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起床

 窓の外からワンワンという犬の鳴き声が聞こえてきて、僕は目を覚ます。
 隣の老夫婦が飼っている犬の鳴き声だ。
 この犬は、何故だか毎朝七時になる一分前に二度吠えるのだ。理由は分からないが、年間を通してそれは変わらない。
 目を覚ますと、直ぐに枕元に手を伸ばして、七時に設定している目覚まし時計を止める。
 三年前に高校に近いからと、この家に越してきた時に一緒に買ったこの目覚まし時計には、最初の一年間は世話になったものだが、その後の二年間は七時一分前に吠えるあの犬の鳴き声で起床する為に、一度も鳴らしていない。一応、念のためにとセットはしているのだが。
 僕は、春先の寒さに身体を慣らすようなゆったりとした動きで上体を起こす。
 寝起きがいい為に意識が朦朧とする様な事にはならないのだが、以前勢いよく起きた時にふらりとした経験がある為に、起きる時はゆっくりと起きるように心掛けている。
 布団の温もりに僅かに後ろ髪を引かれつつも、顔を洗う為にベットから降りる。折角、三年間無遅刻無欠席なのだ、最後の日にそれを崩したくはない。
 ベットから降りると、一度深呼吸をして朝のひんやりとした空気を体内に取り込みしっかりと目を覚ますと、僕は朝の支度を始めるのだった。

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