第3章の第105話 どうしようもない問題32 答えパート
☆彡
【ポイント3、全員パート】
――次の語り手は、クリスティさん。
「――次は、全員パートかしらね!」
「……」
一同の視線は、サファイアリーさんからクリスティさんに移るものだった。
「まず初めに、ヨーシキワーカさんが語るには、箱洗いの歴史の中には、正社員さんの姿は、元々はなかったわ……」
そこへアヤネさんが、アユミちゃんが。
「やっぱり、その正社員さんがいないのね……!?」
「そう言えば、さっきもそんな事を言ってたよねぇ?」
そのアユミちゃんに対して、クリスティさんが、こう説明してきて。
「ええ、そうよ! アユミちゃん!
あの月見エビバーガーオーロラソース社は、職安には、正社員という名目での求人情報紙を登録していたのよ!
これは、明るみになれば、れっきとした『不正登録扱い』になるわね!
でも、透徹した広い目で見れば、それはほぼ、どこの会社さんにしてもそうしたもので、似たようなところが多いものよ!?」
「……」
「俗にいう、氷山の一角かしらね……」
★彡
【領収書が見つかった事件解決年の9月】
【氷山の一角】
――ヨーシキワーカ宅。
それは、ヨーシキワーカとその両親がいる時の会話だった。
『なかなか就職できないな……』
それは、父からの発言から始まるものだった。
『……』
(領収書が見つかってもダメか……。こう周りから騒がられていたんじゃ…。
向こうとしても、許せないところがあるんだろう。
今さら領収書が見つかったところで、失ってしまった1億円(757576米ドル)以上もの負債金は戻ってこない……。
失ってしまった3年間……。
やはり、周りは、何がなんでも、俺の1人のせいにして、丸く収まりたいのか……ッッ!?)
そこには、苦く苦しむヨーシキワーカ(私)がいたんだ。
ナレーションの語り手は、ヨーシキワーカ。
【――この時、周りからの目やヒソヒソ話が相次ぎ、偽電話詐欺が掛かってきていて、職安を通して、就職しようにも何もできずにいたんだ……】
【上からの圧力というやつだ】
【それは、向こうとしても、体裁を大きく欠いたものであって】
【何がなんでも、私を謝りに来させて、再雇用させようとする狙いがあったんだ】
【それぐらいでしか、丸く収まる手立てはないのだろうか……!?】
(いや、違う、そうじゃない……!!)
【……だが、この時ばかりは、まだ、私の無罪は確定しておらず、執筆中だったものだ】
【だが、それも、卑怯なハッキングにより、先に周りが手柄を立てて、お金だけ盗っていくという流れだった】
【しかも、クラッキングに合い、そうした証拠すら残らないよう、揉み消された後まである。所々、穴ぼこだったのはその為なんだ】
【であるが為に、先にそいつ等が、私が無罪だというわかっていても、何の証拠にもならず】
(キチンとした証拠を残す必要があるんだ……ッッ!! 周りから、変に踊らされてたまるか……ッ!!)
【それが、偽電話詐欺とヒソヒソ話に、踊らされて、道理が変になるという話だ】
(何の証拠もないからな……!!)
【だから、それを作る必要があった……!! その為、密かに執筆活動を続け、そうした無罪の証拠を残す必要性があるんだ】
(自分の無罪を勝ち取るために……!!)
【そして、それは、今後、誰かのために、役立ってほしいと思う】
【昔、そうした話があったって事を、思い出して――】
――父はその顔を上げ、私にこう尋ねてきたものだった。
『――……そう言えば、何でお前は、月見エビバーガ―オーロラソース社に、就職できたんだっけ!?』
『……』
そこへ母が、こう切り返してきて。
『あぁ、それは、もう前にも言った事でしょ!?』
『……』
と言いつつ、なんかそこには、疲れている感じの母の姿があって。
その話を聴く父にしても、何の事だかわからず、うろ覚え程度だったものだ。
『……』
実は、こんな話は、前々からあっていて、父にどんなに説明しても、わかってもらえないものだった。
これが、話を聴いている人と、
実際に、その現場に立ち会って聞いていた人達との、大きな隔たりなんだ。
母は、こう続ける。
『この子を連れて、その会社に(面接に)行った時、
そこで立ち会ってくれていた先生方がいて、上手くあちらで交渉事を勧めてくれたおかげなのよ!?』
『あぁ、そうだったな……』
『もうっ!』
何度言っても、わからない父の姿に、さすがの母もどんなに言っても、上手くいかない事に腹を立てていた感じだった。
そこへ、ヨーシキワーカ(私)が。
『そこで、厚生年金の手続きとか、各種保険の話を勧めてくれたんだよ』
『あぁ、そう言えばそうだったな……!』
これには、父も納得の理解を示してくれた。
そこへ母が。
『最初は、あの会社も、正社員雇用の話だったのよ!? でも、いざ、この子を連れていったら……。
それはこちらとしてもダメで、
この子を雇う時、パートだったから、こちらも降りようとしたのよ!?
……そこへこの子がね……』
『うん……』
そう、あの時、私から言い出したものだった。
遅まきながら、すごく後悔している。
だが、失ってしまった時間は、どんなに願いを乞うても、戻ってはこないんだ。
黙ったままの父は、そんな私を見据えていた。
『……』
『……』
その腕を組んで、考え込んでいるようだった。その視線を私に向けて、いったいどんな事を考え込んでいたのだろうか。
今になっても、その考えはわからない。
その時の私の心の内は。
(それでもいいから、入ろうとしたんだ。2、3年ぐらいいれば、パートから正社員に上がるかと思ったけど……。
結局、それはなかったから……諦めたんだ……。時間だけを無駄に浪費してしまった……)
今では、それを根に持って、後悔を覚えている……。
そこへ、母がこう言ってきて。
『そこへ、この子と一緒に先生方がついてきてくれて、そう、話を上手く取りまとめてくれたの……。
あれがなければ、『ただのパート扱い』で、年金とか各種保険の手続きを、踏めなかったと思うわ……。
あの時の先生方の対応には、感謝してるしね……』
『うん……』
『……』
これには、父も考えさせられる思いだった。
とここでヨーシキワーカ(私)が。
『でも、こんなのは『氷山の一角』で、最初は、職業安定所で見た時は、正社員だったんだけどね……』
とそこへ、母が。
『それを向こうが……』
『うん……それはダメで、パート雇用の話になったんだ……』
『で、ベースアップ賃金がどうのこうのと話が出て、さっきの話になったのよ!?』
その私と母の話を聴いた父の意見としては。
『……どこも不景気だからな……。……こいつを雇うより、もっとマシな奴がいたってだけの話か……』
『……』
『……』
これには、一時的に、私も押し黙ったものだ。だが……。
『……いや、多分、違うと思うんだけど……!?』
『……どう、違うというんだ!?』
『……』
(そう、父から反論してきて、私は尻込みをし、何も言い返せなかった……。
この頃の私は、誠に不甲斐ない事に上手くは言えなかった……。
箱洗い作業員、その前から務めている人に、こう尋ねた事があったんだ。また、聞いた事があったんだ。
★彡
――語るは大先輩。
『――ここには、俺も8年間ぐらい務めているが、正社員になった人は、ここにはいない……』
『……』
『お前もできれば、若いうちにここを辞めてから、どこかに移った方がいいぞ? まだ若いんだからな? 俺なんかと違って……。
どこでもそうだが、若いうちはいろいろと苦労した方がいい。
……だが、安月給の工場勤務だけは辞めとけ。
聞いた話じゃ、ここもどこかとは同じだからな。
ロクな事には使われず、最後は肉体が壊れてから、捨てられるのがオチだからな!』
『……』
その大先輩は、ヨーシキワーカ(俺)の事を気に掛けているようだった。
箱洗い(ここ)には、正社員などいない……と。
つまり、最初から存在しておらず、職業安定所に、そーゆう話を通した事になる。
不正も不正だ。虚偽も虚偽だ。
また、箱洗いは、あってもなくても、どうでもいいところで、
度々、新入社員が入ってきても、1年と保(も)たず、辞めていくケースの割合が、極めて高い……。
その実、正社員が降格処分を受けて、堕ちていく先が箱洗いであり、
自発的に、辞めていくよう促すための場所でもある。
実際、その人を目撃していて、問い詰めた事はないが……。
その人の勤務表などを見たら、非準社員扱いだったものだ……。
これは、パートと比べて、毛が生えたような給料大系であって、
若手の正社員の給料の半分近く、加えて、肉体労働のパート作業員という雇用形態となる。実に哀しい話なんだ……――)
☆彡
――過去から現在に返り、クリスティさんは、こう語る。
「――ヨーシキワーカさんは、まだ、マシな方よ!?
