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幸せの中

何も知らないカオルとヨシキは、自分たちの身に最大の危険が迫っていることなど、夢にも思っていなかった。

2人は幸せを噛み締めながら歩いていく。

江ノ島の橋を渡り、階段を降りて、またあがって地上に出た。

ゆっくりと歩いていると、近くにサザエを焼いて売ってる小さな店があり、その香りが食欲をわかせた。

道の途中で2人は止まって海を見ていた。

すると、エアバイクに乗っている若者たちが楽しそうに遊んでいた。

2人が無言で見ていると、やがてカオルは言う。

(あの人たち本当に楽しそうだね、

でも私も今は最高に幸せだよ、ねっ、ヨシキ、私さ、夢を見てるみたいな気分だよ······だってさ、まさか今日ヨシキとこんな素敵なところに来るなんて想像もしてなかったから······)

ヨシキはしばらく無言で海を見ていた。
そして笑顔でカオルに言う。

(そうだな、カオル、俺もまさかお前と再会出来るとは思っても見なかったよ
カオル······子供の頃の最後のあの日を覚えているか······)

カオルは恥ずかしながら言う。

(うんっ、今でもはっきりと覚えているよ、
ヨシキにキスしたことは
私の初恋だもん······)

ヨシキは笑みを飲んだ。

(ああっ、俺とあの時からお前の事を忘れたことなんて一度もないよ
カオル、お前さ、いま付き合っているヤツいるのか······)

カオルは海を見ながら言う。

(いないよ、アンタ以外はね······)

ヨシキ

(そうか、カオル、お前さ今でも俺の事を思っててくれたんだな、
ありかとうな······)

そう言うと、ヨシキはカオルを優しく抱き締めながらキスをした。

離れるとヨシキは言う。

(これからよろしくな、カオル)

カオルは(うんっ)と言った。

その姿を見た通行人は笑顔で通りすぎていった。

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