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第132話 悪趣味すぎるデモンストレーション

『ぐおうおおおお……』 

 うなり声を上げるかつて法術師であったもの。そして周りを警戒する機動隊の法術師達は空中でどこから訪れるのか知れない第三勢力への警戒を開始した。

「なるほどねえ。このバケモンを作った人間が見せたかったのはこっちの方か……いや、別の組織だな。この動き、完成され過ぎてる。あんなバケモンを作る必要が無い程度の技術を持ってる連中がほかに居るって言う何よりの証拠だ。このバケモンを造った連中は当て馬にされたんだ。アタシ等の捜査は噛ませ犬製造研究所を必死に追ってただけ。この完成された法術師を作った連中に言わせればすべてが無駄だった……そんなところか」 

 かなめの言葉に合わせるようにして宙に浮いている機動隊員が次々と撃墜されていく。黒い影がそのたびに画面を縦横無尽に駆け抜けているのが分かった。

「法術師?しかも完全に覚醒した……西園寺さんの言う通り、これは別組織ですね。これほどの法術なんて僕じゃ無理ですよ。最低に見積もっても茜さんクラス。下手をすればその上を行くかも」

 誠はその影の正体を理解した。干渉空間と時間スライド法を使えるだけの力量を持った法術師が三名、化け物と機動部隊員の両方に攻撃を開始していた。

「でも非合法研究の成果のデモンストレーションにしたらやりすぎよね。この化け物を作った組織、まあ十中八九厚生局なんだけど、そことデモンストレーションをしている完成された法術師を作った組織って息が合ってるのかしら?私には到底そうは見えないんだけど」 

 アメリアの言葉もむなしく地上からの一斉射の弾丸が叩き落されていく光景が画面を占めることとなった。

「どちらも相当派手好きなんだろ?この化け物を作ってる厚生局の連中も、法術師を作ったどこの誰とも知れない人間も」

 そう言いながらかなめはいつもの残酷な笑みを浮かべていた。

「派手どころか……ある種、狂気を感じるな。こんなところでその力を見せたら普段、クバルカ中佐が言うように法術師は手の内を明かしたら終わりと言うじゃないか。その手の内を全部明かしてる。一体何がしたいんだ?」

 カウラのその言葉に一同は唇を噛み締めつつ頷いた。

「そうさ、どこかで悦に入りながらこの光景を眺めているだろうな……完成された法術師を作った連中は。一方不完全な法術師しか暴走させて化け物にすること位しかできない厚生局はそれこそ地団駄踏んで悔しがっている事だろうな」

 かなめの言葉に誠はその残忍な研究を指導する指揮官を想像して自然と鳥肌が立つのを感じていた。

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