レティシアの覚悟
レティシアは素早く召喚の呪文を唱え、チップを呼び出した。
『ヤッホー、レティシア。あれ、どうしたの?レティシア、ぼろぼろじゃない』
「うふふ。ちょっとね」
『だいぶ疲れているね。回復魔法してげるよ』
「ありがとう、チップ」
レティシアの身体を優しい光が包む。チップの水回復魔法だ。レティシアの身体にやっと力が入った。
霊獣チップを見たヴィヴィアンは、驚きの色を隠さなかった。
「お嬢さま、この動物は、霊獣ですか?」
「はい。私の契約霊獣のチップです」
「・・・。お嬢さまががむしゃらにがんばるのはこの霊獣が関係するのですか?」
「はい。お恥ずかしい話ですが、私は愚かにもギオレン男爵に契約霊獣を知られてしまったのです。男爵は社交界で自分の養女が霊獣と契約したと吹聴しました。いずれ名のある貴族や軍人が、私を囲い込もうと名乗りをあげるでしょう。そして、私とチップは戦争の道具にされます」
「!。お嬢さまは、どうして戦争が起こると?」
「チップは尊い霊獣です。先の出来事をわずかですが知る事ができます」
ヴィヴィアンに予知した未来の話をするわけにはいかない。レティシアは言葉を続けた。
「ザイン王国軍には魔法使い部隊があると聞きました。私は剣が扱えるようになったら、魔法使い部隊に志願しようと考えております」
「・・・。決意はかたいのですね」
「はい。チップを無益な戦争に巻き込んでしまう以上、チップの安全だけは守りたいのです。そのためには、私が一人でも問題を解決できるように強くならなければいけません」
「・・・。わかりました、レティシアお嬢さま。このヴィヴィアン、責任を持ってお嬢さまを少しはましな剣士に育てあげましょう。さぁ、お立ちください。これから剣の形を指導します!」
「えっ?!もう夜。明日にしては、」
「何をおっしゃいますか!レティシアお嬢さまのレベルでは一日も訓練を休むわけにはいきません!」
ヴィヴィアンに急かされ、レティシアはフラフラしながら立ち上がり剣を構えた。
ヴィヴィアンはレティシアの剣の構えを細かく指導し、その姿勢を常に続けるよう指導した。
ヴィヴィアンの指導初日は、空が明るくなってようやく終了した。
レティシアがホッとしていると、ヴィヴィアンは美しい笑顔で言った。
「さぁ、お嬢さま。三時間仮眠をとった後、食事を取ってからここに集合してください。指導の二日目を始めますよ」
レティシアはその場に立ったまま失神しそうになった。