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 身を震わす空気の中、私は地図を片手に初めて来た街を歩く。
「えっと、この道を真っすぐ行けばいいのかな……?」
 間違えて横道でも入ってしまったのか、よく分からない場所に出てしまい、私は目立つ建物が無いかと周囲を見渡す。
 周囲に在るのは、幅も背の高さも同じ様に造られた赤煉瓦で出来た家。
 真っ赤な家が両側に整然と立ち並び、道は茶色の煉瓦が敷き詰められていた。
 その整備された町並みに、流石は都会だと感心する。
 自分の田舎は木の家が建ち並び、道路は地面の土がむき出しのまま。それが急に恥ずかしくなってくる。
 羞恥で寒さを一瞬忘れる程に体が熱を持つも、頭を振って気持ちを切り替える。今は目的地に辿り着くことが最優先だ。
 とは思うものの、周囲には同じ家があるだけで目立った建物は全くない。あるのは頭上に広がる吸い込まれそうなほどに澄んだ青空だけだ。
 どうしよう。そう思いながらも、現在地を推測して地図片手に歩き出す。
 こんな時に人が歩いていないのが悔やまれるが、それはしょうがない事だと自分に言い聞かす。最近、魔物がよく侵入してくるので、街の中でも危ないのだから。
 それでも私は、目的地のギルド本部に村を襲う魔物退治の依頼を出しに行かなければいけない。こちらも死活問題なのだ。
 暫く歩いていると、赤煉瓦造りの家の彼方に、同じ赤煉瓦で造られたお城の様な形の巨大建築物の先が少しだけ見えてくる。
 あれこそがギルド本部だ。そう理解すると、逸る気持ちを抑えて地図に目を落とす。
 地図と、彼方のギルド本部の上部に見える鳥のような飾りの向きから、現在地を確認する。
 このまままっすぐ行って、三つ目の曲がり角を右に曲がればいいらしい。
 脚に伝わる硬い石の感触を感じながらも、赤い壁の迷宮を進む。そして、三つ目の曲がり角を曲がると、ギルド本部の横顔が見えてくる。
 やはりこちらも赤い建物だった。しかし、横に長いその建物の大きさは、周囲の建物の数十倍はあるだろう。高さは三つ分ぐらいか。
 入り口に到着すると、両脇に二人の筋骨隆々の男性の銅像が立っている。どちらも伝説の冒険者らしい。
 玄関の上には、剣と杖が交差する紋章が飾られている。
 私は入り口で数度深呼吸をして気持ちを落ち着けると、ギルド本部入り口の半透明の扉に手を掛けた。

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