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第3章の第65話 X12 最強のAIナビ:アントラローダイト


【――任意同行の形で、彼もあたしについていってくれるんだけど……】
【その時にね。救急外来患者さん対応の入り口で、次の患者さんが運ばれてきたの】
【あれには面を喰らったわ】
【……何だってまた?】
【さあ? ……でも、どこかの誰かさんが応急処置を施していた後だったのよね……】


★彡
【スラム街】
UAAAAA
それは誰かの叫び声から始まる。
「「「「「!!!」」」」」」
その叫び声に振り返るヨーシキワーカに、ヨーシキワーカにそっくりなアンドロイド(!?)とその他。
急いでその場から駆け出していく。

――その現場に到着すると。
「しっかりしろ!! ベイカ――!?」
怪我人に声を掛ける人がいた。
怪我人は意識を失っていて、腹部には、散弾銃の跡があった。
これを見た自分たちは。
「ゲェエエエエ!!!」
と引くほど驚いてしまう。
その怪我人は、誰かに散弾銃で撃たれ、出血多量を起こしていた。
命に関わる危険な状態であった。
「クソッ!! いったい誰がこんな事を!? 俺たちが何したってんだ!?」
場に、言い知れない罵声が飛ぶ。
「……ッ」
その声を聞いて俺は、胸を握りしめて、その場から歩み出す。
――その時。

『ヨッシー!』
「!」
それは、俺のAIナビの声だった。
ちなみにヨッシーは俺の愛称の1つでもある。

【ヨーシキワーカのAIナビ:アントラローダイト(完全自立型AIナビ)】
その名の由来は、希少な赤い宝石、ガーネットにある。
ガーネットは、和式名では柘榴石(ざくろいし)といい、希少であるが。
その中でも取り分け、比較的希少で珍しいものが稀にある。
その名を、アンドラダイトガーネット。
その輝石(きせき)は、色彩の変化で、虹色に輝く光学効果(イリデッセンス)を示すものだ。
その虹彩(こうさい)は、見る角度によって、七色にも見える。
また、アンドラダイトガーネットは、分散光がダイヤモンドよりも、強いという特徴を持つ。
この比較的珍しい宝石は、2004年頃に日本の奈良県天川村で発見されたものが、発祥とされる。
それは光を当てると、様々な色が現れる様は、とても幻想的で、神秘的なもの。
また、ガーネットは1月生まれの誕生石でもあります。
またレインボーガーネットは、和名では、灰鉄柘榴石(かいてつざくろいし)とも呼ばれるもので、アンドラダイト(アンドラダイトガーネット)の亜種です。
またギリシャ語では、
柘榴石は、Anthrax(アントラクス)。
灰鉄柘榴石(かいてつざくろいし)では、Andradite(アンドラダイト)とされている。
また苦礬柘榴石(くはんざくろいし)では、Pyrope(パイロープ)と呼ばれ、ギリシャ語では火を意味する。
アントラローダイトは、その掛け合わせからきている。
これは、まだ先の話になるが、ヨーシキワーカの元から離れ、スバル達に接触する頃には、その名をヴァイロダイトと改める事になる。


『――見ろ! ウィルスだ!』
「!」
俺は顔を上げる。
空の上には、ウェーブグローバルの道があり、そこでウィルスたちが何やら悪さをしていた。
『俺をアクセスしろ! すぐに片づける!』
「わかった!」
俺は、アントラローダイトをアクセスすることにした。
「ウェーブグローバルアクセス! イン アントラローダイト!」
俺は天高く拳を突き出し、腕時計型携帯端末を通して、アントラローダイトをアクセスさせる。
光の尾が伸び、アンドラダイトガーネットが天翔ける道に立つ。
『――後は俺がやる!! お前はすべき事をやれ!!』
「――わかった!」
これに驚き見るは、俺と同じ顔をしたアンドロイド(?)だ。
それはいいの……と言わんばかりに俺の横顔を見たが、俺はこう言う。
「アントラローダイトは、完全自立型AIナビだ!」
駆け出していく、現場へ向かって。
「俺の手にも余るが、頼もしさすら覚える!!」
「……」
「……だが、なぜ俺の手元に転がり込んだのか……よくわからないんだ」
ガクッ
とズッコケそうになる俺と同じ顔をしたアンドロイド(?)。
気を取り直して走るが、如何ともしがたい顔を浮かべる。
顔に浮かぶは疑問符だ。

