第四話 食人村
長安にから更に東の方角、
その中で一軒の粗末な家に向かい、痩せ細った四十代位の男の村人に交渉した。
「夜分遅くに済まぬ。俺の名は張繡。そして先生の賈詡、弟子の甘寧だ。路銀は払う故、食料と休む場所を提供して欲しい」
「これだけの路銀を頂けるんだ。さあどうぞ。今、飯の支度をしますので入って下せえ」
こうして出された食事を食べたのだが、甘寧は食事の中の肉を食べた時に険しい顔になったが、張繡は不思議そうに甘寧に訪ねた。
「どうした甘寧、食事が余り進まない様だが、何か口に合わないか?」
「張繡あんちゃん。この食事の肉は何の物かわかるか?」
「分からん。今まで食べた事の無い、柔らかい、変わった匂いの肉だが、美味しいな」
「馬鹿! この肉は人肉だよ。多分、旅人を殺して料理したんだ。しかも何やら薬の味までするよ。動けなくなる前に逃げようよ」
張繡は吐き気を抑えて。
「乗って来た馬に向かうぞ!」
すると賈詡は。
「危険にございます! 馬舎には見張りがいると思われます。武器と金だけ持って急ぎ発ちましょう!」
危機を感じて夜陰に紛れ逃げようとしたが、既に小屋は三十人程の村人が槍や刀等で武装して包囲されていた。
「時既に遅しか! 先生! 甘寧! 囲みを破る! 離れれば奴等に殺され喰われるぞ!」
俺は小屋の戸を蹴り飛ばして甘寧と先生と共に生死を問わず襲い来る村人を斬りながら走り、馬を二頭奪って逃げた。
疾風の様な逃走に一時は混乱していたが、村長が慌てて村人達に命じた。
「獲物を逃すな!」
と命じると。
「追え!」
と、村人の叫び声が聞こえる。
だが、俺達は馬を乗り潰す勢いで逃走し、やがて身体が痺れて動けなくなるが、幸い近くの洞窟に隠れた為、何とか村人から身を守った。
その後、飲まず食わずで移動しながら三日後、やっと安心する距離まで逃げ切ったのであった。