第190話 死闘の始まる予感
誠が感覚を取り戻し始めたとき、急に合同庁舎の駐車場の一部が陥没した。誠は予想された中での最悪の事態が起きようとしていることをその光景を見て再認識した。
『神前曹長!例のプラントの確保に失敗したとクバルカ中佐からの通信だ!例の化け物が出てくるぞ。あくまで予想の最悪の事態と言うことだ。予想外の出来事ではない。それだけは覚えておけ。気の弱い貴様の事だ、あくまでこれは予定された範囲内の出来事なんだ。気にするんじゃないぞ』
カウラの声に緊張の色が見えた。それまでただ装甲車両から指示を出していた彼女が誠の後ろで装甲車両から降りて指示を出しているのが見えた。
誠はそのまま陥没の土煙の中に開いた穴の大きさに目を向けた。それはシュツルム・パンツァーと比べて一回り大きい十二メートルくらいの大きさだった。
その姿は一言では言い表せない姿がった。肌色の餅のようであり、ナマコの化け物のようであり、誠の好きなファンタジー世界のスライムのようにも見える得体のしれない化け物の姿をしていた。
『あんなにでかいのか?こっちよりずっとでかいじゃないか。神前。テメエでやれるのか?本当に』
誠の05式のモニターの画面を受信しているらしく、かなめの表情が驚きに包まれた。
「これが……厚生局が作りたかった法術師製造プラント……悪魔の研究の成果……不死の人を作るために作られた血清製造装置……」
そこまで言うのが誠には精一杯だった。まるで巨大なナマコのような物体がそこにあった。そこからは無数の人の手足、そして顔のようなものまで見て取れた。しばらく誠は息を呑んでいた。誠はひたすらどうしていいのかわからずにいた。そして次の瞬間、その化け物が干渉空間を展開したのか、激しい衝撃波が誠の機体を襲った。
「なんだってこんな!こんな干渉空間なんて想定外ですよ!アイツに意志はあるんですか?戦闘能力とか分かります!西園寺さん!調べてくださいよ!」
誠は目の前の明らかに誠を敵と認識しているらしい化け物と対峙しながら情報収集をバックアップを担当しているかなめに頼んだ。10メートルの誠のシュツルム・パンツァーを優に超える巨大な肉の塊がまだぞろぞろと地下の駐車場に空いた穴から這い出して来るのが見える。それはまさに悪魔が地上に這い出そうとしている姿だ。誠にはそのようにしか見えなかった。
全身から取り込まれた法術適正者の足や腕、かつてそれが人間と呼ばれていたときの記憶のようなものを感じさせる突起を全身に配した褐色の不気味なナマコに似た怪物がそこに居た。これまで見たもの、想像したものの中で一番おぞましい姿をしたものが今誠の目の前にあった。
「どうしたらいいんですか!こんな化け物に急所なんて有るんですか?どこにダンビラを突き立てたらいいんですか?教えてくださいよ!西園寺さん!あんな衝撃波を何度も受けたらいくら重装甲が売りの05式でももちませんよ!」
東都警察の機動隊の照明で明かりを浴びて伸び上がろうとする目の前の物体を前に誠が叫んだ。