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ドンタコスゥコったら、ドンタコスゥコ! その2

 翌朝、馬車の中……ではなく、ビアガーデンの敷地の中で完全に白目を剥いて倒れているドンタコスゥコさんを始めとするドンタコスゥコ商会の皆さんに、とりあえず味噌汁を振る舞いました。
 シジミがないので、正直効果があるかどうか怪しいんですけど、
「これはなかなか……初体験なれどいい味なのですよ……これは金になる味なのですよ」
 ドンタコスゥコさんの商売魂に火をつけたのだけは確かなようです、はい。

 皆さん味噌汁は飲んだようですけど、ほぼ全員壮絶な二日酔いのため、なんか死んだようになって馬車の横にくたばっています。

 この位置で死屍累々になられると、ちょうどコンビニおもてなし本店の入り口から丸見え状態なんですよね。

 なので、せめて馬車の中にでも入ってもらえないかなぁ……的なことをお伝えにいってはみたんですけど……なんか皆さん、その場で「うぇ」とか「うぷ」とか言いまくっているので、どうにもねぇ……

 しかしまぁ、いい若い女の子達が揃いも揃って二日酔いでぶっ倒れてるっていうのも……
「まったく、あの程度の酒で二日酔いなど、ありえぬでござる」
「気合いが入ってないキ」
「迎え酒いっとくかい?」
 っていうか、イエロ・セーテン・ルアの3人は、酒飲み娘48の筆頭格なんですから論外です。
 自分達を基準に酒量を考えないように。

 で、そんな死屍累々状態のドンタコスゥコさん達をどうしたもんかと腕組みしながら見ているとですね、スアがリョータをフロント抱っこした状態でトコトコとやってきました。
「……これ、試してみて、ね」
 そう言って、何やら薬瓶を僕に手渡してきました。
 早速ドンタコスゥコさんに飲ませて見たところ、
「……あ、あれ?……あれれ!? あの二日酔いが一瞬で治ったでありますよ!?」
 そう言いながら、満面の笑顔で立ち上がっていきました。

 え? これ、二日酔いの薬?

「……体内のお酒に起因するアルコール分をすべて分解する、よ」
 スアはそう言いながらピースサインをしています。

 はぁ……スアってば相変わらずすごい物を作るもんだなぁ。
「これ、僕が元いた世界で販売したら世界中で馬鹿売れ間違いなしだよ、ホント」
 僕がそう言うと、スアはすごく嬉しそうに微笑みました。

 天使です……我が家の天使1号降臨です。

 で、この薬をドンタコスゥコ商会の皆さんにも飲んでもらったところ、ほどなくして全員元気に復活していきました。
「いやぁ、店長さん、この薬すばらしいでありますよ……つきましてはですね、ぜひ今回、この薬も仕入れさせていただきたいのでありますよ」
 ドンタコスゥコさんは、そう言いながら僕に向かって満面の営業スマイルを展開してきました。

 鬼です……商売の鬼降臨です。

 で、まぁ、一応スアに相談してみましたら
「……そうくるんじゃないかと思った、よ」
 そう言いながら、この酔い冷まし薬の詰まった木箱を3つ、魔法袋からドドッと出して来ました。

 ドンタコスゥコさん、大感激です、はい。

 で、この酔い冷ましの薬の名前をどうしようって話になったんですけど……
「イセルでいいんじゃない?」
「……イセル?」
「うん……コンビニおもてなしで、二日酔い知らずの3人にあやかってさ」
 僕はそう言いながら、あっちの方向を見ました。
 スアも、僕が見ている方向へ視線を向けると、
「……納得した、よ」
 そう言いながら頷きました。

 そんな僕達が見ているあっちの方には

『イ』エロ
『セ』ーテン
『ル』ア

 の3人が、ビアガーデンの後片付けをせっせとしているところでした、はい。

 と言うわけで、二日酔い冷まし薬『イセル』誕生です。

 で、そんなイセルを見つけた3人ですが、
「何ですと? 二日酔い冷まし薬でござると?」
「二日酔いになる奴の気が知れないキ」
「根性たりないんだって」
 ……うん、君たちならそう言うと思ったよ。

◇◇

 朝の調理作業を終えて店頭に弁当やパン、サンドイッチを店頭に並べ、他店用の荷物をヴィヴィランテスが運びやすいように荷造りし終わったところで、ララコンベの2号店店主シャルンエッセンスが本店に顔を出しました。
「店長様、ペリクド様がガラス製品を納品にこられましたわ」
「お、わかった。すぐ行くよ」
 僕はシャルンエッセンスと一緒に2号店へと移動していきました。

