文化祭とクリアリーブル事件①
数日後 授業 沙楽学園1年5組
「はいはーい! 文化祭でやりたい出し物、言ってってー!」
5組は今日も平和だ。 入学してから約二ヶ月。 たったの二ヶ月だと思うかもしれないが、結人にとってはかなり充実したものだった。
その理由は、色々な出来事がこの短い期間で起こったから。 だがこのクラスのみんなは、結人たちに何が起こっていたのかなんてもちろん知らない。
というより、知らなくてもいい。 結人も結黄賊の仲間のことで自分の教室ではなくそっちへばかり行っていたが、クラスのみんなとは打ち解けた方だ。
授業中にふざけたりしているおかげか、よくクラスメイトからは話しかけてもらっている。 それが何よりも嬉しかった。
だがもちろん結人みたいに、みんながみんな完全に親しんでいるわけではない。 まだ、殻に閉じこもっている生徒も何人かいる。
そんな中、あるイベントがみんなを迎えようとしていた。 そう――――誰もが楽しみにしている、文化祭だ。
「お化け屋敷ー!」
「水族館ー!」
「ジェットコースター!」
「おい無茶なことを言うな! つか、出し物だ!」
結人は今、教卓の前に立ちみんなを仕切っている。 先刻、藍梨と二人で話している最中に先生から言われたのだ。
『文化祭の出し物を、風紀委員のお前らが仕切って決めてくれ』と。 結人がみんなをまとめ、藍梨は黒板に生徒が出した案を書く。 二人はそういう分担をした。
「何で出し物なんだよー」
「教室でやる物がいいー」
「仕方ねぇだろ、1年はそう決まってんだから」
沙楽の文化祭は、学年ごとでやることが決まっていた。 1年は体育館ステージで行う出し物。 2年は教室で行う物。
教室で行う物は、先程クラスの生徒が言っていたことだ。 お化け屋敷や水族館、もしくは展示など。 そして3年は模擬店だ。 何か食べ物を作ったりするヤツ。
このように学年ごとにやることが分かれているため、クラスで何をやるのかは決めやすい。 が――――見ての通り、実際はなかなか決まらず。
「他のクラスは何をやるんだよ?」
「さぁ・・・? 今の時間に、他のクラスも決めてんだろ?」
「誰かスパイとして見に行ってこーい!」
「こらこら、授業中だぞー」
先生が冷静に彼らを注意する。
―――まぁ、確かに他のクラスは何をやるんだろうな。
それは結人も気になるところだ。
「ステージなら・・・。 劇とか?」
「定番だなぁ」
「じゃあダンス?」
「時間足りるかぁ?」
「メイド喫茶!」
「それをやんなら2年でやれ」
藍梨はみんなが言っていく出し物を、すらすらと黒板へ書いていく。
そして、ステージで行う出し物の持ち時間は15分間と決められていた。
まだ入学してばかりの1年が、全校生徒の前で出し物をするなんて普通有り得ないと思うのだが――――これも、この学校に早く慣れるようにと校長が考えたものだろう。
「いいんじゃね? 劇で」
「えー、何で劇?」
「だって丁度、演劇部がこのクラスにいるし」
「あー、そうだな。 演劇部が内容を考えてくれるなら、それで!」
「え、何々? 劇?」
結人がぼーっとしながら彼らの会話を聞いていると、いつの間にか何をやるのか決められていた。
「はい! 俺たちは劇に決定ー! 内容は演劇部に任せる! それでいいか? 色折」
「おいおい、何でお前が仕切ってんだよ。 それは俺が言う台詞だろ?」
「ぼーっとしている色折が悪いんだよ。 よし、じゃあ決定ー!」
クラスの一部だけが盛り上がり、授業を勝手に終わらせようとしている。
―――演劇部に任せるって、それはお前らが楽したいだけじゃないか?
―――・・・まぁ、いいか。
―――劇で5組が、一致団結できんなら。
そしてこの場をまとめるよう、結人はみんなに向かって言葉を発した。
「じゃあ、みんなも劇でいいですかー? 賛成の人は拍手!」
そう言うと、この教室はたくさんの拍手によって覆われる。
―――・・・みんなが賛成なら、それでいいか。
これで5組がステージでやる出し物は、劇に決まった。
文化祭まであと二週間。 ここから、文化祭へのカウントダウンが始まった。