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第2話。新戦力争奪合戦in東京②

 前回のワネットウォーズをおさらいしよう!
 2020年ファンタジー化した現実の中でヒトのカタチを保ち魔法を使えるようになったハットワンズとカプリコンズは対立。新戦力を求めて東京臨海副都心に出現したというプロトメイトを巡っての争奪戦となった。その過程で空を飛べず地上を移動していた互いの地上部隊が銀座で鉢合わせ、合コンとはいかずに舌戦戦闘奇襲で決着。心環三兄弟の二人虚探と論実、そしてウィリアム。ハットワンズの三人はカプリコンズの人質とされてしまったのであった――以上!
 
『ねーねー空ちゃん、虚探と論実とウィル君、カプリコンズに負けて掴まっちゃったみたーい』
「えーっ! それほんとナミコちゃーん?」
『うん。だって銀座からの反応色が非常事態色に変わっちゃったんだもーん』
「ど、ど、ど、どうするの。空行?」
 ハットワンズのリーダー、心環三兄弟の空中戦力心環空行の嫁ぬいぐるみナビゲータ、ナミコちゃんからの地上部隊捕縛報告を聞いて空行と共に空中飛行していたシャルロットが心配ドキマギしながらリーダーで想いを寄せる空行に尋ねる。すると空行はあっさり応えた。
「放っときなよシャルロット。あいつらだって子供じゃないんだから、自分で汚名返上してもらいましょ。今はとにかくプロトメイトをカプリコンズに渡さないことと読者を飽きさせないことが最優先。ナミコちゃん! もう中央区でしょ、クリアリング開始。正確な座標を特定してぴょ!」
『はいな、お前さん♡』
 優れたぬいぐるみであるナミコちゃんのスキャニングによってプロトメイトカプセルの正確な座標の特定に成功した空行とシャルロット。すると続け様にナミコちゃんに基地兼自宅である心環家屋敷のジャミング装置を作動させ、カプリコンズハットワンズ諸共通信やスキャンを妨害させた。この手際の良さが素晴らしい――シャルロットはまた一回空行に惚れ直してしまうのだった。
「そんじゃカプセルに急行! 付いておいでシャルロット!」
「なんの! 競走だったら負っけないよー!」
 やることやってとっとと移動。ベガトロン達に鉢合わせない内に空行とシャルロットは高度を下げ、ビルの合間をくねくね蛇行し隠れながら確実に進んでいくのであった。

 一方! ジャミング装置を発動されて正確なカプセルの位置を掴めなくなったベガトロン達カプリコンズの空中戦力は品川シーサイド辺りの上空で緊急停止し頭を抱えた。
「くそっ! 空行の奴め、通信まで阻害させる強度のジャミングをかけおって。これじゃ人質交換の交渉すら不可能だ。これではプロトメイトが……」
「落ち着きなさいよ、ベガトロン様。手はなくとも目があるわ。」
 いきり立つベガトロンに物申したのはカプリコンズの女性空中戦力の一角を担うスピーディアであった。「なんだ? なんかいい手でもあんのか!」と首を900°回転させて後ろを向いてくる。その気持ち悪さにも動じることなく、スピーディアは淡々と自身の持つ魔法のチカラについて語る。
「手じゃなくて目。私とレグリルの目はどんな鳥よりもすぐれた視力、しかもレグリルは透視、私は盗視のオプションつきよ。心環空行の居場所くらい、すぐに見破って御覧にいれたららった! レグリル!」
「ハイ!」
 二人の女性はギョロっと目つきをギョロ目で集中……ではなく、むしろ真逆にジト目でじーっと品川から臨海副都心の方を見つめるのであった。沈黙が木霊し三点リーダをカラスが喰ってく。するとレグリルが「見つけました!」と嬌声を上げ、スピーディアも「この先この方向距離は全速で一分以内! 低く飛んでるわ、市街戦よ!」と報告する。
 すると俄然気合いが入るのがカプリコンズ一凶暴なアルドックスだ。服に仕込んだ装備償還用の魔法陣から現実兵器を改造した3連装ミサイルランチャーを構えるとこんな気勢奇声を吐いて女性2名が告げた場所に遠慮なく砲撃をぶちかますのであった。
「どんどんどんどこどんどんな〜っ!」
 放たれる3つのミサイル×射撃数。おっそろしいことに魔法改造しているので全弾ホーミング機能付きであり、障害物を飛行ドローンのようにくねくね行き来して臨海副都心の内部で大爆発を引き起こした。ベガトロン様、それを見てご満悦。サイテーだ。
「よぉーし! アレなら別行動の地上部隊も目的地がわかるだろう。先行して出撃する! 総員、全速前進だーっ! それと、ここまで読んでくれたキミ、ここで飽きて寝たらダメ!」
 こっからがワネットウォーズ2話の面白いとこだから――と付け加えればいいのにそれをする間も惜しんでか、ベガトロン達は再び空をぶっ飛び、二酸化炭素を巻き散らかしながら臨海副都心の爆心地へと向かう。勿論前回同様iPhoneで熱いアニソンジャンジャコスピーカーで鳴らしながらだ。迷惑千万許すまじ。
 
