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25.法に忠実でない女、無差別な女

「いい加減、負ける算段はついたのかよ。先生」

「アホも休み休みに言って頂戴。確かに負けは混んでいるけど、好きで刑事裁判を負け続けている訳じゃないわ。それよりも、他に覚えている事は無いの?貴方と一緒にクスリを受け取った連中の特徴とか」

「連中とは、あの時が初対面だったんだ。だから、いちいち覚えているかよ!それよりも先生。アンタ、毎回何しに俺ン所来てるんだよ」

 弁護士の追風・静夜と、殺人罪で起訴されている被告人、一条・神矢の、言い争うような会話は、二人の息が上がったところで小休止に入った。


 だけど、ホントに小休止。


 バトルが再開された。


「まさか先生、マジで勝ちに目がくらんだんじゃないだろうな!」

「そもそも、負け前提の弁護なんて、聞いたことも無いわ。いっその事、高飛びでもして行方をくらませた方が安全じゃないの?」

「元手が有れば、そうしているよ!そこを何とかするのが弁護士先生の仕事だろ!」

「人任せもいいトコロだわ。呆れるわね。アンタの何?体から出てきた変なヤツ。そいつに、どこかの金庫でも破ってもらって大金をせしめれば?」

「俺の“(シー)”の拳はダイヤモンドと同等にまで硬くできるが、それをすると指が動かせなくなるんだ」

「使えないわねぇ…まったく」

 などと、おおよそ法に携わる弁護人が交わすものとは思えない会話を終えて、静夜と一二三・六角、そしてパラリーガルの釘打・理依は拘置所をを後にした。


 六角が気を取り直して食事でもどうかと誘ってくれたが、とてもそんな気になれない。

 理依と二人でスイーツでも食べに行くことにした。



 インスタ映えとかで有名な喫茶店でパンケーキをヤケ食いしてやる。

 お店自慢のゼリーの上にパンケーキが乗った“免震パンケーキ”を注文。



 二人は一切写真を撮る事無く、パンケーキにナイフを入れてゆく。

 が、向かいに座る理依の手が止まった。

 彼女の目は大きく見開かれており。


「どうしたの?理依」
 静夜が訊ねるも、理依の唇は震えている。

 首を傾げて理依の目線の先を見ようと振り返ると。

「どもデス」
 小柄な外国人女性が挨拶してくれた。

「ど、どうも。どこかでお会いしたかしら?」
 戸惑いながらの質問に。

「ええ。そちらのお嬢さんに」
 長身の外国人女性が二人を見下ろしながら答えた。

「でかっ!」
 思わず、つい言ってしまった。

 すかさず、相手の外国人女性もチッ!

「誰なの?この人たち」
 バツが悪く、囁くように理依に訊ねた。すると。


「め、目からビームの人と、その飼い主さん」

「アナタ、よくも本人の前で、そんな失礼極まりない紹介ができるわね?」と、理依から静夜へと顔を移して。

「初めまして。エグリゴリのレインと、この子はナンブ。大人しくしてくれたら危害を加えないと約束するわ」

 レインの言葉に、静夜の赤い目が険しさを宿した。

 この大女、危害を加えないって、この店にいる全員を対象に言ってやがる…。

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