2
「でもさ。そうかと思えば、自ら死んでしまう人間もいるんだから人間っていうのは難しい。」
僕は何とか話題を変えようと口を開いた。
「平和な世界に生きていると忘れちゃうのかな・・・」
雪菜も頷いた。
不良たちの間で流行るもの。チキンレース、未成年者の喫煙、飲酒運転。そして近年、新しく出てきたのが「共殺し」
つまりお互いに殺しあうことで「敢えて」残機を減らすのである。理由などない。
だからこそ周りから一目置かれる存在になる。
うちの学校でも、共殺しをしていたという噂されている人間はいる。
他に社会問題になっているものは「援殺」だろう。お金をもらうことで自分を殺す権利をあげるのだ。
この手で人を殺してみたい、自分より未来ある若者の人生を変えてみたい。そんな欲求のために金を払う大人もいる。
この法案は食糧問題にも影を落としていた。発展途上国では、食べ物がないから自分の子供を6回殺して食料にするという話もある。
「ほんと、信じられないよね。命を粗末に扱うなんてさ。」
僕は溜息をついた。
_本当にそう思っているのか?
不意に僕の頭の中で声がする。同時にひどい頭痛に襲われる。
_誰よりも人を殺したいのはお前だろう。
声は僕の頭で響き続ける。そんな僕に気づかず雪菜は話し始めていた。
「なんかね。一真。私、この世界にすごい違和感があるの。」
「うん・・・・分かるよ。」
痛みを堪えながら僕は優しく笑おうと努めた。
_嘘をつけ。お前が分かることなんてほとんどない。
さらに痛みは増していく。頭の奥底が燃えるように熱かった。それに応じて頭の中から聞こえる声もまた大きくなっていく。