200年前の2000年代と今の22XXとじゃ、大きな開きがあるからね……。
各種保険制度も、政治資金の闇金疑惑の裏で、
年金基金から厚生年金に至るまで、公的年金の不正使用と出費の疑いがあって、払いきれなくなってきているからね。
また、国家公務員や地方公務員、私立学校教職員が加入する共済年金も、この厚生年金に一元化されて、現在(いま)ではないからねぇ。
これは、共済年金の不公平さを正すために、必要な制度だったのよ。
若いうちから、老後にまで、せっせと働いて貯めても、予定されていた所得が、年々下がってきているからねぇ……」
「……」
わかりやすい例では、年金制度の3階建てだろう。
1階、IDeCo年金
2階、厚生年金
3階、国民年金
この3つが、年々掛け金の年金制度の取得額が、落ち込んできている訳だ。
私的年金制度のIDeCoですら、いつかは、話が紐繋ぎにされて、そうなってきている訳だ。
これが、いつかは、訪れる未来である。
まぁ、逆に言えば、これを知った上で、後から加入するという手もある訳だ。
そうなれば、元割れのリスク軽減にもなる道理だ。
「会社には、『加入保険手続き』というものがあって、これがあるかないかで、大きく意味合いが違ってくるものよ!?
ミシマさんとの面接時に聞いた話では――」
『――おいおい、それは、お前がその足で、あそこの所にある市の市役所に直接行ってから、毎月、保険制度を組むものなんだぞ!?
何で、わざわざ、俺とお前が仕事に行った日の後に、わざわざ、そこまでやらんばいけんとや!?
こっちとしても、休みの日は、じっくり自分の家で、休みたいものなんだぞ!?
それだけの額を、俺の所で稼げるんだから、お前がそこまで行って、1りでやってこいよ!?
そんな事もできないぐらいの大人じゃないだろ!? お前は!?』
『……』
『あーもうったく!! 何でわざわざ、この俺が、そこまでしてやらないといけないんだ!?
普通はどこも、そこまで、1人でやって、行えているもんだぞ!?
何でわざわざ、うちの会社が、そこまで金の経理の計算を預かって、奥さん(あいつ)にやらせないといけないんだ!?
ちっともこっちの方は、貯まんないぞ!?
あっそうだ! 1週間ぐらいしたら、試しに、そこまで、できるか試しに、通してやらせてみるか!?』
『……』
「――自分で組む、『保険制度加入手続き』と言われたものよ!?
でもね、ここで間違いないように断っておくと、
ミシマさんは、『個人事業主』様であって、合同会社三電工を、お父さんの代から引き継いだ人である事よ!
ちなみに、多くの一般人は、それを行う必要はなくて、
社会保険への加入手続きは、基本的には、『会社が行う』ものよ!
会社から指示された必要書類を、会社に提出する程度だからね!」
「つまり、どーゆう事!?」
「最初から、『雇う気なんかなかった』事よ!
面接時に、そう、言われたことが会ったそうよ!
さすがは、騙し屋のミシマさんの常套文句であって、あの人も軽く騙されたものだったわ!
親近者の弟君やお母さんを使われてね!
1人で、市の市役所に行った時、完全にバカを見たらしいわ!
なーんにも知らなかったからね!
だから、世間一般的には、会社勤めの従業員さんに代わり、会社側が代わりにやってくれるものよ!?
給料からの差し引き、お互いに『折半』という形でね」
「給料からの差し引き……」
「お互いに折半……」
「ええ、そうよ! これができる企業は、200年後の未来(いま)じゃとんと少なくてね。
どこの会社さんも、敬遠しがちなものよ!?
その人を雇用する際、各種保険制度の手続きの話があって、
雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金が義務化が義務付けられていて、
その人を雇用する際、必要経費と割り切って、お互いに、『折半』という形で、各種、保険制度を組んであるのよ!」
「へぇ~」
「そうなんだぁ」
「でもね……。中には、まだ酷い会社さんもあって、職安の求人情報紙には、その記載書きがあっても、
いざ、そこに入ってみたら、その加入保険に入っていなかった……。
という悲しい実例もあって、この世の中には、実にありふれているものなのよ!?
TV報道のニュースを介して、国民には、報せているんだけど……。
全体には、伝わっていないのが辛い現状でね……。
これが、老後、大きく響いてきて、その各種保険制度が組めなかった事で、苦しむ事になるのは、自分なんだからね!?
よーく覚えておくといいわ!
いち社会人としての常識範囲として、覚えておいてほしいからね!」
「「はーい!」」
うん
とクリスティさんは、自分が言いたい事が言えたので、満足気だった。
☆彡
【会社の中には、自発的に辞めていくよう、予め作ってある部署もある】
――クリスティさんは、こう語る。
「――さて、次に、会社の中には、自発的に辞めていくよう、予め作ってある部署もあるって、知ってる!?」
とこれには、アユミちゃんも。
「えっ……それ!? どーゆう事!?」
「このわかりやすい例では
年齢制限というものが該当していて、20代という若さの時は、肉体的に良く動くけど、30代、40代となるにつれて、昔のようには、うまく動かないものよ!?
肉体の健康に置ける、根性論説では、パワーハラスメントが割合を占めていて、
女性の美の観点では、セクシャルハラスメントが割合を占めているものよ!
また、お腹が大きくなった妊婦さんなんかは、場全体がなんだか気を遣わないとならないからか、マタニティハラスメントが第3位にランクインしている!
これは、産後や育児休暇の後で、正社員だった人が、契約社員まで落ち込んでいった例よ。
あの会社も、似たようなものでね。
正社員の方が、左遷降格処分を受けて、最終的に墜ちていく先が――箱洗いだったって事よ!
お給料だって、若手の正社員の方が、20万円(1515米ドル)ぐらいでも、
そこに堕ちた人は、その半分の約10万円(758米ドル)ぐらいで、おおよそ半分の手取り月給。
それは、パート作業員の方と比べて、雀の涙ほどの賃金に、毛が生えたようなものよ?
しかも、きつくて、汚くて、臭いところもあって、地味にキツイ肉体労働環境だったそうよ?
そうやって、会社は、いらなくなった社員の方を、そこへ追いやり、『自発的』に『辞めて』いくよう、『促していた』ところだったのよ!
わかる? それが箱洗いなのよ!?」
これには、スバル君を推しても。
「え……。あの人、そんな所にいたの?」
「ええ、そうよ……!
求人情報紙には、軽作業と書いてあったけど。
その実、薄箱なら24段、厚箱なら12段ほど積んであって、時にはその中に、商品が入ったままのパン箱もあったそうよ。
しかも、常に動きっぱなしの職場環境だからか、嫌にキツイ肉体労働だったそうよ。
しかも、嫌な元正社員かぶれの人に当たった日には、
『その箱をあそこまで持っていって、この機械が洗っている間に戻ってこい!』
――という無茶な条件を出されたこともあったらしいわ。
それができない人には。
『おいっ、何でそんな簡単なことぐらい、できんとやお前は!? ちょっとこっちへ来い!!』
――って言って、連れ出されて、叱責を受けた人もいて。
また、『お前はいいよなぁ!? まだパート作業員だからよォ!?
その時間給だけ、ここで働けばいいんだけなんだからなァ!?
だがなぁ、俺等(元)正社員はそーゆう訳にもいかないんだぞォ!? 深夜労働の時間帯だって、ここにいて、お前等が楽して帰った後控えてあるんだからな!?
お前等は楽でいいよなぁ!? ただ、ここにいて働いて、その時間分だけ、だらぁ……と過ごして働いていればいいんだけなんだからな!?』
――ってね。
まぁ、あの人は、長年の経験と技術と経験で乗り越えられたからいいけど。
他の新人社員さん達やキーシストマ先輩は、そうもいかないのよ……。
そのエリュトロンコリフォグラミーさんっていう人の叱責を受けた事で、精神的に追い詰められて、
手鉤棒を、体に押し付けられたりもして、
そこを辞めていった人達も、枚挙に厭わないそうよ!?
ヒドイ時には、キーシストマ先輩が、掃除中に、機械の中に頭から突っ込まられて、その頭巾が黒く汚れたらしいからね。
ホラッ、ちゃんと良く見て、洗えってね!?
職に出たら、そーゆう悪い人もいるって訳よ!?
また、ヨーシキワーカさんも、同じような事があって、機械が停止中に、危うくその手が巻き込まれたことが会ったそうよ――」
☆彡
【月見エビバーガーオーロラソース社】
【いらなくなった社員さんの落とし前、まともな定職に就けないようにしてやる遣り口】
――それは、ヨーシキワーカが、洗浄機の掃除していて、箱が空転して、流れてくるところに移った時だった。
機械の稼働音が聞こえてきたかと思えば、
いきなり、チェーンベルトが、ガタガタと音を立てて、動き出したものだった。
これには、さすがの俺も、慌てて、その手を上に上げたものだった。
『イイッ!?』
(まさか……!?)
