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第3章の第32話 なぜスバルがエナジーア生命体を視認する事ができるのか!?


☆彡
【アンドロメダ王女の宇宙船】
【――それはまさしく苦渋の選択への長い道のりであった……】
【この頃のあたしクリスティは、その事を意識していない】
「ほぇー……」
【と呆けた声を上げる】
【今見ているのは、宇宙船内の様子だ】
【ここは廊下伝いだが、壁にも天井にも、星座群めいた幾何学模様が施されていた。いったい何の金属でできているのだろうか?】
(……もしかしたら、地球よりも文明水準は上かも知れない……)
【あたしが、そんな事を思って歩いていると――】

指令室前にきていた。
そこに突っ立っていたのは2名の衛兵さん。
それも他のエナジーア生命体とは違い、人の目に見えるタイプの宇宙人だ。

【その宇宙人たちは、見るからに屈強で、あたし達地球人類とは、別種の人型だった】
『頭に『翻訳機』をつけていて、あたし達に語りかけてきたの】

『ここより先には、我等の王女様が控えています』
『まずはスバル様の治療を優先してくださいませ』
【物腰は丁重だった。……とても信じられない……】
「……」
この頃のあたしは、ただただ呆けていた。
とデネボラさんが。
「わかっています」
と丁重に答え、皆さまを誘導するために、手をあちらに差し伸べる。
「では皆様、こちらへ」
あたし達はデネボラさんに誘導されて進む。
その時、シャルロットさんが一言。
「……行きますよ、クリスティさん」
「はっはい!」
あたしは彼女に言われて、その後ろをついていく。
デネボラさんを先頭に歩いていくのは、ヒースさん、クリスティさん、あたしの順だ。


☆彡
その渡り廊下を歩いていく途中――
小さな窓から壮大な宇宙の景色が見えた。
「わぁ、もう宇宙にいる!」
「……宇宙は初めてですか?」
「当然よ! 宇宙船に乗るのもこれが初めてだわ!」
語りかけてきたのは、シャルロットさん。
あたしはそれに対し、そう答えたの。
当然、あたしが宇宙船に乗るのはこれが初めてだ。
地球人の多くが、きっとそうだろう。
「……!」
「……」
「当船に乗車するのは、あなたで5人目です!」
「5人目!? じゃあ、1人目は!?」
「!」
「!」
「……」
あたしの質問で、ヒースさん、シャルロットさんがその事に感づき、一番詳しそうなデネボラさんを見た。
予め告げておくが、
それは、アユミちゃんとクコンちゃん、2人同時である。
その後、セラピアマシーンに運ぶために、アンドロメダ王女様がスバルをお姫様抱っこしてきて。
次にシシド君。
最後に、あなたが乗船している。
――その時、何かが待ちきれないようで、いきなりスバル君の体が浮き出した。
Lのサイコキネシス(プシキキニシス)だ。
「――え?」
振り返るあたし。
「L!」
「時間がかかるようだから、ここは任せたよ」
シュンッ
と宙に浮かせたスバル君と一緒にLも、この場をデネボラさんたちに全振りして任せるのだった。
「もうっ! 勝手ばっかり!!」
「まぁまぁ」
「あの大怪我だからな、第一に治療室に運んだんだろう」
これには怒るデネボラさん。
なだめるシャルロットさん。
解説を行うヒースさん。
「? 今何が……人が……消えた!?」
もう訳がわからない。
「???」
あたしはこの時、パニック状態に陥っていた。
とデネボラさんが重い溜息をついて。
「ハァ……。どうせあたしの姿も声も聞こえていないので……。ヒースさん、シャルロットさん、通訳をお願いします」
「……はい」
「わかりました」
悩ましい限りだ。
頭を痛めるデネボラさんに。
それに答えたのは、ヒースさんとシャルロットさんのお二方だ。
「ハァ……スバル君は特別として、アユミちゃん、クコンちゃん、ここにクリスティさんも加わって……、あぁ心労が、かさむ……ッ)
そこは、苦労人デネボラさんのお仕事である。


☆彡
【セラピアマシーン】
シュンッ
いきなり現れたLとスバル。
目の前には、この治療室を預かる兵士さん達がいて、スバルの身柄を丁重に預かるのだった。
「任せたよ」
「はい」
「心得てます」


