愚者の開拓記

☆彡
【現場を見ても……、そのルールがわかんないじゃ、その仕組みなんてわからない……】
「――その後、どうなったのクリスティさん？」
そう、声をかけてきたのは、アユミちゃんだったわ。
だから、あたしはこう言ったの。
「……覚えてないわ。どっちが勝ったのか……」
「え……？」
「だって昔の事よ？　アストル選手がそのままストレート勝ちしたのかもしれないし、
それとも、その対面の相手の選手の方が、劇的な勝利を納めたのかもしれない」
「何で覚えてないの？」
「う～ん……だってあたし……」
「……」
「……」
ゴクリ……
と生唾を飲み込むアユミちゃんに僕。
「そのウェーブグローバルカード、やったことないも～ん！」
ガクゥ……。
と意気消沈するあたしにスバル君。
クリスティさんの話はこう続く。
「やった頃がないんだから、そんなルールなんてわからず、どっちが勝ったのかよくわかんないでしょ？
周りは騒ぎ立てていたようだったけど……！
その当時、あたしは外野よ外野……！？」
「そ、それもそうだね……」
「現場を見ても……、そのルールがわかんないじゃ、その仕組みなんてわからないよね？」
「ハァ……気になるなぁ……もう」
「うん……」
「……」
これを聞き、あたしは汗々だったわ。
ごめんねぇ2人とも、あたし、そのゲームのルールなんてよくわかんないのよ。
「――あっ！　だからかぁ……！」
「？」
ヨーシキワーカさんの言いたいことは、恐らくこうね。
「その昔の会社を辞めた年。
昔の会社が困ってて、その内部犯の1人が、気を利かせて電話を取り次いでまわり、
それが職業訓練校の講師、ドクターイリヤマ達の耳に入り、今回の事件を企てていったのは……！！
だから、職業訓練校内でも、そうした人の噂が立っていたわけね……！？」
あたしは、そう、ヨーシキワーカさんの読みを考察する。
「それって、ヨーシキワーカさん！？」
「ええ！　……その流れで半年が経ち、ミシマさん達の耳にも入り、責任と借金漬けの話に結びついちゃったわけね！？」
「じゃあ、そのウェーブグローバルカードのデュエル結果は……！？」
「ええ、ドクターイリヤマたちの犯罪歴を明かす、カギになる訳ね。
もう、ホント、シチョウ返しじゃない！！」
シチョウ返し、それは囲碁で使われる言葉だったわ。


★彡
【勝者トヨボシ選手】
『『エグルス』でトドメ！！』
【――それはL・レグルス・スバルのエナジーア変換した新たな姿だった――】
ドンッ
光りが凄まじく、そのシルエットでしか伺えない……。
1つだけわかる事は、そう、強力無比な一撃が決まり、この勝負、勝者は当然――
『――勝者（ウィナー）！　トヨボシ選手！！　＆（アーンドーー）エグルス！！！』
勝利者の名を宣言するAIナビ：ボード。
そして敗者は――
『――クソッ！！』
ダンッ
と悔しさの余り、盤上を叩くアストル。
『まさかあそこであんなカードが出てくるとは……ッ！？』
あんなの予想外過ぎる。
『……最後に勝利の女神が微笑んだのは、……スバルだったようだな……』
『……』
【それは映画の結末を語る一部始終を物語るものだった――】
『賭け事（アンティールール）だ！　教えてくれ……そのタカハシ先生の話を……！』
『………………』


★彡
【ハーバード大学姉妹校の職業訓練校　その修了日】
自動扉が開き、設備管理科を預かる、日本から来日した特別講師のタカハシ先生が出てくる。
『――オイッ！！　イリヤマ先生！！　これどうするとや！？』
『……何の事だ！？』
『とぼけるな！！　お前があの子が本来持つはずだった免許の話を取り消して、代わりにお前が気に入った子に持たせたんだろうが！！
これどがんすとやッ！？
今職員室でも騒ぎになっているとぞ！！
消防試験研究センターから職業訓練校（ここ）に取り次ぎの電話があって、こんな不正周りでも許さんぞ！！
今な、周りの会社にも伝わって回っているとぞ！？
こんなの有り得んぞ！？
……聞いたぞお前が、あの子のテストの点数改ざんしたって！？
あの子、ここで何も持たないまま、出て行くことになるやろうかッッ！！
どがんすとや！！　お前ッッ！！
たった2問のハズレだったのに、何だってこんな事したとやッッ！！！』
『！？』
それは正しくヨーシキワーカ（俺）の事だった。
バッ
あそこにいる生徒の1人、タ……なんとかを見る。
ドクターイリヤマに気に入られた生徒の3人のうちの1人だ。
『ハァ、何の事だか……』
『しらばっくれるな！！　イリヤマ先生！！
お前さんは前々からそうだったな！？　何事も問題で済ませようとするし、もうこんな事、問題事で済ませられんぞ！！！
わかってとやお前！！』
『……』
『何なんだいったい！？』
『えっ！？　どーゆう事！？』
『なんで2人が、ここでこんな騒ぎが起きてるんだ！？』
『先生同士だろ！？　いったい何が目の前で起きてるんだ！？』
所々で、上がる生徒達のそうした声。
『……』
『……』

