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コンビニごんじゃらす その4

 ここまでの流れでだいたいの様子はわかった。

 このコンビニごんじゃらすが流行らない理由の1つ

 この、とことんやる気のない店員達。
 見た目がメイドなのと、シャルンエッセンスのことをお嬢様と呼ぶところからして、おそらく貴族であったシャルンエッセンスのお屋敷で勤務していたんだろう……まぁ、先ほどの接客姿勢や、今の僕に対する態度、それに、シャルンエッセンスへの対応など、そういった諸々をみるにつけ、まぁ、メイド時代の彼女達が、どの程度のレベルだったのか、ってのを想像するのはそう難しくない。

「うっせ! ぽっと出のおめぇに何がわかんだよ!?」
 とまぁ、
 元いた僕の世界でも、すでに絶滅種に近いヤン語バリバリで僕に迫ってくるメイド一同。

 まぁ、
 元の世界にいたらいたで、こういう輩達は直接来ないで、SNSやらTWITTERやらを駆使して、それはもう姑息に……

 は
 少し過去のトラウマが……

 で、まぁ、話を戻して

 メイド達に対し
「君らが対応を改めない限り、このコンビニごんじゃらすは間違いなく潰れるよ。それでいいの?」
 そう告げたところ
「アタシらには奥の手があんだ。
 それがあるから、お嬢様もアタシらを切れないだよ」
 そう言いながら、勝ち誇ってやがる。

 どうでもいいけど
 そのガムかなんかわかんないけど、その口をクチャクチャするのやめなさい
 みっともない。

 で、まぁ、
 シャルンエッセンスの方を見て見ると、
 唇を噛みしめたままうつむいてる。
 
 ……その奥の手っての、一応はったりではなさそうだ

 とはいえ、こんな連中の奥の手っていっても……なんか、まともじゃないとしか思えないんだよなぁ

 とにかく、
 言っても聞かない連中は一度おいておくとして、

 僕は、シャルンエッセンスと一緒に店内を見て回ったんだけど

……

 なんだここは?

 改めて店内を見回してみると
 販売している品物が激しく少ない。

 弁当
 パン
 サンドイッチ?
 野菜
 果物

 だいたい、こんなところ

 で、サンドイッチに「?」がついてる理由なんだけど
 パンが置かれているその横に、
 パンを半分に割って、その中にレタスもどきの葉っぱを1枚だけはさんであるのが無造作に転がっていたので、そうなのかな……と思ったんだけど

 シャルンエッセンス曰く
「どこからどう見ても、コンビニおもてなしで販売されていたサンドイッチと同じ品物ですわよ」

 おいおい
 どの口がそう言った?
 お前、結構な回数ウチの店を見に来てたよね?
 どの目がそう記憶した?

 とにかくまぁ、
 見た目で問題なのはそれだけではなかった。

 このパン
 見た目というか、一目見ただけで固いのがわかる。
 ところどころ異常に角張ってて、全然ふんわり感がない。
 手に持ってみると……やはり予想通り。
 持った途端に、金属の感触といいますか……少なくとも、僕の記憶の中に、この手触りで、食べ物ってなものは一切ない。

 そんなありえない固さのパンを前に
「当然、試食はしたんだよね?」
 そう言うと、
「何故そんなことが必要なのです?」
 と、来たよ……
「そもそも、この貴族であるこの私が直々に指揮して作った品物ですわよ、まずいわけが……」

 ここで僕
 この手抜きサンドイッチを、
「いいから食ってみろ」
 そう言いながら、手渡した。

 シャルンエッセンス、首をかしげながら
「だから、なんでこんな無駄なことをしなといけないのですが? ……だから味には自信が……」


 ガリっ


 そのサンドイッチもどきを1口噛んだシャルンエッセンス
 まったくかみ切れないどころか、パンを噛もうとして歯を炒めたらしく、その場でうずくまって動かなくなった。


 シャルンエッセンス……
 わかったか、これがお前が
 客に対して、『金を出して買って食え』
 そう言って、陳列している商品の真の姿だ。

「お、おかしいですわ……あり得ないですわ……こんなバカな事が……チュパチャップ!」
 困惑仕切りのシャルンエッセンスが調理場の方へ視線を向けて声を上げると、
 なんかすっごいちっさい女の子が
「な、なんでしょうかお嬢様ぁ」
 そう言いながらワタワタしながら駆けてくるんだけど
 なんか、慌ててるせいで、か、
 
