エルフとの会話#3
さっきから美女エルフが繰り返し、優等生だった感じな見た目どおりのアニメの優等生な感じな声で「私が寝ている隙になんてことをしてくれたんですか!!(怒)」
と言いながら赤、青、茶。とさまざまな色の丸い形状の魔法を俺の横に飛ばしているので、恐らくあの子は俺が胸の中にワープして顔を上げるまでは寝ていたのだろう。恐らく俺が来たところは見ていないのだ。
だから、俺のことをさしずめ寝ている少女の胸の中に勝手に顔をうずめていた変態。という風に思っているのに違いない。
話題は変わるが、現在、あの子は俺に当てないように魔法を撃ってくれているが、もしも気が変わってあいつは今殺しといたほうがいいのではないか、とか思われて俺に当てられたり、遠くに行くほど魔法も操作の難易度が上がるはずなので、このまま逃げて遠くまで行くともしかしたら間違って当たったりするかもしれない。
なので実はここで逃げるのは、異世界に来てそうそうすぐ死ぬ、という残念なこと成りかねない。じゃあ俺はどうするればいいのだろうか。
なにも、人間はそこらへんにいる野生の生き物と違って知性があるのだから“戦う”と“逃げる”しか選択肢が無いわけではないはずだ。そういえば、人間には争うだけではなく平和的に解決する方法があった。
それは話し合いである。相手は十中八九外見から見て唯の人間ではないが、相手のエルフは言葉を話せる以上話し合いという手段は持ち合わせているはずだ。いや、お願いだから持ち合わせていて。
そんな風に願いながら俺は自分が謝る必要はあるだろうし、あれぐらいしないと聞いてすらもくれないかもしれない、と思い人生初の土下座をしながら一生懸命腹のそこから声を出して叫んだ。
「誠に申し訳ありませんでした!!!でもわざとじゃないんです!!!」
「へっ!?」
ーー少女視点
わたしは謝られても許すわけないでしょうと途中まで思っていたが、急に、でもわざとじゃないという無茶苦茶な言い訳を聞いて思わずそう素っ頓狂な声を上げてしまった。
だけど、一度真っ白になり怒りも少し消えた頭でよくよく考えてみるといくら変態だからといっても寝ているわたしの胸の中に頭をうずめるというのは奇妙だし、そんな変態ならばいままで指名手配されていないのはおかしいということに気づいた。
わたしは自分が言っている場面を想像し、僅かに恥じらい顔をほんのり赤くしつつも尋ねた。
「じゃあな、なな、なんで私の胸の中に顔をうずめていたんですか!!」
「異世界からワープしたところがその、あなたの胸の中だったんだよ」
ーーヒョウガ視点
俺は真顔で言って思った。これはない、と。もしも俺がこんな状況でこんなことを言う奴がいたら、真っ先に逃げて警察に通報するだろう。
警察なるものがあるかわからないがとりあえずこのままではヤバいことは確かなので、このセリフに現実味をおびさせるため何か証拠になるものを考えた。
まず思い浮かんだのは、服装だ。もしもこの世界が俺の知るファンタジーな世界なら、こんな真ん中に文字がプリントされている服はないだろうし、現にあの子の服装は白いドレスだ。
あ、でもそう考えると微妙だな。で、でもさっきからなぜかあの子の言葉がわかるが、この服にプリントされているI LOVE ANIMEという文字も恐らく読めないだろう。
第一、もしも奇跡的に言語が同じだった、としてもアニメという概念がこの世界に無いはずなので証明に問題はないはずだ。そんな風に考えた俺は明らかに疑っている少女にそのことを言った。
「この服装やこの服に書いてある文字は見たこと無いだろう?」
「うーん。確かにこんな鮮やかで文字みたいのがプリントされた服は人族が着ているのを見たことないし、この文字も人族のものではないですね」
「そりゃそうだ。だって異世界のものなんだから」
「じゃあその耳につけているものも異世界のアクセサリーかなんかですか?」