【――ドクターイリヤマとタカハシ先生は、そこにいた生徒達の様子が気にはなりつつも……】
【さっきまでの大きい声とは打って変わって】
【普段よりは小さく、怒気のこもった声で話したんだ】
【小さい声で……？】
【ああ、どうにもか細い声だった……聴き取り難いほどの……】
過去と人の声と、
未来のクリスティの声が、ここで関連（リンク）する。
【2人ともマスクをしていて、声も小さく、聴き取り難いほどのか細い声だったらしいわよ】
【ヨーシキワーカさんですら後ろの席にいて、聴き取りづらく、所々、声が抜けていた……んですって】
【だから、聴こえ難かったか……そもそも聴こえてないところもあったから、訳がわからなかったんですって……】
【……じゃあ何で！？　そんな奇跡が……！？】
【う～ん……記憶を振り返って、メモ帳に字を打っている最中に、偶然にも思い出そうとしたそうよ】
【守護霊（彼女）さんの力も大きいんだって……、良くはわかんないんだけどね……】
【カノジョ……？】

『――前にお前が受けもっていた生徒さんがいただろ！？
ここを辞めていった生徒の親御さんから、こっちに電話がかかってきてな！！
お前たちが、電話で取り次いでまわり、周りで騒ぎが起きてるんとぞ！！
いったいいくらそこから『盗り立てたていた』とやッッ！！！
こんなの周りでも騒ぎになっていて、事態鎮静化に周りでも必死に動き回っているとぞ！！
そんな事、そもそもなかったとするために！！
お前、あの子にいったい何したとや！？』
『フンッ、対応に出てきたのは親だけなんだろ！？　本人が出て来ない以上は、話にならん！！　何の証拠も残っていないしな！！』
『おっお前は……！！』
『フンッ、何も問題はないって、前々から言ってるだろ？　安心しろ、これは大した問題じゃないからな！』
『阿呆ーッ！！！　現に騒ぎになっているだろうが！！！　あの子思いつめて何しでかすかわからんぞ！？　今親御さんもな、警察署の方に行って、被害届け出しとるとぞ！！　わかってるとや！！」
『なら、その被害届も取り下げてやる！　俺から周りに伝えて、警察の方で取り下げるように……便宜を図ってな！　こっちには伝手が多いんだし、お前も助かったな！？』
『……クッ！　……こんな事、もう周りでも許されんぞ！？』
『フッ、何も証拠が残ってないだろ！？　周りで電話を取り次いでまわったんだからな！』
『おっお前等、そ、そうやって……だから何も証拠が……。……ッ、いったいいくらぐらい盗り立てていたとや！？　今まで！？』
『ざっと2億（1515151米ドル）から3億（2272727米ドル）ぐらいだな？』
『……それもわかっている範囲でだろ……？　ホントはそれ以上だろうが……ッ！！』
『……』
『……わかった、もういい……これが最終警告だからなッ！！』
『……』
『もうこっちも何も手伝わないからな、イリヤマ先生！！　あんたが1人で、1つ1つ揉み潰していくんだぞ！？
もう周りで取り次いでまわって、騒ぎを起こすんじゃなか！？
もうこんなになるまでやって、『死亡届』まで出ているんとやっけんの！！　……あんたはもうずいぶん昔の事で、忘れとるようだけど……。
……ッ、もうこっちは、何も手伝わないけんなッ！！」
『フンッ、必要ない。勝手にあっちがやった事だ』
『その言葉忘れるなよ……！　もう周り中で火の手が上がってるんだからな……！？
さすがにもう、あんたを、本校でも庇い立てできんからな！？
せっかく優秀な男が入ってきたとに……こんなにして……。
何が優秀なもんか……！！
俺とあの人で、ここを建てたというのに……。
ハーバード大学姉妹校のメンツとプライドをここまで潰して……！！
どうケジメをつけるつもりとや！！　あんたは！？』
『フンッ』
『もう言い知らん！！　後はお前達で勝手にやれ！！　どうなってもこっちは知らんからな！！』
そう言うと、自動扉の方へ向かっていき。
自動扉が開いて、タカハシ先生は、この場を去っていったのだった……。
『……フンッ、お前達もあの先生が何を言っていたのか、よくわからなかっただろ！？』
『……』
『ええ……』
『はい……』
『あんなに小さい声で、こっちも聞き取りにくて……』
『フゥ……それでいい。
最近あの先生も、ボケてきたんだよな……。いったい何を言ってるんだか……。
あれはもう長くはないな……。老い先短い人生ってやつだ……』


★彡
アストルはこう語る
『――そう語ったそうだ。そのタカハシ先生とドクターイリヤマの会話は……。
それを見聞きしていたのは、その年の修了生（生徒）さんだった。
……俺のところに入ってきた情報は、まぁそんなところだ……。！？』
その話を見聞きしていた未来のスバルは、何事かを考え込んでいた。
『ざっと3億（2272727米ドル）から4億（303030米ドル）……。
しかも『死亡届』付か……。
人まで自殺まで追い込んでいる話は、あながち誇張じゃなかったわけか……』
『？　その話はどこで？』
『あぁ、実は、その話には続きがあってだな……』


