第2章の第18話 アクアリウスファミリアのヒースとシャルロット あの日アンドロメダ星で何があったのか!?
☆彡
指令室にはアンドロメダ以下数名の兵士と来客の2人が着ていた。
そして、そこに新たに加わるは、スバルだった。
「……来たなスバル、わらわの隣に」
「はい」
僕はアンドロメダ王女の隣に座った
「王女、この人たちは?」
「この者たちは……、アクアリウスファミリアじゃ!」
「『アクアリウスファミリア』……?」
それは僕にとって、初めて聞く名前だった。
「アクアリウスファミリアの惑星は、水瓶座……『アクアリウス星』に当たる!」」
「星の名前がファミリア名義になっているのか……」
「大抵の場合、1つの星に1つのファミリアがあるからのぅ。2つもあるのは稀じゃぞ!」
「へ~」
どうやら基本的には、1つの星には1つのファミリアがあるらしく。
例外として、1つの星に2つのファミリアが混載している例があるらしい。
今の僕には、到底理解できないのでなんとなく理解するだけに留めた。
とこの人たちに向き直り。
「アクアリウスファミリアのヒースだ!」
「同じくシャルロットよ! よろしく」
「スバルです。よろしくお願いします」
その人たちは気さくな人柄だった。男の人と女の人の組み合わせだ。
僕たちは円卓を囲んだ。
「さて、率直に聞こう。今日、お越しになった理由は?」
「『星王ガニュメデス様』とそのご子息の『フォーマルハウト様』の神託に従い、そちらの地球人の方から率直な意見を聞きたいと思った」
「宇宙の法廷機関(あの場)には、おかしなくらい女王がいたからのぅ。さしずめお主たちの女王様もいたな」
「「……」」
これにはたははという感じで、ヒースさんもシャルロットさんも苦笑いしていた。
これは話題を変える必要があった。つまりそれは僕に――
「――奇しくもその子は、今最も注目を集めている! あのオーパーツに選ばれた少年としてだけではなく! 地球人の代表として」
「?」
「えーとなぜ僕が?」
これはわらわもまるで意味がわからなかった……。
なぜ、Lも関わっておるのだ。
「ここは1つ、両者の間にある隔たりからなくそう」
「そうですねヒース。まず、スバル君はアンドロメダ星で起こった事件の後の事を知らないのですからね」
「なるほど……。非を認め、わらわ達側から地球人側に歩み寄るか……よかろう、話そう、あの日何があったかを……!」
そして、アンドロメダ王女から語られるは、あの宇宙探査機が起こした、事故後の話だった――
☆彡
【――あの宇宙探査機が事件を起こす前】
【アンドロメダ王女の別荘】
わらわは別荘でくつろいでいた。
だが、わらわはくつろいでいても、わらわを護る兵士たちは稽古に励んでいた。
「はっ!」
「はっ!」
「せいや!」
わらわとLは木漏れ日の元、その様子を見守っていた。
「ハッ! ハッ! ハ――ッ!」
「……」
レグルス隊長はその手に持った剣で、兵士の1人を相手取っていた。冷静である。
これは模擬戦である。
レグルス隊長の反撃だ。
レグルス隊長は連続切りを盾の上から決め、蹴り技を放ち、その盾ごと相手を蹴り飛ばした。
蹴り飛ばされた相手は中空で「グッ」と堪えた。
エナジーア生命体であるため、その中空で踏みとどまろうとしたのだ。
だが、レグルス隊長のエナジーア弾の弾幕にあい、それを盾でガードした。
「グッグググ……」
とその盾で堪えようとしたが。
レグルス隊長はそのままエナジーア弾の弾幕を加えつつ。
その両足に力を込め、大地を踏みしめる。
狙うは攻撃中に、重い一撃を加える技だ。
レグルス隊長はそのまま躍り出た。光の矢となって弾幕に追い付き、その盾に蹴り技を放ち、力技で弾き飛ばした。
大きな隙が生まれた。畳み掛けるチャンスだ。
「なっ、なんの!!」
「甘い!!」
対戦相手はその手に持った剣を振りかぶり、攻撃態勢に移ったが、
それよりも早い一撃をレグルス隊長が放ち、勝敗が決した。
それは後頭部に放った蹴り技だった。
それを見ていた周りからは「あっ……」と呟きが漏れ、対戦相手は「ガッ」と呻吟の声を漏らした。
そのまま対戦相手は地表に叩きつけられ、「グゥ」とワンバウンドした。
そしてレグルス隊長は、この模擬戦を終わらせるため、その頭のすぐ横に剣をザクッと突き刺したのだった。
「……俺の勝ちだ。残念だったな」
「いっいっ痛て~~」
対戦相手は呻吟の声を上げた。相当痛そうだ。
「フフフ、少しは動きが良くなったが、まだまだだな……。
踏み込みが甘いぞ!
……さっきの空中戦では、できれば、身を翻すと同時にエナジーア弾を打ち、
相手の視界を奪うべきだった。
さすれば、勝っていたのはお主であったがな!」
「……滅相もありません。」
「フフッ、次回を楽しみにしているぞ!」
レグルス隊長は柄になく微笑み。
相手に背を向けて歩みだす。向かう先は木陰の下にいるアンドロメダ王女とL様。
その道の途中、兵士の1人に剣と盾を渡し、そのまま歩を進める。
周りの兵士たちは道を譲っていく中、足を一時止める。
「そうそう、シンギン!
始めの気迫は、中々のものだったぞ!
不覚にも俺は一瞬、気圧されそうになった……フッ、次回を楽しみにしている。精進しろよ」
「……ハッ」
シンギンと呼ばれた先程の対戦相手は、深々と頭を下げた。
「ご指導ありがとうございました。レグルス隊長」
俺は背中でその礼を聞き、手を挙げて返事を軽く返した。これぐらいのやり取りがちょうどいいのだ。
☆彡
姫様とL様は木漏れ日の元、読書していた。
L様が読んでいるのは、『ツナガリの開拓記』か。
私ことレグルスは、その場に足を運んだ。
「ただいま終わりました、王女」
「うむ、見ていたぞ」
私は胸に手を当てて敬服した。
その間L様は、本を読みふけっていた。
「さてL、お主もそろそろ体を動かせ」
「今いいところだからね。後で……」
「ハァ」
姫様は嘆息した。
どうやらL様は稽古より読書好きのようだ。
「構いませんよ姫様、また私からお誘いすることがありますので」
「といつつ、また勝ちをさらうんでしょレグルス隊長? あなたワザと初戦で手を抜いて、相手が突っ込んできたらカウンターを当ててくるもの。やりずらいよ正直!」
「ハハハハハ! これは一本取られました!」
これにはレグルス隊長も参った参ったした。
「これL! それは立派な兵法じゃ!