そう少女に言われて初めて俺は気づいた。あのときに耳に装着されたウェアラブル端末がそのまま装着されていたのだ。もしかしたら、そう思いさっそく起動することにした。
赤いフレームの横に付いているボタンを押した。そうすると突然、目の前に大きく水色で『準備OK』と表示され真ん中に複数のアイコンや数字、バーが重なって表示する。そしてビュンビュンと瞬く間に散らばっていった。
なかなかのカッコイイ演出だなーと思っているとピローン、そんな音が鳴り即座にアイコンが作る円が回り、Gの文字がついてる封蝋で閉じられたメールのアイコンとその下にメールと言う白い文字が前に出てきた。
そしてすぐに、メールのアイコンの斜め上に赤い丸の中に1があるのが表示された。
もちろんメールを一件、なぜかこの異世界で受信したということだろう。もしかしたら外部といつでも連絡がとれるのかもしれない、と思い喜んでいるといつのまにか、いつまで経っても質問に答えてあげないからか微妙に女性が怒っていた。
それをみた俺は「少し待っててあとで説明するから」と声を掛けるとメールのアイコンが表示されている位置に指で押すようにするとメールのアプリが開きすぐに文面が表示された。
そのメールにはこんなことが書いてあった。
『そこの退屈だった青年へ
どうだい日本の青年よ。みずみずしい若い女性の胸の中はどう
だったかな?もしかしたら君には刺激が強すぎたかもしれない
な。あと、ギャラリーという所を開くと近くの数箇所のマップ
とチュートリアルという動画があるはずだ。役立ててくれ。君
がこの世界にどんな影響を及ぼすのか楽しみだよ。
P.Sメールは僕としかやりとりできないよ。
神になった男より』
もちろんこのメールを読むなり怒り、叫んだ。
「この世界の影響云々の前にあんたの粋な計らいなせいで死に掛けたんだそー!!この自称神が!!!!!」
「いきなりどうしたんですか!!?」
ーー少女視点
もちろん男の人がなにをしていたのかわからない私にはいきなり怒鳴っているように見えたので驚いて声を出してしまった後、本当は変態だったのかも知れないと思い、自分はこれからやばいことをされるかもしれないそんな恐怖で体が勝手に震えていた。
ーーヒョウガ視点
少女がかなり怖がっていることに気づき、約束を思い出した俺は説明し始めた。
「これはまあ一言で言うと便利アイテムだな」
「そのアイテムのなにが便利なんですか?」
「魔法みたいに遠くにいる人としゃべったり、手紙をやり取りしたり見たことを記憶したりできる」
「え、ということはさっきのは遠くにいる人に怒っていたのですか?」
「うん、そうだよ。その人はたぶん俺をここに来させた人なんだけど。わざとあそこにワープさせたんだ」
「そ、そうなんですか」
ーー少女視点
あんなに怒ってたんだから本当に不本意なんだなーとわかった私は「この人にとても悪いことをしたな」と思い、あることをやってあげることにした。あることとは道案内や町の紹介などだ。
たぶん別の世界から来たのだから右も左もわからないはずなのでせめてもの罪滅ぼしに教えようと思ったのだ。他意はない。そのことを青年に言った。
「さっきはすみませんでした。せめてもの罪滅ぼしに道案内ぐらいはさせてください」
「あ、明日町案内してくれる?さっき言ったこの便利アイテムに地図は入ってるんだけど詳しいことまでは乗ってないんだよね」
「え!?そんなものまであるんですか!すごいですね。でもお金は持ってますか?」
「あ、そういえばそうだった。宿に止まれないな」
「さすがに家には泊められませんが。宿代なら貸・し・て・あげます。貸すだけですからね。後でキッチリ返してくださいよ」
「ありがとう。まじで助かった。また明日昼ごろココで集合な」
「わかりました」
その言葉を区切れに二人はそれぞれ真反対の方向にそれぞれ向かっていくのだった。