☆彡
過去から現在に戻り、クリスティさんはこう語る。
「――ヨーシキワーカさんの手掛けた小説を見る限り……。
その後の話なんだけど、ヨーシキワーカさんは、後ろの方の席にいて、前の方で……――」


★彡
『――辞めたくても辞められないんだよな……下手なパチンコスロットや競馬より、ずっと効率や金回りがいいからな！』
『んんっ！？』
『あの、イリヤマ先生……ここ等辺に競馬場なんてありましたっけ……！？』
少なくともこの周辺にあるのは、パチンコスロットだけで、競馬場の、馬の字すらない……。
『あぁ、あるのはここからずっと先だな……！
だが『似たところ』が近くにあってだな……！
偶然にもそこは、今、この教室にいる中で、
……そこにいる頭の出来のいいやつの親父さんが務めている会社だ！』
俺はあいつの方を向く。

【――競馬場のように、掛け金が倍になって返ってくるところ……。それは馬でないなら、船】
【そう、競艇場に他ならないのよ！】
【マイアミにはね、白い砂浜、青い海、そして金髪のお姉様方がいて、選り取り見取りなんだから！
【これほど競艇場に適した地域は他にないでしょうね】
【そして――】

『……あれ？　それってもしかして……！？』
『……』
一部の人達の視線が――後ろの方で、下を向きながら勉強をしている、俺（私）を差してきた。
『！』
（他人のフリ他人のフリ……）
人知れず俺（私）は、そうした厄介事が嫌いなので、関わらないようにしていた。
一定の距離を置く俺（私）。
フゥ……
と嘆息すイリヤマ先生。こう、皆に告げる。
『……あぁ、あそこで1人で勉強しているあいつの父親だ』
『……やっぱり……』
僕の勘は当たっていた。
『……どーゆう人なんですか！？』
そう、言葉を投げかけたのは男性だった。
イリヤマ先生は、こう答える。
『さぁな……俺もあったことはないし……どーゆう人なのかはわからん……！
その人は、『電験三種に相当する』Unlimited Electrical Contractor（アンリミテッド・エレクトリカル・コントラクター）持ちで、
俺が当時持っていたような給水配管工の免許より、ずっと上の位に当たる人なんだ……！』
『という事は、頭がいい！？』
『あぁ、そうだな……！　逆立ちしたってそーゆう人には頭が上がらない……！　そもそも上の役職が違うからだ。……金（これ）がな！？』
米ドルマークを指で作るイリヤマ先生。
それを見た生徒達は。
『へぇ～……』
と感心の思いだった。
続くイリヤマ先生の言葉は。
『できるならお前達も、ここを出て行った後、あいつのように同じ勉強をして取った方がいいだろうな！？』
『でも、難しいんですよね？』
『まぁな！　……だが、見込みがあるのはお前等の中で、そうした事を早くから取り組んでいるあいつだろうな！？」
『……なんかムカつく……スゲェ』
『あぁ、なんか釈然としないよな……』
『ホントホント、ムカつくますよね……！？』
『うん……』
（済みませんねぇ、皆さん……。こーゆう性格なもんで……）
と心の中で謝るヨーシキワーカ（俺）。
『そうしたものだから、
その『電験三種に相当する』Unlimited Electrical Contractor（アンリミテッド・エレクトリカル・コントラクター）は、多少わがままな者（もん）でも、
能力があって、こっち方にそうした、厄介事を買って、転んでこないように注意をしてるんだ！』
『偉く詳しいですね……？』
『まぁな……！　お前たちのように俺の所から出て行った奴が1人、そうした奴がいて、
そーゆう人がいると、前に電話で聞いた事があるからだ……！』
『へぇ～』
『自分たちの先輩に当たる人ですね！？』
『まぁな！』
『どこの会社にも、そうした人が1人か2人はいますもんね！？』
『あいつの父親がそれだったんか……』
『でもなんか話で聞いていると……あの人とはなんかイメージがくっつかないっていうか……』
『まぁ、まったくの別者（べつもん）だからな！　前にそうした事が、あいつの会社から頻繁に着ていたが、どうにもあいつとは話が結びつかない……！
それは見てて、お前等でもわかるだろ！？』
『……確かに……』
『言えてる……』
（へいへい、済みませんねぇ……）
と心の中で愚痴を零すヨーシキワーカ（俺）。
『その人はどーゆう人なんですか……！？』
『そうだなぁ……他にわかってることは、こっちでも少ないんだわ。
わかっている事は、設備管理の中でも、結構上に当たる人で、相当年季の入ったエンジニアらしい。
そこら辺は、お前等と同じで、『優秀』だな！？』
『……』
『……』
（……優秀……また優秀という言葉の暗示か……？　そうやってお前は、そいつ等に対し、気に入られるよう、暗示を掛けてたんだろ？　相当前の代から？）
ヨーシキワーカ（俺）はそう断ずる。

