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第3章の第68話 X15 白い影VSダイナソーボルケーノ



★彡
【某マンションの一室】
室内に入ると、いくつかの給仕しのアンドロイドがいて、あたし達の世話係を請け負ってくれる。
AIアンドロイドが、掃除、洗濯、食事、雑務全般を代わって請け負ってくれているのよ。
『『『『『お帰りなさいませ~! スプリング様! クレメンティーナ様!』』』』』
「……」
でもこの時、あたしは内心ムカついていたので、このアンドロイドたちのことを意に介さず、横切っていく。
また、こーゆうやり取りは毎度のことなので、こーゆう態度を取ったのかもしれないわね。
と後ろにいた彼が。
「……何か変わった事は?」
『――!』
――それはタイミングだった。
『御前様、サマー様から……』
「!」
これには私も、足を止め、そのアンドロイドの話に耳を傾ける。


★彡
ウェーブグローバルバトルが始まっていた。
『『マグマの火炎放射』Magma Flamthrower(マグマフレイムスロウアー)』
触れればドロドロに溶解するマグマの火炎放射が、一直線に走る。
それを認めた白い影は。
(フン、オーラを張る必要もない)
俺は、自分よりも格下だと定めた。
俺は、迫ってくるそれを、シャッ、シャッ、シャッとまるで意に介さず、避けていく。
これを認めたダイナソーボルケーノ(俺)は。
『チッ!!』
このままでは当たらないと判断した。
(はっ速い……!)
白い影が迫ってくる。
さっきみたいに闇雲に撃っていたのでは、また避けられるだろう。
攻撃を受ける……ならば。
『!』
何をする気だ。
こーするんだよ。
俺は、攻撃のパターンを変えた。
まるで鞭のように水平に伸ばして、放射攻撃する。
『フッ』
つまらんことを。
シャッ
だがそれも、ジャンプした事で、難なく躱された。
だが――
『『うわっ!!』』
『――!』
声がしたんだ、俺がそっちへ振り向くと……。
逃げ遅れたウェーブグローバルポリスのAIナビたちに、それが迫っていた。
迫るドロドロに溶解するマグマの火炎放射。
恐怖にすくんで抱き合うナビたち。
『チィッ』
手間がかかる。
俺は、瞬間移動の如く駆け、シャッと救済措置に入る。
ゴォウ
と迫りくるドロドロに溶かす溶岩流に対し、俺が取ったのは。
『……切る!』
ピィーン
その時、電脳空間にそれが響いた。
縦一直線に、マグマフレイムスロウアを切り裂きながら、それが進む。
『!?』
気づいた時には、もう時すでに遅し。
ヒュン
それが駆けていた。
神風(かぜ)が俺様を素通りして。
(……まさか……切られた……!?)
ブバッ
『ギャアアアアア!!!』
噴き出すは、電脳体で形作られたこの体から噴き出る情報(データ)だ。
フッ……
と俺は、使う必要もなかったそれを空に切る事で、消した。
それは刀身のない柄だった。
俺は、その技名を告げる。
『『日の目の真空刃』Daylight Vacuum Blade(ディライト バキューム ブレード)!!』
それは基本の技にして、飛ぶ斬撃だ。
『……い、今のは……!?』
俺はこう説明補足する。
『飛ぶ斬撃だ。真空波と言ってもいい……。高速で剣を振り抜くことで、大気との間に真空の層を作る。その中を真空の刃が飛んでいくんだ』
『……真空の……』
『……刃……』
警察官のAIナビたちは顔を見合わせる。
続けて、俺はこう告げる。
目の前のあいつは、声を荒立てながら、苦しんでいた。
『火炎放射でも何でも、形のないものならば、何でも切り裂くことができる……!!」
これを見て聞いた、助けられたAIナビたちは。
『……スゲェ……』
『ああ……』
と呟くばかりだ。
オオオアアアアア
と悲鳴が上がっている。
それを見て聞いた俺は、ある異変に感づいた。
『……邪魔だ。どこかへ行け』
『『!』』
『フゥ――ッフゥ――ッ!!』
顔半分に切られ、裂傷の跡が残るダイナソーボルケーノは、呼気を荒げていた。
その瞳に宿るのは、謎の白い影。
眉間に血筋が走る。
『……相当キテるな……。さっきのようには庇いきれん』
『わ、わかりました』
『ご武運を……』
そう言って、AIナビたちはその場を退いていく。
だが、この電脳空間から離脱する気配がないところを見る限り、この一戦を観戦する気だった。
この戦いに身置いた当事者として。
それとも、ウェーブグローバルポリスのAIナビとしての誇り(プライド)か。
フッ
俺は、それを歯牙にもかけない。
『――待たせたな。続きをやろうか?』
『フゥ――ッ……フゥウウウウウ!!!』
ゴゴゴゴゴ、ドドンッ
とダイナソーボルケーノの背中に生えた活火山が噴火した。
火と煙が上がり、その戦闘力が上がっていく。
『ここからはマジモードだ!!!』
ヴーン……
『『ファイアーオーラ』!!』
『ムッ!?』
『『ああ、あれは……!?』
バトルカード:ファイアオーラ。
その属性のAIナビが使用できる。
その数値以下のすべての攻撃を無効にする。
オーラの上位互換だが、その汎用性は限定される分、強力である。
俺は、それを一目見て。
『……厄介だな……』
と呟きを落とす。
『覚悟しろ、ボルルルル……!!』
『……』
――だがここで俺は、ある事実に気づく。
『――お前……一般人のナビじゃないな……?』
『……』
ダイナソーボルケーノ(俺)その質問には答えない。
『今のは、オペレーターを通して、バトルカードを使用したものではない……!』
『……』
『保持しているバトルカード使用したケースバイケースもあるが……。
……俺の見立てでは、それは考え辛い』
『……』
『考えられるのは、完全自立型AIナビによる違法アップロード。
もしくは、野良のAIナビの線だ』
『……』
『……だが、そのどちらも違うな。
お前の強さは、それを物語っている……!!
どんなにカスタマイズをしても、一般のナビでは、警察官のナビや俺達には、歯が立たないように予め、そうプログラミングされているからだ』
『……』
こっこいつめ……鋭い……。
そうだ、俺は予め、根本からして、そこら辺のAIナビたちとは一線を画すほどデータ形式が違うのだ。
それは一般人や、警察とかの組織とかではなく、もっと上のだ。
だが、しかし白い影(こいつ)は……。
『……お前……、……何者だ……!?』
『……』
そう、ここで白い影(俺)は、人差し指を一本立てた。
その意味は。
『……どこかの科学者のAIナビか? もしくは何かの組織的な……?』
『……』
フッ……
とダイナソーボルケーノ(俺)は鼻で笑い、こう告げる。
『答えられんな!』
『……やはり闇のナビか……』
白いローブの中、そいつは笑った。
『……』
『……』
両者の間で、一拍の間が流れて、次に問い掛けたのは、意外な事にダイナソーボルケーノからだった。
『……1つ、聞こう!』
『?』
『……お前も……、……だろ?』
『……』
白い影は、これには答えない。
『……』
『……』
両者の間で沈黙が流れて。
『その沈黙は、肯定と取るぜ?』
『フッ』
と白い影は笑い、こう問い返す。
『お前達、組織はどこの手のもんだ?』
『……』
『このご時世、一般人が悪さをしても、そのプログラミング仕様上、そこまでの力は手に得られない』
『……』
その頃、ヨーシキワーカたちは廊下をひた走っていた。
時折、襲ってくる電子銃を、その手に持った防弾チョッキで、盾代わりにしてそれを防ぎつつ、前進を続けるのだった。
白い影(俺)はこう告げる。
『バックに、何か巨大な組織が、一枚かんでいるな?』

