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レティシアの出発

 レティシアは大きくなった霊獣チップの背中に乗って空を飛んでいた。レティシアは念願の自由を手にいれたのだ。

『ねぇ、レティシア。これからどこへ行く?外国に行ってみるのはどう?』

 チップは首を後ろに向けてレティシアに質問した。

「そうねぇ。外国に行くのも素敵だけど、まずはのんびり暮らしてみたいわ」

 レティシアが霊獣チップと契約してから、怒涛のような生活だった。チップの力に目をつけた養父のギオレン男爵に売られそうになり、それを回避するために剣の修行をし、自ら兵士としてザイン王国軍に入った。

 ザイン王国をおびやかすイグニア国とゲイド国を打ちまかし、ザイン王国に平和がおとずれたのだ。

 レティシアは愛するチップと自由気ままにのんびりする事ができるのだ。

 レティシアが選んだ場所は、母クロエが眠る墓地を見渡す事ができる小山の森に住居を構える事にした。

「ここに山小屋を建てたいわ。昔、お母さんと住んでいたような」

 レティシアと母クロエの暮らしは、貧しく過酷なものだった。常に旅暮らしで、一箇所に落ち着く事はなかった。

 そんな中、村人の好意で、使ってない山小屋に住まわせてもらった事がある。おりしも季節は冬にさしかかろうとしていた。山小屋には暖炉もあり、冬を越すには快適だった。小さな山小屋で、レティシアは母と楽しく過ごしたのだ。

『うんうん、覚えてるよ。レティシアはあの山小屋が大好きだったね』
「ええ。チップはずっとお母さんと私の側にいてくれたのね?」
『うん、もちろんだよ。姿隠しの魔法でずっと側にいたよ?レティシアが外で雪だるまを作りたいといって、雪の降る外に出た時、僕は水防御魔法でずっとレティシアを守っていたんだよ?』

 それはレティシアも覚えている。雪で遊びたくて、母にだだをこねたのだ。クロエはため息をついてから苦笑して外に出してくれた。

 レティシアは真っ白になっている雪に足を踏み込んだ。サクッとした雪を踏んだ感触が心地よかった。

 レティシアは雪で夢中になって遊んだ。不思議と寒かった記憶がない。チップがずっと守ってくれたのだと思うと嬉しくて仕方なかった。

 レティシアはチップに頼んで、森の木を山小屋に使えるよう切ってもらった。

 チップは水魔法で、どんな物体も切断する事ができるのだ。森の木も例外ではない。見る間に整えられた丸太と板が積み上がった。

「キャァ、ありがとう!チップ」
『さて、レティシアこれからどうするの?』
「そうねぇ。この板をしいて並べて」
『・・・。レティシア。じかに木の板を地面にしくの?』
「?。うん、山小屋の床は平だったわよ?」
『レティシア。山小屋を建てる知識は持っているの?』
「建てる知識?いいえ、何もないわ。昔の記憶だけが頼りよ?」
『・・・。そんな浅い知識で山小屋を建てようと思ったの?』
「ええ。そうだけど、まずかったかしら?」
『まずくはないけどさぁ。まずは土台を作らなきゃ。それに基礎の柱を立てなきゃね。まぁ、山小屋はおいおい建てればいいよ。寝る時は僕が水防御魔法で守ってあげるよ』
「ありがとう、チップ」
『さぁ、暗くなる前に食べ物を調達しなきゃ』

 レティシアとチップは食べ物をさがすために森の中に入った。

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