そもそも最初からレグルス隊長が本気を出してみろ! 誰も相手がしなくなるじゃろうが!!
それでは稽古にならん!! 終いにはぼっちプレイになるのじゃぞ!」
これには「たはは……」と苦笑いを零すレグルス隊長。意外な一面があった。
「とそうじゃレグルス、次はわらわが組み手の相手をやろうか?」
「いえいえ、ご冗談を! もうあんな事は結構です! 姫様は嬉々として、戦われるのであれば、できうる限りお避け下さいませ」
「もう、いつの話をしておるのじゃ。なんじゃつまらん」
わらわはムスッとした。
Lはその間、その本のページをめくっていた。
「はぁ……真摯(しんし)に取り組めば、わらわと同じように『高みに至る者』だろうに……。なぜ、お主はそこまで勤勉を……」
「……」
「どれ、何を読んでおるのか見せてみよ」
「あ……」
まず、Lが読んでいたのは『ツナガリの開拓記』じゃった。
次にそのサイコキネシス(プシキキニシス)で浮かせていた本の題名は、
『子供でもわかる異次元から引き出す原子論』『科学から魔法科学への成り立ち』『生命の進化論、惑星の風土や重力によるエナジーア生命体への進化の起源』だった。
わらわはそれらを見て。
「ほっほう。中々以外にいいところをつきよるなL。勤勉も感心じゃが、できれば稽古にも勤しめ! 体がなまってしまうぞ、なあレグルスや」
「さ、さささ左様で」
わらわは体がウズウズしていた。
それに引き換え、レグルスは何かに怯えておるような。なぜ……。
もうあんな喜々とした手合わせは勘弁してほしい。どれだけ我々が補修するのに苦労したことか。
「ハァ……」
「それじゃあ姫姉に質問していいかな?」
「んっ何かな?」
「僕たちアンドロメダ星人はどこからきて、いったいどこへ行くのかな?」
(こらこらL、そんな答え辛い問題を吹っかけるでないわ)
とわらわは心の中で愚痴った。
「そうじゃのう、いったいわらわたちはどこからきてどこへ行くのかか……。
わらわは思うに、必ず導く者が現れる!
それがツナガリじゃった……!
時のアンドロメダ王女はその昔、ツナガリと出会い、ファミリアを発足したと聞く!
それが『宇宙団体協議連合加盟』通称『ファミリア』に加盟したのじゃ!
今の暮らしぶりがあるのも、そういった偉人たちあってのお陰じゃろうな……!」
「でも、僕はオーパーツで、限りある命がある、成長もする。
そんな短い一生の中で、そんな偉人に会えるかどうか……」
「なんじゃお主、そんな難しいことを考えておったのか。かようなもの、なるようになれじゃ!」
「……」
姫姉はこの話を上手い具合に締めくくった。
どうやら僕が、そんな偉人に合うのは相当難しそうだ。
☆彡
――そんな時だった。凶報を報せる声が届いたのは。
「姫様――っ!!!」
それはうちの衛兵や兵士ではなく、騎士団ものが飛んできた。それは伝令役じゃった。
「「!!」」
「何事じゃ!?」
――わらわ達は、その伝令から凶報を聞き、大変驚いた。
謎の金属生命体(?)が、突然空の向こうから現れて、都市や街々を破壊し飛び去ったというのじゃ。
被害報告によれば、甚大……死傷者も出たらしい。
中には複数のファミリアにおける、死傷者もでたとか。役員や重役の死傷者も……。
今、累計で死傷者、負傷者、行方不明者を洗っている最中らしい……。
こんな案件初めてじゃ。
「いったいどこの誰がやったんじゃ……!?」
「そこはまだ……」
「ッッ……無辜(むこ)の民の痛哭はもっともじゃ!
最大の過失は、惑星間の横のつながり……他所のファミリアから来賓として来ていた方々まで、失うたことじゃ!
こんな事初めてじゃぞ……!
これは信用問題に関わる!
加えて、海上都市タラッシーポルティに蓄えていた、貴重な財産まで引火事故を起こし負うたか……。
大失態ではないか……!」
わらわは頭を垂れた。
「……」
「……」
レグルスは、伝令の騎士は、今のアンドロメダ王女を見て、恐れた。
今の姫様の心境、葛藤、焦燥は計り知れない。
「……もう一度聞く! やったのは誰じゃ!?」
その声には怒気が籠っていた。
俺たちは、心なしか引けていた。
その質問に伝令の騎士団の者はこう答えた。
「……録画していた映像、人伝手の使いによれば……どのファミリアものなのか、まだわからないとのことです」
「……もう、いい……。」
この時姫様の顔立ちは、鋭い目つき、険しい顔立ちであった。すこぶる激情していた。
「……こいっお前たち!! 目指すは『海上都市タラッシーポルティじゃ』!!」
「姫様っ!!あなた様は行ってはなりませぬ!! グハーッ!!」
姫様は、伝令の騎士団の者にエナジーア弾を放った。自分を止めようとした厄介者を吹き飛ばしたのだ。
「レグルス!! L!! わらわと共に付いてこい!! 衛兵! 兵士たち! 行くぞ――っ!!」
すぐさま姫様は、光の矢となって大空の向こうへ。
レグルス、L、その他の衛兵や兵士たちも光の矢となって、大空の向こうへ飛んでいくのだった――
☆彡
わらわたちは雲海上空を飛んでいた。
そして、雲の切れ目から海上都市タラッシーポルティが見え、降下していくのだった。
【海上都市タラッシーポルティ】
わらわたちはその地に足をついた。
高層ビル群の幾つかは半壊し、窓ガラスやコンクリート壁が欠けていた。
道路上には窓ガラスの破片と幾つかの血痕の跡があった。
そして、涙ぐみながら遺体を運んでいく人々の姿も……。
わらわは憤り、その握り拳を震わせた。
その時、わらわの後ろから声が上がる。
「誰がこんなことを……!!」
「……俺たちがもっと早く駆けつけていればッ!!」
「許せない……ッ」
「……ッッ。俺たちも救援、救助活動を手伝うぞ!!」」
とレグルスが指示を飛ばして、衛兵たちは「はいっ!!!」と答えたのだった。
わらわもレグルスに続き、追って指示を出す。
「部隊を3班に分ける!!」
「!」
「2班はレグルス!」
レグルスが頷く。
「3班はシンギン、そちに任せる!」
シンギンも頷く。
「そして、1班はわらわが努める!! L! お前もわらわと来い!」
Lも頷く。
「それでは散開!!」
とレグルスが散開の指示を出して、兵士たちは各班に分かれて散っていくのだった。
(もっと早く! もっと早く! もっと早く事に当たっていれば、犠牲者の数は、抑えられたのじゃ! わらわは己の力のなさが……口惜しい……!!)