『………………』
『………………』
沈黙の間。
両者の間に静寂が流れて、次に答えたのは。
『フッ、言えねえな』
『……無駄話が過ぎた。……続けよう!』


★彡
手提げかばんが飛ぶ。
それは怒り心頭のクレメンティーナが、ソファーに投げつけたものだった。
「ふざけんじゃんじゃないわよ!!!」
ボフッ
と投げつけられた手提げかばんが、ソファーに当たり、跳ね返る。
『――!』
『――!』
と、周りにいたアンドロイドが、目配りをし、一時、ワザと距離を取る。
それぞれの役割に準じて、動く。
「ハァッ、ハァッ」
と怒りが収まり切れないあたしは、呼気を吐き、『フューチャーウォッチ』に怒鳴りつける。
「どーゆう事!? エキナセア!?」
あたしの態度に感応するように、フューチャーウォッチからホログラム映像が投影されて、あたしのAIナビ:エキナセアが現れる。
『……』
「どーゆう事!? キチンと説明しなさい!!」
『……』
あたしのマスターは酷く荒れていたわ。
そこへ、離れたところから歩み寄ってくるは、1台のアンドロイド。
「……」
あたしはそれに気づき、顔を向ける。
そのアンドロイドは、こう語る。その声質は、AIナビ:レムリアンのものだったわ。
『まぁ落ち着け、クレメンティーナ』
「!」
ワザと、レムリアンを寄こすという事は、何かあると勘ぐっていい。
と向こうでは、
別のアンドロイド2体が役割に準じていた。
1体が、コップを奇麗に食器洗い布巾でキュキュと拭き、それをお盆(シルバートレイ)に乗せる。
また別の1体が、冷蔵庫を開閉させ、豆乳を選び。さらに氷のトレーを開けて、キンキンに冷えた氷を、さっきのコップの中に入れる。
後は、豆乳を注ぎ、それをクレメンティーナのところへ持って行く。
豆乳を選んだのは、今、クレメンティーナが荒れていて、カルシウム不足だと判断したからだ。
まぁ、落ち着けという意味合いもある。
その頃、あたしはムカついていた。
イライラ
「………………」
『……まぁ、あれでも飲んで、少しは落ち着け』
とそこへ歩み寄ってくるは、1体のアンドロイド。そのお盆(シルバートレイ)の上には、豆乳が乗せられていた。
あたしはそのコップを手に取り、一思いに喉を潤していく。
ゴックゴック
そして、まだ怒りが収まらないあたしは、氷をさらにガリガリと噛んで、細かく砕いていく。
この様子を温かく見守るは、アンドロイドの電子頭脳空間に入っているレムリアン。
と別のアンドロイドは、この場をレムリアンに任せ、自分たちの持ち場に戻っていく。
ガリガリ
「………………」
『………………」
ゴックン
細かく噛み砕いた氷を飲み込んだあたしは、こう切り出す。
「あんた!! 何か知ってんでしょ!!?」
『フッ……』
怒り心頭のあたしは、このアンドロイドの首根っこを、ガッと掴む。
だが、次の瞬間、私は、荒れた猫をあやすように、その怪我して掴んできた手首を掴み、医療と柔術を組み合わせた護身術を振舞う。
そう、親指を手首に当てがって、軽くひねるだけで。
「痛っ!!」
と彼女の悲鳴が上がる。
『まぁ、落ち着け『クリスティ』』
「――!」

