第1章の8話 LVS災禍の獣士 真理の彩誕
「……これって、僕が見つけた子のところに向かってる……? そうか……! 助けに行ったんだ! さすがだアユミちゃん! んっ待てよ……この反応は……!」
それは僕の危機感知能力が拾ったものだった。
なんと地図上で激しく行き交い、あの2つの反応が争っているんだ。
こ、これはまさか……。
「何であの2人が戦ってるんだ……!?」
疑問に思うばかりだった。
今現場では、あり得ない事態が起きていた。
☆彡
【――その数分前】
ドォオオオオオンと爆発した。
Lは『バリア』(エンセルト)で耐え、災禍の獣士はそのパワーを抑えていた。
スバルとアユミの2人は離れ離れにどこかに飛んでいったのだった。
ォォォ……と爆炎が晴れていくとそこにいたのはLと災禍の獣士の2人だけだった。
Lはバリア(エンセルト)を解いた。
「なんで割って入った! L!」
「……今のあなたに、正義の正当性はない!
(そうだ、ないんだ……!)
僕は、自分で自分を正当化した。自分の信念に従って。
「姫様のお気に入りだからって、調子乗ってんじゃねえぞ!」
「その姫様が許容なんてできるものか……! 見ろ! あなたが殺めたたくさんの命達を!!」
周辺に転がっていたのは、無残に殺された少年少女達の遺体だった……。
その体は爪で切りつけられたり、焼かれたりもしていた。もしくはその両方だ。
「君は摘んだんだ!! まだ若き芽を!! やり直しの機会を奪ったんだ!! これ以上やるってんなら、僕が相手になる!!!」
「……お前と本気でやり合うのは、今回が初めてだな……!」
「……ッッ」
戦闘回避は不可能だった。
「いくぞ!!」
「――ッッ」
★彡
【――その時、Lの記憶は過去に飛んだ】
これはLの回想だ。
ここはアンドロメダ姫の別荘。
そこで行われていたのは、兵士達の模擬戦だった。
「はあ!!」
「ムン!!」
とエナジーア体の兵士が撃ち込んだ渾身の一振りを、別の兵士はそのエナジーアで盾を生成し防いだ。
一目でわかる高度な模擬戦だった。
その庭園でその様子を見ていたのは、Lとアンドロメダ姫だった。
『――獅子の王、レグルス直系の祖先は、先祖代々、我々王族に尽くしてくれた。
ひとえに、その力と野心、風格をかっての事だ!
人の上に立つということは、例え野心でも、必要なことなのだ! 下の者をまとめるためにもな……!』
『ふ~ん……』
『そして、レグルスは戦場――そう例えば、弱者の群れであっても、手心は加えなかった……。どうしてだかわかるか……L?』
『う~ん……わかんないな……』
『そうか……そうだな! 昔奴は、手心を加えた事で自分よりも弱い者に負けた事があるのだ。それ以来奴は、たとえ弱者でも戦士として戦うようになった……!』
『痛い目に?』
わらわは『そうじゃ』と答えた。
『それ以来、その傷を見るたびに思い起こし、奮起した!
例え弱者であっても、全力で狩るという徹底ぶりを、後々の世代まで課すよう命じたのじゃ! それがあ奴の系譜……!』
『!』
(そうか、だからあんなに強いのか……!)
『……じゃから、あやつと戦う際には気をつけよ!
例えわらわであっても、一瞬でも気を抜いたら……次の瞬間には、命を刈り取られている……それがあやつの恐ろしいところじゃ!』
『……』
『レグルスとは、そーゆう男なんじゃよ!』
☆彡
災禍の獣士は燃える爪を振るい、『飛来炎上爪』を飛ばしてきた。都合2発だ。
それがLの眼前まで迫り。弧を描きながら別方向に飛んでいく。
それは気絶している、スバルとアユミに向かっていた。
(2人を……!!)
