祈りし場所
ショットガンを構え、先頭に立つべるの後ろをライフルを顔の高さで構えながら礼拝堂を目指すえるの。
人間ならさほどかからない距離だろうけど、二人共ちっちゃい体である。後楽園球場の何倍・・なんて言い方もヤボというものだろう。
明かりもないガランとした部屋。
誰も居ない。
そこはかつて、神に祈りを捧げていた礼拝堂だった。
しかし、破れた天井から月明かりがさしこんでいて暗くはない。
「なんで・・・」
「モビウスワン、祭壇の裏に部屋があるわ」
「祭壇の裏?わかった。」
「あなたは?」
「私はパスファインダー。アウルアイからあなたのサポート頼まれたの。よろしくね。」
祭壇の裏には司祭の準備室がある。そこには2人の兵士が眠るように倒れていた。
「パスファインダー、あなたの仕業?」
「そうよ、そこから地下室に降りる階段があるわ。気をつけて!」
地下につながる階段には灯りが灯っている。
階下からは汗の匂い?独特な体臭とスパイスの香り、タバコの匂い、強いアルコール・・多分ラム酒の香り、そして甘い媚薬の香り。
そして、僅かながら血の匂いがえるの達の鼻腔を刺激する。
そして人の声。
咽び泣く女性の声。
هو من فضلك! يرجى تدع ابنتها .
アラビア語はわからない。
でも何かを懇願しているのは解った。
揶揄い笑う男の声。
瓦礫が生み出す影の中を縫うように進む。
鉄格子の中にうずくまる人影が見えた。
何部屋か区切られた部屋に数人ずつ。皆薄汚れた服、というより殆ど布に近い。それか殆ど全裸に近い姿もある。
汚物にまみれていたり、暴行を受け全身アザだらけの人達も居た。
「酷い・・・。」
「早く助けなきゃ・・・」
銃を握る手に力が入る。
一刻も早くこの人達を解放しなくちゃ。
突然、酔っ払いながら銃を持って入ってきた男が二人。
横たわる女の髪の毛を掴んで品定めし始めた時、目の前に仁王立ちした二つの小さなメイドを見つけ目を見開いた。
「!!!」
「ピーーーンポーーーン」
2人のチャイムが咆哮する。