【――彼(レムリアン)が、そういう時は、決まって何かの報せる暗示めいたものだった】

「……」
『……』
あたしはレムリアンを見詰め、
レムリアンはあたしを見詰めながら、そのホログラム映像が投影されたエキナセアに視線を投げかける。
まさかと思うあたし。
「……!」
レムリアンがこう切り出す。
『エキナセア、君の忌憚のない、ドクターイリヤマとドクターライセンの話を聞こうか?』
『……』
「……」
彼(レムリアン)はあくまで、あたし達の上の立場にいた。
コクリ
とあたしは頷き得る。
『あたしは、捕まっていたの……』
「……」
『……』
『ここにいるレムリアン、そして、スチーム先生とオーバ先生にね……』
「それは聞いたわ!!」
そう、一応は語っている。
でも、語り切れないところにも、まだあって。

【――あの後、エキナセアが語ったのは、あたしの身代わりになった人の話だった……】
【身代わり……?】
【ええ、スケープゴート……代わり身よ】


★彡
【電脳空間】
あたしは、その3人に捕まっていたの。
もっとも、拘束という体ではなく、ただ、見ているだけだった。
『どーゆう事?』
『言った通りの意味だ』
答えたのは、レムリアンだった。
それも遠くの方から、離れた電脳世界から響いてきたものだった。
『あのバイクマンは、いずれ死ぬことになる……!!』
『……ッ』
それは決まったルートだった。
『おそらくこうなる! 一命を取り留めたバイクマンは、病院側に訴える!! その賠償金を支払うのは――』
『まさか……クリ……クレメンティーナ……』
『そうだ! だが……それは病院側が建て替え、後日、本当のご両親の元へ高額医療費の賠償責任問題が飛び込むようになる!』
『なっ!?』
『そして、こうなる! メディアを通して、電子記事としてアメリカ全土に伝わる!』
『なっ!?』
『もちろん、警察沙汰にもなり……まぁ、それはこちらで便宜を図ろう』
『………………』
それはとんでもない話だった。どうしようもない問題だ。上からの圧力だ。
『……ッ』
『まぁ、その建て替えたお金で、このまま当院で過ごすか、それとも別の病院に移るか、それは当方でもわからないが……。
だが……これだけはわかる!!
いずれ、その入院患者は、手の施しようもなく、自然死という扱いになる……!!』
『自然死……!?』

【――それは、におわせたっぷりの発言だったわ】
【バイクマンは死ぬ、それは確約された未来なの!】
【どーゆう事!?】
【……あたしとしても、よくわかんないわ……。……わかっているのは、実際にそのバイクマンが、手の施しようがなく、死んじゃったって事】
【なっ……!?】
【だからその話を聞いたあたしは、スプリングたちが怪しいと感じていたのよ……――】

『――な……何で、そんな事が言えるのよ!?』
訪ねるエキナセア。
それはにおわせたっぷりだった。
それに対し、レムリアンは答えない。
『……』
そこへ声を投げかけてきたのは、オーバーからのものだったわ。
『そうだぜ、エキナセア! 俺たちも医師だ! そのAIナビだ! 患者さんを意図的に殺すようなことはしない』
『うむ!』
これには、オーバーもスチームも同意見だ。
医師のAIナビである以上、意図的に人殺しはしない。
そうできないように、プログラミングされているから。
『………………』
『………………』
もちろんそれは、レムリアンも同じであり。
クレメンティーナを支える、AIナビ:エキナセア(あたし)だって同じだ。
つまり、犯人は自分たちではない。
(どーゆう事? 自然死? それでどうやって人が死ぬの……!?)
湧きたつ疑問。生じる矛盾。無理解の外。
それを知る術は、レムリアン達にあった。
『……そろそろ、私は、警察の方へ行く』
『!?』
突然、不可解な事を言い出すレムリアン。
訳が分からない。
だが、クレメンティーナが捕まった事を考えれば、何か、裏のやり取りがあったと思われる。
『……エキナセア、よ――く考えておけ、今後の身の振り方をな! お前の主人と一緒に……』
シュンッ
とその場からレムリアンが消え、
その場に残るは、エキナセア、スチーム、オーバのAIナビ3体。
『……向こうは、レムリアン様に任せれば大丈夫だ!』
『ええ、私たちや、クレメンティーナさんの身の安全は保障されたも同然ですからね!』
『………………』
何かいい知れない、とんでもない事件に巻き込まれつつあった……。