「あっ! あそこで怪我人を運んでいるのは、ファミリアの人じゃない」
「……ッッ」
(ファミリアの方々が率先して怪我人を運んでおるというのに、わらわは何をやっておるんじゃ)
「姫様! ここは私が救援に行ってきます!」
「うむ! 任せた! セシア!」
セシアと呼ばれた兵士は、ファミリアの方々の救助活動を手伝いに向かった。
「姫様! 我々も救助活動に向かいます!」
「うむ! 任せた! アロン! ゼネタ! キヌマ! タダラ! ファヌ!」
と次々と兵士たちがわらわの元から離れ、救助活動に向かうのじゃった。
今、わらわの隣にいるのは、L1人だけとなった。
その浮遊速度が速いアンドロメダ王女。その隣に浮遊しながら付いていくのがL。
わらわはこの時、歯がゆさを感じていた。
「ねえ、姫姉、何でファミリアの方々は率先して、僕たちの星を助けてくれるの?」
「それはファミリア同士の横の繋がりがあるからじゃ!
それに困っている人を助けに行くのは、当然じゃ! それを人徳という!」
「人徳……!」
「お主が好きなツナガリを例に出そう! 人徳とは多くの人から慕われていることじゃ!
人徳とは、その人が持っている徳のことを指し示す。
この『徳』とは、『品性や知性』『生まれつき持つ能力や天性』『その人が持つ気質や能力』のことをいい、
性格や原動力、言葉遣いなんかがそうさせている。
また、その人の持つ、倫理観や正しい心がそうさせておるのじゃ!」
「倫理観や正しい心……!」
「道を踏み外すなということじゃ。それは人同士の繋がり、人の正しい在り方を指し示す!」
「人の正しい在り方……それがファミリアの在り方……」
「……ッッ」
(そうか)
わらわはこの時、大事なことに気がついた。
「これから先、民を守るためには、ファミリアの信頼を損なう訳にはいかぬのじゃ!
この『宇宙超高度経済成長時代』を存続させるためにも、この繋がりを維持しなければならぬのじゃ!
わらわ自身が、率先して、この事態に当たらねばならぬ!!
……そして、犯人を必ずや……!!)
わらわは握り拳を震わせた。
【――アンドロメダ王女は正しく理解していた】
【公益を行う以上、最大の失点は、信頼関係を損なうこと】
【もしも損なった場合……】
【民の暮らしぶりは、今の生活水準よりも悪くなり、大きく困窮する恐れがあった……】
【中には、ファミリアの荒くれ者が混ざり、例え捕えても、難癖をつけられ、事態はより、混乱の一途を辿る――】
【そんな構想が頭に過っていく中、助けを求める声が聞こえた】
「――た、助けてくれ。」
「!」
「妻が子供が!」
助けを求めていたのは、1人の犬人(キュオーン)だった。
周りは瓦礫の山で、どうやら妻子がその下敷きになっているらしい。
その男性も血まみれで、その瓦礫を退かそうと躍起になっていた。
わらわはすぐに動いた。
「どけっ!!」
わらわは掌にエナジーアを集束し、これを連射した。
ドッドッドッ
いつかのように普通に攻撃してはいけなかった。
わらわはエナジーアを弱め、これを速射射撃することによって、その瓦礫を吹き飛ばしたのじゃ。
――妻子を救出したわらわ達は、その光景を見届ける。犬人(キュオーン)の夫が妻子と抱き合う姿を。
「あぁ、ありがとうありがとう。」
「……礼なぞいらん。人として、当然のことをしたまでじゃ! それよりも救助が遅くなって済まんのぅ!!
笑みを浮かべる犬人(キュオーン)の家族たち。
わらわはその様を見て、歯がゆさを感じた。
わらわは助け出したそのご家族、その娘さんと目線がかち合う。
「「……」」
「済まなかったのぅ……遅くなった。痛くなかったか?」
少女は「うぅん……」と首を振るう。
わかってる、なんて我慢強い犬人の少女じゃ。
「わらわたちがもっと早く駆けつけていれば、被害はここまで、大きくはならなかった……許してくれ!」
「……」
わらわはこの被害を受けた海上都市を見た。所々から黒煙が上がっている。
少女は何も言わない。
それは、お父さんもお母さんも同じだった。
「……」
わらわは伝令の騎士団からの報せを思い出していた。
現場にいたこの者たちに、改めて問いただすことにする。
「この現場状況を察するに、いったい何があったのじゃ!?
わらわたちは、大した情報を知り得ておらぬ。できれば掻い摘んで教えてもらえぬか? ここでいったい何があったのかを……!」
とその時、Lはアンドロメダ王女から離れていた。
(あれ、何だろう……?)
