第3話 いつものランの説教
しかし、このままでは司法局実働部隊副隊長の名が廃るとばかりにランはアメリアをにらみ返すとランは説教を再開した。
「アタシが言いてーのは!非番の日になんで寮の食堂でこんなしみったれたことをしてるってことだ!非番の日にも出動に備えて、心身ともに鍛錬を怠らねー。それが軍人としての覚悟ってもんじゃねーのか!」
怒鳴りつけるようにランは叫んだ。
「アタシ等軍人じゃねえもんな。警察官だもんな」
ひねくれたようにかなめがランの上げ足を取る。かなめの言うように司法局実働部隊は司法執行部隊であり、一種の武装警察のような組織と定義されていた。軍人としては後方任務しか勤務が許されていない全身義体のサイボーグであるかなめが戦闘部隊の人型機動兵器シュツルム・パンツァーの二番機を担当できているのも、『特殊な部隊』が警察として活動しているからだった。
「そんな屁理屈はどーでもいーんだ!休みの日に部屋でちまちまプラモなんて作ってる根性をアタシは指摘してるんだ!そんなにプラモ作りが楽しいか?だったら別の仕事に転職しろ!アタシ等の仕事は命を扱う重要な仕事だ。緊張感の無い趣味なんぞ、趣味とは認めねー」
ランの怒りはかなめの屁理屈によりさらにめらめらと燃え上がった。
「じゃあ、僕はいつも休日には戦車のプラモを作ってるから駄目なんですね。そうですね、だから僕はいつまでたっても半人前だってクバルカ中佐に言われるんですよね」
お茶を配りながら誠が自虐的にそう言って俯いた。誠はどこまでも弱気で後ろ向きな性格の持ち主だった。
「そーだ!オメーが『もんじゃ焼き製造マシン』と呼ばれるほど乗り物に弱かったのも、いざと言うときに緊張してミスをしでかすのも、その休日の過ごし方に原因がある。神前!今すぐランニングをするぞ!その腐った根性をアタシが叩き直してやる!」
お仕事モードに入ったランはすっかり誠に町内一周マラソンをさせる気満々になっていた。
「クバルカ中佐、それは後にしてくださいな。クラウゼさん、ベルガーさん、かなめお姉さま……まずはお話を聞いていただきたいんですの」
明らかにいつもと違う調子の茜を不思議に思いながら空いていた厨房に近いテーブルに誠はポットを運んだ。とりあえず、茜の一言で誠は町内一周マラソンからは解放された。
「仕事の話か?それは余計面倒な話だわ。アタシは御免だね、非番の日に仕事の話なんて持ってくんじゃねえよ。せっかくの非番が台無しだ。茜はそんな仕事の話ばっかしてるからいつまでも彼氏の一人もできねえんだよ」
とりあえず全身義体なので町内一周マラソンくらいは楽勝のかなめは茜が面倒ごとを頼みに来たと察して明らかに嫌そうな顔をしてそうつぶやいた。