第121話 凄腕同士の会話
「で?西園寺の嬢ちゃんよ……その頼みに俺はどう答えると思う?」
不機嫌そうに親父はつぶやく。その瞳をにらみつけながらかなめは笑顔を浮かべた。
「受けるね、アンタは。アンタはそう言う人だ。叔父貴にはそう教育されてるんだろ?叔父貴は今でもそう言う男だ。アンタ等を率いた時から今まで少しも変っちゃいねえよ」
かなめはそう言って大将の目を見つめた。
「俺も随分お人よしに見られたもんだな。それと隊長は相変わらずか。あの人はいいところも悪いところも変わらねえのか……あの人だけは変わらねえ。それは良いことだ」
大将は苦笑いを浮かべながら手拭いで顔をぬぐった。
「じゃあ断るのか?叔父貴に受けた恩。忘れちゃいねえだろ?」
かなめは矢継ぎ早にそう言った。
親父は目をランに向けた。小さなランは不敵な笑みを浮かべながらにらみ返した。
「アンタの腹はこの娘等が来た時から決まってたんだろ?」
レイチェルはそう言ってほほ笑んだ。
親父は苦笑いを浮かべつつ静かにうなづいた。
「しゃあねえね。ランと西園寺の嬢ちゃんとの仲だ。引き受けてやるよ。それと隊長には一生かけても返せねえ借りがある。俺達を人間に戻してくれたのはあの人だ。その人の部下を見捨てることなんて俺にはできねえ」
「よし!」
ランはそう言うと店の中を見回して、黙ってやり取りを見つめていた誠達一人一人を目で確認した
「それよりランよ……うどん、はどうする?うどんは腹には溜まらねえぞ。たくさん頼みな。金は貰うがな」
ぼそりと大将がつぶやくのを聞いてアメリアが手を挙げた。
「かけうどん大!」
アメリアの注文ににやりと笑った大将はうどんを茹で始めた。
「じゃあ、アタシもかけの小で」
「アタシは釜玉」
「そうだな……私はおろし醤油の中がいい」
ラン、かなめ、カウラが次々と注文する。
「じゃあ僕は……」
「俺はざるうどん!」
注文しようとする誠を遮って島田が叫んだ。
「もう!正人ったら……誠ちゃんが注文しているところじゃないの……私もざるうどんの大」
サラが慌ててそう言った。
「はいはい、サツマイモが揚がったよ」
レイチェルはそう言ってトレーにサツマイモの天ぷらを並べた。
先ほどまでの殺気はすでにこの場には無い。誠はその事実に気づいて苦笑いを浮かべた。