この時、この箱洗いの現場にいたのは2人だけ。
そう、俺とエリュトロンコリフォグラミーの2人だけだった。
俺は、鬼気迫る勢いで、急いであいつの所へ行ったんだ。
そして、こうが鳴りたてた。
『オイッ、何で勝手に動かした!? 危ないじゃないか!?』
『あっ!? お前、誰に向かって言ってとや!?』
『お前にだよエリュトロンコリフォグラミー!!』
『はぁ? あぁ……そうかそうか……確かお前、30分ぐらい以上前に、あそこで掃除してたけなぁ!?』
『な……ッ!?』
(それを知っていて……!?)
『いやぁ……ワリィワリィ、あそこの機械が、ちょうど邪魔になっていて、その後ろにいる事にちっとも気づいてやれなかったんだ。
いやぁワリィな~。でも良かったじゃないか!? その手が巻き込まれずに済んでよ!?
今日のところはお相子ってところでよ!?』
『なっ!?』
『前々から、今日の朝ぐらいから、お前がいけ好かなかったんだよなぁ……ここを出て行ったあいつを想い出してよぉ!?』
『……ッ』
(ペフコビブリオさんか……!!)
それだけ言うと、エリュトロンコリフォグラミーの奴は、俺から視線を切り、この機械の操作版に向き直るのだった。
そこで、いろいろと手動で操作していた。
『へぇ~……ここのこの操作パネルを動かすと……こうやって動き出すのか!?』
『……』
そいつは、チラッと俺を見てきては。
『お前は、こーゆう操作の仕方すら知らなかったんだろ!? ここにいて、長く勤めていても、ここの機械操作は俺のようにできないだろうからな!?』
『弄るな!! 下手に!! 戻せないだろうが!!』
『フンッ!!』
それから、エリュトロンコリフォグラミーの奴は、幾度か機械操作を行うものだった。
その間、俺は、睨みを利かせていた。
で、不意に、エリュトロンコリフォグラミーの奴が、俺を見てきたかと思えば……。
『あぁ、そう言えば……。
まさかあんな遠くの所までそれをやっていて、
俺がここから出て行って、一度ここに戻ってきた時には、確か、30分か40分ぐらい経っていたんだっけ!?』
『……』
(お前の無断抜け出しは、いつもの事だろ!? さっさと謝るなら謝れ!!)
『で、ここに戻ってきてヒマそうだったから……。
お前が1人になって、あそこの裏で、一生懸命になって掃除してたもんだから、なんだか悪いなぁ思って。
声を掛けるにも!?』
(掃除しろ!! 謝れ!! それは謝った内に入らん!!)
『この機械の操作パネルを、こっちの方で試しに何度が動かしてみたら、いったい、どうなんのかなぁって、色々と試していてよぉ!?』
『……ッ』
(すんな!!)
『まさかあんな遠くの所まで、この機械で動くだなんて知らなかったんだ?!』
『……』
(オイッふざけるなよ……!? その緑のボタン1個で、動くことは知ってるだろお前も!!)
『あーそう言えば、お前知っているか!?』
『……何をだ!?』
『『同じような遣り口』で、あそこで掃除していた奴の指が、チェーン(それ)に巻き込まれて、
あそこの青いところのゴミ箱の中に、危うく転がり落ちた事があったらしいんだぜ!?』
『へ……!?』
初耳だぞ、それ……。
『でも、だが、どう考えてみても、変な話なんだよなぁ……!?
試しにお前よぉ……、この機械をこのまま動かしたまま、あそこに行って見ぃ、何かそれでわかるかも知れないぜ!?』
『……』
で、俺はそいつの案内で、箱洗いの流し場の空転して、宙返りするところまでやってきたのだった。
戦闘を歩くのは俺、後ろからついてくるのはエリュトロンコリフォグラミーの奴だった。
そこには、青いゴミ箱が3つほど並んでいて、そこに置かれてあったんだ。
『……オイッ、試しに、そこのレール部分に触れてみたらどうだ!?』
『……』
『何だよ!? 心配すんなよ!?
別に後ろから、お前をドンッって何も押す気はねぇよ!?
……この俺が、そんなバカみたいなマネ、ヘマをする訳ないだろ!? 何も、バカみたいな奴等みたいにさ――ッ!?』
『……』
『何だァ!? まだ、信じられないのか!? じゃあよ――そこん処のセンサー部分に触れてみたらどうだ!?』
『……』
(どーゆう事だ!?)
俺は、訳がわからず、そのセンサー部分に触れてみると……。
レールのベルトチェーンが、ガタガタ、と音を立てて、急に稼働し出したんだ。
これには、ビクッ、と慌てて、その手を上に上げて、退いたんだ。
『なーっ!? こんな事はお前も知らなくて良かっただろ!?』
『へっ!?』
それは、初めての出来事だった。
……だが、問題の核心は、ここからだったんだ。
『……だが、いったいどーゆう事なんだろうな!? 前に巻き込まれたあいつは、『急に音が鳴って』、それが動き出したと言っていたが……。
指がなくなって、こっちに着た時には、
ここの奴等の上の連中が、それは、そいつのただの『確認能力不足(?)』で、今のお前のようにして、なーんも確かめずに、
ただそこのベルト下部分の掃除をしていて、ゴミ出しをしている最中に限って、その手を巻き込まれたらしいんだがな!?
だが、良かったなぁ、今日、それを初めて知って!? この俺に感謝しろよ~ォ!?』
『……」
(感謝だと……ふざけやがって……!! 誰がしてやるもんか!!)
『あっそうそう!』
『!』
『何でもそいつは、『前』に、『ここに呼び戻された奴』みたいでよぉ、『引き返し際を見誤った奴』みたいだぜ!?
でも変なんだよなぁ!? ここにいる俺達は、いつもこの昼の時間帯に働いて。
何でもそいつはよぉ、『何かの責任問題を抱えていた』らしくて、『夜遅く』にここに着て、『誰かと一緒になって働いて』いたみたいなんだぜ!?
で、その時に『誤って』『そうなってしまった』……と!?
何でだろうなーっ!? これはいったい!?』
『……』
(前にいた奴……誰だいったい……!? フツーに考えて、新入社員さんは考えられないし……数合わせにもならない……。
時期的に見て、おかしいが……。
最も可能性が高いのは――まさか、ペフコビブリオ大先輩が……ハメられた……!?)
最悪の可能性が過ぎったものだった。
エリュトロンコリフォグラミーの奴は、こう続けたんだ。
『ちょっと俺は、向こうの上の方の事務所に行ってきてやるわ!? それがいったい、どーゆう事だったかを聞き出しに行ってな!?』
『……』
(俺は、その場に残り、少し考えてみる。
まず、結果から言おう!
その日、エリュトロンコリフォグラミーは聞き出しに行った後、俺は、その話を一切聞いていない。
辞めていくまでの間に、ただの一度もだ。
考えられる可能性は、こうだ。
1つは、俺に逆らうようなら、お前も同じ目に会わせてやると言う意思表示だ。
もう1つは、会社からの意思表示。
この後、少し噂が挙がっていたが……、俺の方にまで、それが届いていなかった……。
『あいつはどうやら、あの日、あそこで会った事を、何にも知らされていないみたいだぞ!?』
――とするものだった。
つまり、情報統制は取れていて、その中で働く人にまで、届いていないらしい。
知らないのは、主に1階で働いているパート従業員だけ。
1階や2階の正社員枠や、限られた従業員さんは、それを知り得ている訳だ。
『………………』
ガタガタとなっていたレールが止まる。
(……稼働してから、止まるまで、約3分から5分間)
さらに、自分は危険性を考えて、センサー部分にもう一度触れてみる……と。
レールのベルトチェーンが、ガタガタ、と音を立てて、急に稼働し出したんだ。
(やはり……! 今、あそこの機械が稼働している状態で、ベルトチェーンが動き出した。
つまり、こうやって、『言い逃れができるようウソついているな!? この会社は……!?』)
『………………』
(あっ! もしかして!? 菓子パンラインのマシーンスライサーも同じような理屈か!?)
☆彡
【月見エビバーガーオーロラソース社】
【指を失い、慰謝料を請求しても、たった100万円程度】
【しかも、それ以上に騒ぎ立てられて、多大なまでに、逆に盗り立てられている非現実】
――振り返るは、当時の出来事だった。
それは、俺が箱洗いをしていて。
1階の書面玄関から、ある少女の家族3人が出てきた場面だったんだ。
『クソッ!! 何て会社なんだ!!
何だって、こっちの方からこんなになってまで、謝りにいって、『逆にこんなになってまで、こんなにも支払わんばいかん』とや!?』
『いったいどうなってと!? 何で『あなたの勤めている会社』の『上の方』にまで、その電話がかかってきたとね!?
