レティシアの未来
「いゃああ!」
レティシアは手足をバタバタさせて大暴れした。枕元で眠っていたチップが驚いて飛び起きた。
『レティシア!落ち着いて?!どうしたの?』
「!。チップ?!チップ!ああ、チップ、チップ。大丈夫?!私を置いて死んでは嫌よ!」
チップはクスクス笑って可愛らしく首を傾げた。
『どうしたの?レティシア』
レティシアはゆっくりと自分の状態を確認した。ここはレティシアの部屋。レティシアはベッドにいた。全身からは滝のような汗がしたたっていた。
「あれは、夢?」
レティシアはホウッと深いため息をついた。本当に夢だったのだろうか。手触りも、肌に感じる風も、すべて本物に感じられる夢だった。
『夢じゃないよ。それはレティシアにこれから起きる未来だよ。レティシアは僕と契約して未来を予知夢として視たんだ。だいぶうなされていたけど、どんな未来だったの?』
「あれが、私の未来、」
『大丈夫?レティシア。だいぶうなされていたよ?安心して、僕が守ってあげるから』
「・・・。ありがとう、チップ」
未来のレティシアは、チップに頼ってばかりいて大切なチップを危険にさらしてしまったのだ。
レティシアはチップを何としても守らなければいけない。レティシアはこれから自分とチップに襲いかかってくる未来に対抗するすべを持たなければならない。レティシアは覚悟を決めた。
翌日レティシアは男爵にある願いをした。一つは乗馬の先生をつけてもらう事。もう一つは、剣術の師匠をつけてもらう事。
「初めまして、レティシアお嬢さま。剣術の指導をさせていただきますヴィヴィアンと申します」
男爵が選んだ剣術の師匠はなんと女性で、燃えるような赤い髪の美女だった。レティシアは美しい剣士のヴィヴィアンを見て、口をあんぐりと開けて放心した。
「どうかしましたか?お嬢さま」
「い、いえ。剣術の師匠がヴィヴィアンさまのような美しい女性だったので驚いただけです」
「うふふ。お世辞を言っても指導は優しくしませんよ?」
「いえ、厳しいご指導をお願いします!」
レティシアには時間がないのだ。もうすぐザイン王国の王子マティアスがレティシアをかりそめの花嫁にするべくやってくるのだ。それまでにレティシアは力をつけなくてはならない。
チップに頼らず自身でも戦えるように。