 一方、一悶着あった銀座から逃亡し臨海副都心に向かっていたアンダレア率いる地上部隊(ベナトールは再度単独行動中)の女性部隊も爆心地へ向かってレインボーブリッジの「車道」を全速力で走っていた。勿論前を走っている車に配慮して、車のボンネットを飛び飛び中継しながら走っていたのだ。え? 走ってない? 気にすんな!
 
 そんなこんなで部隊舞台は臨海副都心、お台場〜有明へと移っていた。その目印となっていたアルドックスによる砲撃の爆心地ではシャルロットの花の魔法と心環三兄弟全員所有心環家秘伝魔法杖「ハーミットワンズ」による合体魔法・鏡面反射防御結界によって全然平気全くの無傷、むしろ心配すべきなのは砲撃の「反射」によって被害を食らった周囲の状況であるが、空行もシャルロットもそんなこと全然気にしない。養父でありシャルロットの恩人でもある心環一乃の教訓にこんなものがあるからだ。

『教訓その壱、眼に見える範囲だけを救え。分相応を弁えろ。但し自分を犠牲にする事勿れ。自分が使えなくなっては本末転倒に陥るからだ』

 空行もシャルロットもその教えに従ったに過ぎない。周囲に被害が及んだのもたまたま砲撃規模がヤバかっただけ。むしろ悪いのアルドックス。これが二人の主張であった。
「ぬぇやあー!」
 そこに珍妙な掛け声でもって現れたのは見知った顔のベガトロン達。さらに地平線の低さからアンダレア達も現れた。カプリコンズが(ほぼ)全員終結したのである。
「シャルロットちゃんピーンチ」「空行君もピーンチ」
 空行とシャルロットはライトに現実逃避のプチコントを繰り広げる。実際問題かなりピンチだ。こっちは二人相手は八人、単純計算したくもないやい。しかも虚探、論実、ウィリアムが人質である。星の並びが最悪なのかもしれない。
『せっかくプロトメイトカプセルを手に入れたって言うのにねー』
 そう、ナミコちゃんの言う通り、二人はその傍らにプロトメイトカプセルを確保していたのである。それを見たベガトロン、「ラッキーハッピー俺ベガピー!」とバカな名前を絶叫しながらもスイッチが切り替ったかのようにいきなり低く怜悧な声で防御結界の中にいる空行とシャルロットに対して要求を突き付ける。
「久しぶりだねー心環空行にシャルロット・ファリエール。ハットワンズの空中戦力二人の御顔が見れて同じ空中戦力としておじさんは嬉しいぞー。さて問題です。こっちは三人の人質を持っています。お前達はひとつのカプセルを持っている。人道を鑑みればおじさんはカプセルを手に入れることができます。でも邪魔な奴等がいますね誰かな〜お前等だ」
「あーやだやだ、おっさんなんにも変わってない。そういう危ないトコを父さんが上手くコントロールしてやってたって言うのに、父さんが消えた途端これだもの。でもま、交渉の余地はないね。シャルロット」
「はーい」
 ベガトロンの恐喝強迫脅迫にも当て嵌まる一方的な通告宣告。しかし空行とシャルロットは仲間の命には代えられないのか魔法でカプセルを浮かせて「じゃあ人質と交換だよ」との言葉とともに動かす。ベガトロンも気を良くした風で、アウスリーに人質解放を指示する。人質と新戦力カプセルの交換はつつがなく終わった。アウスリーの水晶から解放された虚探、論実、ウィリアムの三人は空行に招かれるがままに防御結界の中に入り、シャルロットの花の魔法で治癒される。