――そして、その怪我人の状態を診る。
「お、お前、ヨーシキワーカか!?」
「退いて!!」
「!」
俺の声を聞き、その第一発見者は、その場を開ける。
俺はその患者さんを診る事になる。
「腹部からの出血多量……。この銃創の広がり具合から見て、至近距離ではなく、それなりに離れたところから発砲した……」
「……」
俺は、第一発見者が怪しいと思い、その利き手を見るが、特に怪しい感覚はない。
(……手に硝煙反応はない……。手袋でも用いたか? どこかに棄てたか? それとも完全な白か……?)
俺は第一発見者を疑うが。
(いや……)
とりあえず白とする。
「おいっ、これ助かるのか!?」
「やべーぞ!! この血の量」
「……ッ」
この怪我人を見ていた俺は、立ち上がり、
「……………」
辺りに何か使えるものがないか、伺う
スラム街じゃ、特に役立ちそうなものがない。
(どーする……!?)
その時、空高く上空を飛行機雲が横切っていった。
(んっ……あれは……!?)
――それは咄嗟の機転だった。その飛行機雲がヒントになった。

『『日の目のコロナ』Daylight Corona(ディライトコロナ)!!』
アントラローダイトはX字に手を交差(クロス)させて、それを勢いよく振り抜くと、全方位360度の死角なしの攻撃を行う。
それは球体状の黄金色(こがねいろ)の太陽光を彷彿とさせて、
周囲一帯にチカチカとした電子(コロナ)が現れた。
質量大放出。
電子(プラズマ)から電子(プラズマ)に伝わり、まるで稲光の如く、雷撃が駆け巡る。
それは複雑怪奇に上下左右斜め、乱雑しながら繰り返して、ウィルスたちを1匹残らず、駆逐(デリート)していく。
吹き荒れるは爆風の嵐。
それはオーロラベルトに彩られていた。
焼け残った場所に残るのは、火柱を上げるばかりだ。
これが俺の全方位攻撃だ。
だが、何とも詰まらんものだ。
『ムッ……!?』
だが、場に何かが残っていて。
『……これは……!?』
アントラローダイト(俺)は、それを回収するのだった。

「――!!」
俺は、辺りをよく伺う。
使えそうなものを、ピックアップしていく。
俺に声を掛けてきたおじさんの『お酒』
首を振るう。
近くでなけなしのトカゲを捕まえて、網で炙る浮浪者。近くには『火種』があり、なんなら『鍋』もあった。
さらに首を振るう。
タバコを吸っている女のおっぱいに巻いたサラシ、それは『包帯』だ。
さらに首を振るう。
(何か、何かないか――!?)
その時、目についたのは、このスラム街の2階の隣宅から垂れ下がったロープだった。
「……あっ……」
それは咄嗟の閃きだった。



【病院】
行政の人達はクレメンティーナを現行犯逮捕し、病院長室からここ1回まで降りてきていた。
スプリングも重要参考人として、任意同行している。
その時、救急患者さんのホットが入る。
『救急患者(HOT)です!! スラム街から、一名の男性が救急搬送されてきました!!」
「「「「「!!!」」」」」」
俺たちは、それを見て驚いた。
スプリングは、そのストレッチャーを呼び止める。
「いったい何があった!?」
「救急です!! 誰かに散弾銃で撃たれました!!」
「何ッ!? 状態は!?」
私は、その救急搬送されてきた患者さんを診て、その掛けてあったものを取り払う。
「なに!?」
「え……!?」
「「「「「な……何だこれは!?」」」」」」
私は驚き、あたしは虚を突かれて、行政の人達は一斉に驚き得た。
「これ……なに……!?」
「……」
これには私も考えさせられる。
「なぜ……こんな事が……! 信じられない……アメージング……!!」
「え?」
「これは、『ショックパンツ』だ……!! もちろん、救急車に備わっているような上等なものではなく、有り合わせで造られたものだ!」
「えっ?」
これにはあたしも驚き得る。
その患者さんの両足に巻かれているのは、『包帯のグルグル巻き』、その上からさらに『傷んだロープ』で巻かれていた。
そして、この香りが私の鼻腔をくすぐり、医師である私に訴えかける。
「これは、ホワイトワインか……!?」
「え……!?」
「度数は低いが……なるほど、アルコール消毒もしている。……こんなありきたりなものを使うとは、どこのどいつか知らんが……パーフェクトだ!!」