それに、その時、一緒にいた同じ部署の人まで、同じように騒がられたんでしょ!?
それに、何だって、あんなに『家の方』にまで、『頻繁』に『電話』がかかってくるのよッッ!!
いくら何でも、こんなのは信じられないわ!!』
『わからん……ただ、会社の上司の方から、あの会社には、逆らわんほうがいいと!!
その時、周りにいた同じ部署の人達が、あんなになってまで声を荒げるばかりか!?
隣の他の部署の人達まで、上や下になぜか届いて、あんなになってまで騒ぎ出して……。
それを見兼ねて、俺の上司に当たる人まで、もう、あそこには逆らわない方がいいと……!?』
『逆らわない方がいいって……あたし達の愛娘の指が、こんなにも酷い事になっちゃてるのよ!?
もうこれじゃ、どこの会社さんに行っても、中々雇ってもらえないし、
嫁入り前の娘だからか……。もう、結婚相手のお相手すら、もう見つけられないのよ!?
何だってこの会社は、あたし達の娘がこんなに酷い事になったというのに、こんなにも少ない額しか、支払ってくれなかったのよ!?
謝罪にもなっていないわよ!! 逆にこんなにもやられて!!
100万円(7576米ドル)ぽっちだなんて、いくら何でもあんまりだわ!!
こっちはもう、大事な指までを失っていて、もう戻らないのよ!! どうやっても!!
ねぇ、あなたも何か言ってよ!!』
『クソッ!! こんな事になるのがわかっているならば、この大きな会社を信じて、大事な娘を、こんな所に出すべきじゃなかったんだ!!
俺が、もっと周りに取り次いで周って、もっと事前に知っていたら、
こんな会社には、大事な娘は出さなかったと言うのに!!』
『でも、いったい、何だってこんな事になったと!?
あなたの会社の上司さんもそれを知っていて、その中の方で、電話が鳴り響いていたんでしょう!?
どうして、そんな事になって、今、こんな苦慮した状況下になってるとね!?』
『わからん……!! あの中がいったいどうなってんのか!?』
『あたし、もう、月見エビバーガーオーロラソース社、キライ』
『ねぇ、あなた、これからいったいどうすればいいと!?』
『俺から、もっと周りから掛け合ってみる……なぜこんなヒドイ、状況下になってしまったのかをな……!? 何かあるぞ、この会社には……!?』
★
【月見エビバーガーオーロラソース社】
【(続)いらなくなった社員さんの落とし前、まともな定職に就けないようにしてやる遣り口】
――ヨーシキワーカ(俺)は、当時の出来事を振り返りつつ、こう呟きを落とす。
『――確か……。菓子パンラインの中には、『抜き差しができるコンセント』があって、プラグの抜き差しだったはず……!!』
これがポイントだ。
『確か、その時、女性従業員がいて、普段通りに何気なく作業をしていた。
で、誰かに声を掛けられたとき、そのマシーンスライサーが、いきなりして動かなくなってしまった……さっきまでは動いていたのに……』
これもポイントだ。
『で、おかしいなぁ……と思い、
さっきまで、その作業に当たっていた人を呼び出し(?)、何か声を掛けたそうな……。えーと……確か……』
ヨーシキワーカは、当時の出来事を参照にしつつ、振り返ってみる。
『――さっきまで動いていたのに、お前がここに着てからいきなりして、あそこの機械が動かなくなったとぞ!?
中の方の、あのスライサーの下の方にまで、固まったクリームが詰まっているんじゃなかとや!?
ちゃんと使った後、また使えるようにしてあったとや!?
たまには、あの中の方にまで手を入れて、掃除をして、中に詰まったものをいちいち取り出さんばいけんとぞ!!
一度、こびりついちゃうと、次使う時、中々取れんようになってくるからな!!
一度綺麗にしてからせんと、次の行程に入ってくる、チョコクリームの中にまで、さっきまで使ってあったクリームと一緒に混ざるから、
それを売り物として、出せんようになってくるからな!?
キチンと掃除しとけよ!! そのミキサーの刃物の下にまで、その手を直接入れて、こねくり出してな!?』
『――だったかな?
その時、なぜか『停止してあった機械』の中に、誤って手をやり、
いきなりになって、あのマシーンが動き出し、
その時に、その娘の指を失ってしまった……痛たましい事件……!!』
それが、今回の件だ。
『もしも、ここで、仮に、意図した狙いがあって、前々から気に入らない娘に対して、嫌がらせがあったとしたら……度し難いほど許されないな……!!
プラグのコンセントを『引き抜いた奴』がいて、第三者等を介し、
その少女に、確認のために、その中に手をやり、
その勢いで、『プラグのコンセントを差した奴』がいるとすれば……!?)
『………………』
サァ……
とその真相に気づき、俺は、血の気が引く思いだった……。
(そうか……。この会社は、気に入らない奴が出たら、そうするのか……!?
そういえば、年に2,3回ぐらいの確率で、そーゆう噂が立っていた事があったな……。
で、一時期、ある噂話が立ち……。
視聴できるところに、2,3人ほど人が集まって、その録画してあったショーを見て、嘲笑っていたと……!?)
それは、もう血の気が引く思いだった……。
(これは、誰かに伝え残しといた方がいいかもしれんな……。
いくらなんでも酷過ぎる、凄惨過ぎる!!
どうにかして、注意喚起しておかないと、後々、マズい事になっていくぞ……!!)
不安しかなかった……。
☆彡
――過去から現在に返り、クリスティさんは、こう語る。
「それだけじゃなくてね。そーゆうキツイ環境だからか、どうしても、人が辞めていくような、労働環境に整っていたせいで、
1年間に、5人もの人が辞めていった年もあり。
中には、1日3時間働いただけで、辞めていった人も、少なくはないものよ」
「……」
唖然しかない。
これには、スバル(僕)を推しても、何も口聞きできなかったものだ。
クリスティさん(彼女)は、こう続ける。
「でもね。そーゆう労働環境だからか……そーゆうところを会社側が作ったせいで、
昔辞めていった有能な従業員さんを、どうしても引き留めようとしていたようなものよ――」
★彡
【ウェーブグローバル小説を公開した年、11月】
【箱洗いは、全員パート作業員】
【マイアミの公共職業安定所』Public Employment Services In Miami(パブリック エンプロイメント サービス イン マイアミ)】
――その日、私は、求職相談に訪れていた。
求職相談面談ボックスにいる、対面の相手は、ファウンフォレストさんだった。
『向こうの会社の人は、ヨーシキワーカ君の事を正社員と言ってたわよ!』
『……』
それに対し、ヨーシキワーカ(私)は、ただその首を振るい。
『違うの!?』
『……うん。パートだったよ。その箱洗いにいる人達全員!』
事実である。
箱洗いは人数不足で、回している所なんだ。
『でも、向こうの人は、それは違うって……ヨーシキワーカ君の間違いじゃないの!?』
『……』
ナレーションの語り手は、ヨーシキワーカ。
【――その話は、遅々として続き、平行線だった……】
【その後、ヨーシキワーカ(私)は、ファウンフォレストさんに何度も会い、そのノートを直接何度も見せる事によって】
【信用を買い、どっちが正しいのかになっていくんだ】
【おそらく、会社としての建前を通す以上、真実が明るみになるのを避けたかったのだと思う】
【加えて、その希望求人の話を受けて、ヨシュディアエさんのところから出て行ったのだから、彼女としてもその面子を保つため】
【正社員という名目が、そのままだったのだろう】
【その実、非正規雇用のパートという扱いは、職業安定所としての尊厳にも関わってくる、不祥事でもあったんだ】
★彡
【ウェーブグローバル小説を公開した年の12月】
【(続)箱洗いは、全員パート作業員】
【マイアミの公共職業安定所』Public Employment Services In Miami(パブリック エンプロイメント サービス イン マイアミ)】
――その日、私は、求職相談に訪れていた。
求職相談面談ボックスにいる、対面の相手は、ファウンフォレストさんだった。
『――前に言ったパートの話覚えてる?』
『……』
何だろうと勘ぐったあたしは、その顔を上げる。
『パートだけのところは、実は、箱洗いだけじゃなく、別のところもあるんだよ。……えーと、パンケーキラインが、確かそうだったと思う』
『……』
『……なるほどわかったわ』
そして、さらにヨーシキワーカは、彼女に手書きのノートを見せるのだった。
『……』
これを見ろって事ね。
そのノートには、また別の事が書かれてあった。
☆彡
【虚偽申告!?】
【職業安定法第65条により、6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられる】
過去から現在に返り、クリスティさんは、こう語る。
「――昔、そーゆう事が会っていたらしいわよ!」
これには、ミノルさんが、こう言及してきて。
「つまり、正社員から左遷降格処分を受けて、堕ちていくところが、その箱洗いという訳か……!」
「うん……」
と頷き得る、クリスティさん。
そこへ、横から妹のサファイアリーさんが、こう言及して。
「その昔の会社の人は、希望求人の話を職業安定所の方に通して、
その希望求人から出た人が、たまたまヨーシキワーカさんだったのよ!
