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レティシアの生活

 レティシアとチップは、夕食にするための果物と木の実を取った。チップはレティシアに、食べられる木の実や果物を一つ一つ説明してくれた。それは亡くなったクロエもしてくれていた事だ。

 レティシアとチップは焚き火を見つめながら食後の時を過ごしていた。

「チップが取ってくれた果物、とても美味しかったわ」
『明日は近くの川に行ってみよう?きっと魚が獲れるよ?』
「そうね。楽しみだわ」
『レティシア。今日は疲れただろう?もうお休み』
「うん」

 レティシアは、チップに切ってもらった木の板を並べ、横になった。チップはすかさずレティシアの腕の中に飛び込み丸くなる。チップのフワフワで温かい身体が気持ち良かった。レティシアの身体を温かな水の膜がおおう。チップの魔法だ。レティシアは疲労もあいまって、深い眠りについた。

 レティシアが目を覚ますと、チップはすでに起きていた。

『おはよう、レティシア』
「おはよう、チップ」

 レティシアは板の上から起き上がり伸びをした。チップの水魔法で守ってもらったため、身体が痛む事はなかった。

 さて今日は何をしよう。作りかけの山小屋を建てなければいけないし、食事のために魚や果物を取りにいかなければならない。やらなければいけない事は山積みだ。だが心配する事はない。レティシアには自由な時間がたくさんあるのだ。

 ふと左手の小指にしているリングに目がいく。愛しいマティアスがくれた唯一の物だ。

 マティアスはザイン王国の王子であるにも関わらず、レティシアに求婚してくれたのだ。レティシアは分不相応だから断ったが、心の中では今もマティアスを深く愛している。

 自由な時間がありすぎてマティアスの事ばかり考えてしまう。これではいけない、何もできなくなってしまう。レティシアは頭を振って、マティアスを頭のすみに押しやった。

 ふとリングの宝石が輝いている事に気づいた。真っ赤なルビーの宝石が輝くように点滅している。

 宝石から声が聞こえた。愛しい男の声が。

「レティシア。聞こえるか?」
「!。はい!王子殿下。どうされましたか?!」
「・・・。うむ、実はレティシアに言わなければいけない事があってな、」
「はい。何でしょうか?」
「・・・。いや、あの、直接会って話したいのだ。・・・、レティシア、良ければ居場所を教えてもらえないか?」
「えっ?!」
「えっ?!嫌なの?!」
「い、いえ、そんな事はございません。ですが、ここは城からだいぶ離れているのです」
「そんな事なら心配ない。もうすでに城から出ている。詳しい場所を教えてくれないか?」

 マティアスに何か起こったのだろうか。レティシアはマティアスのためなら何でもしたい。レティシアがチップに乗ってマティアスの所に行くといっても、マティアスは頑なにレティシアのいる場所に来るといってきかなかった。

 レティシアは仕方なく自分の居場所を伝えた。



 

 



 

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