女子トーク
私と舞香さんは【ホシバシックス】通称【ホシバ】と呼ばれているカフェスペースで。
所謂、女子トークという物に花を咲かせていた。
ここでのお話はとても新鮮で、あの冒険の日々とは違うゆったりとした時間が流れている。
「とまぁ、こんな感じです……」
舞香さんによるとそのご友人との関係は、近所に住まう幼馴染という関係とのことで。
少なくとも数年はお金が返ってきていないようだ。
そして肝心の貸して欲しいという連絡は、びっくりするほど丁寧に。
また申し訳なさそうなやり取りをしてきたので嘘ではない。と舞香さんは信じている。
まさか、この手の簡単な嘘に引っ掛かるとは……。
私は失礼のないようにため息を吐かず飲み込んだ。
「きっと忙しいんだと思うんです……だから、今は連絡出来ないのかと」
「そうですか……」
トール様からお借りしたスマホの多機能(乗車券に商品を買うことが出来る)ぶりに驚いていたが、今やそれどころではなかった。
舞香さん本人はその事に気付いていないのだけれど、この状態は一種の洗脳に近い物がある。
言い方はあれですけど、初心者冒険者からお金を搾取し、依存させる詐欺師と一緒ですね。
これは早く解決しないといけない。
舞香さんの為にも。
「では、そのご友人の元へ向かいましょうか」
「え――っ?!」
「トール様のような転移は無理でも、私が得意としている風魔法は移動には便利ですから、それにちょうど覚えたての探索魔法を試してみたかったんですよね」
これは嘘だ。
けれど、えーっと乗りかかった船でしたっけ? 聞いたからには力になりたい。
日本でできた初めてお友達の為に。
☆☆☆
私はトール様から教わった、オリジナル魔法
舞香さんのご両親は日中は働きに出ており、この時間帯はいないとのこと。
建物の外観を見る限り、周囲の住まいと大差のないデザインをしている、ごく一般的な家庭といったところだろう。
室内に関しては、比較対象がトール様のお家しかないのでなんとも言えないけれど、整理整頓の行き届いた清潔感があるとても好感の持てるいい家だ。
「いやー! まさか自分が空を飛ぶことになるなんてびっくりですよー! もしかして私も魔法使えたりして……」
「うーん、どうでしょうね……でも、転移者であるトール様が使えるので、鍛錬を積めば使えるようになるかも知れませんね」
「ええ――!? 使えるんですか?!」
「お、落ち着いて下さい! 舞香さん! 私はその……あくまでも可能性があると言っただけですから! それにもし使えてしまったら、実験台となる日々が待っているかも知れませんよ?」
「はい、粗茶ですが。どうぞ」
来賓用なのでしょうか? 舞香さんは深緑の色をした落ち着く匂いのする飲み物を出してくれた。
不思議とトワルフの森で飲んでいた
「とてもいい香りですね! もしかしてこれが緑茶と言う物なのでしょうか?」
「ですです! ってカルファさんは緑茶を知っているんですか?」
「はい、私の故郷にも同じ風味をした飲み物がありまして。薬茶と言うのですが、トール様曰くほぼ同じ物だろうと」
「へぇ~! 意外なところで異世界との共通点あるんですね! って、すみません! 異世界って言い方は失礼ですよね! カルファさん達から見たらこっちが異世界なのに」
「大丈夫です、気にしないで下さい! トール様も私達の世界で「異世界っぽいわー」とか「異世界ルールね」などよく仰っていましたし! それに――」
「それに?」
「いえ、私もこう言えばおあいこですから! コホン!
「ふふっ、確かに!」
「ね♪」
私は舞香さんと他愛のない話を織り交ぜながら日本と私達の世界との話で盛り上がった。