☆彡
――自分にも救助活動の場がないか探していたのだ。
その時発見したんだ。
壊れかけの仮面を被った亜人の男性が、狐人(アローペクス)の娘さんを救助している姿を。
その男性は、片腕を失っていた。
「クソがっ!! あの女(アマ)!! 俺を道連れにしようとしやがった!!」
「……」
だが、この片腕を失った状態でどうやってこのガキを運ぼうか。
んっ、なんかふよふよしている影が。
「んっ! 何だおめえ!」
「僕はLだよ」
「L……? 初めて見る種族だな……さすがアンドロメダ星だ」
「種族~?」
僕は疑問に思った。
姫姉たちは僕のことをオーパーツと言っていたけど……。
この人の言う種族とはまた違うんだろうか。
「その人も要救助者だよね?」
「あっ何をする!?」
僕はサイコキネシス(プシキキニシス)でその要救助者を浮遊させた。
これには壊れかけの仮面を被った亜人の男性も驚いた。
「……ッッ」
「このまま、この子を緊急避難所に連れて行こう!」
「あっ何をする気だ!?」
「えっ……」
「いや、え~と……その必要はないんだよ僕ぅ」
「?」
「その娘(こ)はね。おじさんの知り合いの娘さんなんだ。でもね、あの事故で早くにお母さんと死別したんだよぉ」
「そ、そうなの……!? 可哀そうな娘(こ)なんだね……」
「あぁそうなんだよぉ。それがいきなり緊急避難所で目を覚ましてごらん。場は大騒ぎだよ。
だからね。そのままおじさんの案内するところまで、運んでくれないかな~?」
「うん、いいよ。おじさん、片腕ないもんね」
「そ、そうだね……ハハハハ……」
その失った片腕からは、血が余り出ていなかった……。炎でも焙ったのか、止血した跡があったんだ。
そのまま僕は、このおじさんに誘導されて、どこか知らないところに、この可哀そうな狐人の娘さんを運んだのだった……。
☆彡
わらわはこの少女と同じ目線に下げて、この人たちから見た限りの事情を聴いていた。
「その金属の物体は、向こうの方角から飛んできたんだよ」
「……あっちの方角か……」
わらわは厳しい目線を向けた。
「その物体はどこに逃げた? 何が目的だったのじゃ!?」
「逃げた方向はあの穴だよ」
「……」
それはドームの穴を突き破って逃げた穴だった。
「でもね、何が目的だったかわかんないの……」
「……」
それは動機がわからない犯行だった。
「まさか無差別殺人か……」
それはわらわの口を衝いてでた。
「なんて質の悪い……!」
わらわは心底怒った。
その時、どこからか「姫様~~」とわらわを呼ぶ声が聞こえた。
「この声は……」
それは宙を駆けるデネボラだった。
「デネボラ――! わらわはここじゃ! ここにおるぞーっ!」
その声に宙を駆けるデネボラは気がついた。
すぐにその場所に降下する。
「姫様何やってるんですか!?」
「いや……」
「「「姫様ッッ!?」」」
これには犬人(キュオーン)の親子も驚いた。
すぐに足を折り、手を前に出して、その場で平伏した。
「勝手に別荘を飛び出さないでください!! 対応に慌てるのは私たちなんですよ! もう!」
「そこを何とかするのがお主たちの器量じゃろうが……。丁度いい、お主も加われデネボラ」
「……わかりましたよ。後で上手い言い訳を考える私たちの身にもなってくださいね!」
「そこは助力しよう」
デネボラが仲間に加わった。
「それはそうとLはどうしたんですか? 確か一緒に飛び出したと聞きましたけど……」
「なぁに……Lならそこに……」
Lは仲間から外れていた。
「「「「「……」」」」」
場に静寂が流れる。
「いっ……いない! さっきまでわらわと一緒に……ッ!」
「あの小さくて可愛い『孔雀狐』(パゴニアレポウ)さん? なら、あっちの方に行ったよ」
と犬人(キュオーン)の少女がそちら側を指差した。
「いっいつの間に!!」
「何やってるんですか王女ッッッ!!!」
「!!」
これにはデネボラが激怒した。
さすがのわらわもビビる。
「あれ程Lの事は機密理にしてくださいと何度も言ってるでしょうがッッッ!!!」
「済まん。それは済まん……」
普段デネボラは優しい女子だった。それが今ではこの激怒ぶりだ。
普段おとなしい子ほど怒らせてはいけないのだ。
これにはわらわも、デネボラに圧された。
「Lになぜ兵士を付けていないんですか!!! Lを失ったらソーテリアー星にどう言い訳するんですか!!! 私責任持ちませんからね!!!」
「わかったわかった、落ち着けデネボラ……」
あたしは「フンッ」と姫様に背を向けた。
その後ろから姫様がどうどうと宥めてきた。
無駄ですよ、キチンと反省されるまでは。もうホントにこの人はッッ。
「……ハァ」
なぜわらわがこうまで怒られるんじゃ。わらわは王女だぞ。
これにはデネボラもプンプン怒っておった。
どうしろと言うんじゃ。
「Lってなーにー? 機密理ってなーにー?」
「「!!」」
これにはわらわもデネボラも対応に苦慮する。
「「……ッッ」」
だが、わらわは王女じゃ。毅然(きぜん)とした態度で対応した。
「……フフッ、一国の王女には国民には話せない秘密があるのじゃ。それを秘密の花というものじゃよ」
「秘密の花?」
少女は首を傾げる。
「そうじゃ。女子(おなご)とは、着飾って美しく生きるものじゃよ。なぁわかるな、お嬢ちゃん?」
「う~ん……」
とわらわは毅然とした態度で対応し、この場を乗り切る。
その際、この亜人の少女の頭をなでなでしてあげた。
「んっ」
一国の王女にこんな事をしてもらったのじゃ。光栄じゃろう、犬人(キュオーン)の少女よ。
☆彡
その頃Lは。
亜人のおじさんとその狐人(アローペクス)の娘さんを無事に送り届け。アンドロメダ王女の元に向かっていたその道の途中――
「キャ――ッ!!」
それはエルフお姉さんだった。そのお姉さんに向かって落ちてくるは、半壊したビルの瓦礫だった。
このままではエルフのお姉さんは下敷きなって大変だ。
僕は危ないとその小さな手を突き出し、サイコキネシス(プシキキニシス)を放ち。その瓦礫を止めた。
「あ……あれ……」
「お姉さん早く、そこから逃げて!」
「うっうん!」
とお姉さんがその下敷きになりそうだった場所から離れると。ドォンとその瓦礫が落ちたのだった。
「大丈夫お姉さん」
「き、君は?」
「僕、Lってゆーんだ!」
「L!?」
「じゃあ僕はこれで! 次の要救助者の元へ行かなきゃ! 気をつけて帰ってね。じゃ」
と僕はお姉さんに別れを告げて、次の要救助者の所へ向かった。
その現場に残されたお姉さんは「L……ありがとね」と呟いたのだった。
☆彡
アンドロメダ王女の場に1班と2班の兵士たちが集まっていた。
この場にいないのはLぐらいだ。
「Lがどこかに消えた――ッ!!?」
「えええええ」
別の意味で場は大騒ぎになっていた。
「うむ、そうなのじゃ! それ故に救助活動と並行してLを見つけ出してくれ!」
「なんて困ったことに……!」
これにはレグルス隊長も頭を抱えていた。
「それほどLとは大事なんですか?」
「Lはともすれば、一国を傾ける兵器にも成り得るのです」
兵士の質問に答えたのはデネボラだった。
「兵器……」
「一国を……傾ける……」
「あれが……!?」
「生前、トナ博士がLの事を徹底的に調べ上げ、2つの兵器を作りました。
その1つが今、今レグルス隊長が左腕に付けてある『エナジーア変換携帯端末』なのです。
そして、とある事故でそれが暴発し、ある惑星が今も氷の惑星となっているのです。
そこに住んでいた狐人(アンテロポスサイエンポウ)! 縮めてアローペクスは今も帰れるずにいる……」
「それって……絶滅したはずじゃ」
「いや! わらわの所に届いた報せでは、ある施設に母子のアローペクスがいたはずじゃ!