☆彡
「……!」
「「……」」
デネボラさん伝いに同時通訳を承るヒースさんとシャルロットさん。
ここからは2人の出番だ。
「もうなんかホントにすみません」
「「いえいえ」」
「?」
あたしは、独り言かと思った。
「一番初めに当船に乗車したのは、同時に2人いて、その名を、アユミちゃんとクコンちゃんというの!」
「知らない子ね……」
「スバル君と同年代の少女達ですよ! 3人目がスバル君で、4人目がシシド君! で5人目があなた!」
「……」
頷き得る。
「2人はあの時、アースポートで磔にされていて、今、そちらに向かってるんです」
「ああ。あれね……えっ!? あれ、マジだったの!?」
「マジマジ」
「ウソ~~!! まだ子供じゃない!! えっ何で!? 磔に!?」
「……」
「……」
シャルロットさんとヒースさんが顔を見合わせて。
「「スバル君を誘き出すため」」
「ガッ!!」
余りの事実に衝撃を受けるあたし。
たったそれだけのために、少女2人が磔に……ッ
(ホントに大丈夫なの……この人達……?)
あたしはこの人達に、疑いの目を向ける。
2人は話を続ける。
「……!」
「「……」」
何度か頷き得る2人。
「はい、わかりました」
「?」
あたしは、この時不審に思う。
「話が戻りますが、2人を拉致したのはレグルス隊長という人です」
「レグルス……隊長……?」
「はい。アンドロメダ星人のエナジーア生命体で、あなた達でいうところの、姿が見えず、声も聞こえない、特殊な生命体なんです」
「それがエナジーア生命体というのですよ」
「ああ……」
頷き得るあたし。で。
「ちょっと待って!!」
「「!!」」
「じゃあ、あなた達がさっき話していたのが……!!」
「ええ、こちらにおられるデネボラさんです」
「ガッ!!」
ショックを受けるあたし。
「アンドロメダ星人……エナジーア生命体……? ハハッ……頭がついていけない……」
これにはあたしも、早々と断念した。
(だってそうでしょ?目に見えない、耳にも聞こえない相手に対して、どう理解しろというのよ……ッッ)
「……!」
「「……」」
頷き得るシャルロットさんとヒースさん。
「あぁ、なるほど……」
「?」
「当船に乗船しているスバル君だけは、特別で、目にも見えて、声も聞こえる特別な人物……ですって」
「あの子! そんな能力もあったの!?」
「はい!」
「はぁ……魔法だけじゃなく、そんな能力も……んっ? 待てよ」
「……?」
「「……?」」
何度か頷き得るクリスティさん。その様子は何か見覚えがるようで。
「そう言えばあの時、なんとなくスバル君が言ってたような」
「あぁ……」
と誰かが呟きを落とした。
それはまるで、今まで忘れていて、今思いだような……。
「……!」
「「……」」
頷き得るシャルロットさんとヒースさん。
「それなら少し、理解が早いですね!」
「?」
「実はあの後、あなたと別れたスバル君が向かった先は、厄災の混濁獣との一騎打ちだったんですよ」
「一騎打ち!?」
「ええ。彩雲の騎士VS厄災の混濁獣の一騎打ちです」
「……」
あたしはその話に、聞き耳を立てる。


