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第120話 アメリアの昔話

 そんなアメリアに戦場の地獄を見た過去がある。先の大戦で戦場で失われた人口を補うため、戦局が配線濃厚だったゲルパルト帝国が戦うために作りあげた存在であるアメリア達『ラスト・バタリオン』だった。

 誠の知る限り、彼女達は結局大戦には間に合わず、地球軍が彼女達の製造プラントを制圧したときは、ほとんどの『ラスト・バタリオン』は培養ポッドの中で完成の時を待っていたはずだった。ここにいる同じ『ラスト・バタリオン』である、サラが起動したのは終戦後、隣で様子をうかがっているカウラに至っては稼働開始まだ8年であり、当然戦争などは経験したことがない。

「誠ちゃん。まあ前にも言った事が有るけどね。ネオナチの連中。ゲルパルトが降伏してもなお、抵抗をやめなかったの。まあ、あの人達は諦めが悪いから。まあ、アタシは製造プラントから移送されてアステロイドベルトで目覚めるという最悪の経験をしたのよ。まあ、抵抗といってもそれほど長くできるはずもなく、数年で残党狩り組織に制圧されて、私はそこで保護された。まあ、昔の話よ」

 いつもとまるで違う、悲しげな表情でアメリアはそう言うと苦笑いを浮かべた。

「まあ、オメエが戦場の匂いの序の口を知っている戦場初心者ってことはどうでもいい。アタシが親父さんに頼みたい内容に違いはねえんだ。親父……」

 かなめはそう言うと親父の顔を見た。そこにはいつもの仏頂面があった。

「なんだ」

 相変わらず不愛想に親父はそう言った。

「アタシと中佐は戦争狂に出会ってもテメエのケツぐらいはちゃんと拭ける流儀は心得てる。まあ、アタシ等の仕事じゃそんな馬鹿に出くわす可能性は一般企業に勤めてるサラリーマンに比べたら嫌になるくらい高い」

 そう言うとかなめは再びどんぶりの汁を啜った。

「で?何が言いたい」

 再び親父は口元に笑顔を浮かべた。そう言って次の言葉を選んでいるかなめの顔を見つめる。

「後でこの戦場初心者が本当にヤバくなったらここに駆け込むように説得する。だからそん時は頼む。アタシや中佐も体は一つだ。年中こいつ等の世話して回るなんてのは不可能だ……頼む……」

 こんなに深々と頭を下げるかなめを誠は初めて見た。隣ではランも軽く頭を下げている。

「なんだ!西園寺!私達が甘ちゃんだとでも言うのか!私は軍人だ!自分の身など守れる!」

 そう叫んだのはカウラだった。一応は、第二小隊小隊長。かなめの上司である。誠も彼女がそう抗議するのも頷けた。

「カウラよ。オメーのそう言う真っ直ぐなところは上司としては嫌いじゃないが、このことは西園寺とアタシが神前が配属になったときにすで決めてたことでな。いつかここにオメー等を連れてきて頼もうと思ってたんだ。まあ、今回の事件はかなりヤバい事件だ。まあ、いい機会だ。アタシの顔に免じて堪えてくれ」

 ランは笑顔でカウラにそう頼んだ。真剣な顔でランにそう言われてしまえばカウラも黙るしかなかった。

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