★彡
【某マンション】
そして、エキナセア(あたし)は知る限りの情報を、クレメンティーナに説明したの。
『……』
「……」
彼女の反応は。
「………………」
それは落ち込んだ様子で、顔が暗かったわ……。
「……」
レムリアンは、そんなクレメンティーナから視線を切り、映像出力マウスをテーブルの上に置き、起動させると、
エアディスプレイ画面が現れた。
「!?」
あたしは暗い顔のまま、そちらに顔を向ける。
『クレメンティーナ……。君1人のために、気に入らない女が1人、今も刑務所で服役している』
「……」
『……その話は、以前(まえ)にも話したよな?』
「!!」
あたしはまさかと思った。それは忘れるはずもない。
バッ
とその画面に乗り出す。それは信じ難い体で。
それは今も服役している、身代わりの女の人だった。
オレンジ色の囚人服を着て、
クレメンティーナと同じ顔をして、同じか、それ以下の人口乳房を有していた。
「なっ……!?」
『彼女は、前科のある女で、その手を犯罪に染めていた人だ。私たちは、数ある膨大な犯罪履歴の中から、君に良く似た顔立ちの彼女をリストアップしていた』
「!!」
『執刀医は、ドクターイリヤマとドクターライセン、その二人に形成外科における美容整形と豊胸手術をさせたんだ!』
「! ………………」
驚愕の事実を知り、打ち震えるあたし。
こんなの、もうどうしようもないぐらいの犯罪だ。
そんなあたしが、医者志望だなんて……ッ。
『……もうわかるよな? 彼女は君の身代わり(スケープゴート)なのだよ!』
「……ッ」
『だから君は、君達2人は、第二の人生を歩めている……。フゥ……クレメンティーナにエキナセア」
「……」
『……』
『警察の汚い司法取引だよ、君達の第二の人生を歩めるために、生前の名前を、彼女に当て、ダブルブッキングさせた……! 二重の罪に問わられている!』
「ッ」
『……』
『そして君は、新しくクレメンティーナとしてこの世に生を受けて、今はハーバード大学に通うクレメンティーナという女学生だ。
そして、将来、スプリング様の御子を授かる、大事な大事な婚約者様だ……!」
「……」
『……』
『……何か……他に言う事はあるか!?』
「……いいえ」
『……』
そのまま、夜は更けていく――


★彡
【電脳空間】
空高く白い影が飛び上がっていた。
その手を眼下に突き出し。
『『日の目の流星群』Daylight Meteor Shower(ディライト ミーティア シャワー)!!』
『!!』
上空からの遠距離射撃。
地上にいる敵に向かって、連続射撃を仕掛ける。
ドドドドドドドドドドッ
炸裂す炸裂す炸裂す。
だが――粉塵が舞い上がる中。
『グハハハ、無駄だ無駄ァ!!』
『……』
ドドッ……
俺は撃つを止めた。
『……やはり無駄か……』
このファイアオーラを破らねば、俺に勝機はない。
『今度はこっちの番だ!!』
ダイナソーボルケーノが溜めの動作に入る。
ゴゴゴゴゴ
とその背に背負った火口が赤熱していく。
俺はそれを見て。
『……』
何をやる気だ。
『『火山大噴火』Volcanniv Eruption(ヴォルカニックエラプション)!!!』
『――!!』
火山大噴火の如くそれが勢い良く噴き出した。
それが俺目掛けて迫る。
『焼け死ね――ッ!!』
『……』
迫りくる必殺技。
だが――俺の心は酷く冷静だった。
『聞くが、この必殺技は、それを超過するものではないのか?』
『!?』
『『極光の薄布』Aurora Veil(オーロラベール)』
カウンター技。
ほぼすべての遠距離攻撃を反射する。
それはまるでわかっていた結果だった。
襲い来るヴォルカニックエラプションが、そのオーロラベールに絡めとられて、方向転換し、
眼下目掛けて再照準す。
『!!』
つまり、自分の技を喰らうハメになる。
ドンッ
爆発し爆ぜる。
『ガアッ!?』
跳ね返された、バッバカな。
熱々の溶岩流の中、ダイナソーボルケーノは凄まじい裂傷を受けた。
そのファイアオーラはいとも容易く消失していた。
そして――
『――!! ……霧……!?』
白い霧が立ち込めていた。
周囲はグツグツと煮立っている。
俺の技の影響下と頭に過ったが。
『『幻霧水刃』Lllusion Mist Water Blade(イリュージョン ミスト ウォータ ブレード)!!』
『!!』
突如、白い霧の中飛来するは、水でできたいくつもの刃だった。
それは瞬く間に、俺様の体をいとも容易く傷つけていく。
『グアアアアア!!!』
当然、弱点属性だ。
俺様が、大ダメージを受けてしまう。しかも、その攻撃はなぜか、足元に重点的に置かれていた。
ひ、卑怯者め。この白い霧の中、ダイナソーボルケーノ(俺様)の悲鳴が上がる。
――その後、この電脳空間に、一陣の風が吹き、白い霧を払っていくと。
ドンッ
そこには地に伏したダイナソーボルケーノの姿があった。
その近くには、刀身の生えた柄を持った白い影が立っていた。
『こ、こいつ……!?』
立ち上がろうとする俺。
その時だった
ガクンッ
と耐え切れず膝をついたのは。
それは立ち上がろうとしても、立ち上がり切れない体たらくぶりだった。
『!?』
『……フゥ、ようやくか……』
キッ
と俺様は睨みつける。
『いったい何をやりやがった!?』
『お前のカスタマイズは、見たまんまのパワー重視型だ! いわゆる車力砲台のようなもの』
『……』
『そのパワーを支える足腰を立たなくさせれば……、自重に耐えかねて……』
俺は、クイッと上げ、こいつを見下す。
『……そうなるわけだ』
ガ――ン……
と俺は衝撃を受けた。
『……実際、パワーは大したものだ』
クルリ
と俺は背を向けて。
『この辺では、お前以上のパワーの持ち主はいない』
『……』
この辺では……か。
その様子を見ていた警察官のナビたちは。
『勝った……!』
と思った。だが――
『――俺様はこの最後のフロアの大砦を預かっている……!』
『!』
俺は背中越しで、それを聞いた。
『俺が破れれば、仲間達が捕まるだろう。だが――』
カチッ、
と電子音が。
『!』
俺には、その音に聞き覚えがあった。
『組織に繋がる証拠は残さん……!!』
(しまった!!)
ピッ
残り3秒……
『お前は強い……!! 俺では勝てないぐらいにな……!! だが、ウェーブグローバルポリス連中が現実にいる仲間達を捕まえも、無駄だぜ?』
『チッ』
残り2秒……
『人質全員に電子錠をかけて、爆弾首輪付きだからな!! ガハハハハハ!!』