☆彡
事情を聞いたあたしは。
「――なるほど」
「その時の大怪我が原因で、黒い炭化物目前のスバル君は、瀕死の重体でした。
危ういと思った姫様が、スバル君を宇宙船まで直接運び、セラピアマシーンでの治療を促したのです」
「セラピアマシーン!?」
「宇宙の医療機器です。宇宙船に備わったね」
「……」
「でシシド君は、『人体冷凍保存』コールドスリープ(クライオニクス)で延命させてから、遠く離れたアンドロメダ星まで運び、L、レグルスとともに大病院に担ぎ込まれたという訳です」
「大病院!? ちょっと待ってシシド君って、さっきいた子でしょう!?」
「ええ」
「なんであんな場にいるのよ!?」
「あぁ、それは……」
チラッと、これには困ったようにシャルロットさんは、デネボラさんを見て。事情を聞く。
「……」
「……」
デネボラさんの話を聞いたシャルロットさんは、何度か頷き得て。
「えーと……レグルス隊長が治療中のシシド君を無理やり連れだして、義手をつけさせた上に、スバル君とLに一戦を交えたというわけです! ……はい、結果はあの通りでした!」
「何よそれ!? 身勝手じゃない!! その子もスバル君も、危うく死にかけたのよ!!」
「えーと……」
これには返答に困るシャルロットさん。
「……」
ここで言い悩んでいたヒースさんが。
「それがレグルス隊長なりの考え方なのです!」
「!?」
「いいですか、あの人は軍隊仕込みの隊長さんで、今はアンドロメダ王女様に仕えています!
よろしいですか!?
このままでは間違いなく地球は全球凍結する! それは避けようもない事実!
ではどうするか!?
それは隊長として、そのスバル君たちを試した!」
「……何のために!?」
「地球を復興させるには、我々アクアリウス星人とアンドロメダ星人の協力だけでは、足りない!! ……ではどうするか!?」
「……」
「あの子は宇宙の法廷機関の場で、『架け橋』になると宣言したのです!!」
「――!!!」
「この言葉の重みが、あなたにわかりますか!?」
「……」
諭す言葉のヒースさん。
内容は、濃く、重い……。とても1人の少年が言うだなんて、信じられない。
頭を下げるクリスティさん。
「協力は、あたし達でもできる!!
けど! そのためには! 生き残るだけの力と生命力がいる! そのためには! 何度も死にかけるほどの実践経験しかないの!
レグルス隊長は、そうした嫌な汚れを引き受けたのです! ……自分からね」
「……そうだったの……」
シャルロットさんの説明を受けたあたしは、納得の理解を示した。
(宇宙とはそれほどに、危険で、過酷なのね……)
あたしがそんな事を思っていると。

「――!」
「――!」
ヒースさんとシャルロットの2人は、心の中でテレパシー(チレパーティア)を使っていた。
(上手い言い訳ですね)
(うん、何とか上手くいったから、これ以上下手に関わらない方がいいよ)
(なるほど……確かにそうですね)
2人は心の中でも、会話し合えるのだった。

「……あの?」
「? はい」
「何でしょうか?」
「ずーっと気になってたんですけど……」
指をさすクリスティ、そこにいるのはヒースとシャルロットさんの相中の後ろであり、そこにいたのはデネボラさんだ。
「……そちらに誰かいるんですよね? ずーっと気になってたんですけど……」
これには「あぁ……」という断腸の思いで、頭を悩ませるヒースさんとシャルロットさんの2人。
これには当人であるデネボラさんも、大変、対応に苦慮するのだった。
これが長い連続である――
「――やっぱりスバル君だけだからな――!」
「あなたも、やっぱり……見えない、聞こえないの類でしょうし」
「あの子が特別なんですよ!」
と言いあうヒースさん、シャルロットさん、デネボラさん。
「あのフッと思ったんですけど……」
「「……」」
「……」
「あの宇宙人さん達が身につけていたのは翻訳機ですよね?」
「! ええ」
頷き得るシャルロットさん。
「その翻訳気を使えば、あたしでも聞こえませんか?」
「……」
「……」
「……」
「「「……」」」
3人は顔を見合わせて。
「……どうなんですか?」
「無理です」
「なぜ?」
「耳自体が聞こえても、その周波数帯を捉える脳の聴覚を司る機能が、それを認知しないからです」
「えええええっ!?」
「そっ、そうだったんですか!?」
「ええ……」
「じゃあスバル君は……」
「どれだけレアなんだ……」
「「……」」
レア中のレアだった。
おそらく地球人の中でも、スバルは希少な存在である。
「でも、いい線行ってると思います。
前に王女様が言ってたんですけど……」


★彡
『わずらわしい!!! 目に見えて、耳も聞こえる、翻訳機能がついた装置を取りよせい!!!』
『ですが……』
『ええいっそれなら!! ここに『魔導化学研究所』の職員を連れてこい!! 調べる!! 調べれば地球人の脳波の違いぐらいわかるじゃろ!!!』



