第四十二話 「八百八狸 対 千尾狐」
一方の千尾狐軍は、総大将の
「フフフ。百年ぶりだな。やはり戦は気分が
白尚坊が、目まで届きそうな程
「数でもこちらが上。武装の質もこちらが上。狸共にゃあ
「我々が勝つ確率九割。狸が勝つ確率一割。ククク。
奇妙な
「ぎゃはは! これで
「うおらァァァ!!!」
八百八狸軍の先陣を切ったしゃらくが、刀を振りかぶる千尾狐達に
「いってェェ!」
殴ったしゃらくが、痛そうに手をぶらぶらと振る。すると、吹き飛ばされた狐達は平然と立ち上がり、ニヤニヤと笑っている。
「なんて馬鹿力だ。だがこの
狐の一人が、してやった顔で着ている甲冑をコンコンと叩く。
「硬ェなァ。けど
しゃらくがそう言うと、再び狐達に腕を振りかぶる。狐達が目を見開く。
「
しゃらくの
「何ぃ!!?」
千尾狐達が目を丸くしている。
「へへ! やるじゃねぇか!」
一方その
「うおぉぉぉ!!!」
ガキィィン!! ガキィィン!! 遅れて八百八狸達の軍勢が千尾狐達と激突する。激しく刀同士を何度もぶつけ合い、火花を散らしている。
「おらぁぁ!」
ガキィィン!! 竹伐り兄弟の長男
「
竹蔵がニヤリと笑う。すると竹蔵が、両の刀を広げて構える。
「
ズバァァァ!!! 竹蔵が広げた刀をそれぞれ、自分の体の前に向けて閉じ、狐達の甲冑ごと斬り
「・・・」
一方の
「
バゴォォォン!!! 竹次が振りかぶった刀を、音が出るほど
「しまった。遅れを取った」
一足遅く、狸達に追いついたウンケイが、駆けながら
「
ドオォォォン!!! 勢いよく振り下ろされた薙刀は地面を
「こ、こいつら強ぇぞ!」
千尾狐達が、四人の強さに
「おいおい。何やられてんだよアイツら」
一方の千尾狐軍の本陣にて、椅子に腰を掛ける総大将の白尚坊、そしてその周囲を囲む六人の幹部達が戦況を見守っている。
「意外とやるじゃねぇか、あの人間共も」
幹部のイナリが、目を細めてしゃらくやウンケイを見ている。
「ふふ。やっぱりいい男だね」
「ちょっとタマモぉ〜」
幹部のタマモに、イナリがくねくねと
「ギャハハ! 楽しいなぁ! 久しぶりの戦はよぉ!」
同じく幹部の梶ノ葉が、今にも出て行きそうにウズウズとしている。するとそこへ、八百八狸の十数人が刀を掲げて、千尾狐軍の本陣へ突っ込んでくる。
「おぉもう来たぜ」
六人の幹部達が、白尚坊の前に立つ。その奥で白尚坊がニヤリと笑う。
「覚悟ぉぉ!!!」
狸達が刀を振り上げる。すると、梶ノ葉が握った拳を振りかぶる。
「
そう言うと狸達より大分手前で、ブオンと音が出る程の勢いで拳を振るう。
「ギャハハ! 楽しいなぁ!」
それでも攻撃を
「・・・くそっ! 何だ!?」
見るとただの笹の葉が、地面に突き刺さっている。背後を振り返ると、六人の幹部と白尚坊がそこにいる。しかし様子を見ると、周囲にあった物は先と変わらず、まるで自分達が訳も分からぬ方向へ突っ込んで行ったようである。
「・・・どうゆう事だ!?」
「あんた達が追い掛けたのは幻。ふふ。幻は追い掛けたくなるものよね」
タマモがニコリと笑う。すると隣のイナリが、ニヤリと笑いながら指をくいっと上げる。
「
すると地面に刺さっていた笹の葉が、宙に浮く。狸達が目を見開く。ズバババァ!! 再び狸達が笹の葉に斬られる。斬られた狸達は気を失う。
「やはりタマモの幻術と、俺の術の相性は最強だねぇ♡」
イナリがタマモの
「イヤだよぉ。こんな人前で」
すると、先ほど梶ノ葉に吹き飛ばされた狸達がフラフラと立ち上がる。
「ギャハハ! やはり根性だけはある!」
「ハァハァ。・・・目指すは白尚坊の首! 行くぞぉ!!」
狸達が、再び刀を掲げて突っ込んでくる。
「クククク。根性だけでは勝てない。もっと頭を使うべき」
幹部のキンモクがそう言うと、乗っている妙な
「おぉすげぇな。
イナリがキンモクの乗った絡繰をコンコンと叩く。
「ククク。我々には心強い後ろ
「そうだな。確かあいつは、人間共から
後ろで静かに座る白尚坊がニヤリと笑う。
完