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ピ…ピ…ピ…
電子音が聞こえる。
背中が暖かい。
体が温かい。
何だろう……
誰かが、僕の手を握っている。
僕は、ゆっくりと目を開けた。
「今日ね、英語の追試を受けて来たよ。
真白君が、眠ってからずっと、真白君の事を考えているんだ。
おかげで、成績がいっぱい落ちちゃったんだからね。
目を覚ましたら、一緒に追試を受けようね」
この声を僕は知っている。
「あはは……
私、何を言ってるのかな?
真白君、おきろー。朝だぞー
起きないとかかと落としちゃうぞー
私、瞳ちゃんと同じ、空手部に入ったから、
かかと落とし強くなったんだぞー」
水谷 奈々…
子供を降ろしてしまったことに、ずっと悩んでいた女の子。
「いつものように起こしてほしいな」
「え?」
僕の声に奈々が、驚いている。
「おはよう。
奈々」
奈々は、何が起きたのかわからない様子で僕の顔を見て、目をぱちぱちとさせていた。
「どうしたの?」