84.炎を止める!
熱源探知する。
また、家が燃え上がった。
その熱の分布が、モニターの中で緑の濃淡としてしめされる。
これなら夜でもハッキリ見える。
家の中心に、濃い緑の人影があった。
色が濃いほど熱が高い。
サイズは一階の天井を突き破るほど。
逃げ遅れた人のわけが、ない!
ウイークエンダーの頭部から、機関砲で1発だけ撃つ。
ターゲットは人影、こん棒エンジェルス!
砲弾は命中。
人影がグラリとゆれた。
けど、くやしい。
耐えられた。
また狙い撃つ。
『うさぎさん! 援護します! 』
河川敷に巨大なドラゴン型ロボットが降り立つ。
青い体と白い翼。
パーフェクト朱墨だ。
『パーフェクト朱墨の一番小さい武器は35ミリ機関砲です』
アーリンくんが呼んでる。
そこは、地球製なんだ。
『そうです!
それを単発で、建物内の敵を追いだす。
いいですね?! 』
「ええ、それでお願い」
パーフェクト朱墨の頭部から、見慣れた火花が飛ぶ。
狙いすました砲弾が、塀を撃ち抜く。
隠れたこん棒エンジェルスが、180度回って頭から落ちた。
「ありがとう! 」
そう、普段どうりに言ってしまった。
イヤな気持ちになった。
朱墨ちゃんは、この街で遊んで、生活するんだ。
そこに攻撃するのが、うれしいことなのか。
ありがたいこと、なのかな。
『後で聴いてほしいことがあります。
まずはコイツらを何とかしましょう! 』
朱墨ちゃんから気になることを言われた。
それでも、火力は2倍になったのはうれしい。
敵は、はじきだされて倒れふす。
「次、道路はさんで、となりのヤツ! 」
『了解! 』
こん棒エンジェルスの身長は4メートルくらい。
人間大の丸っこいアーマー、破滅の鎧。
そこから、能力を拡張するために魔法炎をまとう。
宝石のような黒さ、刃物のような鋭さで表面をおおう。
腕を伸ばすかわりに、こん棒にしてる。
魔法炎のトゲをたくさん付けて。
魔法炎は、足の裏をから上げ底もしてくれた。
その刃物の手足で、立ち上がった。
そして、私たちへ向かって駆け出す!
なんで立てるのかな。
AIによるサポートがしっかりしてるのかな。
何にせよ、うらやましくない。
また1発で、路面にたたきつけた。
仲間のハンターキラーを誘導する。
こん棒エンジェルスの周りで、小さな光が瞬いて消えた。
もう、敵は立てない。
光は爆発、たぶん手榴弾を投げつけられたんだ。
集まるハンターキラーの中から、1人が飛びだした。
間違いなく、そのサイズは地球人。
ただ、信じられない早さで近づいてる。
しかも、自分の体と同じくらいの大きな塊を持ってくる。
その塊で、次々に叩きのめす!
塊は、ハンマーだったんだ。
そう言えば、さっき巨人を逃がしたハンターキラーが、あんなハンマーを使っていたかな。
改めて捕らわれる、こん棒エンジェルス。
今度のキャプチャーの黒さ、魔法炎の濃度は、薄いものじゃない。
これで十分な固さ。
安全だね。
「そうだ、街の火は? 」
そう思ったら、黒い大きな影が、目の前を横切った。
ウイークエンダーとパーフェクト朱墨の周りを回る、鳥だった。
二つの頭を持つ、ワシ。
デコとペタだ。
「もういいよ」と言うみたいに私たちを回る。
ブロッサムも砲撃を終えていた。
『デコさまとペタさまによる、街の再生がはじまります』
アーリンくんが言った。
白いものが、視界をおおっていく。
霧だ。
さっきクオさんと狼万さんがやったのと同じだ。
山の水の力とMCOを使うんだ。
みるみるうちに火が消えて、建物が立ち上がる。
だけど、機関砲で撃った部分は治らない。
異なる世界の力で、無理やりこっちの世界を書き換えた訳じゃないから。
同じ世界のもの同士の破壊だから。
しょうがないことは、わかってる。
でも、侵略者の攻撃は消せて、私たちのは消せない。
くやしい。
そんな事実が。
『あの、はーちゃんのことは、お気の毒です』
そうか。朱墨ちゃんたちにとっても、そうなんだ。
「ありがとう」
今度は心から言えた。
「それで、聞いてほしいことって、何? 」
巨人と七星部隊の戦いは、まだ続いてる。
あそこで転がったカメラは、もう壊れていた。
閻魔 文華の行方も気になる。
『レイドリフト1号が準備していた増援部隊の事です』
朱墨ちゃんの声に、怒りがこもる。
『本当なら、1時間でヒーローを集められるだけ集めて、出撃する予定でした。
でもそれは、20分前まで延期になりました。
指揮を取るはずだった、娘の責任を取ると自分で言っていたはずのルルディ国王夫妻が、突然いなくなったんです! 』