レティシアの本心
ザイン王国軍の働きにより、マティアスはゲイド軍を制圧した。次はゲイド国に乗り込んでゲイド国王を押さえなければ。
リカオンの気の利いた提案により、マティアスは愛するレティシアと霊獣と共にゲイド国に向かった。
馬のように大きくなった霊獣はプリプリ怒っていた。マティアスが心を読まなくてもわかる。マティアスはレティシアの契約霊獣に嫌われているのだ。
これはゆゆしき事態だ。レティシアを愛するには、霊獣の許可が不可欠だ。
だが見た目がリスの霊獣と、どうやったら打ち解けられるのか、マティアスにはわからなかった。
ゲイド国を手中におさめた後、マティアスはすみやかにザイン王国に戻った。その道中、どうしても確認しておかなければいけない事があった。
それはレティシアの気持ちだ。マティアスはレティシアの事が大好きだ。できれば結婚したい。
だがレティシアがマティアスに少しの気持ちもなければ、マティアスは潔く諦めるつもりだ。
疲れたので少し休もうと言えば、レティシアは気づかわしげな顔を向けてから、契約霊獣に下に降りるよう頼んだ。
マティアスとレティシアは柔らかな芝生の上に腰を下ろした。
マティアスは最初当たり障りのない会話から始めた。レティシアへの報酬だ。レティシアはザイン王国軍の志願兵だ。
そして多大な貢献をしてくれた。どんな要求だとて叶えてあげたい。
レティシアはどんなものが好きなのだろうか。宝石、ドレス、靴。レティシアが望むものをすべて与えてあげたい。
だがマティアスの予想に反して、レティシアの返事はとても寂しいものだった。
私は契約霊獣と二人で静かに暮らしたい。
マティアスだとてレティシアの霊獣の力を手に入れようとして近づいたのだ。マティアスには何も言う権利はなかったが、レティシアの望みにはこれっぽっちもマティアスは入っていなかった。マティアスは悲しみのあまり、レティシアに読心の魔法を使った。
お慕いしています、マティアス王子殿下。マティアス王子にずっとおつかえしたい。お側にいたい。かっこいい。素敵。マックスと一緒の時が可愛い。一緒にダンスできた事が嬉しい。マティアス王が結婚して王妃を迎える姿は見たくない。このまま王子の前から消えてしまいたい。ティアラと離れたくない。だけど苦労もかけたくない。このままチップと二人で静かに暮らしたい。
あまりの怒涛の感情に、マティアスは鼻血が出そうになってしまった。レティシアはマティアスの事を想ってくれているのだ。彼女はマティアスと同じ気持ちなのだ。
嬉しいやら恥ずかしいやらで、マティアスはレティシアの願いを聞き届けると答えて、そそくさとテントに戻った。