僕はすぐに2人の元にテレポート(チルエメテフォート)した。俗にいう瞬間移動だ。
まず先に助けたのは男の子。
次に女の子の元に飛び、サイコキネシス(プシキキニシス)で相殺した。俗にいう念力だ。
で、再びテレポート(チルエメテフォート)で災禍の獣士の対面に移動した。
「2人を狙うなんて卑怯な!」
「フン! 卑怯とはこーゆう事を言うんだ!! 『飛来炎上爪乱舞』!!」
と俺はでたらめに飛来炎上爪乱舞を飛ばした。飛来炎上爪のでたらめ連続攻撃版だ。さあ、どうする。
どうするこうするもないよ。
僕は、まず先に2人の内優先順位をつけた。
先ずは男の子から守る。
僕は、飛来炎上爪と少年との直線状に移動して、サイコキネシス(プシキキニシス)で相殺した。
すぐに、少女も守る必要があった。僕は、バリア(エンセルト)をエナジーア弾として撃ち、それが守る防護壁とした。
――だが同時に気づかれた。Lの優先順位は少年を護っていることを。
(どういう事だ!? この場合倫理では、まず少女から護るはずだ……! あのガキには何かがあるのか……!?)
俺は方針を変えた。
飛来炎上爪乱舞から飛来炎上爪へと切り替えた。
飛来炎上爪が、少年を護るLに集中する。
(クッ……攻撃密度が増した……!)
さあ、どうしたL、別に逃げてもいいのだぞ。その場合、そのガキは焼け死ぬがな。
「クッ……クッ……クァアアアアア!!!」
「!!」
飛来炎上爪を、サイコキネシス(プシキキニシス)で相殺できないと悟った僕は。
自身の周囲にバリア(エンセルト)を張り、その攻撃を防ぐばかりか。
その圧を強め、その領域を拡大したのだ。
――ゴゴゴゴゴ
とバリア(エンセルト)が拡大していき、炎上爪を打ち消し、木々をなぎ倒していった。
それがこちら側まで迫る。俺には攻撃に見えた。
俺はたまらず、その場から緊急回避した。
「はぁっはぁっ」
「……」
俺は冷静に状況を分析した。
どうやら奴は、護りの力が得意らしい。守勢よりか。
(今のがLの力か……なるほど、一筋縄いかんな)
時間が長引きそうだ。
今まで奴が使った技は、バリア(エンセルト)、テレポート(チルエメテフォート)、サイコキネシス(プシキキニシス)の3つ。
俺はこの戦いでLの真価を暴くつもりでいた。
その為には、奴を追い詰める必要がありそうだ。と。
「はあっ!!」
奴は目の前にエナジーア弾を集束し撃ってきた。
俺はそれを、炎上爪で相殺した。
(パワーはそれなりか……ッッ)
俺が見たものは、奴がその9つの尾にエナジーアを集束、畜力させている様だった。
「まさかできるはずがない!!!」
できるんだよそれがッッ。
僕は9つの尾に蓄光させていたエナジーアを解き放った。
それはもうエナジーア弾ではなかった、それはエナジーア波を重ねた攻撃だった。
俺は炎上爪で相殺しようと放つ。だが、バシュンと打ち消された。
「チッ」
俺は向かってくるその攻撃を防御で堪えようとする。
――ドォオオオオオン
と燃ゆる山火事のどこかで大爆発が起こった。
災禍の獣士(俺)は吹き飛ばされた。
「痛っ!」
(なんて攻撃をしやがる……!)
俺は爆煙を巻きながらぶっ飛ばされた。
僕はそのぶっ飛ばした奴を追いかける。この場にいる2人を巻き込まないために。
だからこそ、ここで戦闘があったから、2人が起きた時、山火事の延焼範囲が広がっていたのだった。
☆彡
火の粉が舞い上がる。
乾燥した木の葉が互いに激しくこすれ、発火した。
周りではバチバチと音を立てて、木々が燃えていた。その燃ゆる小枝が落ち――枯草に燃え移り、延焼範囲をさらに広げていく。
山火事の延焼範囲が増大していく。
その危険極まりない現場の中で、2つの影が戦っていた。
ぶっ飛ばされた災禍の獣士とそれを追いかけるLだ。
Lは追い打ちをかける。目の前にエナジーアを集束し、それを光弾として放った。
その追撃は受けまいと。手を突き出しエナジーアを集束させ、それを光弾として放った。
2人の2つの業が、燃ゆる枝木上でぶつかり合いドォンと爆発した。
さらに、その中央の場にあった大きな木に大きな亀裂が走り、真っ二つに割れた。
ドドォンと大きな音を立てて倒れた。
そして2人は、相対するようにそれぞれの枝木の上に浮遊もしくは着地した。
(エナジーア弾は相殺……不慣れな点は除いても、エナジーア弾のパワーは互角か……!)