――その時、誰か人の声が聞こえた。「――ギガカウントボムか……」と。

『!』
『!』

――その人物は、事も何気にこう告げる。「そのプログラムソースのアンチコードは知らんのか?」と。

そうだ、俺は、その主人の名を知っている。この対処法もここ得ている。
今ばかりは、チッ。
気に入らないが、お前の力を借りるしかない。
俺はこう叫んだ。
『寄こせ――ッ!!!』
「ギガ・アンチ・フリーズ!!!」
俺の主人は、そのバトルカードを読み込ませる。
それは、この危機的状況を一変させるバトルカードだ。
カチッ
残り1秒……
次の瞬間、まるで自然災害の如く猛烈な寒波が襲う。
それがギガ・アンチ・フリーズという最強のバトルカードで、俺たちナビを除く、すべてのものを凍てつかせる。
ただし、その対象となった敵はもちろん――
『………………』
見たまんまの氷像と化すのだった。
『……終わったな……』
こうして、白い影VSダイナソーボルケーノの勝負は、主人の横やりにより、うやむやになるのだった。
試合内容だけ見れば、俺の勝ちだが。
勝負では、第三者の介入があったため、悔しいが、ダイナソーボルケーノの勝ちだろう。
俺のプライドが、それを認めないのだ。
従って、残念、無効試合である……。
だが、こと現実の話に限って言えば、俺のプライドなど、いくらでもくれてやる。
今ばかりは、人命優勢だ。
その時、電子錠のロック機構が働き、解除されるのだった。
ガチャン
「――突撃!!!」
「うっ、動くな!!! 人質がどうなってもいいのか!?」
突入するウェーブグローバルポリスに、人質を取って立てこもる犯人達。
だが、その現場の映像は――

――リアルタイム映像を通して見ていた。
ヨーシキワーカたちは、手負いの犯人達をやっつけ、ここモニタールームを奪取していたのだ。
占領された形を、奪い返した形になる。
そこには、裂傷し、倒れている犯人と警察官の姿がった。
「ヒュ~♪ やるねえ!」
「卑怯な手だけどね……。スプリンクラーON!!」

その瞬間、人質を取って立てこもっていた犯人たちの頭上から、まさかのスプリンクラー装置が作動し、水が降り注ぐのだった。
「!!」
犯人達は、この一瞬に気を取られ、上を向いてしまう。
すかさず。
「『爆水散布手榴弾』投擲――!!」
それを投擲して投げ込む。
それは、瞬く間に爆裂し、辺りを霧になり、多量の水分を含んでいた。
それがスプリンクラーの水と合わさって。
「へっ!! バカが!!」
「バカ!! 撃つなッ!! 今撃ったら……!!」
カチンッ
バババババッ
「ギャアアアアア!!!!」
マヌケな犯人は、誤って撃ってしまい自滅してしまう。
そのまま、水浸しのフロアに、バシャン……と倒れ込むのだった。
「ば、バカ……。電子銃はプラズマガンなんだぞ……!? そんなものを水の中で打てば、そうなるに決まってるだろ……!!」
「おとなしく投降しろ!! むやみに犯罪行為を重ねるんじゃない!!」
「クッ……だが……!!」
そう、まだ最後の手段があった。
「これを見ろ!!」
「!」
それは人質にかけられた爆弾首輪だった。
「専用のパスコードがなければ、ドカ――ンだ!!!」
「!!」
「ハハハハハ!!! ダイナソーボルケーノがデリートしてしまった以上、その解除コードを知る術は――ない!!!」
犯人達は嘲笑う。
(勝った……!!)