☆彡
「で?」
「調べちゃいました!」
呼びました。招きました。調べました。
「「……」」
ズ~~ン……と落ち込む2人。
「……少年を調べたんですね?」
「はい!」
「少女2人も、比較対象を?」
「もちろん取りました!! 身長、体重、スリーサイズ、脳波の違い等々! 取れるものは取れるだけ取りました!」
「「……」」
((スバル君も赤くなってただろうなぁ……))
僕達は、あたし達は、心の中でハモったのだった。

【――少年や少女達、その羞恥心としてはキツイ……ッ】
【が、これからやがてやってくる事を踏まえれば、それは王女様のファインプレーだった】

――で、クリスティさんに向き直って。
「――!」
「デネボラさんの話では、今、『ある装置』を開発中とのことです!」
「今しばらくお待ちいただければ、その『ある装置』がお手元に届きますよ!」
とヒースさんとシャルロットさんが述べるのだった。
とデネボラさんが。
(う~ん……2つじゃ足りないかも……追加で1つか。もしくはもう少し増産を……!?)
「……」
あたしは頭を悩ませるのだった……。
で。
「スバル君を連れて行ったのも、同じ宇宙人……?」
「「う~ん……」」
これには頭を悩ませる2人。
「?」
「宇宙人、なのかな~?」
「オーパーツ、だしなぁ~?」
「? ……は?」
「ハァ……」
と溜息をついたヒース(僕)は。あの時の話を持ちだした。
「先ほど、スバル君を連れて行ったのは」
「……」
「その宇宙人です! 同じ、エナジーア生命体のね」
「……」
エナジーア生命体、その話はもう聞いた。
「さっき使ったのは、念力と瞬間移動です」
「念力!? 瞬間移動!?」
「こちらでは『念力』をサイコキネシス(プシキキニシス)! で『瞬間移動』をテレポート(チルエメテフォート)というのですよ!」
「プシキキニシス……チルエメテフォート……」
これにはあたしも驚き、その話をもっと聞こうと身構えた。
「見た目的には、小さい小動物みたいな子で、クジャクと狐が合わさった感じですね」
「どんな見た目なの……」
「フフッ……気になりますよね?」
「え……ええ……」
「でしたら、その装置ができ次第届けますよ」
「ホントに!?」
「ええ」

――あたしはその人達が見ている前で、ガッツポーズを取ったの。
よしっ、と。
そんな可愛い生き物がいるなら、見てみたいものだわ。
「……」
でも1つだけ気になって、それが口をついて呟きを零したの。
「未確認生物ユーマより、ずっとずっと珍しいじゃ……!?」
「? ……まあ、人の目でわかる可視光線では見えませんからね」
とデネボラさんが告げた。
これにはあたし達も。
「「えっ!?」」
「?」
驚いたあたし達は振り返り。
クリスティさんはわけがわからない。
「人の目は、眼球の水晶体を通って、視床下部に送られますが、目の機能を司る脳がそれを認知できないんですよ」
「あの? それじゃああたし達がおかしいんじゃ?」
「いいえ、違います」
「?」
「?」
「お二方はアクアリウス星人ですが、この人達は地球人です。あくまでも……」
「……」
「……」
「私が言いたい事は、脳の作りが違うのではなく、その細胞を持っているか否かなんです!」
「細……胞……?」
「……」
頷き得るデネボラさん。
「スバル君だけ、脳波計の数値が高かったんです! 脳細胞が活発に働いていました!
気になったあたし達が、スバル君の皮膚から細胞を採取したら、
それはアユミちゃん達と比べて、細胞値が高かったんです!
つまり、細胞数も多く、それは細胞のレベルも違う!
それは、脳に関しても同じことが言えるんです!!」
「……」
「……」
「細胞が違うという事は、それを認知できる細胞を有している証拠です!!」
「なるほど……」
「細胞ね……」
「?」
デネボラさんの話なので、ヒースさんとシャルロットさんはわかっても、あたしはわからない。
勝手に向こうが納得する感じだった……。
「さらに言わせれば、『スペクトル』の認知度が違います!」
「スペクトル……」
「はい。光の波長の認知度です。
可視光線がありますよね?
それぞれ、赤、オレンジ、黄、黄緑、水色、青、紫の光の波長の範囲です!
スバル君はそれがズバ抜けているんです!!
本人の目は、それ意外の波長の範囲が見えてるのです!!」
「なっ!?」
「ウソ……でしょ……!?」
「間違いありません。可視光線だけじゃなく、魔力やエナジーアの隠れた波長の範囲まで見える、特異体質だったんですよ!」
「唖然……」
「茫然……」
これにはヒースさんとシャルロットさんも唖然茫然自失していたの。
で、あたしが一言。
「あの~~」
「!」
「……待ってるんですけど……ずーっと……」
「「「あっ……」」」
しまった感を覚える3人だった。
とこれには。
「デネボラさん!」
「!」
「急いで見る聞こえない問題を解決するものを、アンドロメダ星から取り寄せてくださいね!」
「……はい」
「あたし達の負担も、減らしてくださいね!」
「苦労をおかけします……」
深々と謝罪するデネボラさん。
それはまさしく、断腸の思いだった……。
もう頭を抱えるばかりだ。
(何よこれ地球人!? 見る聞こえないだけで、こんなにも悩ましい生命体がいただなんて……グスッ……)
心の中で泣くデネボラさん。
「ううっ……何としてでも!! スバル君を回復させて、楽しないと……!!」
「「……心中お察しします……!」」
スバル君の回復を誓うデネボラさん。
ホント、楽したい。
これにはヒースもシャルロットさんも、同じ思いを共有するのだった……。それだけスバル君はレアな存在だった。
と。
「ん――……」
ジッと見つめるあたし。
「……ダメね。全然見えない……」
頭を振るうあたし。全然見えなかった……。
「「「「……」」」」
そんなこんなで4人は、一路、セラピアマシーンへ向かう――