「……」
僕はエナジーア弾を撃つと同時、この9つの尾にエナジーアを集束、畜力していた。パワー充填まであと少し。
この様子に俺は気づいた。
(どうやら9つの尾にエナジーアを集束、畜力するにはそれ相応の時間がかかるみたいだな。なら)
俺はその場から飛んだ。空を駆ける。
「おおおおお」
9つの尾にエナジーアを未だ集束中……今は撃てない。
僕は緊急回避を取った。
Lがいたところに炎上爪を叩きこみ、瞬く間に燃え上がり、枝木が壊れ落ちていった。
俺はそのまま、手頃な木々のところまで飛んでいき。その幹の横面に着地を決めた。
(逃がさないぞL)
「『飛来炎上爪乱舞』!!」
俺はその場からでたらめに飛来炎上爪乱舞を撃った。
なんてでたらめな攻撃なんだ。攻撃の起動が読みづらい……ッッ。
僕はその攻撃を見て、躱す、躱す、躱す。
その時、エナジーアを集束、畜力していた9つの尾が光った。畜力完了の合図だ。
だが同時に、俺もその光を認めた。
俺はニヤリと笑みを浮かべた。
(見つけたぞ! お前のウィークポイント!)
俺はその場から飛び、あいつにとっては斜め下に見える林の中の草村の中に隠れた。
そこで俺は、ある事を忍ばせた。
「あいつは……」
その草村の中に隠れた。どうするこのまま撃つか。それとも出てくるまで待つか。
準備ができた俺は、その草村の中から飛び出し、飛来炎上爪を1発撃った。注意を俺に向けさせる。
「クッ」
僕は撃ってきた炎上爪を打ち消すために、、サイコキネシス(プシキキニシス)で相殺した。
「そんな攻撃! 僕にはきかないよ!」
「だろうな」
だがこれならばどうだ。俺はこの森の中を縦横無尽に駆け回る
あいつは飛び回る俺を見定めていた。
「何が狙い何だい!? それとも臆したかエナジーア変換までして!? そんなはずないだろ!?」
「ああ!! 肉弾戦でケリをつけても良かったが……!! この新しい体を手に入れたんだ!! お前にはその練習台になってもらう!! ありがたく思え、ハハハハハッ!!!」
俺はまた1発、飛来炎上爪を撃った。
僕はその攻撃を、サイコキネシス(プシキキニシス)で相殺した。
そして、俺はわざとあいつの眼前に出た。
(――さあ、打ってみろ)
(今だッッ!!)
「『九重(エンネアソロス)エナジーア波』!!!」
その時、僕と災禍の獣士との間に火炎弾が打ち上げられた。それも真下からだ。
「!?」
何っ。その火炎弾が、僕が放った『九重(エンネアソロス)エナジーア波』の真下から当たり爆発。その攻撃の軌道をズラした。
僕の攻撃はそれた。
もちろん、俺はそんなチャンスを逃すはずがなかった。
一気にLとの距離を詰める。
これは(マズイ)と判断した僕は「『テレポート』(チルエメテフォート)」で瞬間移動した。
「あいつの移動先は――」
俺はそれを読んでいた。
俺の後ろだ。
シュンと俺の読み通り、俺の真後ろに現れた。
そのままLは距離を取ろうとする、その先は何も変哲もない枝木だ。だが――
「――爆ぜろ!! 『炎上エナジーア』!!!」
俺は起爆コードを解き放った。
それはLが近づこうとしていた枝木だけではなく、その他周辺の枝木や幹、地表や草村などが一斉に火の手を上げ爆発したのだ。
――ドォオオオオオン
と一斉に爆発が起った。
その後、パラパラと木片が落ちていった。
モウモウと立ち込める爆炎。
その中で立っていたのは1人と2匹。
そして地に伏している1匹だった。
「……勝負ありだなL」
「……ッッ。その2匹は?」
「なーに、新しく手に入れた俺の力! 『獅子隷属』さ!』
「獅子……隷属……」
「あぁ。俺の分身であり、頼もしい我が子達だ!」
「ウゥ~~」
「ガルルル」
そうか。僕との戦いの時、こいつ等を忍ばせていたんだ。
「あの時、わざと草村に入ったのは……?」
「こいつ等を生み出すため」
「あの時、火炎弾が撃ちあがって、僕の『九重(エンネアソロス)エナジーア波』の軌道をズラしたのは……」
「それはこの子だ」
「クゥ~ン」
俺は愛しい炎獣の頭を撫でた。声を上げる炎獣。
「そしてもう1匹は、逃げるお前を逃がさないよう、網を張っていたのだが……な! まさか至る所に罠を仕掛けていた『炎上エナジーア』で仕留めてしまうとはな……!」