★彡
【スラム街】
「……」
そのパーフェクトと呼ばれた男は、もちろん、この人、ヨーシキワーカ。
「……」
ヨーシキワーカと同じ顔をしたアンドロイド(?)は、この人の斜め後姿を見ていた。
疑問に残るのは、そのビンタの跡だ。
いったい何があったのか。
ヒリヒリ
と今も痛い。手痛い女の平手打ち(ビンタ)だった。
「……嫌われたかな?」
「……」
これには僕も、何も言えず……。
そりゃあね……。女の人の胸のところのサラシを掴めばねぇ……。


――当時の様子を振り返る。
「これだ!」
もみゅん
「キャッ――ッ!?」
「――はっ?」
バチン
「Hィ!!」
痴漢行為を働くヨーシキワーカ。
ビンタをもらっても仕方がない……。
これには、ウェーブグローバル上にいたアントラローダイトも、冷や汗をかくのだった……。
呟く一言は。
ボソッ
(せめて訳を話せよ……。いや……無理か……変態扱いは免れない……)
ヒュ~~……
と冷たい風が吹き。
怒り心頭のサラシ女は。
「変態死ね!!」
ゴスッゴスッ
とノックアウトしているヨーシキワーカのみぞおちに、何度も蹴りを入れるのだ。
それでも、人を助けたいとするヨーシキワーカは。
「痛てっ……痛てっ……!! せ、せめて、サラシを……」
この言葉を聞いたサラシ女は。
カァ~~ッ
と赤面し、怒りのボルテージが上がる。
それを見ていた周りの観衆は。
「や、ヤバい……!!」
「あの女を止めろ!!」
「ヨーシキワーカが蹴り殺されてしまう~!!」
「〇×△◇~~!!!」
もう現場は大荒れだった……。
おじさん達がサラシ女を止めた事で、地に伏したヨーシキワーカを救う体になるのだった。
これを見ていたアントラローダイトは。
『ハァ~……』
と溜息をつかんばかりだ。
そして、この近くで現場を見ていた、ヨーシキワーカと同じ顔をしたアンドロイド(?)は、心の中でこう思ちゃう。
(そりゃあね……。その人に事情を話しても、周りには人がいるし……。人の命が関わっていても、この現場じゃあ……)
「ハァ……」
と溜息をつかんばかりだ。
うん
と心なし僕も、同情するように情けなくも、頷き得るのだった。
こうなるのも、実情としては仕方がないのかもしれない……。
どう転んでも、変態扱いは免れない……。


★彡
――それが、そのとある人に叩かれた原因であった。
こんなの恥ずかしくて、もう誰にも言えない……ッ。
「ハァ……」
あれはどう考えても自分が悪く、怪我人は救えても、自分は救えない……。
何かを犠牲にして、その人を救おうとしたのだ。
自分としても、そこには……まぁ、致し方がない……。
明日から自分は、どう転ぶのだろうか。
そんな事が頭の中を過り、自分は、建物に背をつけて、ズリズリと下がり落ちながら、尻餅をつく。
「……」
俺は、顔を上げ、今日の曇り空を見上げる。
その時、電子音が響く。
『我が主人ながら……情けない……』
「……」
それはアントラローダイトの呟きだった。
あの後、アントラローダイトは、ウェーブグローバルを下り、ヨーシキワーカ(俺)の腕時計型携帯端末に戻っていたのだ。
『……まぁ、患者さんは救えそうだから……、互角(イーブン)だな』
「……フッ」
それが俺たちの妙な関係だった。
「……」
俺は、顔を上げ、今日の曇り空を見上げる。
口をついて出た言葉は。
「……あれはショックパンツの真似事だよ」
「?」
『……』
俺と同じ顔をしたアンドロイドが、俺の横顔を見る。
アントラローダイトが、聞く耳を立てる。
「代用品は、お酒、火、鍋、そして包帯とロープだ」
「……」
「出血多量だったから、足を縛って、その足の血液を上半身に送るしかない」
「……」
僕は呼気を吐く。
この人の隣に立つ。
「脳と心臓が生きてさえいれば、とりあえずは大丈夫なはずだ。後は現場の医師に任せるさ」


★彡
「――ショックパンツ!?」
あたしはその名を呟く。
「そうか……もう、ショックパンツという医療器具は、ないんだったな」
「?」
「今から、200年も前、第二次世界大戦時代――!!
戦闘機に乗った操縦士が、特攻を仕掛ける時、貧血を起こし、意識を失う事例があった。
その問題点を解決するために、開発されたのが――」
私は、その有り合わせを見つつ、こう呟く。
「――このショックパンツだ!」