【――そう、ドクターイリヤマはね】
【その受け持った生徒さん達に対し、気に入られるよう暗示をかけていたの】
【医学講師の地位と名誉と権威を活かし、医学生の教室と設備理管理科の教室を行き来しながら】
【自分側に付く人と、そうでない人とを選り好みしちゃってたのね……】
【あっもちろん、優秀なのは、自分側に付いちゃった生徒さん達よ！？】
【誤った見解になっちゃうよね……？】

（あそこで1人で勉強しているような奴とは違って、お前等の方がすこぶる優秀だ！！）
この時、本音を隠す俺。
それは騙しのために、必要な事だからだ。
（後はどう騙して、こいつ等も後戻りできないよう、共犯者に仕立てていくか……？　まぁ、金回りのいい、求人の話だな……フッ）
と冷笑の笑みを浮かべるイリヤマ先生。
『前に、そうしたところから求人がきていたんだが、俺の判断で堕としたんだ』
（何ぃッ！？）
（その代わりに、お前達をそこへ勧めた訳だ！　で……結果はどうだったんだ！？』
（……）
『その中に入って、面接まではこぎつけましたが……途中で落ちました……』
『自分も同じで似たようなものです。せっかくなので、そうした中の様子を見てきましたが……。結構あそこは広かったですね』
『やっぱりか……』
『なんで、ヨーシキワーカさんを堕としたんですか！？』
『う～ん……なんか1番気に入らない奴だからだ……お前等の中でな！』
『！』
（……）
その話を聞き入るヨーシキワーカ（俺）。
ただ、ジッと黙って聞く。
イリヤマ先生は、こう話す。
『俺も、ちょっとは考えて、そうしたチャンスを与えていたんだぞ！？
だがな、あいつはそうしたチャンスの話を逃したんだ……！
1回だけあいつに、そうした話のヒントをあっちのほうに回したんだが……結局は空振りに終わったらしい。
……勘がいいかと思えば、あいつでも、そこまではなかったわけだ……！
その点！　お前等の方が優秀だな！』
『……』
黙って聞く僕達、俺達、あたし達。
で、ヨーシキワーカはと言うと――

（――あれか……！？　確かあの日は……『あごだしラーメンと焼き飯とSGバーガー』を食べた日だよな……？　昼飯で……。
確か……父（ダダ）からこう言われたっけ……？）
『――日曜日（今日）は、お客さんもいっぱいいて、バイクの止め先もないだろうから、
正面のゲート通りは感染症も会ってやめて。
うちの者の職員さんぐらいしか使わないような南門のところにバイクを止めて、そこから入れ！
その近くにラーメン屋さんがあっただろ！？』
（――ってことは……んなもん、そんな短い説明でわかるか――ッ！！！　フツーに昼飯の話だったわ――ッ！！）
と心の中で叫ぶヨーシキワーカ（俺）。

――ドクターイリヤマの話は、こう続いていた。
『――その点、俺が特別にメガネをかけているお前等の方が優秀だ！！
俺に気に入られようとしてくる分、お前等にはまだ可愛げがあるからな！？
あそこで1人で勉強しているような奴とは違ってな……！
お前等の方がすこぶる優秀だ！』
『ありがようございます！』
『一生ついていきます！』
『先生のおかげで、あの難しかった免許の試験も1発で取れました！
……イリヤマ先生のおかげなんでしょう！？　どう調整をしたんですか！？
何か、朝方、そこでタカハシ先生と言いあっていたみたいですけど！？』
『先生のおかげで、あっちから内定の話が届きました！』
『向こうの方の求人の話が、イリヤマ先生の話通り良かったです！』
『俺は……まだかな？』
『ここに入って良かったです！』
『ありがようございます！』
とお礼の言葉、賛辞を送ってくる生徒達。
設備管理科の申し子たちだ。
ゆくゆくは、俺の方で引き立ててやろう。
『うんうん！　お前等は俺の自慢の生徒達だ！　それぞれの道は違うかもしれんが、その就職先でも頑張るんだぞ！』
『『『『『はい！！』』』』』
と元気よく返事を返す修了生たち。
それを勉強しながら、見聞きしていた俺は。
（なるほどな……選り好みの先生か……。よく設備管理科に顔を出す、モノ好きな医学講師もいたものだ……！？』
――それは突然の疑問から始まった。
『――そう言えば、あの話はどーゆう事なんですか？』
『！』
『タカハシ先生とそこで話し合ってましたよね？　……朝から気になっていたんですよ！？　……普段とは違う口調でしたよね！？』
『……そうだな……。お前等は約束事は堅い方か……！？』
『はい！』
『口は堅い方ですから、安心してください』
『自分もイリヤマ先生にお世話になった身ですから、大概の事は約束を守ります！』
『………………』
ドクターイリヤマ（俺）は、顔をこいつ等に向けていたが……。
不意に気にかかって、あっちの方で、後ろの方で勉強をしているヨーシキワーカの様子を伺う。
生徒の1人が、俺のそうした様子の違いに気づいて、こう声をかけてきたんだ。
『……？　どうしたんですか？』
『あいつは……ここに来ないな……ホントに……。
……俺の予想では、今聞いた話を聞いて、
怒ってすっこんでくるかと思ったのに……何で来ないんだ！？　周りでこんなになるまで、追い詰めてやろうと思ったのに……。
朝方あんな事があったのに……！？　何でだ……！？』
それは期待だった。
なのになぜか来ない……どうしてだ？
これでは予定が狂ってくる。
それに気づいた生徒の1人がこう言う。
『そんな事やろうと思っていたんだ……！？』
『意外……！？』
どうやら、俺のそうした昔の会社を通しての取り計らいだったらしい。
行ったら、その場でやられていたわけか……。
訳も分からないまま……。
……これは沈黙を決め込むべきだな。フッ……、返り討ちは御免被る。
『……あれだけ距離が離れていれば、それは聞こえませんよ？』
『僕だって、あれぐらい距離が遠くに離れていたんじゃ……それは聞こえないかと思いますよ？』
『しかも、あいつ……顔を下げてて、勉強中だしな！　……聴こえてねえだろ？　あれ？」
『一安心ってやつですね……！？』
『そんなもんかぁ……！？』
少々疑問を覚え始めるイリヤマ先生（俺）。
『何か、気になるんだか……？』
言い知れない不安を覚え始めるイリヤマ先生。