だが、その施設は夜襲をかけられ、そのたった2人の親子は行方知れずに……」
「最後のアローペクスか……。考えられるのはブラックマーケットぐらいだが……それもどこにあるのか……」
「でもさ、Lってすごくない?」
「もしかしてもしかしないでも、Lってすごいの!?」
「スゴイも何も、国を傾ける軍事力に成り得るのじゃ! だからわらわは常に目を光らせていたのじゃが……」
「もうっ!!! ホントに何やってるんですか!!! ちゃんと目を光らせておいてくださいよ!!!」
「済まんって……」
これにはわらわも反省した。
「もし、Lに何かあったら……エナジーア変換携帯端末以上の兵器が運用される危険があるんですよ! わかってるんですか!!?」
「ううっ……」
これにはわらわも猛省した。
「あの、2つの内のもう1つは?」
「細菌兵器ですよ」
「それはまた……」
「その細菌兵器により、私たちアンドロメダ星の人類は絶滅寸前まで追い込まれて、生物の大進化が起きた!」
「!!!」
「その後、ソーテリアー星は各ファミリアから叩かれて、国は滅亡……。その後、アンドロメダ星に『L』と『エナジーア変換携帯端末』が寄贈されたと記載があるわ」
「もしかしてLってスゴイ!!?」
「お宝だったんだ……しかも国宝級の!!」
「つまり、我々は第一優先でL様を保護すればいいわけですね」
「うむ。頼む!」
「くれぐれも、Lの事は機密理に。では散開!」
とデネボラが告げ。
その場にいたレグルス以下たちは散ったのだった。
第一優先はLの保護、そして要救助者の保護活動だ。
だが、その話をとあるファミリアの者が聞いていたのだった。
「……」
【――これが、秘密の情報が流れた原因だった】
☆彡
わらわたちは、第一優先でLの保護を第一優先とし、要救助者を助けに向かう。その道の途中――
「姫様――ッ!!」
「何じゃ!?」
「『商業別組合ギルド』(シネツニーア)にお越しくださいと、最高責任者の方が!! 大変失礼を承知なのですが、今、この事態を納めるためには、姫様の肉声が必要なんです!!」
「……わかった!! すぐに行こう!!」
わらわはすぐに『商業別組合ギルド』(シネツニーア)へ向った。
――そこで待っていたのは、最高責任者以下数名の職員であった。
「よくぞ来てくださいました! 王女アンドロメダ!!」
「今民は混乱されています! 王女の肉声を通して、民の混乱を和らげてください」
「……任された」
わらわは快く了承した。
『――海上都市タラッシーポルティにお住いの皆さん、聞こえるでしょうか? わらわは、王女アンドロメダです」
この声に民が、各ファミリアの方々が顔を上げた。
ここで一度、救助活動の手が止まる。
『今、そちらに向かっている衛兵と兵士の方々、そして騎士団の皆様に感謝します。
そして、この場に居合わせた警備隊員の方々、及びファミリアの方々に謝意を送ります。誠にありがとうございます』
衛兵たちと兵士たち、騎士団が、警備隊員が顔を上げる。
そして、ファミリアの方々が胸に手を置いて謝意を返した。
『事態はまだ収拾(しゅうしゅう)していませんが、後少しの辛抱です!! 皆さん、頑張ってください!!
救助者誘導は、現場の方々に采配を託します。
量こそ少ないですが、食事を取れるよう、手配を回しました。皆様に敬意を――!!」
そのアンドロメダの肉声を聞いた現場の方々は。
「姫姉の声だ」
Lは顔を上げた。
「なんだ坊ちゃん。王女様のことを呼び捨てかい!?」
「あともう少しだ、坊主! さあ、がんばれよっ!!」
「はっはい!」
瓦礫の間に挟まった猫人(ガータ)を、Lとおじ様たちは協力して、助け出そうとしていた。
Lはサイコキネシス(プシキキニシス)で片方の瓦礫を浮かせて、
その間におじ様たちが猫人(ガータ)を助け出そうと奮起していた。
「後もう少しだよ、がんばって!!」
「ワコッワコッ」
同じ猫人(ガーター)の少女が声援を送り、犬みたいな鶏みたいな動物が頑張れと叫んだ。
「よし、後少しだ」
そして、瓦礫の間に挟まっていた少年が助け出された。
「おおおおお」
「よしっよく頑張ったな! 坊主!」
「偉いぞ!」
「うん、ありがとうみんな!」
「フフフ、こーゆう人助けもいいな」
とLは笑っていた。
「さあ、お前たち、俺たちも姫様の期待に応えるよう、この辺にいる要救助たちを助け出していくぞーっ!!」
「「「「「おおおおお」」」」」
とLもそこに加わっていた。
☆彡
そして、アンドロメダ王女は事に当たるため、『商業別組合ギルド』(シネツニーア)と会談に当たっていた。
さらにこの場には、いくつかのファミリアの方々の面々があった。
かに座『カンケルファミリア』
てんびん座『リブラファミリア』
おうし座『タウルスファミリア』
やぎ座『カプリコルヌスファミリア』だった。
さらにシネツニーアの最高責任者を務めるのは、エイリアングレイだ。
わらわたちは今、円卓を囲んでいた。
「つまり、この事故を引き起こしたのは、どのファミリアでもないと……!?」
「ヂヂィ」
エイリアングレイは言葉こそ話せるが、
姫たちには言葉よりも、自身が体験したイメージ映像をテレパシー(チレパティア)として送る。
なにも、言葉遣いが下手という訳ではなく、イメージ映像の方が、シックリくるというそーゆう判断だった。
「なるほど……確かに機体にはファミリアのシンボルマークがない。
加盟国でも非加盟国でもないとするならば……。ファミリアではない可能性が浮上する……!」
コンコンとその時室内にドアノック音がした。
「ヂヂィ」
エイリアングレイはテレパシー(チレパティア)の他に、サイコキネシス(プシキキニシス)を備えており、その者の入室を許可した。
バタンッと両扉が開いた。
「失礼します。
謎の金属物体は、ワープ航法を用いて逃走!! 現在、行方を追っています!」
「……どこの銀河かわかるか!?」
「天の川銀河方面であることは確かです!」
「あい、わかった。」
「ヂヂィ。ヂヂィ。ヂヂィ」
(あぁ頭痛~~っ……これだから大量の情報に伴うテレパシー(チレパーティア)は嫌なのだ……ッッ!)