☆彡
【セラピアマシーン】
重症人のスバルは、セラピアマシーンに入れられて、回復液が満たされていく。
今のスバル君の姿は裸だった。
ただし、人としての最低限の尊厳を護る為、トランクス一丁でのお姿だ。
その様子を見守るのは、Lたちだった。
この場には、まだ、クリスティさんたちは到着していない。
(遅いな……何やってるんだろう……?)
その頃、4人は長話していた。あ、アホだ……。
「……どれくらいで治りそう?」
僕が兵士さんたちに尋ねると。
「そうですねぇ……う~ん……あの女の人が、心臓とお腹の傷を結紮した後だから……。
目算して……
……。
今日一日は寝たきりで、翌日には目を覚ましますね!」
「! ……」
これには驚いた顔で見上げるL。予想外の反応だった。
で、別の兵士さんが。
「出血多量で血が少ないという事は、今回はなかったですね……。ギリギリの安全ラインをキープしている、本人の意識が保っていた事から、目覚めも速いでしょう」
「だな!」
「……」
これには僕も驚きだ。
(手術をするとしないとで、こんなにも違うだなんて……」
素直に感服していた……。
で、兵士さんが。
「――おそらく、レグルス隊長が人知れず傷口を焼いて、塞いでいたのでしょう。致命傷であった心臓の傷も、穴は開いてましたが、焼いて塞いで、その上から結紮の後がありました!」
「あと、本人が氷で塞いでいたか……! ったく、なんて勘の回る戦いだったんだ!」
「え……?」
「まぁ、今回は、勝ちを譲った戦いだったですがね!」
「だな! ……ったくあの人も! あんな戦い方ができるなら、俺達にももっと優しくしろっていうの!」
「ハハッ、違いないですね!」
「えええええっ!?」
これには僕も驚くばかりだ。
これには兵士さんも、ビクッとする。
兵士さんたちが言うには、今回の戦いはすべて、仕組まれたもので、あらかじめ勝ちを譲ることは、決まっていたのだった。
これには僕も。
「ウソ~~ん!?」
「「んっ!?」」
「いやだって、あんなに苦労して勝ったのに、まだ余力があったってゆーのあの人!?」
「それはそーだ!」
「なんなら問い合わせてみるか?」
「……」
僕はこの時、どんな顔をしていたのだろうか……。きっと間の抜けたような顔なのだろう。


TO BE CONTINUD……

しおり