（クスッ）

『そんなに心配なら、自分たちの背中が壁になってるんで、あいつには聞こえませんよイリヤマ先生！」
『これだけ周りを囲っていたら、声なんて周りに漏れませんよ』
『だから安心してください』
『……それもそうだな……！』
と安堵を覚えるドクターイリヤマ（俺）。……だったが……。

『――残念～！　あたしがいました！　クスッ』
そう、ヨーシキワーカには、守護霊（彼女）がいた。

『……どーゆう事なんですか！？』
（そうそう、気になってたの！）
『そうだな……お前達は『友達が多い』か！？』
『！？』
『友達……ですか？』
『あぁ！』
その友達が、その数の多さが最大のポイントだ。
『あっ！　あたし『女友達が多いです』！　電話で知り合いに取り次いでまわっていけば、そうした仲間の数がさらに多いと思います！！』
その人はコバヤシさんだったわ。
手を挙げてハッキリ言う当たり、以前からの内通者さんかしら？
（フ～ン……クスッ）
『ホゥ、そいつは出来がいいなぁ？』
『フフッ』
『さすがにズルいよなぁ……！？』
『あぁ……これだから女ってやつは……。男の俺たちには、それはできんぞ……ッ！！』
『フフンッ！！　何とでも言いなさいよ！！　じゃあ、あなたも女の子になればいいじゃないの！？』
『それはちょっと……』
『なぁ……！？』
『フンッ！！　女装ぐらいやる気持ちの根性ぐらい見せなさいってやつよ……この根性なしッ！！』
『……』
『……』
これには男連中の内の1人、困った感じで、頭をかく仕草を取るのだった。
とそのコバヤシさんが。
『……で？　どうやるんですか？　イリヤマ先生！？』
『……』
黙って考えるイリヤマ先生。腕を組んで、ジッと考える。
（あぁ、これはお兄ちゃんには無理そうね……。
だって、友達の数少ないし、腕時計型携帯端末（フューチャーウォッチ）を持ち出したのも、去年だから……！）
そう、最初から無理な相談である。

『――そうだなぁ……誰にも絶対に秘密を言うんじゃないぞ！？　俺とお前達だけのヒミツだからな！？』
『『『『『はい！』』』』』
『何度も言うようですが、自分はそうした約束事は守ります！』
『自分もです！　信じてください！』
『あたしもですイリヤマ先生！　ここにいる人達は約束を守る人達なんで、そうした人達を集めました！
ここは、あたしの顔を立てて、安心して言ってください！
……何でも協力しますよ！？』
『……』