その時に、受付対応をした娘が、ヨシュディアエさんで、
その後、面接に行ったときの内容なんて、深くは知らないから、
そのまま、向こうからの話では、『正社員雇用』という名目上の『紹介状の返し』があっていたそうよ!?」
これには、アヤネさんも、ミノルさんも。
「きょ……虚偽申告!?」
「オイオイ、大丈夫か!? その会社も!? 職安の人も!?」
そこへ、クリスティさんが。
「大丈夫じゃないでしょうね……」
あぁ……
と一同、嘆く思いだった。
クリスティさんは、こう続ける。
「ヨシュディアエさんも、それを確認していて、表向き上では、正社員雇用という扱いで、受理を勧めていた……。
けど実際は、その真実は、パート区分だったという話ね!」
これには、アヤネさんも、ミノルさんも。
「……確かに、氷山の一角ね……! 不正も不正、虚偽も虚偽ね」
「ああ」
と頷き得る思いだった。
完全に、虚偽申告と虚偽不正の受理だったものだ。
続いて、クリスティさんは、「ん~~……」と可愛らしく、その細い下顎の下に、指を宛がって。
「ねぇ、エメラルティ?」
「んっ?」
「その求人情報で、虚偽の求人広告をした場合は、どうなるの!?」
「えーと確か……。
『職業安定法第65条により、6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられる』わね……。
また、その希望求人で集まった人達の数に比例し、
加えて、そこに務めていた年数にも、累積するから、とんでもない額になるんじゃないかしら!?」
真っ青……
一同、その顔が青ざめるのだった……。
――とそこへ、調理場から、耐圧耐熱性の金属容器を3つほど運んでくるのは、シャルロットさん。
「んしょ! んしょ! どっこいしょっと!」
ドンッ
とその机の上に、3つほど耐圧耐熱性の金属容器を置いて、
「フゥ~」
と彼女は、その汗を拭ったものだった。
あたしは、その時、みんなの会話が気になって、そちらに目を見やったわ。
――続けて、クリスティさん(彼女)は、こう語る。
「――明るみになった場合、その両方だから、その最大限度額は、1億円以上(757576米ドル)で、10年以上の懲役は、覚悟した方がいいわね!」
とそこへアユミちゃんが。
「えーと……募集求人を出した人は、その総務課の人達なんだよね?」
「うん、そうね! あと――1階の製造事務所の人達も含むわね!」
「それってさー、訴えられるのは、その時の面接官だよね!? それとも、会社の代表なの!? その人物像が追跡調査ができない場合は!?」
「それは、総責任者である会社の代表の首が締まるわね……」
キュ―ーッ
とクリスティさんは、その首が締まり、苦しそうな面持ちを上げるのだったわ。
「……」
エメラルティ(あたし)は、その様子を見ていて、心の内でこう考える。
(――そう、あくまでOKサインを出したのは、その人だから。
総務課の人達や、製造事務所の人達が、面接官を買って出ただけ……。
あれから、10数年経過してるから、誰も覚えていないの一点張りだったでしょうね……。
まぁ、その後、ヨーシキワーカさんが辞めてから数年後、小説を書き出したようなものだから、
それが転機となり、調査のメスが入ったけど……。
あくまで、総責任者の方は、下の動きまで把握し切れないから、その人達のせいで、責任を負わされた形になる……。
いいところ、とばっちりもとばっちりなのよね……。
その上の威光の陰に隠れて、悪政を働いていた社員さん達にしても、見て見ぬフリの見放される形にもなって、
その人達繋がり伝いで、逆に、裏切られる形にもなっていくんだけども……。
ヨーシキワーカさんも、関与の疑いもあったけど、基本、原告注意で済んでるし。
しかも、お金まで受け取っていない……。
周り人達が、ハッキング伝いの人達が、下手に騒ぎ立てていただけ……! まぁ、結局はロクな結果にならず、バカを見た事になるわ。
黙っておけば、いいのに……。
それは、あの会社側にしても同じで、仮想現実(フィクション)なんだから、無視を決め込めば良かったのに……まぁ、責めようがないかな!?)
ハァ……
と溜息をついちゃうエメラルティ(あたし)。
その目線は、みんなに話す、クリスティ姉さんに向けられていたわ。
姉さんは、自慢気にこう言っていたわ。
「まぁ、明るみになった時、大赤字経営で傾いていたから、それを察していのよあの人は!
外からの攻撃まで、考慮したあの人は、社名まで変えてたらしいわよ!
仮想現実(フィクション)にした方が、時にいい場合があるからね!
なぜかわかる? それはね、威力営業妨害や、名誉棄損罪などで、逆に訴えられるからね!?
だから、何事も、過度のやり過ぎは、良くないってことよ!
あの人は、結局、偽詐欺電話には一度として出ていなくて、そうした怪しいお金すら1米ドルとして受け取っていないから、
そもそも、そんな事はなかった事になっているのよ!
あの人曰く、事を荒立ててはいけない! 騒ぎを起こしてはいけない!」
「……」
「それが、ヨーシキワーカ(あの人)が下した線引きだったのよ!」
「……」
クリスティさんは、そう言い。
その横で、エメラルティさんが、その様子を見ていたのだった。
(クリスティ姉さんは、そう言ったわ。
そう、あの人が下した判断は、あくまで、誰かの知恵となって欲しいとするもの……!
次の子供世代、孫世代まで、そうした不幸の連鎖は持ち込みたくない。
せめてもの知恵、せめてもの知識を持たせたいからね!
であれば、そうした詐欺犯罪は、減少傾向に転じ、いくらかはマシな世の中が訪れるから。
そして、それに囚われてしまった人達もいて、それで充分、満足だったでしょ!?)
「……」
クリスティさんが思うは、あのバイクマンの最後だった――
★彡
【カジノ後日談、医師の卵クレメンティーナとバイクマンの最後】
【病室】
――それは件のバイクマンが遺した言葉とのやり取りだった。
クレメンティーナ(あたし)は、窓のカーテンを、シャ―ッ、と閉める。
それは、外にいるパパラッチたちや、報道陣を避けるためだ。
今、外は、ドローンが飛び交っていた。
カーテンの裏に、その黒い影写り込む。
『……』
(何でこんな事になったんだろう!?)
思うは、そんな他愛もない言葉だったわ。
その時、あの時の事件容疑者が。
『済まなかったな……』
『……』
それは、バイクマン、あなただったわ。
『どうかしてたんだ……、……君に非はない』
『……』
『……何でも言ってくれ……! 君には、それを言うだけの資格がある……!』
『……』
(あたしは、その落ち込んだ人の様を見つつ、病床人を見て、そんな事言う気にもなれなかったわ……。
この人は、弱っていたから……。
この機に乗じて、責めかかれば、確実に勝てる!?
でも、それでいいのクレメンティーナ!?
あなたが目指す形は――)
そこまで考えて、あたしは、一切の思考を停止(ストップ)したわ。
『……』
不意に、あたしは窓の外の景色を見たいと思った。
けど、カーテンの裏には、ドローンの影が映り込んでいたわ。
(気分展開したい……そうだわ!)