「ガルルル」
その炎獣は俺のところにも来いよな、唸っていた。
「そんなに幾つもの手を、あの戦いの中で……」
僕はこの人との力量の差を思い知った。
「当たり前だ! 俺がなぜ、エナジーア変換システムを持っているか知っているか!? 俺が……手練れだからだ!」
この時、勝負は決していた。
だが……。
☆彡
「……これって、僕が見つけた子のところに向かってる……? そうか……! 助けに行ったんだ! さすがだアユミちゃん! んっ待てよ……この反応は……!」
それは僕の危機感知能力が拾ったものだった。
なんと地図で激しく行き交い、あの2つの反応が争っているんだ。
こ、これはまさか……。
「何であの2人が戦ってるんだ……!?」
疑問に思うばかりだった。
今現場では、あり得ない事態が起きていた。
その時、僕の耳に爆発音が聞こえたんだ。
「今のは……!」
その時、僕はハッと気づいた。黒い点のうち小さい方が点滅してことに。
それは非常に危ない状態を示していた。
「あの小さな宇宙人が危ない……!」
走りだそうとしていたその足、だが数歩行ったところで立ち止まってしまった。
(……何で僕、助けに行こうとしてるんだ……?)
その時、スバルの脳裏に去来したのは、アユミの一言だった。
「『こっ怖いよ! けどね……今日、逃げ帰ったあたしを見て、明日のあたしはきっと後悔すると思うから』!!」
「!」
僕の脳内にそのフレーズが何度も反響した――
「――そうだよねアユミちゃん」
僕はアユミちゃんがいると思われる方角を見た。
そちらは山火事だった。どこを向いても山火事だけども……。
「もう少しだけ待ってて」
僕は、怖い宇宙人さん達がいる山火事の方へ向かって走っていくのだった。
☆彡
「……」
地に伏したL。
その時、名も知らない少年の接近に逸早く気づいた。
僕はバッと顔を上げた。
(あの子が近くまできてる!)
僕は立ち上がろうとした。その身に力を込める
「……まだやる気かL」
俺は腕を組んだまま、この勝利が揺るがないことを確信していた。
そして、僕は空中浮遊した。
「うん……まだ勝負はついていないからね」
そうだ。まだ僕の左手のとっておきがあった。災禍の獣士と同じ、新たなエナジーア生命体への道が。
僕は、笑った。
「いいだろう、第二ラウンドだ」
災禍の獣士は不敵に笑った。
☆彡
山火事の獣道を走っていくスバル。その時、ある異常に気づいた。
黒い点が4つに増えている。
(どうなってる!? 宇宙人は4人着てるの……!?)
この時、僕は知らない。
それは、あの人殺しの宇宙人が生み出した『獅子隷属』の2匹である事に。
再び、4人が争いだしたのだ。
いや違う、3対1で争っているのだ。あの小さな宇宙人であると思われる点は、激しく点滅していた。
その4つが場所を変え、こっちに向かってくる。
「えっちょっと待って……! こっちに来てない!?」
僕は慌てた。
しかも、その接近スピードが速すぎて。もう来た。
と、僕の予想よりも僕の知覚を通り越して、速い、早過ぎる、その宇宙人達がきた。
ドンッと上空で爆発音がした。
僕は顔を見上げた。
――それは山火事よりも、もっと上の方だった。
燃える爪、炎上爪を振り下ろす災禍の獣士。
その小さな手を突き出し、自身の周囲にバリア(エンセルト)を張るL。
そして、燃え盛っている山火事の枝木を渡っていく、炎獣の2匹。2匹はその位置から火炎弾を上空に向けて打ち上げていた。
上空でまた爆発が起きた。
炎が燃え盛っている。その炎の中から落下してきたのは、バリア(エンセルト)が解け、ボロボロになった小さな宇宙人だった。
その宇宙人はと鳴き声を上げた。
「コォ――ン!!」
やられた……まさかここまで完膚なきまでにやられるだなんて。
それは、そのまま真っ直ぐ僕の方に落ちてきて。
「あれはさっきの小さな宇宙人……! ……え? ちょっとこっちに落ちてきて……」
さらに上空からの災禍の獣士の追撃。
身をボロボロに焼かれたLは、なけなしのバリア(エンセルト)を張った。
(今、僕が逃げたら……ダメだ!)
