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第五話 弓豪傑

 洛陽に向かう途中、雪が積もり後七日程で到着する前に、ある村のある東の方角で火の手が上がり何やら悲鳴や怒声が聴こえる。

「助けて――!」

「嫌――!」

「殺せ――!」

 賊か? 俺達は吹雪と闇に紛れて近付き、状況を見てみると、やはり黒い衣服を纏い、家々に火を放ち、財貨を略奪し、女を強姦している賊であった。

 その数約百人。

 この前の食人村は飢えに苦しんだ村人の止む得ぬ事情だが、路銀や食料が不足気味なので、何とか、襲われている村人を助けたい。

 だが、圧倒的に賊が多い、三人対百人では話に成らない。

 暫く様子を見ると突然、略奪を指図している一番地位の高そうな頭目の頭に矢が刺さり殺された。

 そして、更に五人が同時に矢を急所に貫かれ殺された。

 賊が頭目と仲間を殺され。

「頭目が殺された!」

「何処かに矢を放つ兵がいる!」

 と、混乱している。

 何者か? の助太刀をして村人を助ける為に俺達も不意を突いて襲いかかる。

 先ず俺と甘寧が刀を振り回して斬り込む。

 賊十数人が腕や足などが千切れ飛び、血を出しながら。

「痛えよ……」

「助けてくれ……」

 弓矢の恐怖で賊達は。

「鬼神の天罰だ!」

「龍神様の怒りだ!」

「祟られる前に逃げろ!」

 と、一目散に武器や奪った財貨を捨て逃げて行った。





 こうして、俺達は賊の奇襲に成功し、討ち取った者は無視して、傷を負う者は迅速に殺し、歳は十代後半の黒くて長い顎髭をした、赤い甲冑を纏った長髪の男が大きな弓を持って近づいて話しかけてきた。

「儂の名は黄忠(こうちゅう)。御助力忝ない。貴殿らは何処の者か?」

「俺は張繡と申す。そして連れてる童は甘寧。そして賈詡先生だ。今は旅の途中だ」

「この黄忠。一人では、族から村人を助けられなかった。どうであろう。儂も共に参っても良いか?」

「黄忠殿。貴殿の様な豪傑が共に参るのはありがたい。しかし、旅とは言っても行き先が無い、それでも構わねか?」

「儂の事は構わぬ。お頼み申す」

「では、賊から村の生き残りを近くの村まで逃がさねばならない。共に洛陽に行こうぞ」

 こうして、村の生き残りである女、子供を連れて賊の武器や馬等を鹵獲し、洛陽まで護衛して行くのであった。

 張繡十歳、賈詡十七歳、甘寧五歳、黄忠十六歳 

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