『ちょっと待っててください!』
『……?』
あたしは、バイクマンの人にそう告げ、この病室を立ち去っていく。
パタパタ、と足音を立てて。
『………………』
バイクマンの人は、カーテンで閉め切った窓の外を見ていた。
何もない……。
気分転換しようと、花瓶にささった一輪の花を見るが、何とも味気が無かった……。
やがて、デジタル時計が、その分を刻んでいき――
『……』
――その時だった。シュイーン、と自動ドアが開閉し、大きな包みを持ったクレメンティーナが入ってきたのは。
『お待たせ!』
『……?』
バイクマン(私)は、何事だと思ったものだ。
彼女は、大きな包みを持ってきて、ドンッ、とそれを置いたものだ。
それは、1つの絵画だった。
作家は不明だが、それは清流を思わせるもので、日本の富士山だった。
『絵……?』
『うん、少し前にカジノで、トラピストさんという人にあってね。アハハハ、全敗しちゃったんだけど……』
『……』
『その時に、彼とメールアドレスを交換してね。
あなたの話をしたら、知り合いに女の人がいて、この絵を日本からわざわざ送ってくれたのよ』
『……そうか……』
『うん……』
それは、1枚の絵画だった。
清流が流れる森林の所で書いたのだろうその作家は。
映えるのは、日本名山富士山だった。
『……』
『……』
2人はそれを見て、喧嘩を避けたい気持ちだった。
クレメンティーナは、こう言の葉を呟く。
『あたしが医者になったのは』
『!』
『人を切って、その命の罪滅ぼしをしたかったからです』
『……』
【――それはまるで、罪人の礼状だった。罪滅ぼし、それしか生きる道はないから……――』
『……』
カーテンで閉め切った窓辺に立つあたしは、視線を切り、一度この人の顔色を伺う。
『……!』
『フッ、良かったですね。助かって……!』
『……』
『あたしがこの世界に踏み出せたのは、ホントに色々あったから、人生、ホント、いろいろですよ!?』
『……』
【――あたしは、こう罪の礼状を言う】
『あたしも、犯罪者の1人なんです』
『!! ……そうか……君もか……』
『……はい……』
【視線を切ったその人も、何か思う処があり、そう意を汲む】
『……』
【あたしは、この人から視線を切り、体の向きはそのままで、その絵画を見て、遠き未来に、言の葉を乗せる】
『あたしはここから見える、外の景色が好きなんです』
『!』
『あの中には、きっと未来にあたしが切った患者さんがいて、再び、あたしを頼りにきてくれる』
『……』
『そう、夢に描きながら、今はまだてんでダメダメですけど……。日夜、勉強に明け暮れ、助手でもいいから手術の練習を積んでるんですよ』
『……』
『誰だってそうですよ! 自分の手で、人1人の命が救われるなら、医者冥利に尽きるじゃないですか!?』
『……』
『そう、どんなに昔、悪い事を仕出かした娘でも、きっと神様が観ていて、その後、便宜を図ってくれる!』
『……』
『あっでもでも! 地獄行きは変わりませんよ! ……きっとね!』
『……そうだな……。フッ……』
にこっ
と微笑むあたし。
『そう、地獄行きは変わらない……。なら少しでも、徳を積んだ方がいいから……』
『……』
『……今のあなたの状態は、そうまるで』
『!』
『倒産寸前の会社が、今病室で寝込んでいるあなたと同じ状態ですね……』
『……』
『でも、何でかな……?』
『……』
『不思議と攻撃者にはなれないんですよ?
知ってます? 過去に何か悪さを犯して、その真実が明るみになった途端、コロッとその人はその手を翻して、攻撃を仕掛けてくるものなんです』
『……君も、その経験があるのかい?』
『Yes Off Cours(イエス オフ コース)! ……女子高校生の時に……ちょっとね……』
『フッ、そうかい……』
訳ありか……。彼女も、私も……。
『………………』
『………………』
それから、不思議と時間が流れて、
次に口を開いたのは、
『――卑怯者には、なりたくないですからね……』
クレメンティーナであった。
『例えば、この病室で寝込んでいるあなたのすぐ近くで、騒ぎを起こせば……』
『……』
『回復傾向のあなたでも、潰れかねない……』
『……』
『そうなれば、誰がやったのか!? になってくる』
『……』
『だから、外から見ている人たちは、今は静観して見守るのが、医者としての務めなんだと……あたしは、そう思いますね』
『静観ときたか……。君は壊すのではなく、『治す』、どんなに時間がかかっても……』
『……』
『君はつくづく、医者の卵だな』
フッ……
とクレメンティーナ(あたし)は、微笑みを零すのだった。
☆彡
――過去から、現在に返り、スバル君から。
「――そんな事があってたの!?」
「ええ、ヨーシキワーカの偽名(トラピスト)さんのおかげよ!」
「フ~ン……」
(あの後の話かなぁ……)
と僕は、そう思うのだった。
つまり、その後、何かがあり、そのトラピストさんとクレメンティーナさんは、連絡を取り合う事になるんだった。
つまり、それはある意味で、作戦成功を人知れず、意味していたんだ。
だが、その横では、妹のサファイアリーとエメラルティが、意味深の顔を浮かべていて。
「「フ~ン……そうなんだぁ……フ~ン……」」
そうやって、場を濁すのだった……。
ある意味で、台無しである。人の心なんて知らないのだから。
だから、クリスティ(あたし)は、「話を戻しましょう!」と言ったの。
「逃げたな……」
「逃げたわね……」
サファイアリーが、エメラルティが、決していい気がしてこなかったわ。
それでも、あたしは、こう続けるの。
「――犯人はヨーシキワーカさんじゃない。
犯人というのは、そもそも誰もいなくて……。
昔の会社は、その従業員さん達の事も、良くわかっていた……。
わかってはいたんだけど、現場までは、そうした目が行き届いていなかったから……。
そして、それが悪しき予兆だったの……。
あの時、あの場で、パートではなく、責任者さんさえ置いていれば、そんな不都合な事態にはならなかったはずよ?」
☆彡
【地球人類、難民達の立ち位置】
――その様子を伺うは、シャルロットさん。
「――……」
【――そして、それは、アクアリウスファミリアのシャルロット(彼女)に伝わったのだった】
【彼女は、こう言の葉を零す――】
「――いい参考例ですね」
「……!」
歩み寄ってくるは、アクアリウスファミリア、そのプロトニアのシャルロットじゃったわ。
その者は、わらわ達の隣きて、その視線を皆に向ける。
(ああ、これは、何かあるな……)
わらわは、そう察したのじゃった。
「……」
フムゥ……
と考える仕草を取るシャルロットさん。
【――この時、シャルロット(あたし)は、もしもの時に備えて、考えていたわ】
【この話は、特にタメになるから……】
【今後の動向の経緯について、それは、地球人類みんなの人生を左右するほど、大きなものだったから】
「――!」
キョトン
と呆けていたのは、少年少女達のスバル君にアユミちゃんの姿だったわ。
そして、この現場を見ていなくて、そもそも聞いてもない、クコンちゃんと小さなお子様たち。
『あぁ……フフッ……』
(あの感じを受け取ると、この話が如何に、今後を左右するほどの大きな出来事になるかを、把握してないわね)
『クスッ……』
(……まぁ、今はいいかな?
――今、アクアリウスファミリアは、地球人類とアンドロメダ星人達との中立という立ち位置にある。
そうした経過観察の目で見れる。
そして、横からの介入もできて、あたしは、今、美味しい思いもできる。
これほど、いい話は他にない)
「……」
「……」
あたしは、スバル君、あなたの顔を見やる。
(また、地球人類が、職への斡旋を受けて、他所の星へ仕事先へ行った先、
そこで問題行動が起こった際は、もう目に見えてわかっているのだから。
だから、今、この話は、とても貴重なご意見……!
まぁ、今、君にそれがわかっているかどうかだけ……)
「フフフ」
と笑ってしまうシャルロット(あたし)。
(だから、ついつい、こうした助言をついてしまう)
「わかりますか? スバル君にアユミちゃん?」
「!」
僕とアユミちゃんの2人は、シャルロットさんに声を掛けられた事で、そっちの方に意識が傾くのだった。
彼女は、優しくこう告げる。
「1つ! 本物の法廷裁判所では、確たる証拠が要ります!
その時、弁護側は、会社側を相手取って勝訴した場合、慰謝料請求等を申し出ることが可能です!
ただし! その後に待ち受ける不都合な事態に対しても、それ相応の覚悟をしなければなりません!
会社側は、周りの企業間に連絡を回し、今までに大変お世話になった会社なのに対し、あいつは、お金だけを盗っていたと言う事もできます!
その後、待ち受けるのは、その額のお金があるのだから、今後しばらくの大丈夫だろう!? とする雇止めが起こる危険性です!
そして1つあって! 偽電話詐欺を介して、偽の法廷裁判場を、仮にでっちあげる事も十分に可能です。
本人にその能力があり、周りの悪連中との連れも多く、取り次いで周れば、それは大きな力となるでしょう!
これは、昔の会社を辞め、新しい新会社に務めている状況で、
昔の会社に対して、相手取り、周りの企業間に連絡を回して、偽の法廷裁判所をでっち上げて、電話口から攻撃を仕掛けてくることも十分可能なのです!
この時、身内関係に、ハッキングができる能力があるものと、職業訓練校のような講師陣と、職安のような中立の立場があるものが介すれば、
そちらに大きく天秤が傾きます!
ヨシュディアエさんから、昔の会社に回した例が、この典型的な例ですね!
この時に、もしも、仮に、本人様が1円でも受け取っていれば、
その額があるんだから、今後しばらくは大丈夫だろうと、2、3年間は、就職もできずに、雇止めが起こるのです!!」
これを聞いてしまった、僕とアユミちゃんの2人は。
「「えええええ!!! マジィ!?」」
そして、まだ、それを言ってもいないクリスティさん、サファイアリーさん、エメラルティさんの御三方は。
「「「……」」」
正直、ビビりまくっていた……。
サファイアリーさん、エメラルティさんと口を零していく。
「ちょっとウソでしょ……」
「まだ、こっちがそれを何も言っていないのに……。
そして、勘のいいクリスティさんが。
「あっ、これってまさか……ヒースさんと同じ……!?」
「フッ……」
ビクッ
としてしまうクリスティさん。
続けて、心優しいシャルロットさんは、こうした大ヒントを残す。
「ご本人様は、そのお金を『受け取ってはいけない』んですよ。
そして、勝ち負けがすべてではなく、引き分けに持ち込みつつ、如何にして『無罪を勝ち取る』か……!?