【――そう、引き込み人は、コバヤシさんだったわ】
【いわゆる呼子】
【詰まるところ、集められたあなた達はかけ子ってところかしら？　……クスッ】

『……そうだなぁ。
実は、そうした協力関係のある友人伝いで電話を取り次いでまわって、
そうした奴のいる会社から、上の方の人事に当たる人達に取り次いで、
周りの人間のそうした強力な社会関係で持って、
周りから、そうした怪しい奴を、こっちから徹底的に追い詰めていくんだ！！
……その時に使われるのがこれだな……』
ドクターイリヤマは、腕時計型携帯端末（フューチャーウォッチ）を、みんなの前に見せる。
それを見たみんなは、口々に言う。
『……これって、腕時計型携帯端末（フューチャーウォッチ）じゃないですかぁ！？』
『こんなもんで……？』
『そのこんなもんなんが、今回使われる中で特に重要なんだ！！
どこにでもありふれていて、誰にでも使われる、ごくありふれたものだからだ！　だから、誰にもそうした事がバレないんだ……！』
『！？』
『……小さい機械だからといってバカにしちゃいけない……！
実際にこれで、俺や、ここにいる連中の講師たち、周りのそうした会社の上の役職の奴等は、
実際にそれで何度も勝ち、何億円も稼いでいるんだからなッ！！』
『何億ッ！？』
『こんな小さな機械でッ！？』
『アハッ！　凄いでしょ～！？
ここに着たって事は、そうした助からない奴も、時にはいるって事なんだからさぁ！？
周りから信じられないぐらい、ソイツをハメちゃってるわけよ！！　これがッ！！』
『……ところで先生』
『んっ！？』
『その人どうなったんですか……？』
『……さあな、そんなの気にするまでもないだろ？　俺とそいつとはもう関係がないんだからな！？』
『……』
『ハッキリ言える事は、どうしようもないぐらいそいつは悪い事をやったって事だ！！　そこでお世話になったって言うのにな！！
だから俺は電話口でそいつを注意したんだ！！　とんでもないぐらいに盗（と）……！！』
『……』
『……まぁあんなに金を払ってくれたんなら、こっちとしても許してやらんでもない……ッ！！』
と大威張りのイリヤマ先生。腕を組んで、自身の力の現われを周りに誇示したわ。
『……』
それを聞き黙ったままの男連中達。
そこへコバヤシさんが話しかけてきて。
『そうそう、そんなの気にしたってどうだっていいでしょ～！？　お金をたんまりもらえるんならさぁ！？』
『……』

（フ～ン……）

『……で、どうやるんですか？』
『ん？　さっき言った通りだが！？』
『え！？　たったそんな事で何億円も！？』
『ああ、だから辞めたくても、もう辞められないんだ！
実際に周りもそうした連中で関わっていて、辞め時がわかんなくなってるんだ……！？
酒の席の話だが……。……今いる席も、そうした事で関わって勝ち取ったものだからな！』
『……』
その話を聞き考える自分達。
『……いい話でしょ？　すごくな～い！？　今日、あたしに呼ばれたってことを感謝しなさいよね！？』
『……』
『……あなたに言われなくてもわかってますよ……』
『ホントわかってんのかなぁ！？』
怪訝で、不機嫌なコバヤシさんがいたわ。
『！？　もしかして……あの会社の……あの女も……！？』
『フンッ！　……フフフ、もしかしたら、あたし達の知り合いの娘（こ）の誰かが……いたのかもしれないわねぇ……！？
どこかに繋がっている娘（こ）も、その会社の身内の中にいるかもしれないって事よ？
……どう？　恐くなってきちゃった？』
ゾォ……
『……』

【――ゾォ……と恐怖を覚える男連中たちが、そこにいたそうよ？】
【それはそうよね？】
【職業訓練校に入る前、あなた達は昔の会社にいて、そうした現場を見ぃ、今まであった、あの出来事の裏には……】
【女性同士を繋ぐ強力な網があったって事よ！？】
と告げるクリスティさん。
続いてサファイアリーさんが。
【それが口達者な女の子が、この厳しい世の中で生き残るために得た、術なんでしょ？　クリスティ～～？】
【フフンッ、まぁねぇ～！】
【……なんで、ヨーシキワーカさんは気づいたんだろう？】
【【【【【……確かに……】】】】】
【……】
そこには嘆息すスバル君がいたわ。
君も大概、末恐ろしいわよ……。

『――……こーゆう事か……！？』
『何かわかったんですか？』
『あぁ、なんか前にもそうした事の……現場を見覚えがあるような……！？』
『フッ、もしかたら、その子が電話で関わっていたのかもしれないわね！？』
『……』
当たりか……。
『じゃあ……これって……』
『小さくてもバカにできないってことか……！？』
『そーゆう事！　ですよねイリヤマ先生～！？』
『あぁ、あともう一押しで、あそこからもう1回ぐらい『盗り立てる』事ができるかもしれないからなぁ！』
『……あの、もう一押しって……！？』
『ああ、このままいけば、年中に4億円（3030303米ドル）に届くかもしれないなぁ！」
『すげぇえ……！！』
『俺たちもちょっと混ぜてくださいよ！？』
『アハハハッ！　ねっ！？　こんなにいい話は他にないでしょ～！？』

（何バカ言ってんのあんた達……！！　4億円（3030303米ドル）に達するかもしれないって事は、
その裏で実は、ちょろまかしている奴がいて、
既にもうこの時点で、4億円稼いでいるっていう事実（こと）よ！！　……にしてもこのコバヤシって女……）
あたしは、このコバヤシさんって女を怪しんだわ。

『あたし達もその話に1枚噛ませて、協力させてください！』
『……』
じっくり考えるイリヤマ先生。
『何でも協力しますよ！　女達（あたしたち）スゴォイんですから……！！』
『……そうだな……では次に何かあった時、
俺の方から、そうした別の上の人に取り次いでおくから、
お前の方もそうしたタイミングを見て、準備をしておくんだぞ！？』
『はい！』

