第33話 法術の危険性を知る遼州人
「地球人がこの星に入植を開始したころには、遼州の文明は衰退して鉄すら作ることが出来ない文明に退化してましたのよ。今でも遼南の一部で信仰されている遼南精霊信仰では文明を悪と捉えていることはご存知ですわよね」
まるで歴史の教師のように茜は丁寧に言葉を選んで話す。自然とかなめは頷いていた。
「当然、法術の力がいかに危険かと言うことも私達遼州人の祖先は知っていて、それを使わない生き方を選んだというのが最近の研究の成果として報告されていますわ。その結果、力の有無は忘れられていくことになった。これも当然ご存知でしょ?」
茜の皮肉にかなめはタレ目を引きつらせた。
「つまり誰かが神前の活躍を耳にしてそれまでの基礎研究段階だった法術の発現に関する人体実験でも行っている。そう言いたい訳か」
カウラの言葉に茜は大きく頷いた。かなめはそんな様子に少しばかり自分を落ち着かせるように深呼吸をした。
「しかもこれだけ証拠が見つかっているわけだ。機密の管理については素人……いや、わざとばら撒いたのかもしれねえな。『俺達は法術の研究をしている。しかも大国がそれまでつぎ込んだ莫大な予算と時間が馬鹿馬鹿しくなるほどお手軽に。もし出来るなら見つけてみろ』って言いてえんだろうな。いや、もしかするとどこかの政府がお手軽な研究施設を作って面白がっているのかねえ」
かなめの言葉がさらに場を沈ませた。
「いいですか?」
これまで黙り込んでいたサラが手を上げた。意外な人物の言葉に茜が驚いたような顔をしていた。