そうする事よって、周りのから見た視方も、当然違ってくるものなんです。
……わかりますか? スバル君?」
「……」
「それが、正しい評価を受けるか否かです。
本人にその能力が伴わずとも、それは今後の人生の中で、培っていけばいいだけの話!」
「……」
「その時に、仕事仲間も得、そうした人生の中で掴み取ったものも、また得難いものとなるでしょうしね!」
「……」
【――それは、まるで、あのヨーシキワーカさんの今後を決める、結末にも見えたんだ】
【そして、シャルロットさん(彼女)は――
「フムゥ……9対1……いやぁ、7対3ぐらいの割合に持ち込みたいですねぇ……ウフフフ」
「……お主も、大概じゃな……?」
「あらぁ~? 何の話ですかぁ?」
「ハァ……読めとるわ」
「フッ……」
2人の謎の主張が飛び交う。
決め手は、アンドロメダ王女様の心の内だった。
(こやつ……さては、あの娘子たちの心の中を読みおったな……!)
それが、答えだった。
シャルロットさんは、人の話を聴かずとも、ある程度は予測がついていたのだった。
アクアリウスファミリアの中には、人の心が読める者がいる。
現在わかっているだけで、ヒース、シャルロット、この2人だった。
「……それ関係に詳しい輩は、うちの方にもおる! アクアリウス星で、不祥事が起きた時は、そちらで対処し、吟味し、こちらでも同様にしよう」
「いけませんね!」
「……」
「中立という立場を持って、プレアデス星人にも委託の願いをお願いしましょうか? それなら、ソーテリア星で不祥事が起きても、差し支えないでしょう?」
「理に適った話じゃな」
「フフッ……では、そーゆう手続きでも、後で進めましょうか?」
「委細承知した!」
フッ……
と意に勝った話になるのだった。
つまり分け前は、アンドロメダ、アクアリウス、ソーテリア、そしてプレアデスに入るという暗黙の了解の元、入る仕組みだった。
これを見聞きしたスバルは。
(……まぁ、必要な事か……。問題は、どうやって地球の方にも、入る仕組みを、後で設けるか……か……!?)
う~ん……
【――と少年も、政(まつりごと)を考えていたのだった】
【計算高い子であれば、いいのだが……】
【政(まつりごと)を為すは人にあり、またそれ等は、星間連盟の庇護下の元、人権を尊重し、護るために必要な事柄だった――】
☆彡
【企業側が、人が辞めていくところを、予め作った場合、結局はロクな事にならない……それが時代の流れである】
「――でもさー! 結局そんな所を作ってしまったんだから、人が入ってきても、次々と辞めていくんじゃないのー!?」
――そう、言及してきたのは、アユミちゃんだったわ。
そこへアヤネさんが。
「そうね……。時代の流れ、変化もあるだろうし……。
昔の人は、今の時代の流れに付いていけず、
よく後輩と一悶着とか起こりそうね。
それで、ベテランの人が辞めていけば、会社としては経営が立ち行かなくなっていくわね……」
「……」「……」「……」
その偶然のアヤネさんの言葉を、美人三姉妹の誰もが、黙って聞いていたのだった。
その変化に気づいたアヤネさんが、こう口を零してきて。
「なに……?」
「いえ、当たってるかと」
「ああ、やっぱりね!」
そのアヤネさんの意見は、的を射ていた。
彼女は、こう続ける。
「だてにホテル経営者の妻をやってないからね……! 人間関係は、どこの世界でもありふれたものなのよ!?
まぁ、ベテランの人が抜けたら、
それが副料理長だった場合、後釜がいれば、まぁ、大丈夫だったけど……。
他所のホテルじゃ、死活問題だったものよ?」
これには、アユミちゃんを推しても。
「何で?」
と疑問を抱いたものだったわ。
それに対して、アヤネさんは、こう説明したの。
「言ってみれば副料理長とは、次の料理長の後釜だと言えるのよ!
その修業期間があってね!
オーダーの手配を進めるのが、実は副料理長だったりするところもあるものよ!
昔ながらの味を兼任していて、それでいて、時代の流れに合わせて新しい趣向も持ち込まないと、
この世界では、やがて潰れていくからね……!
一説では、料理長が『10』の仕事をしているなら、副料理長はそれ以上で、15、6だったり、ところによっては、『20』である場合もあるものよ!」
「重要じゃん!! 副料理長!!!」
「そうよ、最重要なのよ!
料理長は、店としての顔もあって、現場をその人達に任せて、出張する場合もあるからね。
そこで馴染みの顔合わせもあって、いい情報を仕入れてきたりもする。
その間、副料理長が、良く現場を切り盛りして、回転率を盛り立てていたようなものよ!
安心して、この場を自分に任せてくださいって言わんばかりにね!
だから、精神的に甘い副料理長だった場合、腕は確かでも、下のものを御せるほどの腕前はない……!
第3候補、第4候補の人がいて、上手く場を合わせてくれないと、
その副料理長を失った時のショックは、最大級で、パイプラインを持っていたのが、もしも、彼1人だった場合……。
周りとの軋轢を生む者よ? 漁業関係者とかね!」
「うっわーあ……超重要だったんだ……副料理長……」
「一般的に副料理長と呼ばれる人が育つまで、最短で5年もかかるからね……。
第3候補、第4候補でも、1年という限りある時間の中じゃあ、相当無理がある話であって、
その副料理長の甘い性格を考えたら、1人でしよい込むような人なら、修業期間があって、任せられていたのかどうか……!?」
「料理長は!?」
「あぁ、その人さえ、全体を把握していれば、まだ大丈夫よ!」
「なら、安心だね!」
ニコリ
と笑みを浮かべるアユミちゃんの姿があったのだった。
その様子を見ていた美人三姉妹は、誰もが心に思うところがあったのだった。
(……)(……)(……)
次に口を衝いて出したのは、あの人の小説の愛読者であるエメラルティさんだった。
「そういえば……!」
「!」
一同、そのエメラルティ(彼女)に振り返る。
「あの人が語るには、1年間に5人もの人が、辞めた年もあり。
1日3時間働いて、辞めていった人もいるぐらいなのよね……」
一同、戦慄が走る。
それこそ、雷鳴が駆け抜けたような。
「帰る時には何も言わず、ちょっとトイレ休憩に行ったかと思えば、ご丁寧にロッカーの中に、作業着を置いて、辞めていった人もいるらしいわ……」
☆彡
【ファミリア基金】
【フォーマンセルメンバー、スバル、シシド、クコン、???】
【目覚めつつある、新たな力】
――このエメラルティさんの発言を聞いてしまった、アンドロメダ王女様は思わず。
「――何じゃあそりゃあ―ーッ!?」
と天を衝くほどの思いで、その顔を後ろに仰け反るのだった。
珍しいもの見た……。
「そんなんで次の就職先なぞ、探せるものか!!?
取り次いで周って、希望求人よりも、低いものを出し兼ねないぞ!!?」
と注意の宣告をするのだった。
それを聞いていたのは、シャルロットさんとスバル君ぐらいなもので。
シャルロットさんは、こう、口を酸っぱくして零したのだった。
「――あぁ、これはいけませんねぇ……」
「!」
「もしも仮に、あなた達地球人類のうち、誰か1人でも、そうした場合、どんな弊害が生じると思いますか!?」
「……」
一同、そのシャルロットさんの言及に耳を傾ける。
その質問に答えてきたのは、サファイアリーさんだった。
「えーと……就職し辛い……とか……!?」
「それは50%ですね。……他には!?」
「……」
どうやら、ないようだった……。
これにはシャルロット(あたし)も、「ハァ……」と重い溜息をつく思いで。
「文明水準がまるっきり違いますからね……。
今、あたし達は、魔法を使って、誰にでもわかるような言語で話しかけていますが……。
時には、そうしない人もいるぐらいなんですよ!?」
「!?」
「当然、何の役にも立たないじゃないんですか~ぁ!?」
「……」
言われてわかる、重い現実……ッッ。
一通り、シャルロットさんがねめつけるように、睨みを利かせて、こう口酸っぱくして、言及してきたんだ。
「一応、その星の文学や学問も、一通り学ばせるやり取りをしますが……。初めのうちは、基本、肉体労働ですよ!?」
「「「「「えっ!?」」」」」
言葉が通じないんじゃ、死活問題だ。
「当たり前じゃないですか!? 何言ってるんですか!?」
「い、嫌だって……ロボは!?」
「生産量が限られています」
「アンドロイドは!?」
「資源は有限です。限りあるものなので、地球人が働いてくれるなら、他所の星へ、その資源を回し、金融にもできます。相乗的な経済効果が見込めます」
「ナビは!?」
「AIナビですか!? 御所望ならできますが……その星の言語に限っておらず、他所の星の数多の言語も入っていますので、
その端末台と毎月かかる維持費で、割と高額かと感じられますよ!?」
「「「「「いいいいいっ!?」」」」」
一同、これには驚愕だった……。
とここで、シャルロットさんが面白おかしく。
「あははは! 肉体労働のパート扱い区分ですからね!? 非正規労働者区分は、『当たり前』じゃないですかー!?