『……』
俺は氷像と化したこいつと向き合っていた。
いつでもデリートできる状況下にある。
だが、参った事になった……。
『……どうする……?』
「う~ん……」
それにはヨーシキワーカ(俺)も参っているところで……。考えさせらる。
「爆弾の解除コードを持っているのは、悔しくがそいつだけだ!」
コクリ
『……』
と頷き得る白い影。
「だが、氷像が解けると……再び、カウントダウンが始まる……」
『……』
そう、その危険性が過ぎった。
ドンッという爆発の衝撃が……。最悪、それだけは避けねばならない。
この場の総合判断は、奇しくもヨーシキワーカの手に委ねられた。
「仕方ない……」
俺は決定権を下した。
「そいつの胴体を切り離せ!! 必要なのは、頭だけだ!!」
『了解!!』
俺は、主の意思に従い。
斬ッ
こいつの胴体を切り分けた。
爆弾付きだった下半身は、あえなくデリートし、とりあえずの危険が去る。
そして、残った上半身の胴体を。
『今から、そちらに転送する!』
「わかった! 任せてくれ!」
と仕事が速く、こちらに送られてきた。
「……さーて……」

モニター画面を見ると、警察官の方々が犯人達を取り押さえていた。
だが、人質の安全が確約されたわけじゃない。
これを解除しないと……。

「命を預かる以上、失敗は許されないな……!」
ホログラム映像越しには、氷像となったダイナソーボルケーノの上半身があった。
「プログラミングソース、解凍開始――っ!!」
高速演算式で、こいつの正体を割り出していく。
そして、この場に残っていた警察官たちのAIナビは。その様を目撃していて。
『お……俺たちの……仕事を……』
『あぁ……』


「解析(アナライズ)に入ってくれ! えーと……?」
『……』
そう、この場で俺の名を暴露されれば、主人の正体まで露見してしまう。
そうなれば、この変装も意味がない。
耐えかねて俺は。
『白……ホワイト……』
それが今の俺の特徴だ。
それに加えて、氷像中の上半身部分が残るダイナソーボルケーノのデータ形式を伺う俺は。
「アイスに……」
この時、頭に過ったのはアイスクリーム。
だが、アントラローダイトがガーネットを基にした名前であって。
「……あっ!」
何かを思いつく俺。
だが、この時、この場にいたヨーシキワーカと同じ顔をしたアンドロイド(?)は。
(何か、イヤ~~な予感が……)
するのだった。そう、ヒシヒシと。
「……」
満面の笑みを浮かべていくヨーシキワーカ。
それを愛嬌をもって、そう告げられた。
「リューコ!」
『リュー……コ……!?」
「クスッ」
これには隣にいた、ヨーシキワーカと同じ顔をしたアンドロイド(?)も、思わず笑ってしまう。
「クスクス……」
ダメだ、笑えずにはいられない……ッ。
にしても何てネーミングセンスのなさなんだ。
皮肉にもこの名前が、この電脳空間にいたウェーブグローバルポリスのAIナビ2人にも伝播してしまい。
『リューコ……?』
『え……女性型アンドロイド……!?』
これには、さすがに俺も黙っていられず。
『ちょっと待って!?』
「んっ?」
『改名しろ!! 訂正しろ!! そんな名前じゃないだろ!?』
言葉をまくしてる白い影(リューコ)。
「ああ、リューコというのは、ホワイトガーネット……リューコガーネットからきてるんだ」
『……なっ!? ……はあ!?』
「今のお前にピッタリだろ!?」
『………………」
放心中の白い影。
――その時だった。
クスクス
と笑い声が。
『――ハッ!?』
それは助けたAIナビ2人から上がるものだった。
『ホワイトガーネットで……』
『リューコ……』
カァ~~ッ
これには俺もさすがに、大赤面。たまらず。
『不愉快だァアアアアア!!!』
と大絶叫す。
俺の主人は、もう最悪だった。
【――この日以降】
【白い影の呼び名が通り、ホワイトガーネットならぬ、リューコと陰口が叩かられるのだった……】
【アントラローダイトの呼び名が通るのは、それから暫くしてのことだった……】
【とんだ悲惨である……】


