潜入
月夜に照らされて窓辺にふわりと舞い降りる小さな人影。
紺色のメイド服とその服装に似つかわしくない緑色の軍用ヘルメットとアサルトライフルを構えるその人影はえるのだった。
続いてもう一人の大きな鞄を襷に背負った銀の長髪のメイドがえるのの死角をカバーするように背後に立つ。
手には自動装填式のショットガン。
ジャム相手の近接戦闘や対空戦なら頼もしい相棒だ。
破壊された窓際に突き出た鋭利なガラス片に引っかからない様にロングスカートの裾をかわし中に進入していく。
身体の小さなえるの達妖精にはなんていう事のない進入口だが、これから脱出させる人間達には無理なので人間が通って脱出出来そうなルートに当たりをつけながら出入り口までの動線を確保する。
散らばった瓦礫をバリケードにして身を隠しつつ、捕らわれとなっている人々を探しに礼拝堂を目指していく。
幸いにも、ISの兵士の姿も見えない。時々宿主を無くして野良となり彷徨う単体のジャムを一体、また一体と倒していかなくてはならなかったが、人影が見えないのが予想外で二人を不安にさせた。
「まさか、偽情報?!」
「なんのために?」
その時レシーバーから通信が入った。
「アウルアイから緊急!!エリア18を攻撃中のアンバーとブランカのチームが通信途絶!」
エリア18はISの食料・燃料の備蓄施設だった。えるのの知り合いが両チームに居たかはわからない。
頭の中を色々な可能性がぐるぐると回りはじめた。想像は悪い方、悪い方へと加速して回りはじめてしまう。
「えるの!先ずは自分の任務の事考えることが先よ!」
そう銀髪のメイド、姉・べるが立ちすくんでしまったえるのを急かすと今度は先行するポイントマンをかって出た。
「行かなきゃ!待っている人達がいる。」