皆様は、他所の星からお越しになった、難民扱いなんですよー!?
まともじゃないですよーっ!?」
ガーーン……
凄まじい隔たりの衝撃を受ける……。
脳裏に心像(イメージ)が浮かび、地球に隕石が落ちてきて、ビックバンインパクトを受けたほどの衝撃(ショック)だった……。
シャルロットさん(彼女)は、こう続ける。
「だから――ファミリアを通じて、地球人類初のファミリアを発足し、仮認定を受けるんです!」
「あっ! プロトニア!」
「ええ、そうです! ハイですとも!
プロトニアになれば、死の危険は付き纏いますが、『ファミリア基金』を通じて、懐は温かいかと思います!
病気・怪我・事故等で死亡しても、誰か1人でも存命なら、『その基金』を通じて、
スバル君が発足したファミリアに、お金が入ってきます」
「なるほど……」
と納得の思いの僕がいたんだ。
「最低でも、1人です! そして、基本的には、ファミリアからの絶対厳守のミッションの指令が降ります」
「!」
「それにも人数制限があって、1人でいい場合もあれば、チームを組んで挑む場合もあるため、
地球人1人だけでは、心許ないでしょう!?」
「あぁ……確かに……」
「ちょっとした人間関係の軋轢や諍いが原因で、仲間外れにされれば、当然、チームを組む事だってできませんから……」
「ミッションも受けられない……!?」
「……」
フルフル
と顔を振るうシャルロットさん。こう厳しく言及するのだった。
「ミッションは、ファミリアを通じての『絶対厳守』なので、それは国や星の信用と沽券にも障ります……」
「あっ……」
「ですので、絶対厳守である以上、できませんじゃ話にならず、ペナルティーが付きます。もちろん、この場では控えさせていただきますが……」
「……」
「最低、4人……!! フォーマンセルメンバーを選んでください!」
「フォーマンセルメンバー」
そう、呟きを落とすスバル(少年)がいた。
そして、その言葉を聞いて、振り向いた人物がいたのだった。
「……」
子供たちの相手をしていた、クコンちゃんだ。
後2人の候補者は。
地球の宇宙ステーションにいるシシドと。
もう1人……。
「……」
危機感知能力が発動し、白い鳥が飛び、ある人物の後姿を捉える。
「……」
スバル(僕)は、そいつがいる方角に顔を向けるのだった。
それは壁の向こう側だった。
それを見て、シャルロットさんは――
「――あぁ、思い当たる人物でもいたのですか!?」
「……いや、会った事はないけど…………こいつ……想像以上にできる……!」
ヒヤリ……
冷や汗を垂らす。そしてこう言ってしまう。
「僕よりも……強いよこいつ……」
とこれを聞いたクリスティさんは。
「いや! それはないでしょスバル君!」
続けてアユミちゃんが。
「そうだよ! そんなに強くなって、何言っちゃてんの!? そんな訳ないよ!」
「いや……でも実際に、こいつの真価を探ったら……、僕の1000倍は強いよ。いや、それ以上かも……!?」
悪寒さえ覚える……。
(ホントにこいつは、同じ地球人類なのか……ッ!?)
って。
そこへ、サファイアリーさん、エメラルティさんの声が飛んできて。
「またまた~、脅かそうとしたって、お姉さんは騙されないわよ!」
「そうそう! あの森で、あのデカいやつを倒したように、君が雷を落とせば、どんな人だってイチコロでしょ!?」
「……ここにいる地球人に限ればね……」
「………………」
シ~~ン……
と静まりかえる一同。
そこで、アンドロメダ王女様が。
「あっちかスバル?」
「うん」
「どれ…………何も感じぬな……」
これには、スバル君、L、シャルロットさん3人で、
「それは王女様が、けた違いだからだよ!!」
「それは姫姉と一緒にしちゃいけないよ!!」
「王女、あなたと比較対象は、そもそもおかしいですよ!!」
と思わず、突っ込まずには、いられなかった……。
この王女様と比較したら、星と生物程度だ。
で、シャルロットさんが、探りを入れたら……。
「……あぁ、確かにこれは……、……抑えてますね……」
「うん……」
「でも変ですねぇ……フツーとは違うというか、異質というか、……ホントに地球人なのか、改めて意識を集中しないと、取り零すほどものですね……」
「いっいるのそんな人!?」
その発言をしたのは、アユミちゃんだったわ。
これには僕達2人も。
「「うん」」
「うわぁ、これは『スカウト』しなきゃ!!」
「でもさ……こいつ……何やってんの!?」
僕は思わず、赤面する思いだった……。
「……見えるのですか?」
「うん、意識さえ集中していればね……」
「覗きし放題ですね」
爆弾発言を投じるシャルロットさん。
これには僕を推しても。まったくそんな気はなくて。
「いやいやいや! そんなのする気もないよ!! バレたら、殺されるじゃん!!」
これには、シャルロットさん、アンドロメダ王女様、アユミちゃんが。
「あぁ、これは自覚してましたね……」
「うむ……あのまとわりつくような気配はやはり、そーゆう事じゃったか……?」
「え? え? えっ!?」
「……ッ」
覗きし放題の能力を得ていた少年は、無自覚ながら、その能力を試験的に試していたキライがあり、
おいそれと、使うべきではないと抑えていた。
だが、それがバレてしまうのだった……。
シャルロットさんと王女様に、まぁ、この2人は当たり前として。
同じ地球人の少女は、まるで気づいていなかったのだった。
とこれにはクリスティさんも。
「あらぁ~じゃあ、あたしも気をつけなきゃねぇ? フフフ」
「いやいや! する気はないって!?」
と慌てて、対処しようとするが……。返ってそれがマズかった……ッ。
「もしかしてこの子!? ホントに!?」
「覗きし放題!? いやぁ~ん!」
サファイアリーさんが、エメラルティさんが続けて、それに気がつき出し。
まぁ、相手はまだまだ子供なので、エメラルティさんは、からかうのだった。
で、少女が、ジトリ……と恐い目で、向けてきて。
「それって、いつでも見れるって事だよね!?」
「うっ……うん……やろうと思えばね……」
「じゃあ、あの時もあの時も!?」
「んっ? 何のこと!?」
「とぼけないで!! お湯がバシャーンってなったり、字は読めないけど浴槽のボトルが動いてたんじゃん!?」
「あぁ、それは多分、兵士さんだよ、女性の……ね」
「へ……あ……っ!?」
疑いの思考から、そう少年にわかりやすく諭され、正常思考になるのだった。これには少女も赤らめて。
そんな少女に対し、少年はこう唱えるのだった。
「自覚はしてるんだから、試験的に何かを試していたのは、間違いないよ。どこまでできるのかは、まだまだ未発達だけどね」
「へっ……!?」
その中空に浮かんでいたLも
「そうそう!
「Lにも手伝ってもらって、ある技を、新開発中なんだ! ……まぁ、限定的だけどね」
それは、新開発中の技だった。
師匠や先生にも意見を伺い、夢と現実を並行して、Lにも手伝ってもらっているもので、まだ、実践運用できるほどのものでもない。
その為、決まった名前も、まだない。
「まあ、あまり期待せず、待ってて」
「……」
フゥ……
これには少女も、吐息をはいて、落ち着きを取り戻すのだった。
「……まぁ、スバル君がそんな事するはずもないし、……アユミはわかってたけどね」
「……フッ」
と笑う少年がいたのだった。
少女もわかっていた。少年がそんな事、するはずもないと……。
少なくとも、今、現在までは……。
じゃが、わらわとしては……。
「ふ~む……では、あのまとわりつくような感覚は、何だったのじゃ!?」
「なんか舐められてるような、変な感覚だったんですよね……!? ……ホントに身に覚えがないんですかスバル君!?」
「それは、僕じゃないよ!」
「……」「……」
――それは、スバルが内包する膨大な魔力量が成せる業だった。
オオオオオ
TO BE CONTINUD……