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「ちょっ・・・離して!」力は、わたしのほうが強い。抵抗する未来ちゃんを、力尽くで引っ張っていく。「やだ・・・雪音ちゃん!」

未来ちゃんを掴む手が、少し緩んだ。名前を呼ばれたのはいつぶりだろう。こんな状況でも、嬉しいと思う自分がいた。

そのまま女子トイレへと連れて行く。誰もいないのを確認して、手を離した。


「なんで無視するの?」逃げられる前に先手を打った。

「・・・してないよ」未来ちゃんは下を向いたまま目を合わせない。

「してるよ。ずっと」

「っ・・・してない!」

「してる。じゃあ、なんで雪音のこと見ない   の」

未来ちゃんは目を泳がせ、言葉を詰まらせた。「・・・雪音ちゃんが・・・」やっと聞き取れる、小さな声だった。

「雪音がなに?」

「雪音ちゃんが、未来のこと引っ張ったから!」

「・・・え?」言葉の意味を、理解できなかった。「未来ちゃんを引っ張った?」

「引っ張ったじゃん!あの時・・・公園で」

"あの時"の場面が、頭に浮かぶ。あの子が未来ちゃんの首にぶら下がり、一緒に落ちていく姿を──。

「違うよ・・・雪音はそんなことしてない!」

「じゃあ誰がやったの!?」ここで未来ちゃんがわたしを見る。「あの時、誰もいなかったじゃん。未来、引っ張られたもん!」


言葉が、出なかった。
──そういうことか。未来ちゃんはあの時、わたしのせいで落ちたと思ってるんだ。わたしがやったと。

「違う・・・雪音じゃない・・・」

「うそつき!」

「うそじゃないよ!だって、だって雪音、上に 居たんだよ!未来ちゃん助けようとしたんだよ!」

思い当たる節があるのか、未来ちゃんは少し考え込んだ。「でも、引っ張られたもん」

「あれは・・・」なんて言えばいい?未来ちゃんには見えない子がそこには居て、その子がやったと?それを口に出せるほど、わたしは"バカ"じゃない。「ほんとに、違うの・・・雪音じゃないんだよ・・・」

未来ちゃんは、キッとわたしを睨んだ。涙目になりながら。「もう知らない!雪音ちゃんなんかきらい!」ドアが勢いよく開き、気づけばわたしは1人、トイレに佇んでいた。

シーンとする中、徐々に絶望感が襲ってくる。
わたしは、どうすればいいんだろう。どうすれば、未来ちゃんと仲直り出来る?

誰か、教えて──。







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