今、落ちていく僕の後ろにはあの子がいる。あの子にこの攻撃は防げない。
(この子まで、あの子達と同じ道を辿らせない……ッッ!!)
僕は再び、その小さな手を突き出し、バリア(エンセルト)を張った。そのエンセルトに飛来炎上爪が、ドドドッと当たり、その攻撃を阻む。
(辿らせたくないんだ!!)
さらに追撃が迫る。ドドドッと。
(耐えろっ!)
その攻撃の手を緩めない。ドドドッと。
(耐えきって……!!)
そして、その時が訪れた。ドドドッ、パリンとバリア(エンセルト)が飛来炎上爪に根負けして砕け散った。
そして、ドォンと爆発したのだった。
スバル(僕)は、その一部始終を見上げていた。
僕は驚きを隠せなかった。
「えええええ!!!」
なぜ、味方同士で争うのかわからない。
この事がきっかけで、スバルの所在が災禍の獣士に感づかれてしまった。
「まだあんな所にいたのか!!」
俺は上空から燃ゆる爪を振り下ろし、飛来炎上爪を1発放った。
その様を見て、僕は驚いた。
そうか、みんなこれで死んだのか。
「うわぁあああああ!!!」
僕は死ぬ前に叫び声を上げた。
――だが、僕とその飛来炎上爪との相中に割って入った者がいた。あの小さな宇宙人だ。
その宇宙人は全身を発光させて、眩い光を放ったんだ。
「クッ……これは『閃光波』(キマラムシィス)か!」
俺はその閃光波(キマラムシィス)を眩しく感じ、一度距離を取った。
「クゥン」
「キャン」
2匹の炎獣達もその閃光波(キマラムシィス)を眩しく感じ、燃える木から木へ飛び移るのを止めた。
そして、その閃光波(キマラムシィス)は飛来炎上爪を打ち消した。のだが――
【――それは不運であった。なんと『閃光波』(キマラムシィス)』は燃える木々にも拡散光撃し、それが広範囲に及んだのだ。
木々がミキミキと音を立てて倒れる。
それは、Lとスバルを巻き込み、倒れたのだった……】
――ドドン
と積み重なった木々が倒れ、1人と1匹はその下敷きにあう。
その様を上空から俯瞰するは、災禍の獣士だった。
そして、2匹の炎獣はその下敷きの現場に着き、「「ウウ~~」」と唸り声を上げた。
これを見た俺は「いかん!!」と思い、
すぐにその下敷きの現場に着地してこう言った「待てお前達!」と。
たったそれだけで2匹の炎獣の唸り声は止まり、一歩下がって待った。
「……よし、いい子だ」
俺は炎獣達を躾けた。
さて、問題は。
「……無様だなL」
「……うっ」
L、意識はあるようだな。だが。
「決着はついた! 俺の勝ちだ!」
「……」
Lは何も言わなかった。言うほど力はないのか。
――だか、これだけははっきり言っておく。
「お前は戦いの前に『正義』とか言ったな!? だが俺にも『正義』がある!
だが、味方を変えれば、その正義は悪にもなる……!
俺は自分の正義に従って、お前と戦い、そして勝った!
つまり、俺の正義が正しいということだ……違うか!?」
「クッ……違う違う!! あんたが掲げてる正義は違う……!!」
「なら聞こう! お前の言う正しい正義とはなんだ!? 言ってみろ!?
……まさかあんな事をしでかした地球人達を許し、仲直りしようとかいうじゃないんだろうな?