（黒も黒ね……。これは……この人達とは関わるべきじゃない……。
関わったら最後、みんなお金に目がくらんで、不幸になるわ……。
自分のお子さんが、お孫さんが、これを見たら、泣き悲しむんじゃないかしら？
ねえ、お父さん、お母さん、そう思うでしょ？
……あなたはその時、ホントの事を言えるの？　……ねえ、言える？　その口で……――）
『……』
その話をジッと聞くヨーシキワーカ（俺）。
（あたしだったら、言えない……とても……ホントの事は……。
だから、あの時、ウソつくしかなくて………………）
守護霊（彼女）は嘆き悲しみ、頼るように俺を見てきた。
俺は心の中で、彼女と以心伝心を行う。
（あぁ、これはあれだな……。主犯格の連中はそこから盗り立てているだけで、
周りのそうした連中が動いている以上、その話を聞きつけ、
そこからさらに、知らないうちに盗り立ててました……とするケースだ……！）
（……）
（ヤバいな……。
当然、ドクターイリヤマ達は、そうした事実があっても、その全容はすべて把握しきれていないから。
その体裁がとても悪く、1つ1つ揉み潰してまわっている訳か……）
（……じゃあ、死亡届は……？）
（事実だろうな……）
（……ッ、やっぱり……）
（死亡届が出ていたって事は、死傷者がでている事実を揉み消したいんだよ……。ホラ、じゃないとまた使えないだろ？）
（うん……騒ぎになっちゃうもんね……）
（何かいい手はないかな……）
（もうお金に目がくらんじゃった人殺しだよ……こんなの………………――）


