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第4話 珍客の好物

「こちらにどうぞ!」 

 誠の言葉でプラモデル用塗料の臭いが染み付いた新聞紙の敷き詰められたテーブルから食堂の空いていたテーブルにかなめ達は席を移した。茜とラーナは誠達の正面に座った。

「おー、かりんとうか。アタシはこいつ大好きなんだよな」 

 そう言うと一番に誠の手前の席に座ってかりんとうに手を伸ばそうとするランだが、小さな彼女が伸びをしたところでプラモデルの塗料があちこちについているエプロンをしたかなめがそれを取り上げた。

「何すんだよ!せっかく人が食おうとしてたのに!」

 部下に好物を取り上げられてランはまた怒りのモードに突入しそうになった。 

「やっぱ餓鬼だねえ。甘い物が好きだなんてよ。アタシは要らないね。酒にかりんとうなんて合いやしねえ。ランの姐御も酒飲みじゃねえか。なんだってこんなのが好きなんだよ?変じゃねえか?それともランの姐御の好きな日本酒や焼酎にはかりんとうがつまみにできるんだ。便利だねえ。アタシが飲むラムは元々廃蜜糖(はいみつとう)から作るんだ。なんでわざわざ似たようなかりんとうをなんで食わなきゃならねえんだよ」 

 まるで子供のようなかなめの嫌がらせに明らかにランは腹を立てていた。そして二人はにらみ合った。アメリアとカウラはそのエプロンを元の席に置いて、作業用の安物のジャージ姿でテーブルに腰掛けた。

「お二人とも、およしになってくださいな。クバルカ中佐。(わたくし)達は別にここに居る皆さんの私生活を監視に来たわけではありませんよ。それにクバルカ中佐の提案したようなマラソン大会をしているような時間は私達にはありませんの」 

 おっとりとしてはいるが、明らかに力の入った茜の言葉を聞いてかなめがかりんとうの入った器をランの手の届くところに置いた。ランは目つきの悪い顔でかなめをにらみつけた後、一個のかりんとうを手にすると口に運んだ。

「じゃあ、何しに来たんだか……その様子だと、かなり厄介な話だと踏んだが……どうだ?」

 とりあえず姫路城の庭を完成させたかなめが吐き捨てるようにそうつぶやいていた。急須でお茶を入れながら誠もかなめの言葉通り茜達が何をしにやってきたのか少しばかり興味を持っていた。

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