 あっちにゴツン
 こっちでゴチン

 と

 あちこちに激突しながらやってくる。
 で
 その子の顔をよく見て納得した。

 このチュパチャップ
 目が1個だ
 いわゆる単眼族って奴なんだな

 元の世界で言うと
 保健室漫画のヒトミ先生とか、モンスターハーレム的なアニメのマナコな人

 で、
 他のメイド ー 現在戦力外中 ー らと同じメイド服を着ていることから、シャルンエッセンスのもとで働いていたメイドさんなんだろうということはわかる。

 で
 シャルンエッセンスは、駆け寄って来たその単眼族のチュパチャップに
「あなた! このシャルンエッセンスが直々に指揮して作成いたしましたこのサンドイッチが、なぜこんなに固いのです? あり得ないでしょう!」
 そう声を荒げていく。
 そんなシャルンエッセンスに、チュパチャップは
「はうう……だ、だから言ったじゃないですかぁ……これはパンといえる代物ではないですぅってぇ……
 そもそも、パンなんて作ったことがないこの私に、パンなんて一度も作ったことがないお嬢様がいくら指揮したって、食べられる物が出来るわけないじゃないですかぁ。いきなり無茶ぶりしすぎですぅ」
 そう言いながら、その単眼からボロボロ涙を流していく。

 話を聞くにつけ、

 うん
 このチュパチャップが一番まともそうだ

 そう考えた僕は
 チュパチャップの側に歩みよって
「ちょっと話を聞かせてもらってもいい?」
 そう、切り出した
「お話でしたら、この私が……」
 そうしゃしゃり出てきたシャルンエッセンスを
「お前は黙ってて」
 そう言ってけん制。

 なんか、あからさまに戦力外通告されて、ず~んと沈んでたけど
 そこはあえて気にしない。

 で

 このチュパチャップに話を聞いてみたところ、大まかなことがわかった。

 このコンビニごんじゃらす。
 ただでさせ没落し、金に困っていたバニラビーンズ家が
 儲け話に手を出し、最後のなけなしの金まで搾り取られて、お先真っ暗になったのが半年前。
 
 給金も払えなくなり、使用人達もどんどんいなくなる中
 あろうことか、シャルンエッセンスの両親・兄まで失踪。

 一人取り残されたシャルンエッセンスは、
「この私が、商売で儲けてバニラビーンズ家を立て直して見せますわ」
 そう言い、開店資金を借りるために、屋敷を抵当にして金を借りたのが2ヶ月前。

 で

 服屋をやってダメ
  貴族時代に所有していた服を売ったらしいんだけど
  「こんな服売れるわけないでしょお? かわいそうだから私が二束三文で引き取ってあげるわぁ」
  という、シャルンエッセンス曰く「とても優しい方に買い取ってもらいましたわ」とのこと

 雑貨屋をやってもダメ
  貴族時代の宝石とかを売ったらしいんだけど
  「これ全部偽物だねぇ、こんなの売ってたら掴まっちゃうよ?
   かわいそうだから私が二束三文で引き取ってあげましょう」
  という、シャルンエッセンス曰く「とても優しい方に買い取ってもらいましたわ」とのこと

 で、資金も尽きかけたところで
「隣町で最近人気のコンビニおもてなしって店を真似したら、いんじゃね?」
 と、先ほどのメイドの意見もあり、

 今度失敗したら後がない一同
 事前の偵察 ー スパイ行為 ーもしっかりこなし、いざ開店したのが、2週間程前
 

 すいません

 まずですね、どこから、どう突っ込んだらいいんですかね……

 まぁ、一言で言えば
「お人好しにもほどがあるだろう、お前ら」

 そう言う僕に、
「何をおっしゃいますの? それではまるで私達が何か騙されたようではありませんか!」
 と、非常に心外ですわ! オーラ全開のシャルンエッセンスは、とりあえず再度置いといて

「で、リサーチまでした結果が、この固いパンなのかい?」
 そういう僕に、チュパチャップは
「……その……私、お屋敷の厨房で働いていましたけど、主に皿洗いでしたので料理をしたことなんてないんです……」
 そう言いながらうつむいた。

 ……ちょっと待て
 一番まともそうな、チュパチャップがこう言うってことは……

 振り向いた僕に、シャルンエッセンスは
「料理なんて簡単ではないですか……なんといいますか、直感となんとなく? で、どうにか出来る物ですわ」
 お~ほっほっほっほ
 そう言いながらドヤ顔。

 少なくとも
 僕が通った調理師専門学校では、そんなキーワードは習ったことがない……

 なんか頭痛くなってきた。
 そう思ってると
「……あの、大丈夫ですか?」
 って、チュパチャップが心配そうに僕の顔をのぞき込んできた。

 なんか
 この子がこの店最後の良心な気がしてならないわけです、はい

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