☆彡
――過去から現在に戻り、クリスティさんがこう語る。
「――嬉々として笑うドクターイリヤマ。もう笑いが止まらなかったそうよ？　ウハウハだからね！」
とクリスティさんがいい。
続けてサファイアリーさん、エメラルティさんが。
「お金の魔力に、どっぷり浸かちゃったわけかぁ……！」
「お金って使えばすぐなくなるし……、そうした手段があるとわかれば、みんなこぞって使ちゃうもんね！？」
とクリスティさんが、こう語る。
「……そうね。一度でもその魔力にハマれば……、どんな人でもそこから抜け出せず、身を堕としていくでしょうね。
だから、酒やたばこ、麻薬と同じで、簡単には辞められないもの……よ！？
だから、辞め時がわからなくなってくるの！？　いつも勝っちゃうから！！」
「……何だってまた！？」
そう言ってきたのは、アヤネさんだったわ。
だから、あたしはこう切り返すの。
「就職難に陥れば、人は否応なしに、そうしたある事ない事の事実を曲げ、自分がやってもいないのに……自分がやったと認めちゃうからよ！？
耐え切れず、助かりたいから……！！」
「……」
「……鵜呑みに騙された親族さんもいて、誤って取り次いじゃうケースバイケースも起こり得るからね？
だから、電話の取次ぎだって、そう、当然、ヘンに話を結び付けてくるわけよ？
調整調整、ツギハギがそうね！
……どこもそうよ！？　お金が欲しいんだから！」
と語ってくれたクリスティさん。
次いでサファイアリーさん、エメラルティさんが。
「だ・か・ら！　そうした処を突き、弱ったところから盗り立てちゃってるのよ！？　もう周りがそうね！？　手柄を立てたいからね！」
「『独裁者ヒトラーの密告制度』って知ってるー！？　知らないかー！？　最近の若者は……！
実は身内の中にそうした人がいて、横の繋がりで、情報を流している訳よ！？
当然！　身内ないがとんでもないぐらい怪しく思えて、精神的にグロッキーになっちゃうわけね……！？
その密告者には、後で報酬が充てられるわ！」
と語ってくれたサファイアリーさんに、エメラルティさん。
続いてクリスティさんが、こう語る。
「だから、いつも気持ちいぐらいに勝っちゃってる訳よ！！　これがッ！！
その当時、付き合っていた彼女さんや、恋人さんにも、フラれた人はいるんじゃないかしら～ァ！？
家族や恋人、果ては親戚、近所付き合い、友人や同僚といった人たちまで怪しく思えてくるでしょうからねぇ～～！？」
と語ってくれたクリスティさん。
続けてサファイアリーさんが。
「精神的に、誰でも折れちゃうって訳よ！？　もう何か1つぐらい認めないと、その負のスパイラルから抜け出せなくなっちゃうからね！？」
「その過程で、耐え切れず、自殺した人もいて、身投げして交通事故で亡くちゃった人もいるぐらいよぉ～？　その証拠を、関係ないとして揉み潰していたわけよ！」
そう、語ってくれたサファイアリーさんにエメラルティさん。
僕は、こう心の中で思う。
（……何で御兄さん、それに勝つんだよ……！？）
「ハァ……」
考えてもわかんないか……。あの人は、妙に我慢強いし……。
と続けて、アユミちゃんが、スバル君が。
「……クリスティさんには、使わせないように、見張んないとね……スバル君！？」
「うん！」
「後でこの話は、クコンちゃんにも言っとかないとね！」
「だねぇ！」
「……ッッ」
と悔しむクリスティさん。
こう言葉をかけて、なんとかその場の体裁を取り繕うとする。
「それとも誰か、その事を予め知っていて、誰かのせいにするように、予め仕込んでいたりするケースもあって、
バカとハサミ（イリヤマ達）のような人たちに話を持ち掛け、責任と借金の話を結んできて、そこから有り得ないぐらい盗り立てていたわけよ！？」
とアヤネさんが。
「いったいいくらぐらいやってるんですか……？　1回につき、100万円じゃ済まないケースもあるから、最大で1千万円ぐらい！？】
「それ以上よ！！」
「「「「「えっ！？」」」」」
と驚き得る僕達、あたし達。
クリスティさんの話は、こう続く。
「でも、法的裁判に則れば、そうした出来事があっても、
弁告側の被害者さんが、何か悪い事を仕出かしていれば、その後、社会生活を送る上で、その職場でなんか一悶着ありそうだからねぇ……。
だから、そこを突いて脅してきたって訳よ！？　それも目に見えない電話口からね！！　それが強迫！　恐喝！！　お金を盗り立てたからね！！」
そう語ってくれたクリスティさん。
う～ん……
と考察していたアヤネさんは。
「恐喝罪……そーゆう事……！？」
と自身の声に納得の理解を示していた。
続けて、アヤネさんはこう話す。
「だから、あんな小さな機械で……！　フューチャーウォッチが犯罪に利用されていたわけですか……！？」
自身にも、そうした出来事の身に覚えがありそうだった。
それに対して、クリスティさんは、こう切り返す。
「ええ……！　……でも、一番いい手は、さっき言ったアヤネさんが正解ですよ？」
「！」
「フフッ……。
その審議の場でね。弁告側が被害者さん側の意を汲み、1千万円を超過しないってのにね……。
……それ以上の額を盗り立てて！
なおかつ、一生払い続けるような旨のサインをしてきたそうよ？
法を預かる法務部の連中がね！？」
と語ってくれたクリスティさん。
そこへエメラルティさんが。
「あぁ、電話伝いでそうした協力者さんがいるわけか……？　じゃあ、『警察署を語った人』もそうなのかなぁ……？」
「……」
黙ったままのクリスティさん。
その心の内では。
（――そう、その警察署を語った人が、電話口から語ってきたら……詐欺です。
それは多くのフレコミでも、そうした事実があるわよね……？
まぁ、言う必要も……ないかな？）
と思うクリスティ（あたし）。
とここで、エメラルティさんが。
「あれ……？　ヨーシキワーカさんが語るには、
表立って、弁護士、警察官の方が来たことはないそうよ？
あくまで顔を出さない電話だけ……つまり偽者じゃないかしら！？」
「……」
「……」
黙ったままのクリスティさんにサファイアリーさん、それは肯定の意思表示にも見えた。
そこへ、不意にアヤネさんの声が漏れてきて。
「……やっぱり……」
「！」
と納得の思いのアヤネさん。
その顔を伺うエメラルティさん。
そこへ勘のいいアユミちゃんからの声がかかってきて。
「あのさぁ、それって……もう『詐欺』じゃん！！」
「！」
「問題で済ませようってところが詐欺じゃないのかなぁ？　う～ん……。
完全に1千万円を超えてるから、社会的制裁よりも、公的機関を通じた法廷の場が一番安全だよね？
後味スッキリしてて、それ以上盗り立てられる心配もないんでしょ？
……そうでしょ？」
「「「頭がいい娘（こ）ね……」」」
「～～♪」
とクリスティさんが、サファイアリーさんが、エメラルティさんが呟き。
それを聞いちゃったあたしなんかは、やったー！　と思い、鼻歌なんか歌ちゃってる。
そこへアヤネさんが。
「……アユミちゃん！？」
「んっ！？」
「顔の見えない電話口は何も証拠が残らないから……ね？　だから、詐欺だって言えるのよ！？
だからそうした事実があっても、周りが取り次いでまわり、調整調整効かせて、揉み消している訳よ！？
本人やご家族を一切介さないだろうから、
そうした人達が周りで取り次いでまわり、国の公共機関に属する人が、それに関与すれば、
どっちの声を取ると思う？」
「あ……そうか……」
「そう！　事実を知る人たちがいても、その口止め料を支払うなどして、揉み消して回る事ができる訳よ？　……また、使えるからね！」
「……なんで？」
「……酒やたばこや麻薬と同じで、簡単には止められないからよ」
「……どうして」
「どうしてって……う～ん……」
「……」
「誰が、そうした事を平然と裏でやっていた、国の公共機関に務めてる人の悪口を言えると思う！？
学校の講師や、その国の職員さんの場合は……！？」
「あっ……そうか……！」
アヤネさんは、そうアユミちゃんに論じ、注意を悟らせる。
他に手がないからだ。
「……」
納得の思いのアユミ（あたし）。
クリスティ（あたし）がこう論じる。
「そう、『職権乱用』に当たるのよ！！」
「！」
「――これは昔、ミシマさんとヨシュディアエさんの2人で共謀し、その電話口からとんでもないぐらい騒ぎを起こして、
そこから盗り立てていたからね！
もう簡単で、電話口からそいつ等を親子間を騙して、そこから信じられなく有り得ねぇぐらいチョロ負かしていた……そうだからね？」
「いったい何が……！？」
「……」


TO BE CONTINUD……