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「よし、俺は仕事に戻るぞ」

「あたしは着替えたら財前さんに報告してくるわ。雪音ちゃん、家まで車で送ってくわよ」

「・・・歩いたほうが早いんで大丈夫です」

「心配だわん。ちゃんと帰れる?」

「目ェ閉じても帰れます」

この人の過保護ぶりも、どこまで本気なのか──。

2人と別れて、はたと気づく。職業、聞き損ねた・・・。



その日の夕方、彼女からメールが入った。

【今日はありがとうございます。思い出すと今でも怖いけど、世の中には常識では理解出来ない事があると認識しました。でも、私は母親のようにはなりません。一緒にいたお2人にも感謝の気持ちをお伝えください。 長野 桜】

──最初は変な人だと思ったけど、しっかりした人だ。自分と比べると尚更。
彼女の名前を今知ったことに、少し可笑しくなる。

店長からの連絡で、店の再開は明日からとなった。今日こそ、待ちに待った海外ドラマナイトだ。食料とアルコールは十分に補充した。

今は全てを忘れて、愛しの主人公、ジェイクに集中したい。

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