神の悪戯《いたずら》#2
もしも今の俺がタイムマシーンにでも乗ってあの時の俺に声をかけられるとしたらこう言うだろう。「自称神に飛ばされた後どうなるのか聞け!」と、何故そんなことを考えているのかというとこの状況にある。
今、実は俺は、エルフと思わしき女性に魔法を連射されて逃げてているのだ。どうしてこんな状況に何故なったかというと・・・
ーーーーーーーーーーーーーー少し前にさかのぼるーーーーーーーーーーーーーー
あの日も変わらない一日だった。いつものように寝そうになりながら、いやちょっと寝ながら授業を受けている振りして、ノートに絵を描いたりラノベを読んだりした。学校では何事も無くすごし、家に帰った。
学校では何の前触れも無かった。
クラスメイトと教室で一緒に召喚されたり、下校中に召喚されたりはなかった。この学校でのすごし方を見てくれればわかると思うが、俺こと櫻井 氷河《さくらい ひょうが》はいわゆる世間一般で言うところのオタクという奴だ。
オタクになるのはこの家庭環境では自然な流れだと思う。
なぜなら両親ともにオタクで、しかもオタクに密接な仕事をしているからだ。ちなみにオタクに密接な仕事というのは何か、というと母はアニメーターで父はラノベ作家である。
そんな両親に育てられた俺は中学生ぐらいからラノベを読んだりアニメを見たりしていつも思うことがあった。今思えばこのいつも思っていることが異世界に俺が行くことになった間接的な原因なのかもしれない。
そのいつも思っていたことは唯一つであった。何かというとそれは、なんてこの世界はつまらないんだ。もっとこんな風な面白い世界に生まれたらなー。ということである。
アニメやラノベの世界に比べるとこの世界ははあまりにも平凡すぎるのだ。
もちろんアニメやラノベみたいに自分にすごい力があり戦うことになったり、家を借りていざ住もうとしたら幽霊の女の子が部屋にいたりなどはこの世界ではありえないことである。
至極当然なことなのだが、アニメやラノベに囲まれて暮らしたきた俺には無いと解っていてもとても羨ましかった。現実は残念なことに夢などは欠片も無い。小学生5年生ぐらいの時に気づいてしまった残念な事実だ。
その残念な世界で生きるのが面白いわけが無い。まあ結局はおもしろい世界に飛ばされたのだが。まあ余談は終わりにして、事実確認に戻ろう。
俺はいつものように家に入るなり、真っ先に俺の部屋に駆け込んだ。
ちなみにその俺の部屋はどんな感じかと言えば、まずドアから見て右にはラノベがぎっしり詰まっていて、時折自作PCに関する本とか電子工作に関する本、プログラミングに関する本などが入っている本棚と窓際に設置してある俺のベッド。
前にはデスクトップPCと三つのモニタがある机。左にはお気に入りのアニメキャラのポスターやラノベのポスターが張ってある。そんな感じだ。
いつも通りそんな部屋の中においてあるデスクトップPCで今日の深夜アニメを見返し終わって、暇なのでネットサーフィン(アニメ板を見る)を楽しんでるときだった。
なぜか、全然使っていないはずの自分のゴーグルのサブアカウントに一通のメールが届いたのだ。気になってそのメールを開いてみると宛先はもちろん俺のアカウントで差出人は神になっていた。
もちろん神と言う差出人のメールアドレスはない。その不思議なメールを見るとこんなことが書いてあった。
『そこの退屈そうな君へ
そこの退屈そうな君はこの宇宙がとてもつまらないと思っていないかね?
よかったら私の宇宙に来ないかい?まさしく君がアニメで見ているような
ファンタジーな世界だよ。もし君がこの宇宙から出て私の宇宙に行きたい
と思うならYesもしくはそれに順ずる言葉を、嫌ならNoもしくはそれに順ず
る言葉を返信してきてくれ。
神なった男より』
俺はもちろんこんなメールを見て真に受けるほど馬鹿じゃない。だが、本当に行けたらいいなくらいの気持ちはある。なので、物は試しだということで俺はYesと返信をしていた。
やっぱり、このときにしっかり質問すべきだったのかもしれない。たとえば、転移先はどこですか?とか。『これでいいですか?』と画面に表示されるが軽い気持ちでエンターキーをポチッと押した。
すると突然イスからまるで重力が無くなったかのように俺の体がふわりと浮き上がり、俺の耳の上に前、ネットで見たときは開発中だと書かれていたはずの耳につけるタイプのウェアラブル端末が装着された。そして視界が急に暗くなった。
するとなぜか顔と肩以外は草の感触がするのになぜか顔だけはとても柔らかくて温かいものに覆われているのに気づく。ちなみに肩の前面も柔らかかった。このやわらかい物体はなんだ。
そう思い少し考えると、もしかしてラノベなどを読んでいてよくある、倒れてしまって女の子の胸に。という展開に似たものではないか。
そう思い体に違和感を感じつつ立ち上がるとやはり、地面に黒色をしているサラサラなロングヘアーと白い透き通るような肌を持っている。しかも中世的な顔立ちをしていて体は、男にとっては出て欲しいところは出てて引っ込んでほしいところは引っ込んでおり、耳は異様に横に長く顔を真っ赤にしていた美女がいた。
その美少女はフリーズしていたものの数秒たつと我を取り戻して、「ハッ」と、わりと大きい声で言うと俺を睨みながら魔法で攻撃をしてきた。と、こんな感じであの状況に追い込まれたわけだ。そんな風に長い回想を終えたと同時に
俺はこれからどうなるんだ。
と思いながら俺はエルフ美女の攻撃が当たらない範囲まで走り続けようと頑張っていた。