はっきり言おう、それはもう無理だ!!」
「……ッッ」
(……やはり、当たりだったか……)
だが、それは叶わぬ願いだ。この道の先にあるのは泥沼の闇だけだ。
俺は後ろを向いて歩きだした。
だが、途中でその足を止める。
「そう言えば、そいつの顔をチラッと見たぞ。そうそう、女のガキがいたはずだ」
「……何をする気?」
「別に何も。ただ連中と同じことをしてやるだけだ。それでこの戦いも終わりだ」
場は火の粉が舞い、バチバチと音を立てていた。
「じゃあな。戻ってくるときには女の命はない」
俺は後ろを向いて歩き始める。じゃあなとばかりに手を挙げて。
「後で掘り起こして、アンドロメダ王女に引き渡す、それまでジッとしていろ」
それ言い残し、俺は歩き去っていく。
「ま、待って!!」
僕はその小さな手を伸ばしたが、その手はとても非力だった。
☆彡
――災禍の獣士が去った後。
体の小さい僕は、この下敷きになった現場から抜け出そうともがいた。
「んっ……クッ……このっ!」
もがいてもがいて。
「わっ」
ようやく抜け出すことができたんだ。
「はぁっはぁっ」
戦わなきゃ、戦って勝たなきゃ、僕の正義を守れないんだ。
「はぁ……僕の正義、それっていったい何だ……!?」
自問自答した。
確かに災禍の獣士の言うように、正しい答えを探そうにも、泥沼の闇の中だ。その中から正しい答えを探し出そうだって、ダメだ、泣けてくる。滑稽だ。
「うっ……」
その時だった。君の呻き声が聞こえてきたのは。
僕はその声にハッとした。
「しっかり!」
「み、水……」
その子は目を開けていなかった。おそらく体の生存本能の訴えだろう。
構うもんか。僕は水場を探しに行った。
☆彡
――そして、スバル目覚めの時。
下敷きになったスバルは寝ていた。
と、その時、ピチョン、ピチョンと水の香りがした。
それは頬を伝い、僕の唇へ、とても少ない水。でもそれは命の水だ。
僕はそれを飲んだ。
そして、また、ピチョン、ピチョンと水の香りがした。
僕は目を覚まし、見たものは……。
それは小さな宇宙人が、葉っぱに水を移して、健気に運んできてくれる姿だった。
「君は……」
ダメだ。唇がカピカピに乾いて、上手く喋れない。
「起きた起きた! やったあ!」
僕は介抱の甲斐があった。
「どんどん持ってくるね」
宇宙人の言葉なので言葉の意味はわからなかったが……。彼の仕草や行動を見て、あぁきっと、僕を助けようとしてくれてるんだなぁってことだけはわかった。
同時にとても優しい子なんだと。
そして、3回目。
僕の口元に彼が持ってきてくれた水移しの葉っぱが、僕の喉を通り潤していく。
これならどうにか、喋れそうだ。
「き、君は……いッッ!!」
一言話しただけで、全身に電流が走ったような激痛がした。しかもものすごい熱を持っているような。
そ、そうか。僕は、倒れてきた木々の下敷きになっていたのか。
道理で痛いはずだ。
特に痛いのは足からだった。んんっ
(こっ……これはまさか……ッッ!!)