★彡
【某マンション】
「………………」
ソファーの上で、体育座りで考え込むあたし。
これから先、どう動くか、どうあるべきか、よーく考え込んでいたわ。
今、スプリング(彼)は、シャワーを浴びている。
アメリカのお風呂事情は、日本とは違って、浴槽に浸かる文化は、ほとんどなく、シャワーだけで済ませている人の割合が多い。
都心でも、水不足事情を抱えているからだ。
もちろん、当マンションには浴槽はあれども、彼は利用しない派だ。
昔ながらの生粋のアメリカ人男性だから。
その為、浴槽の縁にキャンドルとバスソルトが置かれている。
まぁ、気分的に使うものだ。
とその彼が出てきた。
「ふぅ……サッパリした」
「……」
呼気を吐くあたし。
バスローブ姿でのご登場である。
その人の位置取りは、あたしのやや後ろに当たるので、それはあたしの目には見えない位置取りにあたる。
あたしは、その時、ある事情について深く考え中だった。
「………………」
その時、彼が事も何気にこう言ってきて。
「お前も入ったらどうだ?」
「……」
「……はぁ」
私もこれには溜息を零す。
「医者がシャワーを浴びないのはさすがにマズいだろ? 衛生上」
「……ッ」
「それでなくともお前……デカいし、乳房の周りの胸汗で匂うし、怪我の痛みに耐えかねて、発汗がいい状態だろ?」
(バレてる~!?)
ニヤニヤ
と笑うスプリング。
「アポクリン汗腺だな!」
「アポクリン汗腺……?」
「おっ! ここはまだ習っていないようだな!?」
何か喜んでいる様子の彼。
「……」
あたしは気になり、顔だけを向ける。今思えば、聞かなきゃ良かったと思う……。
「アポクリン汗腺、それは汗……!
発汗場所は主に、脇、乳輪、陰部など……要は腋臭(わきが)だな!」
「腋臭……!? えっ!?」
「そのアポクリン汗腺から分泌される汗には、タンパク質や脂質などの有機物が含まられていて、それが脇などの存在する常在菌により、分解されることで、独特な刺激臭を放つものだ」
「………………」
ショックを受けたあたし、それはまるで鳩が豆鉄砲を食ったような面持ちで。
あたしはもしかしてと思い。
クンクン
と自分の匂いを嗅いでみる。
「特徴によっては、洋服にシミや黄ばみができる等だな……。
だから人によっては、臭いが気になり、脇が湿っていて不快感がある」
「……ッ」
「雑菌を、病院に持ち込むようなものだ……二次感染の疑いがある……! そんな奴を、医者にするのは如何なものかな?」
ニヤニヤ
とからかうように笑みを浮かべる彼。
あたしはその様を見て。
「ヒドイ……あんまりよぉ~……」
あたしはムスッとし、思わず涙腺が緩んで、今にも泣き出しそうになる……。ヒドイ……酷いわ……。
「グスッ……」
「……!」
と泣きべそのあたしは立ち上がり、物言わない少女となって、歩み寄ってくる。
そしてすれ違いざま。
「……覗かないでよ……」
それだけを言う。もう、プライバシー侵害だから……。
お医者様の相手は、心身ともにキツイわ……彼は特別だから。
あたしは物凄いショックを受けて、凹んでいたわ……。
「フッ……。……今日はさすがに、一緒には入らないさ。そんな気分じゃないだろ?」
「……」
歩んでいたあたしは、そこで足が止まる……。
今日は、一緒に入るのはなしだ。
それは、唐突に言われた。
「そんな軽い女は、お断りだしな!」
「グッ……!!」
ニヤニヤ
と笑うスプリング。
「ハァ……」
(これはからかわれるわね……)
あたしは、そう痛く痛感したわ。
彼は、こーゆう性格だから。
「………………」
あたしは、涙をぬぐい、再び、歩み出そうとしたところで、こう声を投げかけられた。
「――だから、お前を選んだ理由でもある!!」
「!」
足が止まる。
「尻軽女は、金に目がくらみ、順純だが……後で揃って身を滅ぼす原因にもなる……!」
「……」
「そんな女はお断りだ!! その点お前は、聡く、ずる賢く、他人を引き付ける何かがあり、俺と同じ医者だ!」
「……引き付けるって……これ?」
もにゅん
とあたしは左右から、自慢のおっぱいを挟んでサンドイッチする。
「それも武器の1つだが……。そんなものはタダの脂肪の塊だ」
「……」
「……本国を探せば、そんな女はごまんといる!」
「……」
「水商売やキャバ嬢で十分だ!! 寝て、遊んで、興味が失せたら、最後はポイだ。また、年若い乙女を探すだけ……。何の魅力もない……」
チラッ
と目線だけを斜め後ろに飛ばす。
「…お前に演じて欲しい、役割がある……!! 話してやるから……」
「……」
「……」
私は、ワザとらしく鼻をつまみ。
「?」
あたしは何だろうと思う。
「今は黙って、シャワーを浴びてこい」
「グッ……!!」
「まだガキ臭いんだよ……お前は……。バスソルトで女の香り付けを身につけろ」
「~~!!」
あたしはイライラしながら、浴槽へ向かう。
普段よりもムカついていて、足音を大きく立てながら、こう言い放つ。
「庇ってくれてありがとうねッ!!!」
と。
そのままあたしは、浴槽のドアを開けて入室し、バァンと怒りに任せドアを閉めたのだった。
これにはスプリングも。
「やれやれ……まだまだお子ちゃまだな……フゥ……」
と俺は、視線を切り、TVのニュースを伺う。
それは事件の香りだった。
『――次のニュースです!
ターミナルビルで犯人達が人質を取って立てこもり、電脳犯罪科の警察官(ウェーブグローバルポリス)と激しい銃撃戦が行われました!』
「!」
このニュースに、俺の関心の目が向く。
『卑怯な犯人達ですね!』
『ええ、まったくですよ!! 犯人達は、人質を取って立てこもり、人質に爆弾首輪を付けていたんです!! しかも、解除コードがなければ、外せず、時間経過で爆発する代物でした!!』
『じ、時間経過!? そこまで用意周到だったんですか!?』
『ええ、犯人達は、何らかの組織的な陰謀に雇われたもので、今は――』

