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賊は全部で6人、年若い者もいれば年寄りもいる。
全員がいかにもファンタジーゲーム的な派手な色合いのカンフースーツを着ていて、これまた至極ファンタジーゲーム的なアサシンダガーを片手に構えて、どこからどうみてもファンタジーゲームの悪役だろうというフォーメーションで茉耶華を狙っているのがあざとい。

真山はこれを何かのアトラクションと勘違いしたのだろうか、茉耶華を後ろ手に庇って気取った声を出した。

「何者だ!」
「貴様こそ何者だ」

フォーメーションの中心、いわゆるリーダーポジションにいた若い男の一喝。
そしてアサシンダガーが空に描いた一閃。

「うわあ!」

刃物が掠めた頬に浅い傷を刻まれて、真山は地面に腰を落とした。

「ま、まさか、本物の刃物?」

そのまま、茉耶華のことなど振り返りもせず、這いつくばって輪の中から逃げ出す。

茉耶華はそんな彼の背中を呆れ切ったように冷たい目で一瞥しただけだった。

「あれは王の器じゃないわね」

賊は相変わらず茉耶華に刃を向けて、じりりと一歩を進める。
彼女を取り巻く輪が狭まった。

リーダー格の男は殊更に刃を突き出して叫ぶ。

「戦姫、貴様がこの世界へ来た目的を教えてもらおうか」
「嫌だって言ったら?」
「その場合、生かして連れてこいと、領主さま御自らお主の体に拷問の傷を刻むつもりなのだと、そう聞かされている」
「うわあ、やだやだ、あんたのところの変態領主に拷問されるとか、陵辱の限りを尽くされて人格も肉体も破壊される未来しか見えないわ」
「だろう? だからこそここで素直にお前の目的を聞かせてくれ」
「いやで〜す」
「頼むよ、俺だって君みたいな若い子が拷問されるのを見たくないんだ」
「じゃあ、こうしようか」

茉耶華は両足をザッと肩幅に開き、上半身はまっすぐ立てたまま、力を抜いた。
両腕は軽くあげて、隙は一ミリもない。
迂闊に彼女の間合いに入り込めば、あの腕は防御のためにも、攻撃のためにも即時に対応してくることだろう。

「ここで、力ずくで私から聞き出しなさいよ。あんたんとこの変態領主に拷問されるよりよっぽどマシじゃない?」
「よろしいでしょう」

リーダー格の男がザザッとすり足で間合いを詰める。
茉耶華はポーンと軽く大地を蹴り、すぐ後ろにいた男の頭を踏みつけてさらに高く……賊の輪の中から抜け出したのだった。

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