★彡
「皮肉な話だよ……。元々、戦争の道具が医療の現場で役立てられていただなんて……。
いや、どんなものも、要は人の使いようか……。
ショックパンツは医療に、
ウェーブグローバルは、かっての情報化社会……インターネットを築いて、
今日では……」
「!」
『!』
「君達みたいな、アンドロイドまでいる……戦争が、その度重なる涙の辛苦が、もたらした罪滅ぼしなんだよ」
『……』
「人殺しの道具も、今では、人助けのために役立っている……!」
俺は、視線を切り、このスラム街の人々を見て、こう呟くんだ。
「――要は、人の在り方次第さ……」
その時、上空を一羽の白い鳥が飛んでいくのだった。

*ウェーブグローバル
それは200年後の世界のインターネットであり、さらに高度経済技術革新されたものだ。


★彡
【マサチューセッツ州 留置場 その取り調べ室】
【Massachusetts Jail The Interrogation room(マサチューセッツ ジェイル ザ インタロゲイション ルーム)】
Jail(ジェイル)。
それは翻訳すれば、刑務所、拘置所、留置所の事であり、日本のように差別化されていない。

【――あたしとスプリングは、そこで警察(ポリス)の人から事情聴取を受けていたの】
【えええええっ!? クレメンティーナさん!? ホントに留置所に入ったの!?」
【まぁね。1回や2回じゃ済まないわね……】
【ウソ~~ン!?】
【この子は悪だからね……】
【フゥ~~……。人様に聞かれて、恥ずかしいものだ!! ……親にとっては……!!】
【……】
【フフッ……あの頃はホントにごめんねぇ……?】
【……】
【……】
【まあ、アメリカは日本とは打って変わって、様変わりしているからね……。当時から多民族国家で、宗教だって、何だって広く受け入れているもの】
【アメリカの刑務所は、特にマサチューセッツ州の刑務所は、ハーバード大学やマサチューセッツ総合病院もあってか、福利厚生が特に充実しているのよ】
【それはなぜだと思うー? それはね……】
【怖いからよ……。囚人の同盟羅業(ストライキ)が……!!】
【その暴動の危険性を最低限に抑えるための苦肉の策なのよ】
【だから、食もあればTVもあり、スポーツ観戦もあれば賭博もあり、何なら映画館だってあるわ】
【これは、長寿社会の弊害であり、毎年産まれてくる子供の出生数が少ない事が挙げられるわね……】
【だから、そのように行政が進んでいるのよ】
「……! ……!」
「……! ……!」
【――あたし達はその取調室で、留置所の警察官から、色々と、その時の職務質問を受けていたわ】
【まあ、だいたいがスプリングが対応してくださっていたんだけどね……】
「――なるほど」
【ハッキリ言って、こうなる事も織り込み済みだったのかもしれないわね……】
頷き得る警察官A。
続く言葉は。
「フム……それでは、この動画の説明は……?」
「それはおそらく、うちの病院の関係者のものだ」
「……」
あたしはあいつ等が怪しいと睨んでいた。
「おそらく、密告したのは、ドクターイリヤマにドクターライセンの両名だろう。もしくは、そのAIナビか。はたまた、救急患者のAIナビが流したという線もある」
「なぜ?」
「主人が危険な状態なんだ! そのAIナビとしても気になるところで、ウェーブグローバルを行き来して、必要な情報を周りに漏らしたんだろう。
……まぁ、もしもの可能性の話だがな……!」
「……」

【――あたしはその話を聞いていたの】
【彼はここで、1つ嘘をついたの】
【でもそれは、いくつもある可能性の話を語る事で、その警察官にいくつもの可能性の予測候補を与える事になる】
【……】
【……そうか! 後日、警察の捜査が進行しやすいからか!?】
【ええ、そうよ恵さんのお父さん!】
【どーゆう事?】
【真実の隠蔽工作のためだろう】
【その場にいるのは、何も知らない当事者】
【そう偽るのならば、そうしたいくつもの可能性の話を提示した方が、筋書きが通りやすいからだ】
【……考えたものね。そのスプリングという人は……!】
【ええ、根っからの悪……だからね……!】