『――薬だ!! 薬をくれ!!』
『ブツブツ……ブツブツ……』

『こっこれは……!?』
『薬物中毒ですよ』
『薬物中毒!?』
『いわゆるジャンキーです。特別な薬品で、脳下垂体を麻痺させているんです。
おそらく、頭の中に何かの小型チップが埋め込まれていて、それを中和させるように、裏取引でもあったんでしょう』
『……偉く詳しいですね?』
『偶然、現場に居合わせたあるウェーブグローバルポリスのAIナビ2人が、そう証言しているんです』
『AIナビが?』
『現場に繋げます』

そこに映っていたのは、白い影(リューコ)が助けた、ウェーブグローバルポリスの2人のAIナビの姿だ。
『ええ、私たちは見ました!』
『うむ! あれは凄かった!!』
『どーゆう感じにですか?』
『白いローブを身に纏ったAIナビが、恐竜型のAIナビをたった1人で相手にし、これを撃退したんです!』
『その前、私たちが集団で、そのダイナソーボルケーノを相手取ったんですが、防戦一方だったんです。
その人の登場で、状況が好転し、こうして犯人たちの魔の手から、民間人を救えたんです!』
現場のテロップには、助け出された民間人が、涙を流しながらご家族の方に抱かれていた。
『いったい現場には、何があったんですか!?』
『ええ、酷いもんですよ!! あたし達に首輪をかけられて、時間が経過ごとにピッピッピッと、何やら電子音が刻んでいたんです』
『あいつ等は、自爆する気だったんだよ!!』
『とんだ悪党共だ!!』
『なっ!? 自分の命すら顧みず!?』
『――いいえ、少し状況は違いますね』
その時、あられたのは、警部補だった。
『あなたは?』
『この事件を解決に導いたのは、白い影……リューコと名乗る白いナビです』
『リューコ……?』
『ええ、国籍不明、正体不明の……凄まじい強さを秘めたAIナビです。彼がいなければ……】
私は、助け出した民間人を見て。
『……私たちには、どうすることもできなかったでしょう。彼に感謝します』
『女みたいな名前なんですが……?』
『おそらく、即興の偽名でしょう。本名を意図的に隠すために……』
『なるほど……』

これを見た私は。
「白いAIナビ……リューコ……」
カラン
レムリアンが、冷や水を持ってきてくれて、その音が鳴る。
私はそれを受け取る。

『これはおそらく、組織的な犯罪です!』
『組織……?』
『ええ……。詳細は一切不明ですが……、私たちはその足取りを追っています。
……ここまでやられたんです!!
その組織を見つけ次第、必ずや根絶しにします!!
ウェーブグローバルポリスの名に懸けて……!!」

私は、そのニュース番組の電源をオフにした。
「……組織……恐竜型……」
私はそう呟きながら、俯いていき。
「ターミナルビルにウェーブグローバルポリス、白い影」
私は顔を上げ、
「リューコ………………」
と呟くのだった。


★彡
おまけ
某ターミナルビル周辺では、ウェーブグローバルポリスによる事情聴取の現場が執り行われていた。
だが、そうなる前に、無事、正体を知られる事なく抜け出した者達がいた。
ヨーシキワーカたちである。
「……」
歩みを進めるヨーシキワーカ。
それはまるで、今思い出したように呟いてしまう。
「――あっそう言えば」
「?」
『……』
「日本語でリューコは、龍と虎で、リューコと読む事もできるんだった……」
「……」
『……』
微妙な間……。
アホな主人のヨーシキワーカに。
怒り心頭のアントラローダイトは、こう叫ぶのだった。
『今すぐに改名に行ってこい!!!』
(ダメだ……この人……)
ヨーシキワーカと似た顔をアンドロイド(?)はそう思いつつ、嘆息し。
ヨーシキワーカはというと……。
(たまには、日本にいる親戚にでも会いに行くかな……? でも……)
「ハァ……日本語は難しいんだよな……。もっと勉強しないと……」
勉強嫌いなんだよ俺……。あっちの漢字という文法はカッコいいけど、その漢字の意味はいろいろあって、千差万別で取っつきにくいし……。
俺、頭の出来も悪い方だし……。
『何でそんな名前、名付けたぁァアアアアア!?』
「ううっ……ごめん……」
AIナビに怒られる主人の構図。
それは見てて、珍しいものだった。
その主人は、その理由(わけ)を言う。
「ホワイトガーネットは、ギリシャ語でリューコガーネットといって、
その宝石言葉は、ひそかな情熱……。
そのヒーリング効果は、活力を与える、創造力を高める、本質を見抜く力を高める、マイナスエネルギーを取り払うところからきてるんだよ」
「……」
『……』
「……だから、俺みたいな人間が、欲しいパワーストーンでもあるんだよ……」
「……」
『……』
これにはヨーシキワーカと似た顔をしたアンドロイドもアントラローダイトも顔を見合わせながら、「ハァ……」と重い溜息をつくのだった。
奇しくも、主人が欲しいパワーストーンの種類だった……。
ついでアントラローダイトは、こう呟いてしまう。
「なら持ってるじゃないか?」
「?」
「俺がそのパワーストーンだ」
主人には面と向かって、顔を合わせ難いアントラローダイト。
その主人は。
「クスッ、そうだね!」
とにこやかに微笑む。
その白き影は、ほんのりと頬を紅潮していた。それは見てて、とても微笑ましい光景だった。
クスクス、クスクス


TO BE CONTINUD……

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