第五十二話 「八尾と九尾」
「ギャハハハ! ぶっ殺してやる!」
「な、何なんだ!?」
「・・・狐の幹部はどいつもこうなのか?」
「まずは、どちらから死にたい?」
八尾が、着ていた
「俺からだ!!」
二人がそれぞれの武器を、八尾に向けて勢いよく振り下ろす。
「ハハ!」
ガッキィィン!!! 八尾が長く伸びた
「何!?」
怪力自慢の二人が、いとも
「・・・っ!?」
ウンケイが竹蔵の方に目線を移す。刹那、その死角から八尾の蹴りが迫る。ガァァン!! ウンケイは
「・・・くっ! なんて速さだ」
ウンケイが、竹蔵の吹き飛んだ方へ目をやると、竹蔵は地面に倒れている。そして目線を八尾に移すと、八尾はニヤニヤと笑いながらこちらへ近づいて来る。
「ほう、いい反応だ」
八尾が拳を鳴らす。その後ろを巨大な八つの尾が、ゆらゆらと揺れている。
「・・・相手に不足なしだな」
ウンケイがゆっくりと立ち上がる。
「まずはお前から片付けるとしよう」
八尾がそう言うと、目にも止まらぬ速さで向かって来る。ウンケイは腰を落として薙刀を構える。すると八尾が空中に跳び上がり、両手の鋭爪を振りかぶる。
「ギャハハ!」
「“
ウンケイが薙刀を振り上げ、八尾の
「“
ウンケイが薙刀で八尾を突く。八尾はすかさず両腕で防ぐが、その勢いに押されて後方へ吹き飛ぶ。しかし、飛ばされた八尾は容易く着地してみせる。
「ふん」
八尾がニッと笑う。ウンケイの突きを受けた両腕からは、血の
「・・・へこむぜ。
そう言うと、今度はウンケイが薙刀を片手に、八尾に向かって駆け出す。八尾が向かって来るウンケイを
「“
高速で浴びせられていくウンケイの攻撃に、八尾は反応出来ているが、ただそれを防ぐだけの防戦一方になっている。
「チッ!」
八尾が思わず、ウンケイから距離を取ろうと後方へ跳び上がる。しかしウンケイもそれを逃さず、八尾を追って宙高く飛び上がり、薙刀を振りかぶる。
「“
ドオォォン!! 凄まじい勢いで振り下ろされた薙刀だが、八尾が再び両腕でそれを防ぐ。
「何!?」
「ハハハ! 面白くなって来た!」
八尾がそう言ってニタッと不気味に笑う。
「
千尾狐軍の本陣にて、武装した狐の一人が膝を着いて頭を下げている。その前に
「ご、ご報告致します。・・・幹部のタマモ様、キンモク様、そしてイナリ様も、・・・
狐が冷や汗を垂らしている。
「・・・」
しかし報告を聞いていた白尚坊は、まるで分かっていたように、表情を変えず
「・・・い、
狐が恐る恐る顔を上げる。
「・・・フン。やはり若い
険しい顔をしていた白尚坊が、
「どれ。・・・
白尚坊が、目まで届きそうな程口角を上げて笑う。すると、突如白尚坊の体が煙に包まれる。やがて煙の中から巨大な影が出現し、その影がどんどんと巨大化していく。そしてその大きさは、月に手が届きそうな程の大きさになる。
「・・・な、何だあれは・・・?」
あまりの巨大さに、戦っていた狸と狐達が目を丸くし、口をあんぐりと開けて見上げている。
「どわァァァ!! 何だありゃア!!?」
地面に大の字になり、傷の手当てを受けていたしゃらくが、
「おいおい
千尾狐幹部の八尾と交戦中のウンケイも目を丸くしている。
「ハハハ! 白尚坊様が
八尾も巨大な影を見上げ、ニヤリと笑う。
「グオォォォォ!!!!」
大草原を
「まずい! 逃げろぉ!!」
八百八狸はおろか千尾狐達までが、戦いを辞めて逃げ出す。
「・・・出て来よったか」
逃げて行く狐狸達の中を立ちすくむ太一郎が、眉を
「
しかし中には、逃げずに倒そうとする狸達も大勢おり、九尾の白狐に向けて弓矢を放っている。
「・・・グルルル。
すると九尾の白狐が、巨大な腕を振り上げる。ドッガァァァァン!!!! 振り下ろされた巨大な腕は、狸達を
「あれはまずいだろ! でもどうする!? いや考えンな!」
手当てを受けたしゃらくが、九尾の白狐の元へ駆けて行く。
「ハハハ! 大将がさっさと決着を付けろってよ」
八尾がニタッと笑う。
「あぁそうだな。俺もさっさとてめぇを片付けて、あの化け物退治に行かなきゃならねぇ」
ウンケイもニヤリと笑い、薙刀を構える。一方のしゃらくが九尾の白狐の元へ
「しゃらく君、力を貸してくれるか?」
「あたりめぇだ!」
完