが無理すんな」
「・・・フッフッフ。・・・生意気なガキめ」
白尚坊が
「戦は終わりだ」
完