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「顔に発疹出てるわよ」
「チークだ!」出勤後、開口1番に受けた言葉だった。
「広範囲に塗り過ぎなのよ。前よりはいいけど」
「気合い入れる為に頬っぺ叩いてたら、見事に広がって修正不可能になった」
「なんの気合い?」
「・・・仕事に!」
「あそ。いいけど、昨日に増して顔色死人だから、余計に目立つわよ」
「若干、ちょっと、風邪気味かな?ってくらいだから大丈夫。まあフォローは任せた!」
「それはいつもの事でしょ。なんで休まないのよ」
「春香だったら休んでた?」
──わたし達は見つめ合い、言葉に出来ない想いを、秘めたる心を、互いの目を通し、語り合った。そして、すがる想いで彼を見つめるのだった。
「ん?どうしたの2人とも」
「春香よ、そなたから伝えてくれぬか」
「殿、出来れば早急に人員の確保をお願い申し上げたい」
「・・・え?殿?何言ってるの2人とも」
「我々だけでは、力不足と存じます」
「それがしも、春香に同意いたす」
「・・・え、なになに時代劇ごっこ?」
「バイトを雇ってくれませんかって事です」春香の声は、若干不機嫌だ。
「あー、その話ね。なんでまた急に?」
「急にではないです。2人で回してると、どっちかに何かあった時大変なんですよ。雪音も体調悪いのにこうやって出て来てるし」
「えっ、雪音ちゃん体調悪いの?・・・そういえば顔赤いね。熱あるんじゃ?」
「チークです」
「体調だけじゃなく、何かあった時に休める環境を作ってください。ただでさえ2人でギリギリ回してるのに。もう1人いてくれたら負担も減ります」
いつになく真剣な春香に、店長も真面目な顔になる。「うん、わかったよ。近々、張り紙でも出そうかね」
「近々?」春香とハモる。口調に違いはあるが。
「・・・早急に準備します」