「よ、店長1週間ぶり」
 ペリクドさんはご機嫌な様子で僕に向かって右手をあげてくれました。
 何でも、以前他の商会と取引をしていた頃よりも売り上げがすっごくよくなってるとかで、
「なんかさ、コンビニおもてなしさんと契約してさ、すっごい得した感じなんだ」
 そう言いながら、もうずっとニッコニコなわけです、はい。

 するとペリクドさん、
「あぁ、それとさ店長さん。今度リョータミルク、俺も買うからさ、よろしく」
 そう言ってきました。

 いえね、リョータミルクこと粉ミルクですけど、必要なママさんに定期的にきちんとお売り出来るように予約販売をしているんですよ。
 で、その予約分を振り分けて残った物を店売りしているんですけど、
「え? それって予約販売に加わるってことですか?」
「そうなんだよ、うん」
 そう言うとペリクドさん、嬉しそうに笑いながら
「いやぁ、嫁のアンタンサがこれでさぁ、イタチ人って、妊娠してから産まれるまで早いんだわ」
 そう言いながら、お腹のところでまぁるく手を動かしていきました。

 おめでたです、おめでたでございます!

「いやぁ、店長のおかげさ」
「僕の?」
「いやね、ガラスが売れて無かった頃はさ、夫婦仲がギスギスしてたんだわ……それがさ、コンビニおもてなしに品物を卸すようになってからさ、どんどん売れてどんどん儲かるもんだからさ、嫁もご機嫌になってってさ、夫婦仲もよくなってさ……まぁ、そういうこった」
 ペリクドさん、そう言いながら照れくさそうに頭をかいていました。
「おめでとうございますわ!」
「ホント、おめでとうございます」
 そんなペリクドさんに、シャルンエッセンスと僕は満面の笑みでお祝いを言いまして、そのまま祝福のハグをしていきました。
 すると、2号店の中で品出し作業をしていたシルメールやメイド達がその周囲を抱きかかえていきまして、さらに積み荷を降ろし終えて次の店に移動しようとしていたヴィヴィランテスまですり寄ってきて……

 タクラ家名物抱擁の輪が出来上がっていきました。

◇◇

 ドンタコスゥコさんは、届いたばかりのペリクドさんのガラス製品を確認していき、
「あれもこれもそれも買わせていただきますね」
 と言いながら、本店が仕入れたガラス製品が入った木箱を全部荷馬車に積んでいき……
「いや、ちょっと待ってくれ!? 全部持って行かれたらウチの店が困るってば!」
 僕が慌ててストップをかけると、ドンタコスゥコさんは、舌打ちしながら
「仕方ないですねぇ、では1箱戻すのですよ」
 そう言いながら、積み込んだ木箱3つのうち、1つをコンビニおもてなし本店に戻してくれました。
「いやぁ、なんかすいませんねぇ」
 って……なんで僕が謝っているんだ?

 そんなこんなで、あれこれ仕入れたドンタコスゥコさん。
「護衛の母子さんが到着したので、ではバトコンベまで言ってくるのですよ、店長さん、また一ヶ月後なのですよ」
 ドンタコスゥコさんは笑顔で手を振ってくれました。

 進んで行く荷馬車の横に、護衛の母子ことテリアさんと、その息子のノカザムさんが付き従っています。
 ……ノカザムさんは、女性ばかりのドンタコスゥコ商会の護衛ってことで女装してるんですけど、相変わらずミッ○マン○ローブにしか見えませんでした。


 そんなドンタコスゥコ商会の皆さんを見送っているとですね、スアが僕の袖を引っ張りました。
「……私じゃない、よ?」
「え? じゃあ、誰が?」
 よく見ると袖を掴んでいたのは、スアにフロント抱っこされているリョータでした。
 
 リョータは僕の顔を嬉しそうに見つめながら
「あ~……」
 って言ってます。

 あぁ、パパに会えて嬉しかったのかな?……なんて思っていましたら。
「……やばい、の……う○こ、よ」
 そう言いながら、スアがすごい勢いで抱っこひもを外し始めました。

 ……さすが伝説級の魔法使いです……その手際の良さ、すごい。

「……これ、魔法関係ない、ってば」
「あ、そうなの?」

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