僕は「あああああ」と叫び声をあげ。
彼はビクッと驚いた。
それは僕の足から先に痛みがなく、足が変な方向に折れ曲がっていることだった。
おそらく、骨折と複雑骨折ものだった。
何てことだ。これじゃあアユミを迎えに行けない
「あああああ!!! ッッ……ッッ!! 痛ぁい痛いよォオオオ!!! クッ……クッ……」
その時、僕の中から黒いものが膨れ上がった。
それは怒り、憎悪だ。
「何でっっっ何で僕がッッッ僕達がこんな目にッッッ全部お前達のせいだ!!!」
僕はこの時、この小さな宇宙人に食ってかかった。
そのはずみで僕は手を上げ、その持ってきてくれた水移しの葉っぱを弾き飛ばした。
パシャッとその水移しの葉っぱが地面に落ち、水が地面に吸い込まれてゆく。
「――!!」
その宇宙人は衝撃を受けた。
「出ていけ!! 僕達の星から今すぐに!! 出てけよ!!」
地球の言葉こそわからなかったが。
けど、僕は嫌われたと思い、怖くなりその場から逃げ出した。大粒のエナジーアの粒子を流して。
☆彡
――倒れた木々の下敷きの現場からLがいなくなった後……。
静寂。その言葉が相応しいだろう。
「ッッ……ッッ」
だが、僕には何かやるせなさがあった。
「クソッ、この戦いはいったいどっちが悪いんだ!?」
スバルも自問自答に入る。
初めに手を出したのは、地球人の方だ。それはわかってる。
だが、次に地球に手を出したのは、アンドロメダ星人の方だ。
この問題の終着点はどこにある。
そして。
「この問題を持ってきたのは、どこのどいつだ!!!」
それは、宇宙探査機を飛ばした『坂口宇宙開発研究センター』だった。
「クッ……クッ……!!」
僕は大粒の涙を流した。
僕は悔しさでいっぱいだった。
「何で僕達がこんな目に……絶対に許せない……ッッ!!!」
腸が煮えくり返った。
そして誓った。
「いつか犯人を見つけ出してやる!!!」
と。
「……」
だが、突き詰めていけば、問題は地球から持ってきたものだ。
一個人で責任を負うなど、そもそもできるはずがなかった。
この問題の終着点は、果てしない道のりになりそうだ。
だが、ある事に気づく。
それは、あの小さな宇宙人には非がないんじゃないかと。
それは僕達多くの地球人にも言えることで。
僕は「謝らなきゃ」と思った。
でも、その為にはまず「生きなきゃ」と。
じゃないと、先に進めないから。
だから生きようとした。生きようと。
僕はその手を伸ばし。
落ちていた水移し葉っぱの端を掴み。
それを自分の口元に持ってきて、口にくわえた。
よく命の水を味わう。
「生きたい」
今ばかりはそれを思う。
――そして、それが契機であったかのように。
小さな宇宙人が現れた。その小さな手に持っているのは水移しの葉っぱだった。
僕は顔を上げて言った。
「ごめんと」
地球人の口から謝罪した。
「僕達が悪かった……ッッ!! だからこんな戦い、もう止めてください!!! お願いします!!!」
「……」
僕は自分の身を震わせながら言った。
僕は地球人全員の代わりに、彼にまず誤った。
僕は心を打たれた。
本当は、この持ってきた水を目の前で捨てて、去ることにしてたんだ。
でも、僕は心を打たれた。
だから、これは餞別だよと。
彼の目の前に、それ(水移しの葉っぱ)を置いた。
――その時、血のように赤い夕焼雲から黄金色の光が射し込んだのだった。
「――君達、みんなにやり直しの機会を与えるよ」
それは僕の口を衝いて出た言葉だ。
「でもその為には、まず勝たなきゃいけない! 犯人探しや自問自答を懊悩と繰り返し、真実や理想を時として飛び超えていかなきゃいけない。君にそれができるのかい!!」
「何でもやります!! 何でもやり遂げて見せます!! だから、お願い!!」
「言葉も文化も文明も違う。初めはみんな君の敵なんだよ!! それでもやると!!」
「……はいッッ!!!」
「……わかった! 君こそ『真理』だ!!!」
――そして、太陽が地平線の向こうに沈んでいき。最後にその上部が緑色に光った。
【Green Flash(グリーンフラッシュ)
それは、沈みゆく茜色の太陽の上部が魅せる、自然現象であった。
これが起こるのは稀で、太陽から一定の離れた距離にあり。
かつ、日の出や日の入りの時にしか見られない。
その時間はわずか1秒間ほど……自然様の奇跡だった】
――その時、僕の『エナジーア変換携帯端末』が反応を示した。
【ピッ! シンクロ率99% 適合者確認!】
「エナジーア変換!」
――カッ
その時、辺りに眩い閃光が走ったのだった。その上空の雲が変化した。虹色の美しい雲へと。
【Cloud Iridescence(クラウド イリデッセンス)彩雲。
太陽のすぐ近くにある雲や、その一部に色鮮やかな色がついて見える発光現象。
昔の人達はこれをみると、吉兆であり、いいことが起こる前触れだと、言われていた】
そして、そのさらに上の上空には、赤とピンク色と紫色のオーロラのカーテンがあって、揺らめいていた。美しいけれども、そこには何とも言えない不気味さが漂う。
真珠母雲は彩雲の並みに美しく、そして不気味さも同居していた。
この戦いの行方ははたして――
TO BE CONTIUND…