液体ミルク
「ねえ。あなた。」
夕食の時間。妻が夫に話しかける。最近、子供を産んだばかりのまだ若い妻だ。
「なんだい?」
夫はスマホで仕事の連絡をしながら、返事をした。
「私、子育てはあなたと一緒にしていきたいっていう話をしたわよね?」
「ああ。したね。ただその時も言ったけど、僕には仕事がある。君たちの分を稼がなきゃならない。だからできる範囲で協力することになると思うけど。」
妻は頷く。
「それで構わないわ。でね。色々と調べたの。どうしたら二人でこの子を育てていけるかなって。」
そこで妻は、自らのスマホ画面を見せた。
「これ、液体ミルクって言ってね。封を開けて飲み口を装着したら、すぐに子供が飲めるようになっているのよ。」
画面には、栄養補給飲料のようなパック形式の飲み物が写っていた。
「とっても作るのが簡単なの。男性の育児参加を促進する商品なんて言われたりもして。あ、もちろんあなたを疑っているわけじゃないのよ。でも少しでも負担を減らしたいなって思って。」
「へぇ。良いじゃないか。」
自分のスマホから視線を外し、旦那は好意的な意見を述べた。
「本当に?他にもね、一昔前と比べると格段につけやすくなったオムツとか、夜泣きを止めるための音楽とか、本当に色々な商品が出ているみたいなの。」
「なるほどなぁ。便利そうだ。うちでも買っておこうか。」
「嬉しいわ。最新の商品を使えばね、1日1時間くらいで育児の負担が済んでしまうみたいなのよ。助かる話よね。」
その言葉に、夫は思案顔になる。
そしてポツリとこう言った。
「だったら僕が手伝う必要はないじゃないか。」