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訓練

 ヴィヴィアンは二本の木剣を持ち、そのうち一本をレティシアに渡した。これからレティシアの剣術がどの程度の実力か確認するのだという。

 確認するも何も、レティシアは剣を持つなど今日が初めてだ。当然レティシアは重たい木剣を持ち上げるのもやっとのありさまだった。

「はい、お嬢さまの状態はよくわかりました。まずは剣を持てるよう体力作りから初めましょう」
「ヴィヴィアン師匠!私には、時間がないのです。どうか私に早く剣術のご指導を、」

 ヴィヴィアンは笑みをたたえたままレティシアに向き直った。

「レティシアお嬢さま。剣術には先回りなどないのです。それが嫌なら私はこの件から降りさせていただきます」

 レティシアは仕方なく体力作りから始める事になった。


「ハァハァ、」

 レティシアは屋敷の周りをひたすら走らされていた。しかも後ろにはヴィヴィアンがいて、レティシアの走る速度が落ちると木剣の先でレティシアのお尻をつつくのだ。

「ハァハァ、痛!し、師匠。ちゃんと走りますから、お尻をつつくのをやめてください!」
「そんな事言って、さっきよりもどんどん速度が落ちているのですよ?お尻が腫れ上がる前に屋敷の周り十周走りきってください」

 レティシアは仕方なく走り続けた。ようやく屋敷の周り十周走り終えた後、ヴィヴィアンは恐るべき事を言った。

「さぁ、お嬢さま。これから筋トレです。まずは腹筋五百回。その後背筋とスクワットを五百回やっていただきます」
「・・・」

 レティシアは失神覚悟で筋トレに挑んだ。だが五十回の腹筋で疲労のため、意識を失った。するとヴィヴィアンに水おけにためた水をぶっかけられ、意識を取り戻した。

「お嬢さま。寝てる時間はありませんわ。さぁ、筋トレの続きを、」
「し、師匠。午後からは乗馬の先生が来るので、剣術の訓練は明日に、」

 レティシアの苦肉の言い逃れに、ヴィヴィアンは笑顔で答えた。

「乗馬の先生も私が兼任しております。お嬢さまの体力の無さは問題外なので、このまま筋トレを続けましょう」

 ヴィヴィアンの言葉に、レティシアは絶望のあまり失神しそうになった。

 ようやく筋トレを終えた頃には、レティシアは指一本動かす事もできなかった。

「レティシアお嬢さま。はっきり申し上げます。お嬢さまには剣術の素質どころか、運動神経もございません。剣術や乗馬などケガをすれば死んでしまうかもしれません。悪い事は言いません、剣術など辞めておしまいなさい」
「・・・。師匠、それでも私はやらなければいけないのです」
「・・・。訳をお聞きしてもいいでしょうか?」

 レティシアは鉛のような身体を起こしてからうなずいた。

 

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