「………………」
これには考えさせられる警察官A。
スプリングはこう問いかける。
「今日、私は彼女と2人でデート中だったのだ」
「ほぅ……」
「その時、彼女の手提げかばんが、件のバイクマンにひったくられたのだ。……そうだよな? クレメンティーナ?」
「うん!」
あたしは強く頷き得たわ。
「その後、私たちは病院に戻り、このクレメンティーナの手を応急処置したのだ。
とその時、一報が入った。
そうそれは、件のバイクマンが交通事故により、意識不明の重体となったのだ」
「なるほど……それが手術の話に繋がるのですね?」
「ああ、そーゆう事だ!」
「なるほど……」

【――あたし達は、警察官からの職務質問を受け答えながら、その動画説明をしたの】
【その警察官の方々も、情状酌量の余地ありと、恩赦を与えてくれたわ】
【まあ、当然よね』
【……じゃあ、無罪なの?】
【当然じゃないー!? クスッ】

「――筋が通る……!!」
「フッ」
笑みを浮かべるスプリング。
「では……その救急患者さんが、件のバイクマンのひったくり犯だったと……!?」
「ええ、そう言っているでしょ!?」
とあたしも語気を強めて、そう答えたの。
実はこう言った事は、何度もやり取りを繰り返して、後日改めて伺い、どこかに真偽のウソが紛れていないかどうか、警察官(ポリス)の方々はそうやって問い質しているのよ。
だから、筋書きはキチンと通さないのいけないの。
「……」
「……」
警察官Aは、警察官Bにアインコタクトを送り、
警察官Bは、その旨を受け取り、事情聴取を聞いていく。
「……」
『……』
また別のところでは、警察官Cがノートを取り、記録の帳簿を取っていく。
警察官アンドロイドも、どこかにいるアンドロイドと連携を取るように、意思疎通交換を行う。
これも、複数の警察官とアンドロイド等を通じて、日夜連絡共有を図っているためだ。
だから、犯人は余程のことがなければ、逃げられない。
「なるほど……それは災難でしたね……? ……では、そのギプスの利き手は?」
「……」
警察官の注目の視点は、その時、あたしの利き手に向けられたの。
それを見て彼は。
「……外しなさい」
「……うん……」
といい。
あたしはギプスの上から巻かれている包帯を取って、取り付けられていた固定器具を取り外して、素の利き手を見せる。
それを見た人たちの反応は。
「!」
それは一目見ただけで、紫色に変色し、腫れ上がっていたものだったわ。
警察官Aに代わり、警察官Bがこう話す。
「こっこんな手で……良くできましたね?」
思わす感心を覚えるほどだった。
「……」
「……」
「ハァ……大したものだぁ!」
これには警察官Bも腕を組み、関心を買うように背中の壁にもたれかかる。
そして、警察官Bに代わり、再び警察官Aがこう問いかける。
「では、被害者が、加害者を救ったという体になりますね!?」
「!」
「そうだ!」
彼もそれを認め、辻褄合わせを行う、
組んであったプラン通りに筋書きを通していく。
予定調和だ。
「なるほどなぁ……でもなぜ!? 一学生とあなたみたいな病院長が一緒にいるんですか? 聞けば、デート中だったとのことですが……?」
「ああ、クレメンティーナは、私の……だ」
「……」
微妙な間。
それは何とも意味深だったわ……。
「……」
「なるほど……」
事情聴取を取っていた警察官すらも、それを肯定ととる。
その横で、警察官Cが見聞きしたことを、ノートに記録帳簿を取るのだった。
警察官アンドロイドもそれを見聞きし、記憶回路にデータを取りつつ、他の警察官アンドロイドに情報共有を執り行う。
――そのドアの向こう、廊下で。
「――何!? ターミナルビルで火災だと!?」
「ああ、犯人はそこで立てこもり、民間人を人質に取っているようだ!!」
「なんて卑劣な!!」
「だが、強力なファイアウォールがあって、その『パスコード』を解かなければ、そこに踏み切れないでいるんだ!!」
「強行突破は!?」
「無理だ!! ターミナルビルの高層部だぞ!! 窓を叩き割って、侵入する頃には、少なからず犠牲者が出ている!!」
「何てことだ!!」


★彡
【スラム街】
それはアントラローダイトの報告により始まる事件だった。
『――ヨッシー!』
「ん?』
『これを見てくれ!』
「……これは……?」
『ウィルスたちを倒して、その現場に残っていたものだ……! 何かが気になってな……』
「……これはどこかの施設の……『パスコード』か……!?」
ヨーシキワーカの注目の視線が、そのパスコードに集まるのだった。
それは何かの事件性を伺わせるものだった。


TO BE CONTINUD……

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