第32話 誠がもたらしたモノ
「これも僕のせいなんですか?」
足が震える、声も震えている。誠はそのまますがるような目つきで茜を見た。
「いつかは表に出る話だった、そう思いましょうよ、誠さん。力があってもそれを引き出す人がいなければ眠っていた。確かにそうですけど今となってはどこの政府、非政府の武力を持つ組織も十分に法術の運用を行うに足る情報を掴んでしまった。そうなることは誠さんの力が表に出たときからわかっていたことですわ。でももう隠し通すには遼州と地球の関係は深くなりすぎました……『ビックブラザー』もその点は分かって今は我々の自由にさせている……悔しいけどそれが事実ですわね」
そう言って茜は誠の手に握られた剣を触れた。
「そして、やはりこの剣に神前さんの力が注がれた。多分この中の方のわずかな理性もその剣で終わりがほしいと願っているはずですわ。だからそれで『彼』を助けてあげてください。彼を斬ってください」
茜は厳しい口調で誠に向って指示を出した。
「力?確かに手が熱くなったのは事実ですけど」
誠はじっと手にしている剣を見る。地球からの独立戦争の最中に鍛えられた名刀『バスバの剣』。その名は渡されたときに司法局実働部隊隊長嵯峨惟基に知らされていた。
「法術は単に本人の能力だけで発動するものではありませんの。発動する場所、それを増幅するシステム、他にも触媒になるものがあればさらに効果的に発現しますわ」
そう言ってラーナの手にした端末のモニターを全員に見せる。
「たとえば叔父貴の腰の人斬り包丁か?確かに憲兵隊時代に斬ったゲリラの数は驚異的だからな……元々日本刀なんざ十人斬れば人の油で切れ味が落ちるもんだそれを……」
かなめの言うとおり相変わらず画面を広げているラーナの端末には刀の映像が映っていた。そこには嵯峨の帯剣『粟田口国綱』、そして茜が持ち歩くサーベルが映された。
「でもなんでだ?遼州人の力なんだろ?法術は。叔父貴のダンビラは日本製だぞ。なんで遼州人の力が地球の刀を触媒に……」
「かなめさん」
文句を言おうとしたかなめを茜が生暖かい視線で見つめていた。