「エイリアングレイ! レイブン殿! 人の言葉でお願いできますか?」
「ヂヂィ……我々の予想では、
天の川銀河、太陽系方面が怪しいかと……!
テレパシー(チレパーティア)伝いによる、情報によれば、その物体の金属片を回収したとのことです!
エンジニア、科学者たちを通じ、もう間もなく、どこの惑星の物なのか判別が可能です!」
「わかった。分析を急がせろ!」
「畏まりました」
とエイリアングレイレイブン殿はわらわに一礼した。
☆彡
わらわは商業別組合ギルド(シネツニーア)を探索していた。
お付きの衛兵たちは数名、わらわの周りを固めていた。
兵士たちには外を任せている。
だが、わらわはどうにもうざったく思う。
その1階は、開拓者たちの怒気が溢れていた。
「いったいどこのファミリアもんだ! ぜってえ許さねえぞ!!」
「あの妙な機体のせいで、妻も子供も大怪我したんだ!! ぜってえタダじゃおかねぞ!!」
「あの機体のせいで、取引が台無しだ!! 『商業別組合ギルド』(シネツニーア)は何やってるんだ!!」
「うちのテナントがもう滅茶苦茶だ!! 営業妨害もほどほどにしろーっ!!」
「今現場の者が、状況を精査していますので、もうしばらくお待ちください!!」
みんな心がやられていた。現場は荒んでいた。
いきなりの出来事、これを事故と呼ばずして何と呼ぶのか。わらわはやるせない気持ちになった。
握り拳を震わせる。
わらわは、無辜の民を傷つけられた痛みからか、憤激した。
☆彡
わらわは『商業別組合ギルド』(シネツニーア)を出た。
わらわの目の前には、1から3班までの衛兵たちと兵士たちが控えていた。
「死傷者は……?」
「……海上都市タラッシーポルティ、その人口の約1割以上の人たちの命が失われたとのことです」
「そうか……」
わらわは俯いていた。
その顔は険しく、怒りをにじませていた。
わらわは顔を上げ、兵士たちから視線を逸らし、一か所に目が止まった。
衣類が降ってきたガラス片でボロボロになった女性がいた。
その女性はすでに亡くなった赤ん坊を抱きながら、涙を流し、あやしていた。もうその赤子は泣かないのに……。
その女性はまるで、この現実を受け止めきれなかった……。
「……」
あぁダメだ、わらわはこの現実を表現できる言葉を持ち合わせていない。
いや、持ち合わせてなるものかッッ。
「……なぁ」
わらわは失礼ながらその女性を指差した。
「あそこにいる女性には、何か温かい食事を与えるように、告げておけ。」
「……ハッ」
その状況を見て、理解した衛兵の1人は承服した。その顔には涙が流れていた。
その者は向う、部隊から離れ、その可哀そうな女性の元へ歩み寄る。
その女性と何かを話し、その人は大いに泣いた。
わらわたちはその一部始終を見届けたのだった。
「……可哀そうに。……また無辜の民から、1つ小さな命が失われた……」
「……」
多くの兵士たちは何も言えなかった。
「……」
「……」
場に静寂な空気が流れる。
その中で1人の兵士が声を上げた。
「救助を続ける人たちの中で、Lらしき『孔雀狐』(パゴニアレポウ)を見た人たちがいます。……迎えに行きましょう、L様を!」
「……」
☆彡
その後わらわたちは、Lを迎えに行った。
Lは、救助を続ける人たちとともにいた。見つけるのは容易くかった。
だが、その時、わらわたちは気づけなかった。
あるファミリアの者が、Lをマークしていたことに。
「……!」
その者はわらわたちの動きに逸早く気づき、わらわたちに気づかれないうちに、その場から姿を消したのだった……。
「L!」
「あっ姫姉だ!」
「えっ、まさか王女アンドロメダ!?」
「初めて見た!」
わらわはヅカヅカとLに歩み寄り、その頭をドツイた。
これには周りにいた人たちが驚いた。ファミリアの方々も。
「おおぅ!!」
ドツかれた頭を押さえるL、呻吟の声を漏らした。
「なにわらわの側を離れておる! L! お主には命じておったじゃろ! 片時もわらわの側を離れるなと!」
「いや……僕も人助けをしようと……!」
「お主の役目は、わらわの側を離れぬことじゃ! もしも離れる場合、必ず兵士を同行させるのじゃ! わかったか!?」
「……ッッ」
「わかったか! L!」
「はい……姫姉」
これには僕も渋々同意した。
「おぉ……」
「あの坊ちゃん何者なんだ……?」
「にしても……」
(((((王女怖ぇ……)))))
救助を行っていた地元の人たちとファミリアの方々は、強くそう思った。
その時、兵士の1人があるものを発見した。それは宇宙探査機の装甲の一部だった。
「姫様! これを見てください!」
「これは……」
☆彡
わらわたちはその宇宙探査機の装甲の一部を持って、エイリアングレイレイブン殿の所へ訪れていた。
「ふむ……。各々のファミリアの話をまとめると、これは――『天の川銀河』第3太陽系の地球という惑星で、造られたものだ」
「地球……天の川銀河……聞いた事あるな……あの星か……!」
それはお隣の銀河だった。
「いや、ちょっと待てよ……」
アンドロメダ王女は、ここは一度落ち着いて、熟考(じゅくこう)した。
いいも悪いも含めてだ。
そのためには、一度冷静に分析する必要性があった。
「レイブン殿。確か地球にはまだ、ワープ航法技術は確立していないと……認識しているのですが……!」
「ヂヂィ、ヂヂィ」
(またか……テレパシー(チレパーティア)!」
わらわは頭を痛めた。このクソテレパシー(チレパーティア)能力者め。
「だからそれを止めろと……!」
そして流れ込んでくる、レイブン殿が記憶していた情報が共有される。
【――地球人と良く似た『プレアデス星人』が地球人と接触し、その技術を提供していた】
【地球人たちは彼等と意思疎通を図り、ファミリアの存在を知る事になった】
【食談と会談を重ねる度に、より信頼関係は強固なものとなっていく】
【だが、民間人にはその情報は秘匿として伏せていた……】
【地球人全員が、宇宙人たちのことを知り、それを受け入れるにはまだまだ長い年月が必要とされていたからだ】
【その間、地球人も、『プレアデス星団』も、ファミリアの方々も何もしなかった訳ではない】
【技術を提供し、地球人が自ら革新的な近代文明を築いていくのがよろしいと判断したためだ】
【――その長い時間の中、ある変化が訪れた】
【それがプレアデス星人が地球人の若者と婚姻を結び、子供をもうけたという話だ】
【俗にいう地球人との混血児(ハーフ)である】
【そんな折、各ファミリアの若者たちが続々と地球人たちと婚姻を結び、混血児(ハーフ)が現れ出したのだ】
【それが母星の技術を地球に流出(リーク)した要因である】
【その中に含まれていたのが、ワープ航法技術、次元トンネルであった――】
「――わかった。技術の革新の裏には、混血児(ハーフ)の宇宙人たちの手助けがあったのじゃな!」
「ヂヂィ、ヂヂィ。」
わらわは席を立った。
すぐに現場へ向かう。
疑問が氷解した。
だが、この落とし前はつけねばならなかった。
わらわは両扉を強く開け、この場を後にするのだった。
両扉の前には、わらわの勇敢なる兵士たちが集っていた。
その中の研究者デネボラが語りかけてきた。
「姫。どちらへ?」
「地球人たちに責任を取らせる!