 そしてカプリコンズ側では手に入れたカプセルを操作しようとまたも神出鬼没に現れたベナトールが今回の施術医として「ケラケラケラ……」と笑いながカプセルを操作しようとした――その瞬間!
 カプセルは自爆した! 跡形もなく、粉々に。
「グッバーイ!」「アディオース!」「セニョリーッタ!」
 至近距離で爆発に巻き込まれたカプリコンズの連中は外国語の悲鳴を上げて爆風と一緒に吹き飛ぶ。頭クラクラ脳天グルグルになったベガトロンは未だ防御結界を展開し無傷だったハットワンズに向かって文句も非難もぶちまける!
「この人でなし共! 俺様達にプロトメイトを渡したくないからって自爆コードを組み込みおって! おかげで毛細血管がパンパンじゃい!」
 ベガトロンの猛抗議。しかしハットワンズの空行とシャルロット、そしてナビゲータことナミコちゃんは「ギャハハハハ! ひっかかったひっかかった! バーカバーカ!」と知能指数を疑わせるような高笑いを聞かせるのであった。それがまたベガトロンやアルドックスの癇に障る。
 しかし、ベガトロンの指摘は的外れであった。空行もシャルロットもナミコちゃんも自爆コードなど入力していない。
 終わっていたのだ。確保した時点で既に。新たな味方を。新戦力を。
 その新戦力は透明人間だった。空行が指パッチンをしたのを合図にカメレオンのように皮膚の色を調整して、ヒトのカタチをした姿を現した。
「お初にお目にかかる、カプリコンズの兵共よ。某の名はアトランティス・ヴェールゴールド。今日からハットワンズに世話になる者だ。前置きはここまで、お見せしよう。変身・ハットオン!」
 変身コードを唱えてハットワンズのチカラの源泉であるハット帽子を被るアトランティスはそのままカプリコンズに向かって集中砲火を食らわせた。それに同調して空行も防御結界を解除してマジックキャノンで撃ちまくる。二人の集中砲火を食らったカプリコンズ、ベガトロンは「くそっ! 今回は撤退だ! アデュー!」と叫んで空飛んだりちょろちょろ走ったりとバラバラに散って帰ってく。それを追うには人数が足りないので、今回の戦いは此処で打ち止めとなった。
 攻撃の手を緩め抑えそして止めて、改めて向き合うハットワンズの面々。アトランティスは堂々とした態度で「ベンゼン入りのアジの刺身、美味しかったぞ」と悪食ぶりをアピールする。これで買収されてハットワンズ入りしたのだから、プロトメイトも相当な変わり者達である。
 だが、貴重な戦力であることには変わりない。心環空行、心環虚探、心環論実、シャルロット・ファリエール、ウィリアム・デイドリームに空行の中にいるナミコちゃんの6名は新たな仲間を歓迎するのであった。
 
 そして全員即逃げた。損害賠償を求める警視庁の追手がくる前にってね(笑)!

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