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カリーの宿屋#5

 俺はカリーの宿屋の前に着いた。カリーの宿屋の外観はとてもでかくてゴツいが、木材でできた建物よりかは親しみのある外観だ。

 前述したとおりこの建物はかなりでかいので、もちろんそれに比例して部屋も沢山ある。前に見えるだけでも木製の窓は10個あった。俺はカリーの宿屋の外見をそんな風に観察し終えると、カリーの宿屋の中に入った。

 カリーの宿屋に入ると元いた世界のホテルとは違って最初に見えたのは食堂だった。だが、食堂とは俺からすれば名ばかりの中身である。
 食堂内の照明は灯油のにおいがする液体が入ったランタンがぶら下げられており、もう完全に夜なので木の柵からは光が入って来ない。なのでランタンがあっても薄暗い。

 床はもちろん大理石などではなく、丸い石が敷き詰められて出来ている床で時折石の間に少し段差がある。置かれている丸いテーブルやイスなどは元いた世界と比べると若干粗悪だが、ピカピカに磨かれていた。

 憧れていたファンタジーな世界だが、やはりこういうのは元いた世界のほうがいいな、などと俺は思っていた。そんなこと思いながら店内を見回していると、カウンターにいたオレンジ色のスカーフを巻き青色のワンピースを着ている黒髪少女が

「お客様ですかー?宿の受付はこちらでーす!!」

と元気な声で呼ぶ。俺はその少女のもとへと向かった。

 その少女のいるカウンターに俺は着くと、当然、前の客が目の中に入った。驚いたことに前の客の服装が黒いシルクハットとシワ一つないピンっと張った絶対に高いだろうスーツであった。

 この客を見て気づいたのだが、普通の人の身なりは高級そうな服で整っているし、僅かにいる冒険者らしき男や女はとても強そうな防具や剣、立派な杖らしき物を持っている。

 恐らくこんな人たちが来るここは一流の宿屋なのだろう。ということはあの子に貸してもらったお金では高確率で足りない、ということだ。 
 ヤバイ。そう思った時には既に遅く、もう俺の番になっていた。

 ドキドキ、ドキドキ、そう心臓が鼓動を激しく打っている中俺は不安になりながらさっきの子に質問した。

「一泊、夕食と朝食付きでどれくらいお金必要ですかね?」
「5ゴールドになりますよ?」

 ものすごく緊張していた俺にそうあの子は不思議そうに返答した。俺は真っ先にポケットの中から緊張で手汗が滲みでている手で、所持金を確認する。すると金色の硬貨がちょうど5枚入っていた。

 俺はあのお金を貸してくれたエルフの少女に感謝をして金貨をギュッと握り締めた。その後、俺の行動に唖然としているあの子に「じゃあそれで」とにこやかに言いながらお金を渡す。

 するとすぐに笑顔の表情に戻したあの子が言った。

「階段を上ったところのすぐ右手に見える部屋201号室をお使いください。あと夕食は私の隣にいる人に言えば出してくれますので」
「じゃあ今食べます」

と返すと鍵を渡されたのでポケットの中に入れた。
 そして隣のカウンターの人に言おうとした瞬間、隣で話を聞いたからか金髪ツインテールの少女は言わずともつっかかりもせず夕食を出してくれた。

 別にここがファンタジーな世界でも金髪ツインテール少女だからといってツンデレなわけではなかった。お約束だろ。ツンデレじゃないのかよ。
 そんな普通の人にはどうでもいいことを考えながら、夕食を近くのテーブルに運ぶと、俺はおいしそうなにおいのする夕食を観察した。

 夕食をみるとライ麦パン3個に爆走牛のステーキ、キャベツのサラダというメニューだった。よかった、俺はそう思った。
 もしもこの世界の食がえげつないものだったら、もしかしたら食べれないかもしれないからだ。それにライ麦パンやキャベツはこの世界にもある、という事実も嬉しかった。

 ライ麦パンやキャベツは元いた世界とはやはり味は変わらなかった。爆走牛のステーキは一言いでいうと、最高級の牛のステーキという感じだ。
 あんな生きているときの見た目は筋肉質だったのにステーキは口に入れるととてもやわらかくて噛むと肉汁があふれ出すのだ。

 幸せだ。そんな些細な幸せを感じながら食べ終わると、トレイがいっぱい置いてある場所があったので、そこにトレイを置いて俺は201号室に向かった。

 俺の部屋に入ると、とても広々とした空間だった。真ん中には食堂に置いてあったのよりも一回り小さくなったテーブルとイスが一つ置いてあり、その奥には見るからにフカフカなベッドがおいてある。
 テーブルの上にはロウソクが置いてあった。

 そして右側にはクローゼットが、反対側には大きな棚がある。俺は真っ先にベッドに向かいダイブした。
 すると、もちろん、ベットは反発しポヨーンと俺は宙に浮く。そんなふうに多分高級なベットで少し遊んだ後、うつぶせのまま、俺は楽しみだったことをやることにした。

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