無辜の民を傷つけらえた手前、それは報復しかない」
わらわはこの時、仕返しをしようとしていた。
「待て姫!!」
「報復はさすがにまずい!!」
「やり過ぎたら、取り返しがつかない事態に、発展しかねないぞ!!」
「なら、こう言いなおそう!」
わらわの背後、両扉の奥から聴こえるくるは各ファミリアの人種たち。
わらわはその場から空中浮遊で円卓まで戻り、その証拠の品、宇宙探査機の装甲の一部に手を触れる。
「地球人たちにはそれ相応の報いを……! 無辜の民たちの慟哭を、嘆きを、痛さを知ってもらう!!」
「……ッッ」
ダメだ、もう止まらない。
「無辜の民たちは傷つけられ、親を、子を亡くし、生まれたばかりの子も亡くした……!
……涙を流し、声を荒上げ、慟哭し、悲鳴を上げているのだ!!
それなのに、わらわにジッとしていろと?
それが王族のすることか!?
わらわはジッとなぞしていられない!
わらわは動くぞ!! それが民の上に立つ者としての責務、王だからだ!!」
「……ッッ」
それは王として資質、才覚であった。
「さらに言えば、今回の被害は、安全面を損ない。宇宙でも安全な国としての信頼を地に落とした……! わらわはとても容認できない!!!」
「「「「「!」」」」」
アンドロメダ王女は正しく王女だった。それは私たちの心を揺さぶった。
「やめろと言われても、止まることなぞできぬっっっのだ!!! それは抑えることもできない――心の衝動からくるものだ!!」
「「「「「!」」」」」
再び、今度はドクンと我々の心を打った。
「わらわはこの国を、民を愛している! 生まれ育ったこの土地を! 大地を! 空を!
あれはわらわの民の笑顔を奪った! 明日を奪った! どうにも許せぬのだ!!!」
わらわは空中浮遊し、その場を退出するのだった。
そのすぐ後を、各々ファミリアの方々が手を伸ばし、止めようとするのだが……。心を打たれ、何も言えなかった……。
「……ッッ……ッッ」
そんな様子を眺めていたのは、エイリアングレイレイブンであった。
「お転婆姫の直情型は変わらずか……」
「……お転婆姫……」
「うむ」
私ことレイブンは、窓の外の景色を見た。
「荒れるな……。これは吹くな、嵐が……」
外の景色はどんよりとしていて、風が強くなっていた。
☆彡
アンドロメダ王女は公演の場を開いていた。
それを聞いているのは無辜の民であり、ファミリアの方々であった。
「――以上のように、地球人たちは、わらわのたちの住まうこの星を攻撃した!!
皆の命、手や足を奪い、無慈悲に愛する者の命を奪った!
あまつさえ、貯蔵していた資源まで手を下した!! これは許されざる行いっっっ悪食(あくじき)だ!!」
「「「「「「「「「「そうだそうだ! 悪食だ!!!」」」」」」」」」」
民は一同に怒った。
「今回の事件を通して、ファミリアの方々も手傷を負い、開拓者生命を奪われた人もいるときく!! これは断固として許してはいけない!!」
「……ッッ」
「「「「「「「「「「そうだ! 許していけない!!!」」」」」」」」」」
ファミリアの方々にも、怒りの炎が灯る。
「今回の事件を起こした、首謀者には死よりも辛い制裁を与える!! そうでなければ、示しがつかない!」
「「「「「「「「「「おおおおお!!!」」」」」」」」」」
「必ずわらわたちは、その首謀者を捕まえる!!! ファミリアの方々よ、できれば協力を打診したい!! わらわに力を貸してくれ!!」
これにはファミリアの方々もコクリと頷き。「「「「「「「「「「おおおおお!!!」」」」」」」」」」と声を荒上げ、高々と手を突き上げたのだった。
「その協力の打診とは、『早期決着』じゃ!!」
「早期決着……」
ザワザワと民衆がファミリアの方々が騒いだ。
「その意図とは……?」
「戦いが長引けば、それだけ戦火の炎が上がる! 死傷者もたくさん出よう! わらわもそれを望まない!」
「……」
ファミリアの方々はその言葉を聞き入っていた。
だが、どうにも無理が生じる。その無理が矛盾だ。
「矛盾もしよう! それはわらわもわかる!
だが! 地球人たちの間で混血児(ハーフ)をもうけていた種族もいると聞く! それもまた事実!
父や母のいる故郷(ふるさと)を、攻撃し過ぎてはいけない、その引き際を見誤っていけないのだ!
だからこそ! その為の早期決着なのじゃ!!」
「なんて慈悲深い」
それは誰かの声だった。
それにこれには、なるほどとファミリアの方々が頷いたのだった。
さらにアンドロメダ王女の演説は続く。
「本作戦は早期決着を望む!!
戦火の火種をこの星に持ち込まないために、圧倒的な力で捻じ伏せ!! 相手が喧嘩を売った相手が間違っていたことを思い知らせようではないか!!
その為、部隊を3つに分ける!!
手始めにわらわを含めた兵士たちが、地球に総攻撃を仕掛ける!
相手のライフラインを絶つのが目的じゃ!!
二段目に各々ファミリアが救援に掛けつけてくれ!!
『宇宙団体協議連合加盟』通称ファミリアの条約に基づき、一致団結して、共に悪を討とうではないか!!
そして三段目に、今回の首謀者を見つけ出し、その全責任を負わせる!!
それにて終いじゃ!!!」
「「「「「「「「「「オオオオオ!!!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「これはすげえ事になっぞ!!!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「アンドロメダ王女ッアンドロメダ王女――ッ!!!」」」」」」」」」」
わらわは、少し溜飲が下がる思いだった。
公演は、事の外上手く進んだ。
わらわは大変、満足気だった。
だが、怒りは収まらない、わらわは再び冷たい面持ちを宿す。
――他所、わらわたちが気づかないところで、
不敵な笑みを浮かべる者がいた。
男は、借りた一室の窓側付近で、冷ややかな呟きを漏らす。
「任務完了! 無事、アンドロメダ星人を焚きつけ、地球を責めることに成功! 迎えの船を頼みます。……ボス」
【――この話には黒幕がいた……!!】
【その後、何も知らないアンドロメダ王女以下を乗せた船は、この惑星を発つのだった――】
☆彡
アンドロメダの宇宙船は、地球の宇宙探査機のように次元トンネルを通る必要はない。
その理由は、超光速航法(ワープドライブ)を宇宙船に搭載しているからだ。
「出力充填200%! いつでもワープできます!」
「第3太陽系地球を補足! その付近に瞬時に転移可能です!」
「宇宙ゴミデブリを確認! その被害にあわない転移箇所を確認しました!」
「いつでも準備完了です!」
「王女!」
「ワープ!!」
わらわは号令をかける。
「ワープします!!」
アンドロメダ銀河から天の川銀河に、ワープドライブ。
宇宙船の後方の時空を膨張させて、同時に前方の時空を収縮させることで宇宙船を動かす。
いわば時空の波に乗って、サーフィンのように、超光速航法を行うのである。
この場合後方では、ビッグバン(時空の膨張)を生み出し、前方では小規模なビッククランチ(時空の収縮)を発生させていた。
その際、周囲の宇宙空間に歪み、時空の歪みが発生して、緑色のガスと飛び交う光線が発生して、それすら置き去りにしていく。
そのまま宇宙船は、前方に空いた亜空間のワープホールの中を突き進む。
この理論を可能にしたのは、電磁気力、弱い力、強い力、重力、第5の反重力と第6のエナジーアフォース魔法化学理論だ。
そのワープホールの中。
それはまさに亜空間のワープバブル。時空の捻じれが歪みとなって、その時空連続体の中を推進する。
そこはまさしく、光線を置き去りにする、螺旋(スパイラル)ワープホールの様相だった。
――その超光速航法(ワープ中)。
(……何だ……)
それを感じ取ったのはLだけだった。
突然、海の中にいるような不思議な感覚に襲われた。
(海……!? ワープ航法中に……!?)
僕はすぐに周りを見渡した。
姫姉、レグルス、デネボラ、そして各兵士たちは毅然(きぜん)とした態度で前を見据えていた。
この不思議な感覚を感じ取ったのは、L(僕)だけだった。
僕は首をせわしなく回した。
「L、どうした!?」
「……ワープ航法中のエナジーアの変動かな!?」
「?」
「……なんか懐かしいような気が……ううん、なんでもない」
「……そうか……」
Lはワープ航法中に何かを感じ取っていたようだった。
だが、懐かしいとはいったい……。
「ワープを抜けます!」
そしてわらわたちは、ワープを抜け。
天の川の銀河、第3太陽系地球に到達するのだった。
その地球の奥に見えるのは、黄色に近い白い太陽であった――
「――ここが、地球か……!」
わらわはこの青い星を前にして、美しく青い星だと思った。
だが、先行してわらわたちは、地球のライフラインを奪う必要があった。
でなければ示しがつかない。
「……宇宙船の上部(ハッチ)を開けよ」
「ハッ!」
ウィイイインと宇宙船の上部が開き、アンドロメダ王女が競り上がってきた。
そして、ドンッと競り上がっていた台座が止まった。
「地球人たちよ」
わらわは攻撃態勢に入る為、ふわりと浮いた。
わらわは、その手を高く上げて、エナジーアを収束、畜力させる。
その掌に、光の球が発現して、その周囲から数多の光線が凝縮していく。
わらわは、パーからグーに変えて、エナジーアを集約させつつ蓄力させる。
それは1本の青白い光の矢となる。
あたしの身の丈の10倍以上の大きさだ。
「思い知れ!!」
あたしは力強くそれを投じた。
「『青白い光熱の矢』ブルーフレイア(キュアノエイデスプロクスア)!!!」
青白い光熱の矢は、地球に吸い込まれるように投じられ、着弾後。
ドォオオオオオオオオオオンンンと大爆発を起こした。
着弾点から炎が燃え盛り、周囲に衝撃波が伝播していった――
ォォォォォ……
地球は様変わりしていた。
あの青かった地球が今や若干赤みを帯びており。
その着弾点には黒い穴ができていた。
そして、今地球は世界各国で、すごい荒れ模様となっていることだろう。
どうだ思い知ったか。
「……」
わらわはその手を高々と上げて、全兵に号令を出した。
全兵は、その号令に従うようにUFOから湧き出していく。
その多くがエナジーア生命体。
そう、スバルたちが見た、あの姿が見えない相手だ。
「行けお前たち!! ライフラインを絶て!! 地球の奴等に我等が母性が受けた痛み、怒りを示せ!!」
上げていた手を振り下ろすアンドロメダ王女。
「「「「「オオオオオ」」」」」
全兵はそれに従うように駆けていった。ヒュンヒュンと光の矢となって。
だが、その中の1人に乗り気でない、可愛らしいエナジーア生命体がいた。
Lだ。
その身が小さなエナジーア生命体で、半透明でその身が揺らいでいた。
まるで小動物みたいな体形で、可愛らしい容姿に、犬や狐みたいな面持ち、孔雀みたいな羽を有していて、尾を9本有していた。
その子はまるで幼く、心に迷いがあった。
「L、お前はレグルス隊長と行け」
「……」
僕はその言葉に従った。
☆彡
――そして現在、僕はその話を聞いて、俯いて険しい顔をしていた。
「…………」
とても信じ難い話だったからだ。
「…………」
場に長い沈黙が流れた。そして、スバルの口が動いた。
「……話の大筋はわかりました」
それが僕の第一声だった。
「……」
アンドロメダ王女は、俯いて黙っていた。
「わかっている、わらわに非があると……やり過ぎだと……!! 今なら、どんな裁きも受けられる」
「……」
「地球人の方、あなたが最高裁判官ならどんな裁きを下しますか……?」
「……」
TO BE CONTIUND……